laugh~笑っていて欲しいんだ、ずっと~

seaco

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「何か、俺、失恋した気分です、あはは」

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*侑利side*

玄関前に着いたのは、2時15分過ぎ。
平日はいつも1時15分頃には帰宅出来る。

今日は、約1時間遅れの帰宅。

週末は閉店自体が遅いから帰ったら慶はもう寝てるんだけど、平日は起きて待ってる事が多い。

ただ、今日はもうだいぶ遅いからさすがに寝てんだろうな、と推測しながらあまり音を立てないように静かに鍵を回す。

ガチャン、という無機質な音がやたら大きく響く。
静かにドアを開けた………けど………


「……は?」


思わず漏らした。

ドアガードがかかってる。


ちょっと……プチパニックなんですけど…俺。


入れねぇじゃんっ。


「遅いっ」
「おぉっ、」

一瞬立ち尽くしてた俺の目の前、ドアガードの少しの隙間に行き成り慶が現れたから、正直めっっっっちゃビビった。

「お前っ、ビビるわっ」

心臓バクバクしてるけど、一応隣への迷惑も気にしつつ隙間に貼り付き、声を抑えて言う。
数センチ先に居る慶は……多分怒ってる。

「遅かった」
「ごめん」
「連絡無かった」
「ごめん」
「テレビ終わったし」
「あぁ、そっか」
「1人で見たから面白くなかった」
「ごめん、って」

深夜にやってるすんげぇマイナーな、無名のお笑い芸人たちがやってる番組。
何かそれに2人ともハマって、よく見てる。

今日…その日だったか…。

「俺、LINEしたけど」
「…あ、うん」
「見てもないし」
「マジでごめん、ちょ、開けて」
「嫌だ」
「マジで謝るから、とりあえず入れて」
「俺の連絡も無視して遅くなった理由言って」
「言うから」
「今」
「ここで?」
「そう」
「や、長くなるし、」
「良いよ」
「寒い…風邪引く」
「…………」

一度ドアが閉まる。
ガチャ、とガードが外される音がして、再びドアが開いた。

こんな時でも、俺が風邪引いたら可哀そうだと思って開けてくれたんなら、マジで可愛い。

「入って良い?」

一応、確認を取る。


「…風邪引いたら困るから」


…………マジか。


直ぐに玄関に飛び込んで、突進する勢いで抱きしめてやった。
慶は俺の腕の中でもがいてる。

「ちょっと、こらっ、止めてっ、まだ理由聞いてないっ」

バシバシ叩かれる。
そんなのも可愛いんだけど…。

ただ……理由って言っても……俺は、取り繕うような嘘が吐ける性格じゃねぇし、そもそも起きてると思わなかったから言い訳も考えて無い。

「理由。早く」

急かされてる…。
……怒るかな…理由言ったら。


「……まぁ、何て言うか………告白された」

「え……」


正直に言ったら、一瞬にして慶が困惑した。

「あのさ…ほら、スーパーで何度か会った事ある…この前もレジのとこで会った子居るじゃん、」
「…ぁ……うん」
「あの子、店のお客さんでさ、ずっと前から来てるからBIRTHのスタッフも顔見知りみたいな感じでさ、」

言いながらリビングに入って行くと、慶も後ろから付いて来る。
不安一杯の顔してるのが、結局ツボだけどな。

変に隠しても慶が納得しないだろうし、何より不安が払拭出来ないだろうから……全部話した。
送ったとこまで全部。




「…無視した訳じゃねぇよ」

理由を聞いて行くうちに、だんだんしょんぼりしてしまった慶を覗き込む。

「…遅くなるって言ってくれたら…良かったのに…」

小さな声でブツブツ言ってる。

「そうだな、ごめん」

慶の腕を引っ張って、もう一度抱きしめると…今度は大人しく納まった。

「……でも……告白されてるのに……ちょっと待ってとか言って……LINE返事出来ないか……」

そこかよっ。
俺目線で考えてくれてんだ……マジで可愛いんですけど。

「あの人……侑利くんの事、好きだったんだね…」
「…あぁ…うん」

少しして…慶の腕が俺の背中に回された。
その腕に力が入って行くのが分かる。

「どした?」
「…ううん」

ううん、って事はねぇだろう……何か、思ってる事があんだろ。

「…まだ、怒ってる?」

腕の中で慶の頭がフルフルと動く。

「じゃあ、どしたの?」

もう一度、聞く。

「……俺が一番侑利くんの事好きだからね」
「…ん?」

少し震えた声で慶が言う。

「あの人は…俺より前から侑利くんの事知ってて、店にも行ったりして…侑利くんの事すごく好きなのかも知れないけど……でも、俺の方が、それよりもっと侑利くんの事好きだからねっ」


あーーー………そう来たか。
そんな事言われたら………今日も…黙って寝かせる訳にはいかねぇな。

……とか思ってたら…、

「侑利くんっ、ベッド行くよっ」
「え?」

慶が俺の腕を掴んで寝室へ引っ張って行く。

「おい、ちょっと、」
「もう待てないっ」
「ちょ、俺、まだ風呂、」
「風呂なんか後で良いのっ」

何だこの展開…。
寝室のドアを開けて、慶が俺をベッドに押し倒す。

「侑利くんは俺のものでしょ?」

慶が俺を見下ろす。

「そうだよ」

強気な発言をした割には、俺の答えを聞いてエヘヘと笑うとことか…。

「慶、すげぇ好きだ」

下から、手を伸ばして細い体を引き寄せると……その勢いのまま、慶が近付いて来て…キスされる。
やっぱり俺は、お前じゃねぇとダメなんだって…。





~~~~~~~~


*慶side*

……悩んでる…。

入るべきか……止めるべきか………。


バイトに向かう途中。
少し早めに出たクセに……目の前にして入るのを躊躇ってる……。

ちょっとキレイめな…オシャレなメンズショップの前。
自転車を止めてみたものの……もう、2分くらいは悩んでるな……。

もう直ぐクリスマスだし……
誕生日には、ケーキもプレゼントも貰ったし、何より旅行も連れてって貰った。

クリスマスは、そのお返しじゃないけど、俺からも何かプレゼントしたいって思ってて……毎日バイトに行く途中で気になって見てたこのショップ。

ショーウィンドウに飾ってる服や小物がすごくカッコ良くて、侑利くんに似合うだろうな~っていつも思ってた。

だから、何かプレゼントに良いものがあるんじゃないかと思ってるんだけど………いざ、店の前に来てみたら……余りのオシャレ加減と入ったら何も買わないで出て来る事は不可能なんじゃないかって思う雰囲気に、さっきから入るのが躊躇われる…。


こんな店、1人で入った事無いしっ!
侑利くんとなら、どこでも入れるのに………俺って、ほんとヘタレ…。


「羽柴さん?」

行き成り呼ばれて、驚いて隣を見る。

「み、三上さんっ」

笑顔で挨拶してくれて、ちょっとホッとした。
店に入るの緊張してたし…。

「買い物ですか?」

三上さんがショップの看板を見ながら言う。

「あ、買い物って言うか…ちょっと入ってみようかと思ってたんですけど…でも…」
「…でも?」

少し顔を覗き込んで言う。

「入った事ないし、何か…雰囲気が…ちょっと緊張するなって思って、」
「あ~、静かそうですしね、店内」

そうだよ~。
只でさえ緊張するのに、静かだったら俺どうしたら良いか分かんないよ…。

「見るだけになるかも知れないから……迷ってました」
「あぁ、分かります。手ぶらで出れないみたいな?」
「そうですっ」

思わず被せ気味に言ってしまって、三上さんが少し驚いてるし…。
でも、まさにそうだよ……。

「一緒に入ります?」
「えっ?」

俺は間抜けな声を出した。

「や、2人だったら店員さんもそんなに声かけて来ないだろうし、何も買わなくても出にくくないでしょ?」

……確かに、そうだ……それに……確かに、一緒に入ってくれたらすごくすご~く助かるけど……でも、甘えて…良いのかな……

そもそも、三上さんって今……

「仕事中じゃないんですか?」

店のチラシを持ってるから……ビラ配りかカットモデルのスカウトの最中かな、って……

「あー、仕事中なんですけど……ちょっとくらい大丈夫ですよ、ここ、店から離れてるしっ」

二ッと笑って言う。

「え…でも、それは悪いです…」
「店の雰囲気見るくらいなら、全然大丈夫。じゃないと、1人で入る事になりますよ?」

三上さんは、既にショップ入口に繋がる階段に足をかけてる。

「え、で、でも…」
「店長には内緒でお願いしますね」

あはは、と笑ってもう入口のドアを開けてしまった。

「いらっしゃいませ」

…もう、中から声かけられちゃったし……
入るしかない……しかも三上さんに付き合って貰って……


ほんとに…緊張する…。
こんなおしゃれなショップ……今までの人生で必要無かったし…。

シックで落ち着いた店内には、他に2組くらいお客さんが居た。
思ってた通り静かで、やっぱり1人じゃちょっと辛かったな、とか思ってみたり…。

「何か目当ての物があるんですか?」
「…ピアスとかあったら良いなって…」

俺にはネックレスをくれたから……侑利くんにもアクセサリーをプレゼントしようかな、とか漠然と考えていた。

この店のショーウィンドウに飾ってある何個かのピアスが、何となくどれも侑利くんに似合いそうだな、って思って見てたんだ。

「羽柴さん、ピアス開けてます?」
「あ、俺のじゃなくて、プレゼントです」

言ってしまったけど…後から何だか恥ずかしくなった。

「あー…もしかして…久我さんに?」
「えっ」

あっさり言い当てられてしまった。

「…あの…はい」

そう答えるしかない。

「やっぱりそうかぁ~、クリスマスプレゼントですか?」

やっぱりって……俺って分かりやすいのかな…。
「はい」と頷く。

アクセサリー類はレジの近くのディスプレイ棚に沢山あった。

値段は……一応許容範囲内…。
デザインは、侑利くんっぽいのが沢山ある。

…どうしよう……うー……悩む~……。

三上さんは、一応、俺に気を遣ってか少し離れた所の服を見てる。


ふと、視線を上げた先にあったピアスが目に付いた。

シンプルな厚めのリングピアス。
艶の無いシルバーで真ん中に黒のラインが入ってるやつ…。

……これ……侑利くんっぽいな…。
着けてるとこも想像出来るし……

もう、何か、コレがしっくり来たら、他のが何か違う感じに見えて来た……。


「…よし」

…決めた。






「ありがとうございました」

店を出て、直ぐに三上さんにお礼を言う。

「や、全然。俺も、ちょっとこの店気になってたから、中見れて良かったです」

にっこりと爽やかに笑ってくれる。
突き合わせちゃってほんとに申し訳ないよ……

「すみません、ほんとに…」
「喜んでもらえると良いですね、それ」

俺の手にある紙袋をチラッと見てそう言った。

「はい」

今更恥ずかしくなって、ちょっと顔が熱い…。

「あの…1個聞いて良いですか?」

荷物と紙袋を自転車のカゴに入れてる俺に、少し遠慮がちに言う。

「はい、何ですか?」
「やっぱり……久我さんとは……その…、付き合ってるんですか?」

ドキ、と心臓が鳴った。

そりゃ、そういう質問もされるだろう…。
今まで聞かれて無かっただけで、端々でそんな要素出てたしな……

「……え、と……あの……、…はい」

真実を伝える。
隠す必要も無いし…。

「…やっぱりかぁ~~~~っ」

三上さんが、少し苦笑しながら言う。

「や、多分…ってか絶対そうだろうな、って店長と話してたんです。あ、俺と店長、羽柴さんのファンなんで」
「え…ファン…?」

……なんとも言えない恥ずかしいような擽ったいような気分になる。
ファンだなんて……そんなの言われた事ないよ~。

「いや~~~…マジで久我さん羨ましいっ」

え…そこ?
付き合ってるって言う驚きよりも、そっちなんだ……

「こんなに一生懸命プレゼント選んで貰えるなんて、ほんと羨ましい限りですっ」

何て返したら良いのか分からず、只々恥ずかしくて俯いてしまう。

「何か、俺、失恋した気分です、あはは」
「…………」

……何も言えない…。
そんな風に言って貰った事無いし…。

「あ、羽柴さん、バイト時間大丈夫ですか?」
「えっ、あ、」

携帯で時間を確かめると、少し急がないといけない時間になってた。

「あ、そろそろ行きますね……ほんとに、ありがとうございましたっ」

もう一度しっかり礼を言う。
ほんとに一緒に入って貰って良かった……そもそも、三上さんと会わなかったら店に入る事も止めてたと思うし…。

深く下げてた頭を上げて、俺はバイトに向かった。
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