トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

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19章 ※

12

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 扱く手を離しても志貴の欲望が育ち始めていることを察したテオバルドは、本格的に恋人の体を攻略し始めた。それでも、額に汗を浮かべ内なる獣を抑えての、どこまでも丁寧な挿入だ。
 ずぬぬぅっと尖った先端で狭い肉筒を割り拡げ、その長大な雄がとうとう突き当たりまで辿り着く。
 くん、とそこで軽く腰を突き上げて、迸った志貴の鳴き声が痛々しいものではないことを確認し、テオバルドが陶然と呟いた。

「ああ……、惚れた相手が俺のために流す涙は堪らないな」

 未知の快楽と凄まじい圧迫感に言葉もない志貴は、気がつけばぼろぼろと涙を溢れさせていた。
 何が悲しいのか、うれしいのか、それとも苦しいのか──体と心の両方が流す涙を、身を屈めたテオバルドが甘露のように舐め取る。見つめ合い、そのまま唇が重なった。
 厚い舌が激しい呼吸に乾いた唇を割り、迎え入れた志貴のそれと絡み合う。奥深くまで犯される衝撃に震える体を慰撫するように、口蓋の弱いところを舌先でくすぐられる。
 甘やかす口づけに、最奥まで拓かれて強張った体が少しずつ弛緩し、志貴は呼吸を整えようと努めた。
 ちゅ、ちゅっ、と唇から移動し汗に濡れた肌を啄むテオバルドの頬に手を添え、せがむように引き寄せる。また口づけ、互いの口内を愛撫し、飽きれば唇を離して見つめ合い、また重なる。
 テオバルドは「待て」のできる犬だった。志貴が自身に馴染むまで動くことなく、辛抱強く待つつもりでいるのだ。
 そのおかげで、圧迫感は変わらずあるが、志貴も自身の中で息づく彼を、痛み以外で感じられるようになっていく。

(熱い……!)

 限界まで押し拡げられた肉筒が、軋みながらテオバルドの形に変わっていくのがわかる。
 おそらくテオバルドも感じているだろう。慄きながらもぴっちりとまとわりつく、肉襞のいやらしさを。
 辛うじて切れていないが、無理に拡げられた入口が、ヒクヒクと無意識に閉じようとする動きを繰り返す。そのたびに襞が中のものを引き込もうとし、それが男を咀嚼する動きになるのだ。

「う、ううっ、……体が、おかしい……っ」
「すごいな、志貴……っ。そんなに美味いか、俺の肉が」

 自分では律することのできない肉筒の蠕動に、志貴は惑乱する。
 異物を入れられ排出しようとするはずの中が、穴が窄まるたびに締まり、咥えたものを呑み込もうとするのだ。

「あ、あ……あっアッ! 嫌だ、奥、奥がっ……ひうぅっ」

 奥が痙攣し始め、さざなみのようなうねりを作り出す。妖しい襞の動きはテオバルドの雄を揉み込み、吸いついた粘膜がその威容をまざまざと味わう。鋭い先端の大きさも、太い幹も、そこに浮き上がる筋すらも、視覚ではなく快感で思い知らされる。
 欲張りな肉襞は、咥え込んだ雄にしゃぶりつくのと同時に、男の快楽にも奉仕していた。複雑な蠕動ときつい締まり、そして雄を蕩かす痙攣が、知らぬ間にテオバルドを追い詰めていたのだ。

「ひあぁんッ!」

 たまりかねたように腰を揺らされ、身体の奥底を抉られる未知の感覚に、志貴は高く鳴いた。
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