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第十二話 決断
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「「は?」」
『私を冒険に連れて行って』という言葉を聞いた二人は、揃って同じ反応をした。
二人は、いきなり何を言い出すんだという顔をしている。
そしてテオは少し考えると首をひねる。
「いや、別に……俺は良いけどよ。そんな事してどうすんだ?」
テオは私の意図を図りかねているようだ。
それでは説明してあげましょう。
「筆記試験は恐らく冒険に関する問題が出るのでしょう? でしたら現場で学べば対策が出来ます。それに魔物との交戦もあるでしょうから、そこで実戦経験を得れば実力アップも期待出来ます」
「……なるほどな。試験対策ってわけか」
納得してもらえたようだ。
テオは協力してくれそう。
次にアルシアだが、見ると眉をしかめている。
そして言った。
「私はパス」
そう言うとその場を立ち去ろうとする。
だがそれをテオが手を掴んで引き留める。
「おいおい、そりゃねぇだろ。乗りかかった船だ、協力しろ」
「馬鹿言わないで。絶対に面倒なことになるでしょ。面倒事はごめんなの」
「気持ちはわかるけどよ、放ってはおけねぇだろ」
「だったらアンタが面倒見れば良いじゃない」
「オメェも見るんだよ」
「嫌」
「駄目だ」
「何でよ」
「オメェに居てほしいからだ」
「………………」
居てほしいというテオの言葉に、アルシアは黙り込んだ。
返す言葉を思いつかないようだ。
思ってもいなかった言葉が嬉しいのか口元も少し緩んでいる。
「……わかったわよ。本当にアンタは人を口説くのが好きね」
アルシアは、そう承諾ついでに憎まれ口も叩く。
それを聞いたテオは掴んでいた手をスッと離すと、「うるせぇ」とこぼす。
いつもの流れだ。
良い感じ。
そう思っていると、アルシアが聞いてきた。
「それで、協力するのは良いけれど、一つ聞いていい?」
「何でしょうか」
「アンタ、教団を抜けるという選択肢は無いの? そうすればガイザックも認めるでしょうし、一番丸く収まると思うのだけれど」
その疑問はもっともだ。
私が教団を抜けて還俗をすれば、ガイザックもすんなり冒険者登録を認めるだろう。
私も旅立ちの前は考えていた。
だけど、今は教団に居るのが正解だと考えている。
「確かに、そうすればガイザック様もすぐにお認めになられるでしょう。ですが、それは出来ません」
「何故?」
「――ロードリックというお方をご存知ですか?」
「……ええ、知っているわ」
「そうですよね。有名みたいですから」
「ロードリックと何か関係あるの?」
「私は……幼き頃、ロードリックに命を救われたのです――」
私は二人に今までの過去を全て話した。
故郷が滅び、ロードリックに救われて一年間共に旅をしたことから、修道院に預けられてから旅立つまでの全てを。
それを二人は神妙な面持ちで聞いていた。
思っていた以上の私の体験に二人は言葉も無いようで、ずっと黙り込んでいた。
ただ、二人が私の話を聞いて慮ってくれるのは嬉しいが、今二人に伝えたいのはそこではない。
もっと重要な事を私は考えていた。
「――私はロードリックの世間の評判を知り、考えていました。教団に嫌われているロードリックが、わざわざ私を修道院へ預けた――それは何故か」
「……確かにそれは疑問ね」
「ロードリックは私との別れ際に言いました。『初代エルフ王の書記の原本と世界の監視者を探している』と。そして、私もそれを追い求めれば、いずれまた会えると。つまりそれは、私に教団の中から調べてほしいという意味なのではないでしょうか」
「………………」
アルシアは、私の話を聞いて考え込む。
そして言った。
「……アンタ、本気でロードリックを追うの?」
そう言うアルシアの顔は真剣だった。
相当な覚悟が必要というのを言いたいのかもしれない。
教団を敵に回すかもしれないとなれば当然だろう。
けれど、覚悟は出来ている。
「勿論です。私にとってロードリックは父であり、再び会うことが私の生きる目標でもあるので」
私はそう断言する。
けれどそれを聞いたアルシアは、私へ向ける視線を険しくする。
「並大抵の苦労じゃないわよ。多分、きっと、世界の歴史が動く程の事が起きる。それでも?」
アルシアはそう圧をかけてくる。
追うのを諦めてほしいのだろうか。
ロードリックを追うことが、それ程までに重大な事……?
《初代エルフ王の書記》の原本、そして《世界の監視者》。
それらを見つけ出そうとすることが、世界を左右する程のことなのか……?
もしかして……アルシアは何か知っている?
私の知らないこと、ロードリックも知らないことを知っている?
それはとても危険なことで、大いなる災いをもたらす程のことなのか?
だから『世界の歴史を動かす程の事が起きる』と言っているのだろうか。
……分からない。
どういう事?
「アルシアさんは……何を知っているのですか?」
私はアルシアに問いかける。
だがアルシアは表情を崩さず、言葉を続ける。
「まともな人生を送れなくなるけど、それでも?」
アルシアは私の質問に答えない。
私の回答を待っているようだ。
ここで答えなければ、私の望む未来は得られないという事か。
決断をしなければならない。
それは――私の人生を左右する、大きな決断。
「はい」
すると、アルシアの口元が仄かに緩んだ。
黄金の瞳が、真っ直ぐと私を見つめている。
全てを見通すような、神聖なる金色の綺麗な瞳。
アルシアは、私の瞳をジッと見つめている。
そして言った。
「言ったわね。後悔しても遅いから」
――自分の歯車が、変わった気がした。
アルシアが向ける瞳は、まるで女神様に見つめられているような、そんな神聖さを感じた。
身震いをするような感覚を覚える。
ロードリックの後を追う――それがどれ程の重みを持つのか、今は分からない。
けれど、この決断を後悔するつもりは無い。
『私を冒険に連れて行って』という言葉を聞いた二人は、揃って同じ反応をした。
二人は、いきなり何を言い出すんだという顔をしている。
そしてテオは少し考えると首をひねる。
「いや、別に……俺は良いけどよ。そんな事してどうすんだ?」
テオは私の意図を図りかねているようだ。
それでは説明してあげましょう。
「筆記試験は恐らく冒険に関する問題が出るのでしょう? でしたら現場で学べば対策が出来ます。それに魔物との交戦もあるでしょうから、そこで実戦経験を得れば実力アップも期待出来ます」
「……なるほどな。試験対策ってわけか」
納得してもらえたようだ。
テオは協力してくれそう。
次にアルシアだが、見ると眉をしかめている。
そして言った。
「私はパス」
そう言うとその場を立ち去ろうとする。
だがそれをテオが手を掴んで引き留める。
「おいおい、そりゃねぇだろ。乗りかかった船だ、協力しろ」
「馬鹿言わないで。絶対に面倒なことになるでしょ。面倒事はごめんなの」
「気持ちはわかるけどよ、放ってはおけねぇだろ」
「だったらアンタが面倒見れば良いじゃない」
「オメェも見るんだよ」
「嫌」
「駄目だ」
「何でよ」
「オメェに居てほしいからだ」
「………………」
居てほしいというテオの言葉に、アルシアは黙り込んだ。
返す言葉を思いつかないようだ。
思ってもいなかった言葉が嬉しいのか口元も少し緩んでいる。
「……わかったわよ。本当にアンタは人を口説くのが好きね」
アルシアは、そう承諾ついでに憎まれ口も叩く。
それを聞いたテオは掴んでいた手をスッと離すと、「うるせぇ」とこぼす。
いつもの流れだ。
良い感じ。
そう思っていると、アルシアが聞いてきた。
「それで、協力するのは良いけれど、一つ聞いていい?」
「何でしょうか」
「アンタ、教団を抜けるという選択肢は無いの? そうすればガイザックも認めるでしょうし、一番丸く収まると思うのだけれど」
その疑問はもっともだ。
私が教団を抜けて還俗をすれば、ガイザックもすんなり冒険者登録を認めるだろう。
私も旅立ちの前は考えていた。
だけど、今は教団に居るのが正解だと考えている。
「確かに、そうすればガイザック様もすぐにお認めになられるでしょう。ですが、それは出来ません」
「何故?」
「――ロードリックというお方をご存知ですか?」
「……ええ、知っているわ」
「そうですよね。有名みたいですから」
「ロードリックと何か関係あるの?」
「私は……幼き頃、ロードリックに命を救われたのです――」
私は二人に今までの過去を全て話した。
故郷が滅び、ロードリックに救われて一年間共に旅をしたことから、修道院に預けられてから旅立つまでの全てを。
それを二人は神妙な面持ちで聞いていた。
思っていた以上の私の体験に二人は言葉も無いようで、ずっと黙り込んでいた。
ただ、二人が私の話を聞いて慮ってくれるのは嬉しいが、今二人に伝えたいのはそこではない。
もっと重要な事を私は考えていた。
「――私はロードリックの世間の評判を知り、考えていました。教団に嫌われているロードリックが、わざわざ私を修道院へ預けた――それは何故か」
「……確かにそれは疑問ね」
「ロードリックは私との別れ際に言いました。『初代エルフ王の書記の原本と世界の監視者を探している』と。そして、私もそれを追い求めれば、いずれまた会えると。つまりそれは、私に教団の中から調べてほしいという意味なのではないでしょうか」
「………………」
アルシアは、私の話を聞いて考え込む。
そして言った。
「……アンタ、本気でロードリックを追うの?」
そう言うアルシアの顔は真剣だった。
相当な覚悟が必要というのを言いたいのかもしれない。
教団を敵に回すかもしれないとなれば当然だろう。
けれど、覚悟は出来ている。
「勿論です。私にとってロードリックは父であり、再び会うことが私の生きる目標でもあるので」
私はそう断言する。
けれどそれを聞いたアルシアは、私へ向ける視線を険しくする。
「並大抵の苦労じゃないわよ。多分、きっと、世界の歴史が動く程の事が起きる。それでも?」
アルシアはそう圧をかけてくる。
追うのを諦めてほしいのだろうか。
ロードリックを追うことが、それ程までに重大な事……?
《初代エルフ王の書記》の原本、そして《世界の監視者》。
それらを見つけ出そうとすることが、世界を左右する程のことなのか……?
もしかして……アルシアは何か知っている?
私の知らないこと、ロードリックも知らないことを知っている?
それはとても危険なことで、大いなる災いをもたらす程のことなのか?
だから『世界の歴史を動かす程の事が起きる』と言っているのだろうか。
……分からない。
どういう事?
「アルシアさんは……何を知っているのですか?」
私はアルシアに問いかける。
だがアルシアは表情を崩さず、言葉を続ける。
「まともな人生を送れなくなるけど、それでも?」
アルシアは私の質問に答えない。
私の回答を待っているようだ。
ここで答えなければ、私の望む未来は得られないという事か。
決断をしなければならない。
それは――私の人生を左右する、大きな決断。
「はい」
すると、アルシアの口元が仄かに緩んだ。
黄金の瞳が、真っ直ぐと私を見つめている。
全てを見通すような、神聖なる金色の綺麗な瞳。
アルシアは、私の瞳をジッと見つめている。
そして言った。
「言ったわね。後悔しても遅いから」
――自分の歯車が、変わった気がした。
アルシアが向ける瞳は、まるで女神様に見つめられているような、そんな神聖さを感じた。
身震いをするような感覚を覚える。
ロードリックの後を追う――それがどれ程の重みを持つのか、今は分からない。
けれど、この決断を後悔するつもりは無い。
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