とっていただく責任などありません

まめきち

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穏やかな日常

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港町の朝日が、水面を金色に照らす頃。
ヘイゼルとメルフィスは、港町の細い石畳を歩いていた。
街の漁師たちが忙しそうに船を整え、潮の香りが二人の鼻をくすぐる。

「……港町は、都市と違って静かですね」
ヘイゼルが小さく笑う。

「ああ。こういう時間も悪くない」
メルフィスは肩をすくめ、軽く笑った。
「ヘイゼル、ゆっくりでいい。君のペースで歩こう」

二人の足並みは自然と揃い、肩が触れるか触れないかの距離で歩く。
ヘイゼルは心の奥で、都市で隠れていた日々や、逃げた夜の緊張感が薄れていくのを感じる。

昼前には港町の小さな食堂で、簡単な食事を取ることにした。
「魚料理、名物らしいですよ」
ヘイゼルが笑顔で言うと、メルフィスも目を細めて頷く。
「なら、いただこうか」

二人は向かい合って座り、笑いながら食事をする。
メルフィスが時折、ヘイゼルの動きをさりげなく見つめるたび、ヘイゼルの胸は少し跳ねる。
でも、互いに自然体でいられる安心感が、何より心地よかった。

「……昨日はありがとう、メルフィス」
「昨日、って?」
「えっと……私の勘違いを、ちゃんと聞いてくれて」
ヘイゼルは少し恥ずかしそうに目を伏せる。

メルフィスは微笑み、そっと手を伸ばしてヘイゼルの手に触れる。
「勘違いでもいいんだ。君が安心できるなら」

波の音が窓から届き、港町の空気に混ざる。
言葉少なでも、二人の間には確かな親密さが育っていた。

午後には港町の小道を散歩し、漁船や倉庫の隙間を抜けながら、互いの好きなことや騎士団の話、都市での出来事をゆっくり語り合う。
ヘイゼルは時折、メルフィスをからかうように軽口を叩き、メルフィスも笑顔で応じる。
肩が触れたり、視線が重なるたび、二人の距離は自然に、静かに近づいていった。

夕暮れ前、港町の小さな丘に二人で座り、海を見渡す。
沈む夕日を背に、ヘイゼルはそっと言った。
「……ここに来てよかった」
「俺もだ」
メルフィスの声には、夜の港町で誤解を解いたときと同じ、熱くて優しい想いが込められていた。

港町の静かな日常が、二人の心をそっと繋ぎ、恋心をゆっくりと深めていく。
都市で逃げるしかなかった日々も、今では穏やかで、温かな時間の一部となっていたのだった。
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