laugh~笑っていて欲しいんだ、ずっと~

seaco

文字の大きさ
73 / 74

「慶……そろそろ…助けて欲しい」

しおりを挟む
何もする気がしねぇ…。


完全に、脱力感と空虚な感じ……。


慶が居ない部屋ってこんななんだなって……改めて思う。


時間ってこんなに、進むの遅かったっけか…。
俺んちだけ、時空歪んでんじゃねぇ?って思うくらい、1分が長ぇ…。


俺ってもしかして、慶が居ないと普通の生活も出来ないんじゃねぇの?
……マジで、腑抜けだわ。


あの、フワフワしてる声を聞けないだけで、こんなにも落ち着かねぇんだな…。



『……明日には……ちゃんと帰る』と慶は言ったけど……考えてみたら、0時を過ぎてから、23時59分59秒までは『明日』な訳で……何時頃帰るかは聞けてない。


何で聞かなかったんだよ、俺……
このまま……いつ帰って来るか分からない慶を、ひたすらドキドキしながら待つって事か?

……それは……無理だな……


「耐えらんねぇ」


ボソッと呟いて、携帯を手に取る。

画面の時計は、10時05分。

…もう、起きてんだろ……
奏太と愚痴大会でもして、遅くまで起きてたかも知れねぇけどな……

俺は今日も仕事だ。
だから、家を出るまでに帰って来てくれねぇと、慶に会えるのがまた日を跨いでからになる。

目眩がするぐらい、遠いわ、それ…。



『今日、何時頃帰ってくんの?』


今、俺の頭ん中にはこのワードしかねぇ。
意を決して送信ボタンを押した。


暫く眺めたけど、まだ既読にはならず……
俺って、どんだけ女々しいんだって何か何とも言えない気分になる。

こんなに引き摺るとは思ってなくて……って言うか、そもそも見られてるなんて思ってなかったから、この事態をサッと鎮める方法を持ち合わせてない。


溜息は、何回…いや、何十回吐いたか分かんねぇ。

とりあえず、まだ既読にならない携帯をテーブルに置いて、いつ慶が帰って来ても良いように、服を着替えて掃除でもしよう。


ダルいし、寝てないからか頭痛ぇけど……気を紛らわせるには掃除は妥当だろう。








ちょっと、掃除に没頭してた。
何も考えず、ただ片付ける。

良い意味で、慶の事を考えずに済んだし……気分はどうあれ、部屋がキレイになるのは良い。

片付いた部屋を見て、普段なら慶が「片付いてるじゃ~ん」とか、俺の好きな緩い笑顔で言うんだろうな、とか考える。


……あぁ、ダメだ。



もう、会えねぇと死ぬ。



慶、俺、死ぬぞ。



寝てない上に一心不乱に掃除したからか、ふと気を抜くと異常に疲れてソファにドカッと座り込む。


携帯に手を伸ばし、さっきの返事が来てるかチェックする。



………来てる。

急いで見る。


『おはよう。眠れた?』


それだけ、入ってた。

……いや、……返事じゃねぇじゃん。


『眠れる訳がねぇ』

返信すると、今度は直ぐに既読になった。


『俺には寝ろよって言ったクセに』

『俺は寝ろって言われなかった』

『そうだっけ?』


何だよ……会話、普通じゃん……なら、もう、早く帰って来いよ…。


『それより、質問の返事は』

返事を急ぐんだよ、俺は。


『夕方に帰る』


は?

夕方?


何で…


『遅ぇよ』


素直な気持ちを言った。
夕方なんてさ……会えねぇじゃん…。


『もっと早くなんねぇの?』


がっついてんな、俺。


『…それぐらいになると、帰る勇気が出ると思う』


……勇気、要んの?


『俺、仕事なんだけど』

『知ってる』

『会えねぇじゃん』

『帰って来るの待ってるね』


はぁ?


……無理だ。


『今すぐ会いてぇ』


困らせるって分かってるけど……


『夜には会えるよ』

『今すぐっつったんだけど』

『無理だよ』

『何で』

『真由さんとの事…まだ、整理出来ない』


……それを言われると…………何も言えないけどさ……


『夕方には整理出来んの?』

『うん、整理する』

『ほんとは、今すぐ会いてぇんだからな』

『分かってる』

『もう、俺、ぶっ倒れそうだし』

『分かってるよ』


……俺が慶に会えるのは、目眩がするほど遠いと思ってた時間に決定してしまった…。


『気を付けて帰って来いよ』


この返事をする事で、慶の意見を通させる事になってしまったけど………慶が真由と俺の事を整理するのにそれだけ時間がかかるって言うから…仕方なく、それに従う事にした。

不本意だけど。


『無事に帰るから』

『当たり前だ』


やり取りが終わり、そのままソファに横になる。


何か……疲れたわ…異常に…。
……帰らないと分かると、どっと眠気が襲って来た。

あまり回っていない頭で携帯のアラームをセットしてから、時間を置かずに意識が落ちた。







それから、暫く爆睡してた。
大音量にしてたアラームのおかげで何とか起きれた感じ。

見渡しても、やっぱり慶の気配は無くて……「思ったより早く整理出来たから帰って来ちゃった~」とかを、心のどっかで期待してたけど……

どうやら、それも無い。

長い溜息を吐いて、のそのそ起き上がり、仕事に出かける準備をする。




~~~~~~~~


BIRTHは今日も賑わってて、指名は無いものの呼び止められる回数が何かすげぇ。
注文が一旦落ち着いて来たのは9時半頃。

フロアが忙しい上に、ちょっと厨房にも入ったりしてたから、慶の事ばっか考えて滅入る暇が無くて助かった。

「侑利、大丈夫か」

声をかけて来たのは天馬だ。
きっと奏太から色々聞いて、俺よりも知ってんだろうなって思う。

「…あぁ……まぁ」
「大丈夫な顔じゃねぇけどな」
「…本音は帰りてぇ」
「はは、素直で良いじゃん」

天馬に頭を混ぜられる。

「もう、帰ってんだろ?」
「あー……多分」
「ちょっと早いけど休憩入れよ」
「え、」
「慶ちゃんに、電話してみたら?」

………一瞬で顔が熱くなった。
天馬に礼を言って、急いで裏へ下がる。

休憩室には他のスタッフも居たから、上着を持って裏口から外へ出る。
壁に凭れて一度深呼吸をし、慶に電話をかける。


RRRRR…RRRRR…RRRRR…

呼んでる時間が……すごく長く感じる。

RRRRR…RRRRR…、

『…はい』

少し呼吸を置いて、緩やかな口調で電話に出た声に一気に胸の辺りがホワッとする。
…何とも言えない……感覚…。

「俺…」
『…うん』

電話越しに聞こえる慶の声が、少し揺れてる気がした。

「帰ってんの?」
『…帰ってる』

分かっては居たけど……本人からそう言われると、納得出来る。

「…そ、か」
『…侑利くん…』

俺を呼ぶ……俺の好きな、声。


『…待ってるね』


……ダメかも……
泣きそうだわ……


「慶…」
『…ん?』
「…会いてぇ」

俺……何回言ってんだよ、このセリフ…。

『…うん……俺も』
「ほんとは……今会いてぇ」
『うん…』
「もう…帰りてぇし、」
『…うん』
「我慢出来ねぇ」
『………ん、』
「とっくに……限界越えてんだ…」
『…うん…』
「お前に会わねぇと……」
『……ん、…』
「…何も手につかねぇし…寝れなくて頭いてぇし……」


慶が黙った。
多分…泣いてるんだろう…。

俺だって泣きそうだ、さっきからずっと…。


「慶……そろそろ…助けて欲しい」


お前にしか出来ねぇんだよ、それ。


『…侑利くん……終わったら…早く帰って来て』
「…え?」
『…真由さんのとの事…整理したら……早く会いたくなった』
「何だよ……俺、ずっと言ってたじゃん」
『俺も会いたい…早く顔が見たい……電話じゃなくて…侑利くんに会いたいっ』

何だよ……急に…
待ってるね、とか言っといてさ……



慶との電話を終わらせて、裏口から中へ入ると店内から裏へ来た天馬と通路で会った。

「あ、居た居た、侑利」

俺を探してた感じ。

「桐ケ谷さんがさ、お前もう今日上がって良いってさ」
「え?」

意外な一言に、変な声が出た。

「侑利、昨日から様子変だけど大丈夫かって聞かれたからさぁ、体調悪くて寝れてないみたいだって言ったら、もうお客さんだいぶ落ち着いて来たから上がって良いって言って来てって」

…………マジで、感謝。
桐ケ谷さんに挨拶して、天馬に礼を言いまくって、急いで帰る準備をする。

「もう、早く、元に戻れよ」
「あぁ、分かってる」
「お前らが上手く行ってねぇと奏太にも影響出るからさっ」

そう言って、天馬がフッと笑う。

「マジでサンキュ。今度、何か奢る。奏太にも言っといて」

即行で着替えて、見送る天馬にそう告げてBIRTHを出た。
あと、数時間我慢しないといけないって思ってたから……急に帰れる事になって、何か心臓がバクバク言ってるけど……

とにかく、安全運転で……だけど、急いで帰ろう…。




~~~~~~~~

駐車場に停めた車を降りて、エントランスへ向かう途中、見上げた自分の部屋に電気が点いてるのが分かって、慶が帰ってる事実にまた少し泣きそうになるのとグッと堪える。

急いでエレベーターに乗り込み、5階ボタンを連打。

あと…数十秒で慶に会える。
そう思ったら、微妙に指先が震えてる…。

あんなとこを見せて、思いっ切り泣かせてしまった…。
だけど慶が、俺に会いたいと言ってくれた。

泣かせても…そんな風に思ってくれて……マジで嬉しいんだ、俺は。


エレベーターが開くのを待ちきれず、こじ開けるようにして飛び出して、部屋までの距離を走る。

その勢いのまま、鍵穴に鍵を差し込む。
焦ってて引っ掛かってるけど、何とか開けたドアの向こうのリビングから……急いで…慶が出て来た。


「…ゆ、」

侑利くん、と言おうとしたんだろうけど、それより先に俺に飛び付いて来た。

思いっ切り俺に飛び込んで来た慶の体を、足を踏ん張って受け止める。
グラつかないように、しっかりと。

「…何で、っ、…早い…ぅ、っ……」

泣いてんな。

「見かねて…帰された」

慶が俺の体を強く締め付ける。
そのまま、靴を脱いで強引に上がり、すぐ後ろの壁に慶の体を押し付ける。

「慶…」

お互い、額が付くような距離。
思った通り、慶はもう泣いてる。

「……おかえり」

改めて、そう言ってやると

「……ただいま…」

と、慶が揺れた声で言う。

そっと、慶の頬に手の平をあてて、親指で涙を拭うけど……直ぐに止まる気配は無い。

「俺、お前しか居ねぇんだ」
「…うん…」
「もう…どっか行くな」
「…うん…」
「俺に怒ったり、呆れたり、どん引きしたりしても良いから………居なくなんのは、止めろよな」
「…うん」

頬の手を慶の髪に移動して、梳く様に撫でる。

「慶…」
「…ん、」

呼ぶと、小さく返事をする。
そんな様子も可愛くてさ……

「キス…しねぇ?」

聞いてみる。

「……ん、……する…」

OKが出るや否や、その唇を急いで奪う。
だから、もう、我慢出来ないんだって…。

押し付けてた壁伝いに、ズルズルと力が抜けた様に慶が沈んで行く。
それに合わせるように俺も下へと降りる。

キスは止めない。

「……っ、…ふ、…ぁ、」

呼吸を求める様に慶が息継ぎをする。
その声には、艶があってすげぇそそる。

「…侑利くんが……ふ、…ぅ、……ん……取られちゃうって……、っ、思っ……、」
「良い、喋んな」

とにかく、キスに没頭させて欲しい。
俺は禁断症状が出てんだ。

俺の一言で考え直した様に大人しくなった慶は、俺と同じ様に…俺の髪に手を伸ばして来ると、髪を梳きながら撫でて……自分の方へ引き寄せて、深いキスを仕掛けて来る。

「…慶………好きだ」

キスの合間に耳元で囁く。

「…俺も…好き……侑利くん、大好きっ…」

俺の首に腕を回してしがみ付いて来る。

「侑利くんは……俺のものだっ…」

何だよ………めっちゃ可愛いじゃん。

「誰にもあげないっ……誰にも…」

そう言って、また俺に噛み付くようなキスをお見舞いして来る。
珍しく慶が攻めて来る…。

「お前だって俺のもんだよ……俺が独占する」
「うん……良いよ…」
「好きだ…」
「うん…」
「離れんな」
「うん、」
「……抱くぞ」
「…うん」

これにもOKが出た。

何か最近のゴタゴタもあったからか、既に俺はもう興奮状態で、臨戦態勢も整ってる。

なだれ込むように慶を連れて寝室へ入る。
俺はもう、すげぇ焦ってて……優しくしてやれるか自信ねぇけど…

とにかく、今は慶の全部が欲しくて堪んねぇからさ…。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

不器用に惹かれる

タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。 といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。 それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。 怖い。それでも友達が欲しい……。 どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。 文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。 一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。 それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。 にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。 そうして夜宮を知れば知るほどーー

処理中です...