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番外編 世界旅行(2)
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2ゲーム目は郊外の小さな町のようで、車道には今は使われていないような線路が敷いてあった。路面電車だろうか。
一時停止の看板には「STOP」と書かれ、すぐ隣の赤色の建物には、消えかかった文字で「SENIOR CITIZENS CENTER」と書かれていた。
数メートル移動すると、道路上に「American Red Cross」と書かれた案内板があった。アメリカなのは間違いないようだが、どっちも検索したら死ぬほどたくさん出てきそうだ。
「これは罠だね。ちょっと歩こう」
絢音に言われて古い線路を辿ると、今度は現役の線路が現れて、赤い駅舎に「EL RENO」と書かれていた。駅名のようだが、およそ英語っぽい言葉ではなく、検索したらはまりそうな気がする。ストリートビューはそこで途切れていたので、一度スタート地点に戻った。
「線路は最後の決め手にはなるけど、アメリカ広いしね」
「大陸だもんね」
近くを散策すると、「DOLLAR GENERAL」とか「Sacred Heart School」など、いかにもたくさんヒットしそうな文字が次々と現れた。「Sacred Heart」はそのすぐ先にある教会のようで、教会の壁には1890年に建てられたと彫られていた。
「古そうだし、『Sacred Heart School』で勝負してみる?」
通りの名前も「SUNSET」とか「EVANS」とか、まるで頼りにならない。少し行くと「CANADIAN COUNRY SHERIFF'S OFFICE」と書かれた立派な建物があった。
「SHERIFFってなんだっけ?」
絢音の質問に、確か保安官だったと答える。これもそこら中にありそうだが、アメリカの北の方という感じはした。
時間の許す限り散策を続けると、「ROCK ISLAND CREDIT UNION」という建物が現れた。先程別の標識で「ROCK ISLAND」の文字を見たので、恐らく場所の名前だろう。聞いてみたが、絢音は知らないと首を振った。
時間がなくなったので協議した結果、教会ではなく、今見つかった「ROCK ISLAND CREDIT UNION」で勝負をかけることにした。響きからするとクレジット会社か何かだろう。
地図を検索するとまともにヒットしなかったが、普通に公式サイトがあり、オクラホマの「El Reno」にあると書かれていた。赤い驛舎に書かれていた文字と繋がり、思わず絢音と両手を握り合った。
オクラホマまで移動して検索したら、オクラホマシティのすぐ西にエル・リーノがあり、ROCK ISLAND CREDIT UNIONも表示された。
どういう道を辿って来たかは覚えていないが、とりあえず適当に線路の近くをクリックしたら、誤差312メートル、4999ポイントが手に入った。
「こうなると5000行けたな」
もう少し時間があれば、一度スタート地点に戻って正確な場所を把握できたが、仕方ない。
いずれにせよ、これでほぼ1万ポイントである。どちらも街だったから運が良かったが、この調子で2万ポイントを目指したい。
3ゲーム目はいよいよダメだった。
緑の針葉樹林を真っ直ぐ切り裂く細い車道の真ん中に放り出されて、思わず絢音と二人で噴き出した。
「こういうのを求めてた」
絢音が笑いを堪えながら言う。時間が惜しいのでどんどん先に進んだが、辛うじて川か池があるのと、右側通行が確認できただけだった。
「ヤバイ」
さらに進み、ようやくT字路に突き当たると、「16 SUONENJ NJOKI」「9 IISVESI」「VESANTO 39」「RAUTALAMPI 13」「KERKONKOSKI 12」と書かれた看板が現れた。読み方もわからない上、しかも一番近くても9キロも離れている。
「ダメだこれ。ケルコンコスキってどこ?」
「さあ。北欧っぽい?」
「アルファベットだし、ロシアではなさそうだね」
ひとまず右の方に突き進むと、「OPASTUS INFORMATION」と書かれた看板があり、木とベンチと思われるマークの下に、「NOKISENKOSKI」と書かれていた。
「絢音、ノキセンコスキって何?」
「まったくわからないけど、固有名詞じゃない気がする」
とりあえず、ゲームが終わったら調べようと、絢音がノートにメモを残す。感想戦の資料作りは任せることにして、私は再び道の先をクリックした。
やがて、もう16キロも走ったのか、「SUONENJOKI」に入った。あるいは市街地までが16キロで、ここはまだ端の方なのかもしれない。
時間がなくなったので、地名なら一ヶ所に絞れるだろうと「SUONENJOKI」を検索したら、フィンランドの都市だった。絢音の北欧っぽいという読みは合っていたようだ。
どちらの方角から入り、スタート地点からどれくらい走ったのかもわからない。せめてもう一つ、都市の名前を検索出来れば絞り込めるが、検索は1回と決めたし、すでに時間はロスタイムに入っている。
周りに目視で他の地名も発見できなかったので、当てずっぽうでポイントすることにした。とはいえ、北には何もないので、10キロほど南の地点をポイントすると、36キロ離れていて、4880ポイントだった。正解はスオネンヨキの街より北側だった。
「惜しかったけど、悪いポイントじゃない」
「検索、1回あれば結構なんとかなるものだね」
「あの林道に放り出された時は、もうダメかと思った」
二人でほっと安堵の息をつく。それにしても、まるで湿原のように池や湖ばかりの土地だ。ニョロニョロもこういう場所に棲息しているのだろう。
何はともあれ、2万点が見えてきた。絢音と確認するように頷き合って、4ゲーム目の開始ボタンを押した。
一時停止の看板には「STOP」と書かれ、すぐ隣の赤色の建物には、消えかかった文字で「SENIOR CITIZENS CENTER」と書かれていた。
数メートル移動すると、道路上に「American Red Cross」と書かれた案内板があった。アメリカなのは間違いないようだが、どっちも検索したら死ぬほどたくさん出てきそうだ。
「これは罠だね。ちょっと歩こう」
絢音に言われて古い線路を辿ると、今度は現役の線路が現れて、赤い駅舎に「EL RENO」と書かれていた。駅名のようだが、およそ英語っぽい言葉ではなく、検索したらはまりそうな気がする。ストリートビューはそこで途切れていたので、一度スタート地点に戻った。
「線路は最後の決め手にはなるけど、アメリカ広いしね」
「大陸だもんね」
近くを散策すると、「DOLLAR GENERAL」とか「Sacred Heart School」など、いかにもたくさんヒットしそうな文字が次々と現れた。「Sacred Heart」はそのすぐ先にある教会のようで、教会の壁には1890年に建てられたと彫られていた。
「古そうだし、『Sacred Heart School』で勝負してみる?」
通りの名前も「SUNSET」とか「EVANS」とか、まるで頼りにならない。少し行くと「CANADIAN COUNRY SHERIFF'S OFFICE」と書かれた立派な建物があった。
「SHERIFFってなんだっけ?」
絢音の質問に、確か保安官だったと答える。これもそこら中にありそうだが、アメリカの北の方という感じはした。
時間の許す限り散策を続けると、「ROCK ISLAND CREDIT UNION」という建物が現れた。先程別の標識で「ROCK ISLAND」の文字を見たので、恐らく場所の名前だろう。聞いてみたが、絢音は知らないと首を振った。
時間がなくなったので協議した結果、教会ではなく、今見つかった「ROCK ISLAND CREDIT UNION」で勝負をかけることにした。響きからするとクレジット会社か何かだろう。
地図を検索するとまともにヒットしなかったが、普通に公式サイトがあり、オクラホマの「El Reno」にあると書かれていた。赤い驛舎に書かれていた文字と繋がり、思わず絢音と両手を握り合った。
オクラホマまで移動して検索したら、オクラホマシティのすぐ西にエル・リーノがあり、ROCK ISLAND CREDIT UNIONも表示された。
どういう道を辿って来たかは覚えていないが、とりあえず適当に線路の近くをクリックしたら、誤差312メートル、4999ポイントが手に入った。
「こうなると5000行けたな」
もう少し時間があれば、一度スタート地点に戻って正確な場所を把握できたが、仕方ない。
いずれにせよ、これでほぼ1万ポイントである。どちらも街だったから運が良かったが、この調子で2万ポイントを目指したい。
3ゲーム目はいよいよダメだった。
緑の針葉樹林を真っ直ぐ切り裂く細い車道の真ん中に放り出されて、思わず絢音と二人で噴き出した。
「こういうのを求めてた」
絢音が笑いを堪えながら言う。時間が惜しいのでどんどん先に進んだが、辛うじて川か池があるのと、右側通行が確認できただけだった。
「ヤバイ」
さらに進み、ようやくT字路に突き当たると、「16 SUONENJ NJOKI」「9 IISVESI」「VESANTO 39」「RAUTALAMPI 13」「KERKONKOSKI 12」と書かれた看板が現れた。読み方もわからない上、しかも一番近くても9キロも離れている。
「ダメだこれ。ケルコンコスキってどこ?」
「さあ。北欧っぽい?」
「アルファベットだし、ロシアではなさそうだね」
ひとまず右の方に突き進むと、「OPASTUS INFORMATION」と書かれた看板があり、木とベンチと思われるマークの下に、「NOKISENKOSKI」と書かれていた。
「絢音、ノキセンコスキって何?」
「まったくわからないけど、固有名詞じゃない気がする」
とりあえず、ゲームが終わったら調べようと、絢音がノートにメモを残す。感想戦の資料作りは任せることにして、私は再び道の先をクリックした。
やがて、もう16キロも走ったのか、「SUONENJOKI」に入った。あるいは市街地までが16キロで、ここはまだ端の方なのかもしれない。
時間がなくなったので、地名なら一ヶ所に絞れるだろうと「SUONENJOKI」を検索したら、フィンランドの都市だった。絢音の北欧っぽいという読みは合っていたようだ。
どちらの方角から入り、スタート地点からどれくらい走ったのかもわからない。せめてもう一つ、都市の名前を検索出来れば絞り込めるが、検索は1回と決めたし、すでに時間はロスタイムに入っている。
周りに目視で他の地名も発見できなかったので、当てずっぽうでポイントすることにした。とはいえ、北には何もないので、10キロほど南の地点をポイントすると、36キロ離れていて、4880ポイントだった。正解はスオネンヨキの街より北側だった。
「惜しかったけど、悪いポイントじゃない」
「検索、1回あれば結構なんとかなるものだね」
「あの林道に放り出された時は、もうダメかと思った」
二人でほっと安堵の息をつく。それにしても、まるで湿原のように池や湖ばかりの土地だ。ニョロニョロもこういう場所に棲息しているのだろう。
何はともあれ、2万点が見えてきた。絢音と確認するように頷き合って、4ゲーム目の開始ボタンを押した。
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