47 / 74
「俺の心が狭い訳じゃねぇよな?」
しおりを挟む
*工藤side*
「ぁ、」
ちょっと……心拍数が上がった。
忘年会出欠の羽柴くんの欄にマルが付いている…。
来るんだ……。
無性に嬉しい俺が確かに居る。
はぁ、この2日間、何かちょっと虚しかったな…。
羽柴くんはきっと、彼と幸せな誕生日を過ごしたんだろうからさ…。
1時間くらい前、仕事してる羽柴くんを事務所からチラッと見た。
連休明けに見る羽柴くんは、やっぱり自分の頭の中に居る羽柴くんよりも数段キレイで……改めて、ドキドキさせられる。
「これ、貰ってくね」
羽柴くんの後ろに溜まってる完成品を回収に行く。
「あ、はい、お願いします」
いつもの、キレイで可愛い笑顔だ。
「忘年会、出られるみたいだね」
「はい」
にっこり笑う。
あぁ、可愛い。
彼の承諾が下りたんだ…。
正直、無理かと思ってた。
羽柴くんが出席すると分かってからの俺は……思いっきりテンション上がってる。
あまり、喜びを外に出さないようにはしてるけど…。
「あの、」
「へっ、」
ちょっと変な声が出た。
「プレゼント、ありがとうございました」
「あー、いやいや、あんなもんでゴメンね」
「いえっ、俺カフェオレ毎日飲みますから」
…可愛いなぁ……ほんとに見惚れるよ…。
「…大丈夫だった?…彼」
羽柴くんに近付いて、周りに聞こえないように小声で聞く。
「え?」
「…いや…他の男からプレゼントなんてさ……気を悪くしたかなぁと思って」
羽柴くんは少し恥ずかしそうな表情をしたけど、すぐに笑顔に戻って「大丈夫ですよ」と言った。
でも…なんとも思わなかったのか、気を悪くしたけど大丈夫だったのか、そこは分からない。
仮に、彼がものすごく怒って大喧嘩をしたとしても、羽柴くんは「大丈夫ですよ」と言うだろう………そういう子だ。
「忘年会、楽しみだね」
「俺、忘年会初めてです」
「え、そうなの?」
「はい。今までは、そういうの無かったし…」
初めての忘年会かよ~。
何か……ほんと擦れて無いんだよなぁ…。
「羽柴くん、お酒あんまり飲めないんだったよね?」
「…はい…あんまり飲めません…」
「あはは、そう見えるよ」
「……ガキですから」
思わず笑って言ったら業とらしくムッとした口調で言うけど、可愛さしかないからね、それ。
でも、そんな表情もしてくれるなんて、だいぶ心を開いてくれたのかな、なんて、俺はまた嬉しくなるんだよ。
2日会ってないだけなのに、何だか美人度が増した気がするのは……誕生日に彼と過ごしたからかも、とか考えると……なんとも惨めな気分になるけど……
だからこそ、忘年会くらい……羽柴くんと過ごさせてくれたって良いだろう…。
……って、俺、やっぱり相当危ない奴だな…。
恋人が居る人に、本気でこんな事思うなんてさ…。
*侑利side*
休憩中に見たLINEに、忘年会出席にマルしたって入ってた。
そりゃ、さぞかしアイツが喜んでんだろうな……。
俺の推測でしかねぇけど…多分、当たってる。
「侑利~、ちょお、ここ開けて~」
天馬の声がして休憩室のドアを開けると、唐揚げ定食的なメニューを2セットを運んで来た。
「おー、サンキュ」
1つを受け取る。
今日の晩飯だ。
「健吾が勝手にこれにした」
「めっちゃ腹減ってるから、良いわ、これで」
休憩室は和室。
寝ようがどうしようが自由。
真ん中のテーブルに2人向かい合わせで座った。
テレビは適当にザッピングしてBGM代わりに流してる。
「旅行の後の仕事はどう」
「あー…体がついて行かねぇな」
「はは、2日なのに?」
「やー、疲れたし」
「温泉入って疲れんなよ、……あ、…はは~ん」
「何だよ」
「……侑利のエッチ」
否定はしねぇ。
確かに、俺はエッチな部類に入るだろう。
性欲の塊だわ、多分。
「うまぁ…」
天馬の発言を思いっきり無視して呟いた。
健吾の唐揚げは今日も美味い。
今度、また、味付けのバリエーション聞こう……。
「奏太が温泉温泉って聞かねぇの」
「ははっ、影響受けまくりじゃん」
「近かった?」
「割と。2時間かかんなかったし」
「そうなの?…じゃあ、また行くわ」
「あ~、行った方が良い」
「何で」
「旅館の浴衣がすげぇポイント高い」
「そこかよ」
「や、破壊力が」
「すげぇの?」
「半端ねぇ」
「マジか」
エロに目覚めた中学生の会話みてぇだけど……男なんだから仕方無い。
「侑利、デレてんぞ」
「……すみませんね」
俺らは今、よくある言葉で言うなら「ラブラブ」だ。
いや、「超ラブラブ」の方が良いな。
デレデレしたって良いじゃねぇか。
「まぁ、そうなるわな」
「何が」
「や、浴衣で慶ちゃんにウロつかれたら、侑利がどうなるか容易に想像できるわ」
「……」
「合ってんでしょ?俺の想像通りで」
「…あー…多分合ってんな」
「ははっ」
奏太が行きたがってんなら、天馬にも是非温泉旅行を勧めたい。
浴衣と部屋に露天ついてたら尚良いぞ。
「慶の誕生日だったからさぁ…何かちょっと違った」
「あー、気持ちが?」
「そう」
慶の笑ってる顔が沢山見れたしさ。
「侑利がこんなんなるとはなぁ…マジで予想外」
「何だよ、こんなん、って」
「や、慶ちゃんと付き合ってから完全に腑抜けじゃん、あははっ」
腑抜けって……まぁ、確かに俺もビビってるわ。
一体どこまで好きになんだ、って思ってる。
今日がマックスで好きだと思っても、不思議な事に明日にはそれが更新されんだ。
「マジで自分に引く時ある」
「例えばどんな?」
「嫉妬深さ、独占欲、性欲。この3つ」
「あっはははは、面白れぇ」
いやいや、笑わそうとしてる訳じゃねぇんだよ。
簡潔に答えたのがハマったのか、天馬はしばらく笑ってた。
「あぁ、そう言えばさ、」
「ん?」
唐揚げ定食を半分ほど食べた所で、ふと頭に過った。
「俺の推測でしかねぇけど…」
「うん」
「前に、慶が職場でケガしたじゃん」
「あー、巻き添え食らったやつね」
「そうそう。その慶が居るとこのリーダー」
「うん、」
「…多分、慶の事狙ってる」
「ブッ、」
天馬が飲んでた水を吹きそうになって堪えた。
めっちゃ咽てる。
「大丈夫か?」
「ゴホッ、あぁ、ちょっと、ビックリしたわ」
前触れなく言ったからな。
「え、前に、そこまで送って来てたって人?」
「そう」
「え、マジで?何でそう思うんだよ」
「何か、休憩時間合わせて来てるらしいし、いつも慶にだけ飲み物奢るらしいし、この前は慶が旅行で連休取ってたら、誕生日のプレゼントだっつって、前日にわざわざ渡して来てさ、」
「え、それ、狙ってんな、確かに」
やっぱり、そう思うだろ?
「プレゼントって何だったの」
「あー、それは普通。コーヒーとクッキーのセット」
ふ~ん、とか、はぁ~、とか言いながら、天馬が聞いてる。
「今度、会社の忘年会あんだって」
「え、慶ちゃん行くの?」
「慶も含めた新人の歓迎会も兼てるらしくてさ、出て良いか聞かれたけど…歓迎会兼てるって言われたら、何か止めろって言えなくてさ……今日、参加のとこにマルつけたってさっきLINE入ってた」
彼氏としては、行って欲しくねぇけどな。
「…で、落ち着かない訳だな」
「そ」
しばし沈黙で唐揚げ定食を食べる。
「んあーっ、やっぱちょっと嫌だわ、俺も」
静かに食ってると思ったら考えてたんだな…
「俺がお前の立場でも、やっぱ嫌だな、それ」
「だろ?」
「知らねぇ奴だしね」
「それ」
「どんな奴か分かんねぇし」
「そう」
「狙ってる奴が居るって分かってる忘年会に行かれると、何も手につかねぇな」
「な」
どれも同じ意見だよ。
「俺の心が狭い訳じゃねぇよな?」
天馬に聞いてみた。
負け組の同志だから。
「や、全くもって普通の感情だよ」
「お前ならそう言ってくれると思ってたわ」
「普通はそう思うだろ」
「…だからさ、とりあえず送迎する事にした」
「出た出た、独占欲」
楽しそうだな、お前…。
俺が悩んでんのが物珍しいんだろ、きっと。
定食の最後の一口をかき込む。
「これは普通の感情じゃねぇの?」
「……ま、普通だな」
「ほら見ろ」
天馬の頭を小突いてやる。
「侑利~、お客さんが呼んでる~」
巴流が呼びに来た。
「誰だろ、ちょっと行って来るわ」
「おー」
天馬がひらりと手を振る。
俺を呼ぶような客って誰だ。
フロアに出てみると、巴流に示された先に男が立ってた。
目が合うと、少し離れた位置から軽くこちらへお辞儀をする。
……知らねぇけど……とりあえず、行ってみるか。
俺は、その男の方へ歩いた。
大学生……くらいかな。
爽やか、って感じの。
でも、全く知らねぇ奴だけど……。
「あの、」
先に声を発したのは相手。
「俺、新堂翔真って言います。ここに、よく来てる小田切光の友達です」
はぁ、なるほど、光の友達ね。
「あぁ、光くんの」
俺がそう言うと、一瞬、ソイツが警戒した感じの表情を浮かべた。
しかし、光の友達が俺に何の用だよ。
「光の事、遊びですか」
唐突にソイツはそう言った。
「…え、?」
俺にしてみたら、全くのハテナだ。
遊びですか、って言われても……
「付き合ってる人が居るんですよね?…だったら、中途半端に光に優しくしないで下さい」
新堂翔真は俺を見据えてそう言った。
何か……どこかで情報が歪んでる感じだな、これは。
「あいつが泣いてるの、何度も見ました」
え…。
「あいつがあんたを好きだって知ってんでしょ?」
それは……知ってるけど…。
「もし、遊んでんだったら、俺、黙ってられませんから」
何がどうなったんだよ…。
翔真はずっと、俺を凝視。
「次あいつがあんたの事で泣いてたら……俺、あんたをぶっ飛ばしに来ますから」
「あのさぁ、」
遮るように声を発した俺を、翔真が睨む。
「俺は光くんに対して、特別に優しくしてるつもりはないけど。…それに、遊んでるつもりもねぇよ」
俺は遊んでるほど暇じゃねぇ。
「…だけど、光は泣いてんだ」
……そう言われても……困るんだけど…。
「…俺に、どうしろっての?」
お前の望みは何なんだよ。
確かに、光は俺を好きだと言ったけど……それは、俺が口説いた訳でも、そう言わせた訳でもない。
泣く事も…あるのかも知れねぇけど……
俺がそれ聞いて、どうすりゃ良いんだよ。
「光を泣かすな。…それだけ」
きっとコイツは光の事が好きで、感情のままにここに来たんだろう。
言いたい事もまとまってないけど……とにかく、光が泣かないようにしたくて必死なんだ。
好きな奴の泣いてる顔見たくないのは、俺も同じだけどさ。
翔真は見据えていた視線をフッと反らした。
「今日来たのは、俺が勝手にやった事だから。光には関係ないから」
それだけ言うと、翔真はそのまま去って行った。
何か、一歩的に言われた感がすげぇけど……。
光が泣いてる理由になってしまってるのは、きっと事実だろう…。
そう思うと…何も言えなかった。
「ぁ、」
ちょっと……心拍数が上がった。
忘年会出欠の羽柴くんの欄にマルが付いている…。
来るんだ……。
無性に嬉しい俺が確かに居る。
はぁ、この2日間、何かちょっと虚しかったな…。
羽柴くんはきっと、彼と幸せな誕生日を過ごしたんだろうからさ…。
1時間くらい前、仕事してる羽柴くんを事務所からチラッと見た。
連休明けに見る羽柴くんは、やっぱり自分の頭の中に居る羽柴くんよりも数段キレイで……改めて、ドキドキさせられる。
「これ、貰ってくね」
羽柴くんの後ろに溜まってる完成品を回収に行く。
「あ、はい、お願いします」
いつもの、キレイで可愛い笑顔だ。
「忘年会、出られるみたいだね」
「はい」
にっこり笑う。
あぁ、可愛い。
彼の承諾が下りたんだ…。
正直、無理かと思ってた。
羽柴くんが出席すると分かってからの俺は……思いっきりテンション上がってる。
あまり、喜びを外に出さないようにはしてるけど…。
「あの、」
「へっ、」
ちょっと変な声が出た。
「プレゼント、ありがとうございました」
「あー、いやいや、あんなもんでゴメンね」
「いえっ、俺カフェオレ毎日飲みますから」
…可愛いなぁ……ほんとに見惚れるよ…。
「…大丈夫だった?…彼」
羽柴くんに近付いて、周りに聞こえないように小声で聞く。
「え?」
「…いや…他の男からプレゼントなんてさ……気を悪くしたかなぁと思って」
羽柴くんは少し恥ずかしそうな表情をしたけど、すぐに笑顔に戻って「大丈夫ですよ」と言った。
でも…なんとも思わなかったのか、気を悪くしたけど大丈夫だったのか、そこは分からない。
仮に、彼がものすごく怒って大喧嘩をしたとしても、羽柴くんは「大丈夫ですよ」と言うだろう………そういう子だ。
「忘年会、楽しみだね」
「俺、忘年会初めてです」
「え、そうなの?」
「はい。今までは、そういうの無かったし…」
初めての忘年会かよ~。
何か……ほんと擦れて無いんだよなぁ…。
「羽柴くん、お酒あんまり飲めないんだったよね?」
「…はい…あんまり飲めません…」
「あはは、そう見えるよ」
「……ガキですから」
思わず笑って言ったら業とらしくムッとした口調で言うけど、可愛さしかないからね、それ。
でも、そんな表情もしてくれるなんて、だいぶ心を開いてくれたのかな、なんて、俺はまた嬉しくなるんだよ。
2日会ってないだけなのに、何だか美人度が増した気がするのは……誕生日に彼と過ごしたからかも、とか考えると……なんとも惨めな気分になるけど……
だからこそ、忘年会くらい……羽柴くんと過ごさせてくれたって良いだろう…。
……って、俺、やっぱり相当危ない奴だな…。
恋人が居る人に、本気でこんな事思うなんてさ…。
*侑利side*
休憩中に見たLINEに、忘年会出席にマルしたって入ってた。
そりゃ、さぞかしアイツが喜んでんだろうな……。
俺の推測でしかねぇけど…多分、当たってる。
「侑利~、ちょお、ここ開けて~」
天馬の声がして休憩室のドアを開けると、唐揚げ定食的なメニューを2セットを運んで来た。
「おー、サンキュ」
1つを受け取る。
今日の晩飯だ。
「健吾が勝手にこれにした」
「めっちゃ腹減ってるから、良いわ、これで」
休憩室は和室。
寝ようがどうしようが自由。
真ん中のテーブルに2人向かい合わせで座った。
テレビは適当にザッピングしてBGM代わりに流してる。
「旅行の後の仕事はどう」
「あー…体がついて行かねぇな」
「はは、2日なのに?」
「やー、疲れたし」
「温泉入って疲れんなよ、……あ、…はは~ん」
「何だよ」
「……侑利のエッチ」
否定はしねぇ。
確かに、俺はエッチな部類に入るだろう。
性欲の塊だわ、多分。
「うまぁ…」
天馬の発言を思いっきり無視して呟いた。
健吾の唐揚げは今日も美味い。
今度、また、味付けのバリエーション聞こう……。
「奏太が温泉温泉って聞かねぇの」
「ははっ、影響受けまくりじゃん」
「近かった?」
「割と。2時間かかんなかったし」
「そうなの?…じゃあ、また行くわ」
「あ~、行った方が良い」
「何で」
「旅館の浴衣がすげぇポイント高い」
「そこかよ」
「や、破壊力が」
「すげぇの?」
「半端ねぇ」
「マジか」
エロに目覚めた中学生の会話みてぇだけど……男なんだから仕方無い。
「侑利、デレてんぞ」
「……すみませんね」
俺らは今、よくある言葉で言うなら「ラブラブ」だ。
いや、「超ラブラブ」の方が良いな。
デレデレしたって良いじゃねぇか。
「まぁ、そうなるわな」
「何が」
「や、浴衣で慶ちゃんにウロつかれたら、侑利がどうなるか容易に想像できるわ」
「……」
「合ってんでしょ?俺の想像通りで」
「…あー…多分合ってんな」
「ははっ」
奏太が行きたがってんなら、天馬にも是非温泉旅行を勧めたい。
浴衣と部屋に露天ついてたら尚良いぞ。
「慶の誕生日だったからさぁ…何かちょっと違った」
「あー、気持ちが?」
「そう」
慶の笑ってる顔が沢山見れたしさ。
「侑利がこんなんなるとはなぁ…マジで予想外」
「何だよ、こんなん、って」
「や、慶ちゃんと付き合ってから完全に腑抜けじゃん、あははっ」
腑抜けって……まぁ、確かに俺もビビってるわ。
一体どこまで好きになんだ、って思ってる。
今日がマックスで好きだと思っても、不思議な事に明日にはそれが更新されんだ。
「マジで自分に引く時ある」
「例えばどんな?」
「嫉妬深さ、独占欲、性欲。この3つ」
「あっはははは、面白れぇ」
いやいや、笑わそうとしてる訳じゃねぇんだよ。
簡潔に答えたのがハマったのか、天馬はしばらく笑ってた。
「あぁ、そう言えばさ、」
「ん?」
唐揚げ定食を半分ほど食べた所で、ふと頭に過った。
「俺の推測でしかねぇけど…」
「うん」
「前に、慶が職場でケガしたじゃん」
「あー、巻き添え食らったやつね」
「そうそう。その慶が居るとこのリーダー」
「うん、」
「…多分、慶の事狙ってる」
「ブッ、」
天馬が飲んでた水を吹きそうになって堪えた。
めっちゃ咽てる。
「大丈夫か?」
「ゴホッ、あぁ、ちょっと、ビックリしたわ」
前触れなく言ったからな。
「え、前に、そこまで送って来てたって人?」
「そう」
「え、マジで?何でそう思うんだよ」
「何か、休憩時間合わせて来てるらしいし、いつも慶にだけ飲み物奢るらしいし、この前は慶が旅行で連休取ってたら、誕生日のプレゼントだっつって、前日にわざわざ渡して来てさ、」
「え、それ、狙ってんな、確かに」
やっぱり、そう思うだろ?
「プレゼントって何だったの」
「あー、それは普通。コーヒーとクッキーのセット」
ふ~ん、とか、はぁ~、とか言いながら、天馬が聞いてる。
「今度、会社の忘年会あんだって」
「え、慶ちゃん行くの?」
「慶も含めた新人の歓迎会も兼てるらしくてさ、出て良いか聞かれたけど…歓迎会兼てるって言われたら、何か止めろって言えなくてさ……今日、参加のとこにマルつけたってさっきLINE入ってた」
彼氏としては、行って欲しくねぇけどな。
「…で、落ち着かない訳だな」
「そ」
しばし沈黙で唐揚げ定食を食べる。
「んあーっ、やっぱちょっと嫌だわ、俺も」
静かに食ってると思ったら考えてたんだな…
「俺がお前の立場でも、やっぱ嫌だな、それ」
「だろ?」
「知らねぇ奴だしね」
「それ」
「どんな奴か分かんねぇし」
「そう」
「狙ってる奴が居るって分かってる忘年会に行かれると、何も手につかねぇな」
「な」
どれも同じ意見だよ。
「俺の心が狭い訳じゃねぇよな?」
天馬に聞いてみた。
負け組の同志だから。
「や、全くもって普通の感情だよ」
「お前ならそう言ってくれると思ってたわ」
「普通はそう思うだろ」
「…だからさ、とりあえず送迎する事にした」
「出た出た、独占欲」
楽しそうだな、お前…。
俺が悩んでんのが物珍しいんだろ、きっと。
定食の最後の一口をかき込む。
「これは普通の感情じゃねぇの?」
「……ま、普通だな」
「ほら見ろ」
天馬の頭を小突いてやる。
「侑利~、お客さんが呼んでる~」
巴流が呼びに来た。
「誰だろ、ちょっと行って来るわ」
「おー」
天馬がひらりと手を振る。
俺を呼ぶような客って誰だ。
フロアに出てみると、巴流に示された先に男が立ってた。
目が合うと、少し離れた位置から軽くこちらへお辞儀をする。
……知らねぇけど……とりあえず、行ってみるか。
俺は、その男の方へ歩いた。
大学生……くらいかな。
爽やか、って感じの。
でも、全く知らねぇ奴だけど……。
「あの、」
先に声を発したのは相手。
「俺、新堂翔真って言います。ここに、よく来てる小田切光の友達です」
はぁ、なるほど、光の友達ね。
「あぁ、光くんの」
俺がそう言うと、一瞬、ソイツが警戒した感じの表情を浮かべた。
しかし、光の友達が俺に何の用だよ。
「光の事、遊びですか」
唐突にソイツはそう言った。
「…え、?」
俺にしてみたら、全くのハテナだ。
遊びですか、って言われても……
「付き合ってる人が居るんですよね?…だったら、中途半端に光に優しくしないで下さい」
新堂翔真は俺を見据えてそう言った。
何か……どこかで情報が歪んでる感じだな、これは。
「あいつが泣いてるの、何度も見ました」
え…。
「あいつがあんたを好きだって知ってんでしょ?」
それは……知ってるけど…。
「もし、遊んでんだったら、俺、黙ってられませんから」
何がどうなったんだよ…。
翔真はずっと、俺を凝視。
「次あいつがあんたの事で泣いてたら……俺、あんたをぶっ飛ばしに来ますから」
「あのさぁ、」
遮るように声を発した俺を、翔真が睨む。
「俺は光くんに対して、特別に優しくしてるつもりはないけど。…それに、遊んでるつもりもねぇよ」
俺は遊んでるほど暇じゃねぇ。
「…だけど、光は泣いてんだ」
……そう言われても……困るんだけど…。
「…俺に、どうしろっての?」
お前の望みは何なんだよ。
確かに、光は俺を好きだと言ったけど……それは、俺が口説いた訳でも、そう言わせた訳でもない。
泣く事も…あるのかも知れねぇけど……
俺がそれ聞いて、どうすりゃ良いんだよ。
「光を泣かすな。…それだけ」
きっとコイツは光の事が好きで、感情のままにここに来たんだろう。
言いたい事もまとまってないけど……とにかく、光が泣かないようにしたくて必死なんだ。
好きな奴の泣いてる顔見たくないのは、俺も同じだけどさ。
翔真は見据えていた視線をフッと反らした。
「今日来たのは、俺が勝手にやった事だから。光には関係ないから」
それだけ言うと、翔真はそのまま去って行った。
何か、一歩的に言われた感がすげぇけど……。
光が泣いてる理由になってしまってるのは、きっと事実だろう…。
そう思うと…何も言えなかった。
1
あなたにおすすめの小説
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
三ヶ月だけの恋人
perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。
殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。
しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。
罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。
それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
不器用に惹かれる
タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。
といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。
それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。
怖い。それでも友達が欲しい……。
どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。
文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。
一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。
それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。
にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。
そうして夜宮を知れば知るほどーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる