トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

文字の大きさ
190 / 237
16章※

10

しおりを挟む
 欲しがって欲しがって懇願して初めて、絶頂は与えられる。泣き言は快楽で罰され、酷い形で終わりを引き延ばされるだけだ。

「み、ず……」

 酷い渇きに、訴える声も掠れた。
 ずっと喘がされているせいで、喉は嗄れ、唇は乾き切っている。潤いを求めて薄く口を開き、唇を舐めようとした時、遠くで鐘の音が鳴り始めた。
 十二の鐘――新年の訪れを祝う鐘だ。

「喉が渇いたのか、ちょうどいい」
「は、アゥンッ!」

 ぬるぅっ、といきなり男の指が引き抜かれた。
 排泄とは異なる、節高な指が体内を滑り出る独特の感触に、ざっと肌が泡立つ。ごつごつとした関節に中の襞をこそげられるのが、たまらなく悦いのだ。
 もう何も出ないと思っていた欲望の先端から、わずかな白濁がとろりと漏れ出た。

「あ、あ……ぁ……」

 軽い絶頂に、びく、びくっ、と不規則に体が痙攣する。
 その様子を、脚を開かせたまま熱い眼差しで見守っていた一洋は、新たな白濁を掬って志貴の尻の狭間に塗り付けると、寝室を出て行った。しばらくして戻ってきたが、水のグラスと葡萄の入った鉢を手にしている。

「ほら、飲め」
「ん……」

 抱き起こされ、病人のように口元にグラスを宛てがわれる。流れ込む水の冷たさが火照った体に心地よく、志貴は与えられるままに飲み干した。
 しかし、長時間に亘る濃密な行為で心身が飽和しており、葡萄一粒すらも口にする気になれない。一洋が葡萄をつまむ前に、志貴は小さく断った。

「僕はいいよ……今は、何も入らない」
「縁起物はやることに意味があるんだ。食わせてやるから楽にしていろ」

 再びベッドに寝かされ、戸惑いながらも快楽の残滓と疲労が心地好く四肢に広がるのに任せる。手足が重く、いまだに快楽に侵された頭もぼんやりして、昼寝をしたのにこのまま眠りに落ちてしまいそうだ。
 その前に湯を浴びなければ、と意識を掻き集めようとしていた志貴は、うつ伏せにされたことに気づくのにも時間が掛かり、反応が遅れた。

「……やっ、何ッ?!」

 突然冷たい何かが、二人の白濁に濡れた穴に押し当てられたのだ。そのまま圧力が加えられ、その何かはすっかりやわらかくなった穴を丸く拡げると、くぷりと中に吸い込まれていく。

「あぁ、……あっ、……あっ! やめて、兄さんやめてッ!!」

 志貴の中を侵しているのは、新年の幸福を願うはずの葡萄だった。それが、二つ、三つと次々に押し込まれる。
 丸く冷たい異物に体内を嬲られる異様な感覚に、しっとりと汗に濡れた肌が総毛立つ。逃れたくても、投げ出した脚を、乗り上げた一洋が押さえ込んでいる。志貴は悶えながら、シーツを掻きむしることしかできない。

「五つ……、六つ……、七つ……」
「ひっ、ひぅ……ッ!」

 無理に暴れると、奥に入ってしまいそうで怖い。嫌だと叫んだら、はしたなく出してしまいそうで恐ろしい。
 生理的な嫌悪感に鳥肌を立てながら、異物に怯え噛み合わない歯を無理矢理噛み締める。突然の暴虐が早く通り過ぎることだけを願い、ただ耐えるしかなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...