眠れる石像の献身

音羽夏生

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石像、目覚める

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 とはいえ、根本は個人主義で独立独歩の自由な生き物である魔法界の住人──魔法族では、同性を愛しても差別の対象にはならない。公序良俗に反しなければ何をしてもいいという考えがあり、その公序良俗の尺度が七十年前に少し変わっただけのことである。
 たとえ差別されたところで、いささかの痛痒も感じないギルバートだったが、師と引き合わせてくれた恩人である月読の心労の種は、なるべく増やしたくない。
 その程度の良心は残っており、また自分より強い魔力を持つ彼に抱き上げられたアーネストに、単純に今は手出しができない。ここで無茶をして、月読の心証を損ねるのは悪手以外の何物でもなかった。
 ギルバートの苛立ちと自制を正しく把握しながら気づかないふりで、月読は重ねて問い質す。

「アーニーが片付けていったのは、事務的なことだけでしょう。ギルバートも私も、情緒的なことを言ってるんです。百年も不在にするなら、友や弟子に一言あってもよかったのではないですか」
「そんなことしたら、全力で邪魔したり引き留めたりしただろ」

(そんなことしませんよ、……少なくとも私は)

 長い寿命を持ち、四百年も無茶を続けていた友を心配していた自分は。──百年後の再会が約束された、強力な魔力を持つ魔導師は。
 ギルバートは、癒えない痛みを押し隠したような、百年分の苛立ちをこごらせたような、何とも言えない顔をしている。
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