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第十七話 ウソ
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《誓盟の真理》が左へと傾いた。
一体何に反応した?
いえ、そもそもこれは正常な動作?
皿には何も載っていない。だから物理的に傾いたわけではない。
だとしたら本当に……?
「アルシアさん……貴女の本名は?」
確認しなければ。
ついにやったのか?
私の問いかけに、アルシアは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
それはまさに――
「……アルシア」
『カシャン』
――成功した証だった。
誓盟の真理が右へと傾いた。
ついにやった。
これでアルシアさんから、本当の事を聞き出せる。
知りたいことは山のようにある。
さっき何に反応したのかは分からないが、まずは無難なことから聞いていこうか。
そう考えていると、アルシアは「はぁ」と溜息をついた。
そして部屋の真ん中にある椅子へとゆっくり座り、テーブルへと頬杖をついた。
「……まさか……ね」
そう言ったアルシアは、どこか遠くを見つめている。
観念したのだろうか。
「……諦めましたか?」
「そりゃここまでやられちゃね。もう丸裸も同然。好きにしてって感じ」
アルシアは完全に諦め顔だ。
ここに付け込むのは少々心が痛むけど、こんな機会は二度と無いかもしれない。
存分にやらせてもらおう。
「では改めて。アルシアさんの本名をフルネームで教えて下さい」
「アルシア=オーガスト・シルヴァエ」
誓盟の真理は右へ傾いたまま動かない。
嘘じゃない。
これがアルシアの本名だ。
「姓の意味はご存知ですか?」
「……オーガストが父の名前。シルヴァエは出身地」
ここでも誓盟の真理は動かない。本当だ。
「アルシアさん、聖都シルヴァエのご出身なんですね」
「そうよ」
「では、ご年齢は?」
「十六」
『カシャン』
誓盟の真理が左へと傾いた。これは嘘だ。
「……嘘ですね」
「忌々しい天秤ね……、二十歳」
「………………」
誓盟の真理は左へ傾いたまま動かない。
まだ嘘をついている。
「誓盟の真理は正常に動いているようですよ」
「二十六」
「……」
「三十」
「……」
「三十一」
「……」
「三十二」
「……」
「三十五」
「……」
「四十」
「…………」
「覚えていない」
『カシャン』
誓盟の真理が右へと傾く。
「……覚えていないんですか?」
「計算したら分かるだろうけど、もう数えていないから分からない」
「ちなみに生年月日は?」
「イリィ歴四六年ルクナの月一日」
「……イリィ歴? 聞いたことない暦ですね……」
「もう使われていないやつだから。知ってる人いないでしょ」
「神暦に直すと何年です?」
「……計算が面倒くさい」
誓盟の真理は右へ傾いたまま動かない。
本当ということか……。
まあ、アルシアの年齢はきっと些細なことでしょう。
予行演習は済んだ。
ここで核心に迫る。
「では次の質問。アルシアさんは、女神様と関係がありますか?」
「ノーコメント」
「…………ノーコメント?」
回答を拒否した?
確かに答えなければ真偽の判別をしようがない。
けれどそれは――
「それは肯定しているのと同じことですよ?」
「どう受け取ってもらおうと結構。そもそも真面目に答えてあげる義理はない」
アルシアはそう言って私へ鋭い視線を向ける。
その瞳には、頑として答えないという意志を感じる。
……どうするべきか。
私は必死に頭を回す。
何か、何か突破口はないか――
――そこで思いつく。
彼女が必死に調べていた神話。
その事について聞いてみよう。
「……では違う質問を。アルシアさんは破壊神ソルスをご存知ですね?」
「ええ」
これには答えてくれた。
誓盟の真理は右へ傾いたまま。
「――では、その破壊神ソルスがこの教会の本記載から消えた原因をご存知ですか?」
「……知るにはまだ早い」
まただ。
また隠そうとする。
「答えてください」
「まだ推測の域を出てない」
「推測で良いです」
「ノーコメント」
ここまできて意地でも答えないのか。
「ノーコメント禁止です。答えてください」
私は自分の顔をアルシアの顔の前まで突きつける。
絶対に答えさせると息巻いて。
するとアルシアは一つ息を吐くと、私のおでこを人差し指でポンと突いた。
「……それはロードリックが追っているものと関係している」
「!」
ここで……ロードリックと繋がってくる?
「それは、初代エルフ王の書記ですか?」
「……そうよ」
「世界の監視者は?」
「関係無い」
誓盟の真理は動かない。
……本当だ。
「アルシアさんはロードリックのことを知って……いえ、会ったことがあるんですか?」
「……ある」
「本当ですか! いつ!?」
「……三十年ほど前よ」
「三十年前!?」
三十年前となると、ロードリックが六歳の頃か。
その時に出会った?
けどそれって――
「アルシアさんはその時、子供だったんですか?」
「………………」
沈黙。
答えるつもりはないということか。
「沈黙は肯定とみなしますよ?」
「お好きにどうぞ」
「歳を隠す必要あります?」
「言いたくないだけ」
「何故ですか?」
「ノーコメント」
「だから禁止ですそれ!」
本当に埒が明かない。
誓盟の真理も答えてくれなければ意味がない。
ならば……答えざるを得ないようにするべきか。
「ロードリックへ初代エルフ王の書記の原本が有ることを教えたのはアルシアさんですか?」
「………………」
「そして、世界の監視者が存在する事を教えたのも」
「………………」
沈黙を続けている。
という事は、核心を突いているのは間違いない。
これから私が言うことは、出まかせも含む。
思いつくままに一気に畳み掛けよう!
「私は、実はアルシアさんこそが女神様、もしくは女神様の生まれ変わりなのでないか、と思っています」
「………………」
「だからこそ、普通では知り得ない事も知っている。だってそうでしょう。ただの一介の冒険者ならば、これほど神話やルクナ教について知っている筈がない」
「………………」
「私には分かります。アルシアさんはまだ言っていない、私の知らない真実をたくさん知っている」
「………………」
「それは何故か。理由は二つ。一つはロードリックを詳しく知っていること。あの人は一匹狼で、私と出会うまでは常に一人で行動していました。そんな人のことを詳しく知っている筈がない。それなのに知っているということは、貴女が教えたと考えるのが自然です」
「………………」
「そして二つ目。ロードリックへ教えることができる知識を持っているということ。初代エルフ王の書記に原本があったというのは、少し勉強すれば知ることが出来ます。ですが、原本が現存するというのは聞いたことがありません」
「………………」
「そもそも初代エルフ王の書記は、初代エルフ王が崩御された時に墓所へ一緒に埋葬されました。ですが千年ほど前に盗掘されて所在不明となっています。それなのに現存するとロードリックに教えている。仮に本当に現存するとしても、現存するということは通常絶対に知り得ない」
「………………」
「なのにアルシアさんは、現存すると確信してロードリックに伝えた。それは全能の力で場所を特定していたから出来た事」
「………………」
「ただの人間には出来ないことです。更に魔力無しなのに魔法使えて、光魔法も扱える。そして女神様の伝承でしか見たことがない、そのお姿。他にそんな人間は居ない」
「…………」
「どうですか!」
ひたすら無言を貫くアルシア。
ここまで言っても何も返ってこないのか。
その顔からは何の感情も感じられない。
ただただ、鉄仮面のような無表情を晒している。
まるで暖簾に腕押しだ。
何を考えているのか分からない。
私は何だか自分が情けなく思えてきた。
何をこんなに必死になっているのか。
まるで意味がない……ただの無駄話。
何だかムズムズしてくる。
こんな意味の無いこと、早く止めればいいのにと感じる。
そんな感情が自分の顔に出ていたのか、アルシアは「ふぅ」と一つ息を吐く。
そして足を組んだ。
「九割くらいハズレ……ね」
「……ハズレ…………、そうですか……」
ハズレ……そうかハズレか。
私がその場の思いつきで言っていたことは、本当に出まかせだったらしい。
全くの見当違い。
だからアルシアは何も言葉を返さなかった、……という事か。
自分の全身から力が一気に抜けた気がした。
己の無力さをこれでもかと思い知らされる。
極めて高難易度の魔力探知を成功させ、魔力無しのアルシアから真偽を聞き出すことが出来たと思った。
けれど……全くの無駄。
私は静かに顔を伏せる。
その様子を見たアルシアは、ポツリと言葉を漏らす。
「図らずも……か」
……なに?
どういう意味?
私にはその言葉の意味を理解出来なかった。
けれどアルシアには意味が有るのだろう。
するとアルシアは、右人差し指を立てて自分の口元へそっと近付けた。
「一つだけ本当のことを教えてあげるわ」
「……え?」
本当のこと。
それは――
「私は《創造の女神ルクナ》でも無ければ、その生まれ変わりでも無い」
――嘘ではなく、本当だった。
誓盟の真理は、右へ傾いたまま動かない。
私は、アルシアが実は女神様だと思っていた。
けれど、それは間違いだった。
「そう……ですか……」
《誓盟の真理》を私は、テーブルの上にそっと置いた。
アルシアの目の前に、分かるように。
そして私はアルシアに向かい、静かに頭を下げる。
「それは……すいませんでした」
「分かってくれたなら良いわ。私が《創造の女神》や《世界の監視者》ではないと分かってくれたなら――」
『カシャン』
――自分の口角が思わず吊り上がる。
いけないと思いつつ、顔の筋肉を抑えられない。
下げた頭をゆっくりと上げる。
アルシアは、再び目を見開いている。
そして彼女は、瞳孔の絞られた瞳を机の上に置かれた物へと移していく。
――そこへ置かれた天秤は、左へと傾いている。
そう――《左》へと。
一体何に反応した?
いえ、そもそもこれは正常な動作?
皿には何も載っていない。だから物理的に傾いたわけではない。
だとしたら本当に……?
「アルシアさん……貴女の本名は?」
確認しなければ。
ついにやったのか?
私の問いかけに、アルシアは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
それはまさに――
「……アルシア」
『カシャン』
――成功した証だった。
誓盟の真理が右へと傾いた。
ついにやった。
これでアルシアさんから、本当の事を聞き出せる。
知りたいことは山のようにある。
さっき何に反応したのかは分からないが、まずは無難なことから聞いていこうか。
そう考えていると、アルシアは「はぁ」と溜息をついた。
そして部屋の真ん中にある椅子へとゆっくり座り、テーブルへと頬杖をついた。
「……まさか……ね」
そう言ったアルシアは、どこか遠くを見つめている。
観念したのだろうか。
「……諦めましたか?」
「そりゃここまでやられちゃね。もう丸裸も同然。好きにしてって感じ」
アルシアは完全に諦め顔だ。
ここに付け込むのは少々心が痛むけど、こんな機会は二度と無いかもしれない。
存分にやらせてもらおう。
「では改めて。アルシアさんの本名をフルネームで教えて下さい」
「アルシア=オーガスト・シルヴァエ」
誓盟の真理は右へ傾いたまま動かない。
嘘じゃない。
これがアルシアの本名だ。
「姓の意味はご存知ですか?」
「……オーガストが父の名前。シルヴァエは出身地」
ここでも誓盟の真理は動かない。本当だ。
「アルシアさん、聖都シルヴァエのご出身なんですね」
「そうよ」
「では、ご年齢は?」
「十六」
『カシャン』
誓盟の真理が左へと傾いた。これは嘘だ。
「……嘘ですね」
「忌々しい天秤ね……、二十歳」
「………………」
誓盟の真理は左へ傾いたまま動かない。
まだ嘘をついている。
「誓盟の真理は正常に動いているようですよ」
「二十六」
「……」
「三十」
「……」
「三十一」
「……」
「三十二」
「……」
「三十五」
「……」
「四十」
「…………」
「覚えていない」
『カシャン』
誓盟の真理が右へと傾く。
「……覚えていないんですか?」
「計算したら分かるだろうけど、もう数えていないから分からない」
「ちなみに生年月日は?」
「イリィ歴四六年ルクナの月一日」
「……イリィ歴? 聞いたことない暦ですね……」
「もう使われていないやつだから。知ってる人いないでしょ」
「神暦に直すと何年です?」
「……計算が面倒くさい」
誓盟の真理は右へ傾いたまま動かない。
本当ということか……。
まあ、アルシアの年齢はきっと些細なことでしょう。
予行演習は済んだ。
ここで核心に迫る。
「では次の質問。アルシアさんは、女神様と関係がありますか?」
「ノーコメント」
「…………ノーコメント?」
回答を拒否した?
確かに答えなければ真偽の判別をしようがない。
けれどそれは――
「それは肯定しているのと同じことですよ?」
「どう受け取ってもらおうと結構。そもそも真面目に答えてあげる義理はない」
アルシアはそう言って私へ鋭い視線を向ける。
その瞳には、頑として答えないという意志を感じる。
……どうするべきか。
私は必死に頭を回す。
何か、何か突破口はないか――
――そこで思いつく。
彼女が必死に調べていた神話。
その事について聞いてみよう。
「……では違う質問を。アルシアさんは破壊神ソルスをご存知ですね?」
「ええ」
これには答えてくれた。
誓盟の真理は右へ傾いたまま。
「――では、その破壊神ソルスがこの教会の本記載から消えた原因をご存知ですか?」
「……知るにはまだ早い」
まただ。
また隠そうとする。
「答えてください」
「まだ推測の域を出てない」
「推測で良いです」
「ノーコメント」
ここまできて意地でも答えないのか。
「ノーコメント禁止です。答えてください」
私は自分の顔をアルシアの顔の前まで突きつける。
絶対に答えさせると息巻いて。
するとアルシアは一つ息を吐くと、私のおでこを人差し指でポンと突いた。
「……それはロードリックが追っているものと関係している」
「!」
ここで……ロードリックと繋がってくる?
「それは、初代エルフ王の書記ですか?」
「……そうよ」
「世界の監視者は?」
「関係無い」
誓盟の真理は動かない。
……本当だ。
「アルシアさんはロードリックのことを知って……いえ、会ったことがあるんですか?」
「……ある」
「本当ですか! いつ!?」
「……三十年ほど前よ」
「三十年前!?」
三十年前となると、ロードリックが六歳の頃か。
その時に出会った?
けどそれって――
「アルシアさんはその時、子供だったんですか?」
「………………」
沈黙。
答えるつもりはないということか。
「沈黙は肯定とみなしますよ?」
「お好きにどうぞ」
「歳を隠す必要あります?」
「言いたくないだけ」
「何故ですか?」
「ノーコメント」
「だから禁止ですそれ!」
本当に埒が明かない。
誓盟の真理も答えてくれなければ意味がない。
ならば……答えざるを得ないようにするべきか。
「ロードリックへ初代エルフ王の書記の原本が有ることを教えたのはアルシアさんですか?」
「………………」
「そして、世界の監視者が存在する事を教えたのも」
「………………」
沈黙を続けている。
という事は、核心を突いているのは間違いない。
これから私が言うことは、出まかせも含む。
思いつくままに一気に畳み掛けよう!
「私は、実はアルシアさんこそが女神様、もしくは女神様の生まれ変わりなのでないか、と思っています」
「………………」
「だからこそ、普通では知り得ない事も知っている。だってそうでしょう。ただの一介の冒険者ならば、これほど神話やルクナ教について知っている筈がない」
「………………」
「私には分かります。アルシアさんはまだ言っていない、私の知らない真実をたくさん知っている」
「………………」
「それは何故か。理由は二つ。一つはロードリックを詳しく知っていること。あの人は一匹狼で、私と出会うまでは常に一人で行動していました。そんな人のことを詳しく知っている筈がない。それなのに知っているということは、貴女が教えたと考えるのが自然です」
「………………」
「そして二つ目。ロードリックへ教えることができる知識を持っているということ。初代エルフ王の書記に原本があったというのは、少し勉強すれば知ることが出来ます。ですが、原本が現存するというのは聞いたことがありません」
「………………」
「そもそも初代エルフ王の書記は、初代エルフ王が崩御された時に墓所へ一緒に埋葬されました。ですが千年ほど前に盗掘されて所在不明となっています。それなのに現存するとロードリックに教えている。仮に本当に現存するとしても、現存するということは通常絶対に知り得ない」
「………………」
「なのにアルシアさんは、現存すると確信してロードリックに伝えた。それは全能の力で場所を特定していたから出来た事」
「………………」
「ただの人間には出来ないことです。更に魔力無しなのに魔法使えて、光魔法も扱える。そして女神様の伝承でしか見たことがない、そのお姿。他にそんな人間は居ない」
「…………」
「どうですか!」
ひたすら無言を貫くアルシア。
ここまで言っても何も返ってこないのか。
その顔からは何の感情も感じられない。
ただただ、鉄仮面のような無表情を晒している。
まるで暖簾に腕押しだ。
何を考えているのか分からない。
私は何だか自分が情けなく思えてきた。
何をこんなに必死になっているのか。
まるで意味がない……ただの無駄話。
何だかムズムズしてくる。
こんな意味の無いこと、早く止めればいいのにと感じる。
そんな感情が自分の顔に出ていたのか、アルシアは「ふぅ」と一つ息を吐く。
そして足を組んだ。
「九割くらいハズレ……ね」
「……ハズレ…………、そうですか……」
ハズレ……そうかハズレか。
私がその場の思いつきで言っていたことは、本当に出まかせだったらしい。
全くの見当違い。
だからアルシアは何も言葉を返さなかった、……という事か。
自分の全身から力が一気に抜けた気がした。
己の無力さをこれでもかと思い知らされる。
極めて高難易度の魔力探知を成功させ、魔力無しのアルシアから真偽を聞き出すことが出来たと思った。
けれど……全くの無駄。
私は静かに顔を伏せる。
その様子を見たアルシアは、ポツリと言葉を漏らす。
「図らずも……か」
……なに?
どういう意味?
私にはその言葉の意味を理解出来なかった。
けれどアルシアには意味が有るのだろう。
するとアルシアは、右人差し指を立てて自分の口元へそっと近付けた。
「一つだけ本当のことを教えてあげるわ」
「……え?」
本当のこと。
それは――
「私は《創造の女神ルクナ》でも無ければ、その生まれ変わりでも無い」
――嘘ではなく、本当だった。
誓盟の真理は、右へ傾いたまま動かない。
私は、アルシアが実は女神様だと思っていた。
けれど、それは間違いだった。
「そう……ですか……」
《誓盟の真理》を私は、テーブルの上にそっと置いた。
アルシアの目の前に、分かるように。
そして私はアルシアに向かい、静かに頭を下げる。
「それは……すいませんでした」
「分かってくれたなら良いわ。私が《創造の女神》や《世界の監視者》ではないと分かってくれたなら――」
『カシャン』
――自分の口角が思わず吊り上がる。
いけないと思いつつ、顔の筋肉を抑えられない。
下げた頭をゆっくりと上げる。
アルシアは、再び目を見開いている。
そして彼女は、瞳孔の絞られた瞳を机の上に置かれた物へと移していく。
――そこへ置かれた天秤は、左へと傾いている。
そう――《左》へと。
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