laugh~笑っていて欲しいんだ、ずっと~

seaco

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「好きでどうしようもない」

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捕まらない程度にスピードを出して帰って来た。

車からエントランスまでも何なら走ったし、エレベーターのボタンなんか連打だし。


とにかく、1秒でも早く家に帰りたい。


もう、時間はとっくに日を跨いでて………携帯の画面には「12月12日」と表示されている。







「おかえりっ」

そんな気はちょっとしてたけど、本当にそこに居たからちょっと焦った。
俺が玄関のドアを開けるなり、中から腕を掴まれて引っ張り込まれる。

ドアが閉まるより先に、慶が俺に飛び付いて来て思いっきり抱き付かれた事でちょっとヨロけそうになるのを、足を踏ん張って堪える。

「ただいま」

やっと、返事。

「もう12日だよ」
「そうだな」

そのまま体を反転させ、慶を壁に押し付けて一先ずキスをした。
慶もそれを待ってる。

「鍵開ける音したから、急いでここまで来た」

慶の華奢な首筋にキスをすると、緩く目を閉じる。

「慶、おめでとう」

耳元で言うと、すぐに視線を合わせて来た慶が俺の唇をそっと塞ぐ。

「…こんなとこで言っても…ムードもなんもねぇな」
「んふふ」

間接照明だけの薄暗い玄関って事に、2人してちょっと笑う。

ま、とりあえず「おめでとう」と言いたかったから、まぁ良いや。
また後で言ってやる。







先に風呂に入って、今上がったとこ。
リビングに戻ると、テーブルにはケーキ用の皿とフォークが用意されてる。


昼に慶と一緒にあのケーキ屋に引き取りに行った。

応対してくれたのが、この前慶の告白と同時にケーキを運んで来た店員で、俺と店員の間で微妙に恥ずかしい空気が流れてたけど……当の慶は、ショーケースの前のテーブルに並べられてる数あるマドレーヌに夢中で全くこっちの空気感には気付かず…ただ俺だけが恥ずかしい思いをして終わった。

ま、良いけどさ……。

帰る途中で慶が給料を下ろすと言うのでATMに寄ったけど、初の自分の口座を持った慶がATMの操作に戸惑わない訳が無く……

俺も一緒に入って行って、この、原始人のような奴に操作を教えてやった。

初めての給料は、10万弱。
頭から行った訳じゃ無いから、17~8日くらいの出勤かな。
……にしてはまぁまぁじゃん。

「緊張する~」と言いながら、慶は7万円を下ろした。
そんなに下ろすの?って思ってたら、車に戻るなり俺に5万円を差し出した。

「え?」
「これは侑利くんに」
「何」
「生活費は俺が額決めて良いって言ってたでしょ?……足りないかも知れないけど…2万円。それから、1万円は自転車の半分、もう1万円はダウンの分、最後の1万円は携帯ケースと残りはう~んと、色々」

………ちゃんとしすぎだよ、マジで。
携帯ケースとか忘れてたし……何なら自転車だってもうちょっと前の事で忘れかけてたわ…。
色々、の部分もよく分かんねぇし。

「こんなの貰いすぎだって」
「そんな事ないよ、約束じゃん」
「まぁ…約束だけどさ…」
「ね、だから良いの。これ受け取って貰わないと俺も困るから」

ちゃんとしてる慶が、引く訳ないって分かってるけどさ…。

「はいっ」

そう言って、無理矢理俺の手に5枚揃えて置いて来た。

「ねっ」

ねっ、て何だよ。

お前から金取るとか、やっぱ俺何か俺無理なんですけど…。
……でも、これ、受け取らないと進まねぇな、きっと。

「…じゃあ…まぁ…貰うわ」
「うん」

慶は笑顔で頷く。

「次から、生活費だって2万も要らねぇよ?お前が1人増えたからってそんなに食費だってかかってねぇし、そもそも、貰わなくても俺の生活変わんねぇからね?」

これは本当の話だ。
決して強がりでもカッコつけた訳でもない。

「…でも……やっぱり払いたい。俺、侑利くんにはほんとに感謝してるから」

ちょっとしょんぼりしてるしさ。

「あ、じゃあ、こういうのはどう?2万のうち1万はお前からの生活費って事にして、もう1万はおいといてさ、俺もそん時1万出すからさ、それ貯めてまた旅行行ったりすんのはダメ?」

今回の旅行は俺が出す事にしてる。
これは、俺が連れて行ってやるって言った旅行だから。

想像通り、慶も出すって言って来たけど、この上旅行代まで出してたらお前給料無くなんぞっ。

正直、俺は金銭的にはほんとに困ってない。
何なら、ちゃんと貯金だってしてる……って言うか、そんなに毎月使わねぇよ。

「…また旅行行ける?」
「行けるよ、毎月2人で1万ずつのけてったら直ぐだ」

途端に今度は嬉しそうな表情。
単純な奴で良かったわ…。

「じゃあ…良いよ」

成立。
これなら、何か俺も気分的にまだ楽だしさ。
旅行資金貯まるのも良いじゃん。






俺が風呂から上がるのを待ってたであろう慶が、嬉しそうにこっちを振り返る。

「ケーキ食べようよ~」
「あぁ、何飲む?」
「ん、っと、カフェオレ~」

だろうと思ったわ。

ふと見ると、ソファの前に有名店の紙袋が置いてある。

「それ何」
「ん?」

俺が視線で指した方を見た慶が、ちょっとだけ困ったような顔をした。

「あ…これ、誕生日のプレゼントだって」
「え、誰から」
「…工藤さん」

……………はぁ?
何だよ、あいつ。

「ケガのお詫びって言ってた」

お詫びで慶の事送って来たんだろ?
まだお詫びすんのかよ。

「何、中身」
「コーヒーとクッキー」

………複雑だな、おい。

12日が誕生日なのに、慶が休みだからか11日にプレゼントを渡して来たって事?
……わざわざ?

……何か……俺の中のセンサーが発動してんだけど。


あいつ……お前の事、好きなんじゃねぇの?


「だけど今は、侑利くんが作ってくれたカフェオレが良いなぁ~」


……警戒心ねぇな、お前…。

あいつ、多分……狙ってんぞ、お前の事。
完全に勘だけど、俺はそう思う。

「そりゃ作るけどさ…」
「ケーキ食べるから、甘さ控えめで~」

いやいや、呑気だな…。

俺が考えすぎてんの?

……俺の存在を知ってる上でプレゼントして来るって、だいぶマジなやつじゃねぇの?


まぁ……今からは慶と気まずくなりたくねぇから……この、俺のモヤモヤは仕舞っとくけど……

次の出勤前には一言忠告させてくれ。







「消すぞ」
「うんっ」

ケーキに数字の2と1が付いたロウソクを立てて火を着けた。
リビングの電気を消すと、ロウソクのオレンジにその辺りが包まれて、誕生日らしい雰囲気。

「わぁ~い」

素直に喜んでる。

「侑利くん、歌ってよ~」
「え、ヤダよ」
「え~~っ!!」

ハッピーバースデートゥーユーだろ?

いやいや、それは無理だって。
俺、そんな歌上手くねぇし。

「歌が無いと消すタイミング分かんないじゃんっ」
「何でっ、せーので消せよ」
「え~~っっ!!」
「ちょっと、お前っ、早く消せって、ケーキにロウが垂れるわ」
「えっ、ちょっと待って、じゃあ消すよっ?」
「消せ消せ」

フゥッ…と慶が勢いよくロウソクを吹き消した。
真っ暗だ。

「暗っ」
「電気点けて~」
「ちょ、待って、リモコン…」
「何、どこに置いたの~」
「この辺に、痛っ」
「侑利くん、何やってん、ぅわーっ、いった」
「おい、お前こそ何、いってぇわっ」
「あっははは、何やってんのぉ~、早く電気~~っ」

真っ暗すぎてハプニング続出だよ。

「あった」

偶然手に触れたリモコンらしきもののボタンを押す。

「点いた~」

急に部屋が明るくなり、ちょっと眩しい。
ふと見ると、慶は何故か床に座ってて、俺は机の角にぶつけて手の甲が赤くなってるし……

「お前何してんの」
「落ちた」
「何でだよっ」
「分かんない、どうなったか謎」
「あはは、おもしれぇ」

何しようとしててあんな短時間で椅子から落ちんだよ…。

「手付こうと思ったら椅子が無かった」
「…アホか」

思わず呟いた。

「あははっ、面白いね、ほんと」

自分でウケながら、椅子に座り直してる。

「侑利くんもそこ、どしたの?」
「どっかにぶつけた」
「あはは、もう、真っ暗でやったらダメだね」
「そうだな」

2人でしばらく笑ってた。
ロマンティックのかけらも無かったな…。

「おめでとうな、慶」

思い出したように言った。

「うん、ありがとう」

それでも嬉しそうな顔で応えてくれる。

「何か、お前バカだし天然でふわふわしててほっとけねぇけど、お前と居たら俺無性に楽しいわ」
「褒めたの?」
「褒めた褒めた」
「バカって言ったけど」
「誉め言葉だって」
「……そうなの?」

すげぇ腑に落ちない顔してるけどな。

「慶、ちょっとこっち来な」

素直にこちらへやって来て、俺の座ってる上に向かい合わせに座って来た。

「お前と出会ってから、俺、暇だなぁとか思った事ねんだ。とにかくお前の事ばっか考えててさ、すんげぇ忙しいの」

慶が俺の肩口に顔を埋めて抱き付いて来る。

「俺…お前の事、大事にするわ」
「…今だって大事にしてくれてるじゃん」

肩口で慶が呟く。

「今よりももっと。そうしたい」
「……も~…」
「何だよ」
「…泣きたくないのに~」

泣いてんだな。
そんな気がしたけどさ。

「俺のそばでずっと居てよ。お前が居ねぇと、俺が死ぬわ」
「…それはヤダ」
「じゃあ、居てくれる?」
「…うん」

慶の体を抱きしめる。

「俺、けっこう重いけど」
「……良いよ」
「束縛すんぞ」
「…うん」
「嫉妬とかすげぇし」
「…うん、良い」
「ハマりまくってるし」
「…知ってる」
「抜け出せねぇし」
「…うん」
「抜け出す気ねぇけど」
「……ふふ、」
「もう浸かりっ放しで良いけど」
「……うん、どうぞ」
「俺にはお前が必要だよ」
「………うん」
「これから先、ずっと」
「…………ありがと」
「好きでどうしようもない」
「…侑利くん…」

肩口で聞いてた慶が顔を上げて俺と視線を合わせる。
その顔はもう、涙が幾筋も流れてて…。


「…好きになってくれてありがとう。…俺、侑利くんしか見えないよ…」


何度となく言われた言葉だけど……慶が生まれた今日聞くと、何か余計に感動する。


その後はどちらからともなくキスを始め、しばらくソレに没頭した。
きっとケーキの事忘れてんだろうな……。


まぁ、でも良いか。
俺にとってはケーキより、お前に興味あるからさ…。


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