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「連れてってやるよ、どこでも」
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『返事おそくなっちゃった。寝れたよ』
やっと慶が返事をして来たのは、既に昼を過ぎた頃だった。
俺らは、水族館の後、とにかく沖縄満喫って事でまた海に移動。
この時期でも暑くて、昼間は普通に海で遊んでられる。
平日だけど、観光客も多くてけっこう賑わってるし。
昨日は見てただけだったけど、今日は俺も海に入った。
今年の夏は、BIRTHがイベント続きで忙しくてあんまり休みも無かったから、海は行かなかった。
今年初の海が沖縄ってすんげぇ贅沢だな…。
荷物があったから、半分ずつ交代で海に入る。
慶からのLINEを見たのは、交代した時。
髪から落ちて来る水滴を手でワシャワシャと飛ばす。
寝れたよ、と本人が言ってるんだから、そう信じれば良いんだろうけど………
やっぱり、目の前で、顔を見て聞いてないから……どこか、心配になる。
もう、命日は過ぎたんだろうか……
どの日が命日かは、聞いてない。
何となく……聞けなかった。
『そうか。寝れたなら良かった。』
送信したら、意外にも直ぐに既読になった。
『休憩中?』
続けて送信する。
『うん、キリがいいとこだから休んでた』
『今、電話していい?』
文字打つより、喋った方が早い。
休憩してんなら尚更。
『いいよ』
慶からの返事を確認するや否や、皆いるこの場所から少し離れた所へ移動して電話をかけた。
『はぁい』
慶の声。
「よぉ」
何か……安心するのは何でだ。
『あんまり時間無いんだよ、まだ配んないといけないのいっぱいあるから』
「分かってる」
俺が、すげぇ電話したかった奴みたいになってんじゃん。
「眠れたか、気になってさ」
『…眠れたよ。心配しすぎだよ』
「…あぁ、悪い」
何故か…素直に謝ってしまった。
『謝んなくても良いけど』
あはは、と短く笑う。
「今日さ、でっかい水族館行って来た」
『え~、良いなぁ~~、この前行ったとこよりでっかいの?』
「デカい」
『そうなのっ?』
水族館の話をする度に「へぇ~」だの「すご~い」だの、慶の口癖が連発してる。
「また、連れて来てやるよ」
『…………』
黙った。
俺も、何気に男前な事言ったな、ってちょっと恥ずかしくなった。
『ありがと』
ちょっと照れたような声で慶が言う。
こっちも照れるわ、その言い方。
『今は何してるの?』
「海来てる」
『海も良いなぁ~』
「連れて来ようか?」
『あははっ、うん』
今度は恥ずかしくないように、茶化して言った。
『侑利くん』
「ん?」
『昨日さぁ…』
「あぁ」
『明日も電話して、って言ったじゃん』
「あぁ、言ったな」
昨日約束した。
『あれって、この電話の事?』
「え?」
『この電話だったら……時間あんまりないからヤダなって思って……』
………単純に……可愛いと思ってしまった。
俺と、長く話せた方が良い、って事だろ?
「夜も出来るよ」
『ほんと?』
明るい声。
単純だな、お前も。
「昨日ぐらいの時間、いける?」
『うん、大丈夫』
「分かった。じゃ、また電話する」
『うん。じゃあ…仕事戻る』
「お。頑張れよ」
『ありがとっ』
電話を切ったけど………
何か……すごく………
会いたくなった。
俺って、こんなだったかな…。
~~~~~~~~
夜は、ホテルの人に近くで祭り的なイベントやってるって聞いたから、全員でそこへ来た。
すんごい人が集まって来てて、沖縄を思わせる感じのBGMも流れてたりして、もう秋だけど夏の終わりのような……そんな雰囲気。
「人思ったよりすごいな」
隣に並んだ大和が言う。
「平日なのにこんな集まるんだな」
「だから平日にしてんのかもね」
「あー、そうかも」
週末だったら大変な事になるよ、きっと。
それぐらい賑やか。
「侑利さぁ、」
「ん?」
「何か悩み事でもあんの?」
唐突に聞かれて、一瞬焦った。
「何、急に」
「思い過ごしだったら良いんだけどさ、何か、旅行来てからずっと…ソワソワしてない?」
…俺って、分かりやすいのか?
大和にまで気付かれてるし…。
「…別に悩んでねぇよ」
「そ?…なら、良いんだけど。いつもより元気無い感じがしたからさ」
みんな、案外、人の事見てんだな…。
いつもより、って、そもそも俺そんな元気キャラじゃないけどさ…。
「話せる事だったら言ってよ、聞くよ?」
「…え、」
思わず、返事に困って黙ってしまった。
「まだ、今は話せない?」
……悩んでないって言ってんのに……認めてくれねぇし…。
まぁ……悩み事だらけですけど。
「…う…うん」
普通に返事してしまった。
しかも、うん、って。
悩み事ありますって言ったようなもんじゃねぇか。
「苦しくなったら話す事っ」
先生か。
「侑利はきっと、ほっといたら言わないだろ?」
……今日はやけに……巴流も大和も…大人じゃん。
「俺も巴流も天馬も、お前が思ってるより、お前の事見てるよ」
何なんだよ……テンションがおかしいぞ。
旅行がそうさせんの?
俺、モテ期が到来してんの?
「俺だって、見てるよ」
ボソッと言ったけど、大和にはしっかり届いてたみたいで、「可愛いな~、侑利はっ」とか言って、いきなりヘッドロックして来るから大和の背中をバシバシ叩いて無理矢理はずす。
「痛ぇって」
「そんな強くしてないよ~」
「急にやるから、首にくる」
可笑しそうに笑いやがって…。
俺ってこんな構われキャラだったかな……
確かに、他の3人は全員下に弟や妹が居て自分が上の立場なんだけど、俺だけ1人っ子だからか、同い年なのに弟みたいって4人で飲んだりした時はよく言われる。
でも、何だかんだ……みんなそれぞれに心配してんだな、って再確認。
仕事仲間とこんなに仲良くなれるとは思って無かったから……俺だって、この3人は特に大事にして行きたいって思ってるよ。
そんな事、簡単には言わねぇけど。
イベントでけっこう豪華な露店が沢山出てて、全員で別れて買いに行ってそれぞれ持ち寄って集合したのが約20分後。
ちょうど空いたテーブルに無理矢理座る。
一気に全員は座れないので、これも交代で。
露店とは思えない料理の数々に、全員盛り上がっちゃって、隣のテーブルのお兄さん達と仲良くなったりして、何だか面白かった。
「俺、ちょっと、その辺歩いて帰るわ」
帰り道、ホテルが視界に入って来た辺りで、俺はそう告げて1人外れた。
「変な奴に付いて行かない事」
「人の居ないとこに1人で行かない事」
「誰かに何かされそうになったら大声出して逃げる事」
お馴染みの3人に、次々に忠告されたけど……どれも、心配ないだろう…。
適当に手を振って、みんなから反れて歩く。
少し離れたところの、もう今日は終わってるバス停のベンチに腰掛ける。
携帯を取り出し、迷わず慶に電話をかけた。
RRRRR…RRRRR…RRRRR…
『はいはぁい』
…緊張感の無い声。
「俺」
『分かってる』
そりゃそうだろう。
慶の電話帳には、俺の番号しか登録していない。
「バイト、お疲れ」
『うん…疲れた~』
確かに……少し声が疲れてる感じがする。
「体調悪いの?」
『え?何で?』
「声がちょっとしんどそう」
『えぇ~、そんな事ないよ~』
相変わらず、ふんわりした口調。
「今日、飯ちゃんと食ったのか?」
『食べたよ~』
「何食ったか言ってみ?」
『え~やだよ』
「何でだよ」
『そんな事より、今日さぁ、』
いきなり話変えてさ…
もしかして、何も食ってないんじゃねえのっ?とか……思ってしまう。
慶の話は今日も、1日の出来事の報告だ。
とりとめのない話だけど……俺は、その話を聞くのは好きな方だ。
慶が何を見てどう思ったとかが知れて、何か嬉しい気がする。
お互い、そんなに詳しく知ってる訳じゃないから…。
『明後日はさぁ、』
「あー」
『何時に帰って来んの?』
「夜の8時頃に空港に着くかな」
『…そうかぁ』
あからさまにがっかりした声。
「何だよ」
『…1日ってさぁ……けっこう長いよね』
「何それ」
急に、思ってもみない事言われて、ちょっとドキリとした。
『俺には……長すぎるかな……特に侑利くんが居ない今は、退屈だよ。構って貰えないし~』
最後の方は、ふざけた感じで言ったけど………きっと、重要なのは前の方だ。
長すぎるんだ……
「慶…」
『ん?』
「命日、過ぎた?」
『…うん、昨日だった』
「そっか」
『…うん』
昨日が命日だったんだ。
慶が……一番辛い日……
昨日、普通に電話してたけど………どんな気持ちだったんだろう…
聞いてやれば良かった。
隣に居てやるって、言ったのは俺なのに……
そんな時に……1人にするなんてさ……
「ごめんな」
『何が?』
「一緒に居てやれなかった」
『それは…俺がそうしてって言ったんだ。侑利くんが謝るような事じゃないよ』
慶らしい、優しい答え。
『それに俺だって………乗り越えたいんだ……いつまでも…こんなんじゃダメだって思うから…』
……無性に顔が見たくなった。
どんな顔して、こんな事言ってるのか………
「…慶、」
『…ん?』
「帰ったらさぁ……2人でどっか行こうか」
『え…?』
「連れてってやるよ、どこでも」
『…うん』
「行きたいとこ、考えとけよ」
『……うん…』
俺は慶を……笑わせたくて仕方がない。
笑っていて欲しくて………何か…必死になってしまうんだ。
こんなに……
俺の中にすんなり入り込んで来たの……今まで出会って来た奴の中には居なかった。
いつの間にか、居るんだよ……俺の中にお前が。
「惚れた?」
『え?………ふふ、…惚れそう』
長い…沈黙を崩したくて、そんな風に言うと、少し笑って慶もそれに乗って来た。
また、明日の夜も電話する約束をして、切った。
健全な…中学生のカップルみたいじゃねぇか、って思って電話切った後、1人で少し恥ずかしくなった。
俺にも、こんな……甘酸っぱい一面があんだな、って。
絶対、あの3人には見せらんねぇわ。
~~~~~~~~
翌朝、俺が起きたのはやっぱり9時過ぎてて……昨日と同じ重みを感じて目を覚ます。
「……重…」
これ、昨日も言っただろ、俺。
やっぱり、巴流が乗っかって来てる。
でも……昨日より重い感じが……
薄目を開けると、大和も乗っかってるのが見えた。
「……うざぁ……」
流石に2人に乗られると押し返す事も出来ない。
ってか、朝から何で男2人に圧し掛かられないといけないんだよ……
もう少し、普通に目覚めたいんですけど…
「ちょっと侑利っ」
耳元で巴流に叫ばれる。
「うるせぇな……」
心底迷惑だ。
だけど、次の瞬間……
「けい、って誰?」
薄くしか開いて無かった俺の目が、一瞬にして全開になった。
「え?」
何言ってんの?
「さっき、寝言で言ってたよ。けい~、って。それも、2回も」
大和がにんまりしながら言って来る。
……マジか…
俺…………やべぇじゃん……
「侑利っ、聞いてないぞっ、誰だよ、そいつ!女?男?」
巴流にゆさゆさと揺すられる。
聞いてないぞ、って……言ってねぇし…。
「あーもう、鬱陶しいな、お前らっ」
渾身の力で2人を雑に押し退け、その勢いで立ち上がりトイレに入った。
向こうでギャーギャー言ってんのが聞こえたけど、良いや、もうほっとこう…。
それよりも……
寝言で慶を呼んでたなんてさ……
………どんだけ慶の事考えてんだ、俺。
トイレから戻ると、まだ2人から「けいって誰だ」って攻められたけど、軽く無視して携帯をチェックする。
『おはよう。今日もバイト、行ってくるね~』
既に慶からメッセージが入ってた。
頑張ってんだな、アイツ……
『今起きた。頑張れよ~』
……この、何気ない内容のやり取りも……どっちかと言うと好きだ。
俺は、けっこうマメなのかも…。
やっと慶が返事をして来たのは、既に昼を過ぎた頃だった。
俺らは、水族館の後、とにかく沖縄満喫って事でまた海に移動。
この時期でも暑くて、昼間は普通に海で遊んでられる。
平日だけど、観光客も多くてけっこう賑わってるし。
昨日は見てただけだったけど、今日は俺も海に入った。
今年の夏は、BIRTHがイベント続きで忙しくてあんまり休みも無かったから、海は行かなかった。
今年初の海が沖縄ってすんげぇ贅沢だな…。
荷物があったから、半分ずつ交代で海に入る。
慶からのLINEを見たのは、交代した時。
髪から落ちて来る水滴を手でワシャワシャと飛ばす。
寝れたよ、と本人が言ってるんだから、そう信じれば良いんだろうけど………
やっぱり、目の前で、顔を見て聞いてないから……どこか、心配になる。
もう、命日は過ぎたんだろうか……
どの日が命日かは、聞いてない。
何となく……聞けなかった。
『そうか。寝れたなら良かった。』
送信したら、意外にも直ぐに既読になった。
『休憩中?』
続けて送信する。
『うん、キリがいいとこだから休んでた』
『今、電話していい?』
文字打つより、喋った方が早い。
休憩してんなら尚更。
『いいよ』
慶からの返事を確認するや否や、皆いるこの場所から少し離れた所へ移動して電話をかけた。
『はぁい』
慶の声。
「よぉ」
何か……安心するのは何でだ。
『あんまり時間無いんだよ、まだ配んないといけないのいっぱいあるから』
「分かってる」
俺が、すげぇ電話したかった奴みたいになってんじゃん。
「眠れたか、気になってさ」
『…眠れたよ。心配しすぎだよ』
「…あぁ、悪い」
何故か…素直に謝ってしまった。
『謝んなくても良いけど』
あはは、と短く笑う。
「今日さ、でっかい水族館行って来た」
『え~、良いなぁ~~、この前行ったとこよりでっかいの?』
「デカい」
『そうなのっ?』
水族館の話をする度に「へぇ~」だの「すご~い」だの、慶の口癖が連発してる。
「また、連れて来てやるよ」
『…………』
黙った。
俺も、何気に男前な事言ったな、ってちょっと恥ずかしくなった。
『ありがと』
ちょっと照れたような声で慶が言う。
こっちも照れるわ、その言い方。
『今は何してるの?』
「海来てる」
『海も良いなぁ~』
「連れて来ようか?」
『あははっ、うん』
今度は恥ずかしくないように、茶化して言った。
『侑利くん』
「ん?」
『昨日さぁ…』
「あぁ」
『明日も電話して、って言ったじゃん』
「あぁ、言ったな」
昨日約束した。
『あれって、この電話の事?』
「え?」
『この電話だったら……時間あんまりないからヤダなって思って……』
………単純に……可愛いと思ってしまった。
俺と、長く話せた方が良い、って事だろ?
「夜も出来るよ」
『ほんと?』
明るい声。
単純だな、お前も。
「昨日ぐらいの時間、いける?」
『うん、大丈夫』
「分かった。じゃ、また電話する」
『うん。じゃあ…仕事戻る』
「お。頑張れよ」
『ありがとっ』
電話を切ったけど………
何か……すごく………
会いたくなった。
俺って、こんなだったかな…。
~~~~~~~~
夜は、ホテルの人に近くで祭り的なイベントやってるって聞いたから、全員でそこへ来た。
すんごい人が集まって来てて、沖縄を思わせる感じのBGMも流れてたりして、もう秋だけど夏の終わりのような……そんな雰囲気。
「人思ったよりすごいな」
隣に並んだ大和が言う。
「平日なのにこんな集まるんだな」
「だから平日にしてんのかもね」
「あー、そうかも」
週末だったら大変な事になるよ、きっと。
それぐらい賑やか。
「侑利さぁ、」
「ん?」
「何か悩み事でもあんの?」
唐突に聞かれて、一瞬焦った。
「何、急に」
「思い過ごしだったら良いんだけどさ、何か、旅行来てからずっと…ソワソワしてない?」
…俺って、分かりやすいのか?
大和にまで気付かれてるし…。
「…別に悩んでねぇよ」
「そ?…なら、良いんだけど。いつもより元気無い感じがしたからさ」
みんな、案外、人の事見てんだな…。
いつもより、って、そもそも俺そんな元気キャラじゃないけどさ…。
「話せる事だったら言ってよ、聞くよ?」
「…え、」
思わず、返事に困って黙ってしまった。
「まだ、今は話せない?」
……悩んでないって言ってんのに……認めてくれねぇし…。
まぁ……悩み事だらけですけど。
「…う…うん」
普通に返事してしまった。
しかも、うん、って。
悩み事ありますって言ったようなもんじゃねぇか。
「苦しくなったら話す事っ」
先生か。
「侑利はきっと、ほっといたら言わないだろ?」
……今日はやけに……巴流も大和も…大人じゃん。
「俺も巴流も天馬も、お前が思ってるより、お前の事見てるよ」
何なんだよ……テンションがおかしいぞ。
旅行がそうさせんの?
俺、モテ期が到来してんの?
「俺だって、見てるよ」
ボソッと言ったけど、大和にはしっかり届いてたみたいで、「可愛いな~、侑利はっ」とか言って、いきなりヘッドロックして来るから大和の背中をバシバシ叩いて無理矢理はずす。
「痛ぇって」
「そんな強くしてないよ~」
「急にやるから、首にくる」
可笑しそうに笑いやがって…。
俺ってこんな構われキャラだったかな……
確かに、他の3人は全員下に弟や妹が居て自分が上の立場なんだけど、俺だけ1人っ子だからか、同い年なのに弟みたいって4人で飲んだりした時はよく言われる。
でも、何だかんだ……みんなそれぞれに心配してんだな、って再確認。
仕事仲間とこんなに仲良くなれるとは思って無かったから……俺だって、この3人は特に大事にして行きたいって思ってるよ。
そんな事、簡単には言わねぇけど。
イベントでけっこう豪華な露店が沢山出てて、全員で別れて買いに行ってそれぞれ持ち寄って集合したのが約20分後。
ちょうど空いたテーブルに無理矢理座る。
一気に全員は座れないので、これも交代で。
露店とは思えない料理の数々に、全員盛り上がっちゃって、隣のテーブルのお兄さん達と仲良くなったりして、何だか面白かった。
「俺、ちょっと、その辺歩いて帰るわ」
帰り道、ホテルが視界に入って来た辺りで、俺はそう告げて1人外れた。
「変な奴に付いて行かない事」
「人の居ないとこに1人で行かない事」
「誰かに何かされそうになったら大声出して逃げる事」
お馴染みの3人に、次々に忠告されたけど……どれも、心配ないだろう…。
適当に手を振って、みんなから反れて歩く。
少し離れたところの、もう今日は終わってるバス停のベンチに腰掛ける。
携帯を取り出し、迷わず慶に電話をかけた。
RRRRR…RRRRR…RRRRR…
『はいはぁい』
…緊張感の無い声。
「俺」
『分かってる』
そりゃそうだろう。
慶の電話帳には、俺の番号しか登録していない。
「バイト、お疲れ」
『うん…疲れた~』
確かに……少し声が疲れてる感じがする。
「体調悪いの?」
『え?何で?』
「声がちょっとしんどそう」
『えぇ~、そんな事ないよ~』
相変わらず、ふんわりした口調。
「今日、飯ちゃんと食ったのか?」
『食べたよ~』
「何食ったか言ってみ?」
『え~やだよ』
「何でだよ」
『そんな事より、今日さぁ、』
いきなり話変えてさ…
もしかして、何も食ってないんじゃねえのっ?とか……思ってしまう。
慶の話は今日も、1日の出来事の報告だ。
とりとめのない話だけど……俺は、その話を聞くのは好きな方だ。
慶が何を見てどう思ったとかが知れて、何か嬉しい気がする。
お互い、そんなに詳しく知ってる訳じゃないから…。
『明後日はさぁ、』
「あー」
『何時に帰って来んの?』
「夜の8時頃に空港に着くかな」
『…そうかぁ』
あからさまにがっかりした声。
「何だよ」
『…1日ってさぁ……けっこう長いよね』
「何それ」
急に、思ってもみない事言われて、ちょっとドキリとした。
『俺には……長すぎるかな……特に侑利くんが居ない今は、退屈だよ。構って貰えないし~』
最後の方は、ふざけた感じで言ったけど………きっと、重要なのは前の方だ。
長すぎるんだ……
「慶…」
『ん?』
「命日、過ぎた?」
『…うん、昨日だった』
「そっか」
『…うん』
昨日が命日だったんだ。
慶が……一番辛い日……
昨日、普通に電話してたけど………どんな気持ちだったんだろう…
聞いてやれば良かった。
隣に居てやるって、言ったのは俺なのに……
そんな時に……1人にするなんてさ……
「ごめんな」
『何が?』
「一緒に居てやれなかった」
『それは…俺がそうしてって言ったんだ。侑利くんが謝るような事じゃないよ』
慶らしい、優しい答え。
『それに俺だって………乗り越えたいんだ……いつまでも…こんなんじゃダメだって思うから…』
……無性に顔が見たくなった。
どんな顔して、こんな事言ってるのか………
「…慶、」
『…ん?』
「帰ったらさぁ……2人でどっか行こうか」
『え…?』
「連れてってやるよ、どこでも」
『…うん』
「行きたいとこ、考えとけよ」
『……うん…』
俺は慶を……笑わせたくて仕方がない。
笑っていて欲しくて………何か…必死になってしまうんだ。
こんなに……
俺の中にすんなり入り込んで来たの……今まで出会って来た奴の中には居なかった。
いつの間にか、居るんだよ……俺の中にお前が。
「惚れた?」
『え?………ふふ、…惚れそう』
長い…沈黙を崩したくて、そんな風に言うと、少し笑って慶もそれに乗って来た。
また、明日の夜も電話する約束をして、切った。
健全な…中学生のカップルみたいじゃねぇか、って思って電話切った後、1人で少し恥ずかしくなった。
俺にも、こんな……甘酸っぱい一面があんだな、って。
絶対、あの3人には見せらんねぇわ。
~~~~~~~~
翌朝、俺が起きたのはやっぱり9時過ぎてて……昨日と同じ重みを感じて目を覚ます。
「……重…」
これ、昨日も言っただろ、俺。
やっぱり、巴流が乗っかって来てる。
でも……昨日より重い感じが……
薄目を開けると、大和も乗っかってるのが見えた。
「……うざぁ……」
流石に2人に乗られると押し返す事も出来ない。
ってか、朝から何で男2人に圧し掛かられないといけないんだよ……
もう少し、普通に目覚めたいんですけど…
「ちょっと侑利っ」
耳元で巴流に叫ばれる。
「うるせぇな……」
心底迷惑だ。
だけど、次の瞬間……
「けい、って誰?」
薄くしか開いて無かった俺の目が、一瞬にして全開になった。
「え?」
何言ってんの?
「さっき、寝言で言ってたよ。けい~、って。それも、2回も」
大和がにんまりしながら言って来る。
……マジか…
俺…………やべぇじゃん……
「侑利っ、聞いてないぞっ、誰だよ、そいつ!女?男?」
巴流にゆさゆさと揺すられる。
聞いてないぞ、って……言ってねぇし…。
「あーもう、鬱陶しいな、お前らっ」
渾身の力で2人を雑に押し退け、その勢いで立ち上がりトイレに入った。
向こうでギャーギャー言ってんのが聞こえたけど、良いや、もうほっとこう…。
それよりも……
寝言で慶を呼んでたなんてさ……
………どんだけ慶の事考えてんだ、俺。
トイレから戻ると、まだ2人から「けいって誰だ」って攻められたけど、軽く無視して携帯をチェックする。
『おはよう。今日もバイト、行ってくるね~』
既に慶からメッセージが入ってた。
頑張ってんだな、アイツ……
『今起きた。頑張れよ~』
……この、何気ない内容のやり取りも……どっちかと言うと好きだ。
俺は、けっこうマメなのかも…。
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