117 / 381
第35話 デート(2)
しおりを挟む
そんなわけで、週末の片方は奈都と二人で過ごすことにした。
三寒四温の三寒の方だったので、少し厚めの服で家を出る。待ち合わせ時間より早く着いたが、奈都は先に来ていてスマホでゲームをしていた。珍しくメイクをしていたので突っ込むと、恥ずかしそうに顔を背けた。
水族館は市内のベイエリアにある。なかなか大きな水族館で、シャチもいればイルカのショーもある。昨日調べたら、ペンギンもいるし、ベルーガもいるし、深海魚もいるし、ウミガメもいる。クラゲもたくさんいるらしいから楽しみだ。
「奈都は魚は何が好き?」
イエローラインに乗り込んですぐ、奈都に話題を振ってみた。当然水族館の話をしたつもりだったが、奈都は笑顔で突飛なことを言い出した。
「ホタテかな」
「寿司ネタの話はしてないから」
「じゃあ、イルカかな」
「それは魚なの?」
「質問が悪い」
それは一理ある。私はクラゲが好きだが、魚かと言われるとどうだろう。スマホで調べてみたら、クラゲは魚ではなくクラゲだった。
「クラゲってクラゲなんだって」
また一つ勉強になったと告げると、奈都は困ったように微笑んだ。反応が芳しくない。何か変なことを言っただろうか。
恵坂で乗り換えて港を目指す。奈都が突然、猫カフェのことを猫はどう思っているのかと話し始めたので、思わず首を傾げた。
「盲導犬は、ご主人様と一緒にいられて幸せだってCMを見たよ」
「猫カフェの猫も楽しんでる可能性はあるってこと?」
「そうなんじゃない? 猫から聞いたわけじゃないけど」
「そっか」
何やら納得したように奈都が頷く。腑に落ちたのなら良かったが、もう少し詳しく説明していただきたい。眼差しでそう訴えると、奈都は昨日テレビの特集で見たと言った。
「可哀想かなって思ったけど、それは盲導犬を可哀想って思う気持ちと同じかもしれない。猫カフェの猫に失礼な感想かもしれない」
「奈都って真面目だよね」
「今、そういう話はしてないから」
奈都が目を丸くして大袈裟に手を広げた。仕草が可愛いが、笑うと怒りそうなので猫の話に付き合うことにした。
猫が可哀想ではないなら猫カフェに行きたいのかというとそういうわけでもなく、単に感想を述べただけらしい。猫は好きなようだが、遠くから眺めているくらいが丁度いいようだ。
「生き物って怖いもんね。人間とか」
私も同じだと共感を示すと、奈都はブンブンと首を横に振った。
「同じじゃないし!」
「奈都とすらわかり合えない」
「わかりまくってるから!」
奈都が自分は理解者だと胸を張るので、千紗都クイズをしていたら駅に着いた。5問中4問正解したので、なるほど私の良き理解者と言ってよさそうだ。
三寒四温の三寒の方だったので、少し厚めの服で家を出る。待ち合わせ時間より早く着いたが、奈都は先に来ていてスマホでゲームをしていた。珍しくメイクをしていたので突っ込むと、恥ずかしそうに顔を背けた。
水族館は市内のベイエリアにある。なかなか大きな水族館で、シャチもいればイルカのショーもある。昨日調べたら、ペンギンもいるし、ベルーガもいるし、深海魚もいるし、ウミガメもいる。クラゲもたくさんいるらしいから楽しみだ。
「奈都は魚は何が好き?」
イエローラインに乗り込んですぐ、奈都に話題を振ってみた。当然水族館の話をしたつもりだったが、奈都は笑顔で突飛なことを言い出した。
「ホタテかな」
「寿司ネタの話はしてないから」
「じゃあ、イルカかな」
「それは魚なの?」
「質問が悪い」
それは一理ある。私はクラゲが好きだが、魚かと言われるとどうだろう。スマホで調べてみたら、クラゲは魚ではなくクラゲだった。
「クラゲってクラゲなんだって」
また一つ勉強になったと告げると、奈都は困ったように微笑んだ。反応が芳しくない。何か変なことを言っただろうか。
恵坂で乗り換えて港を目指す。奈都が突然、猫カフェのことを猫はどう思っているのかと話し始めたので、思わず首を傾げた。
「盲導犬は、ご主人様と一緒にいられて幸せだってCMを見たよ」
「猫カフェの猫も楽しんでる可能性はあるってこと?」
「そうなんじゃない? 猫から聞いたわけじゃないけど」
「そっか」
何やら納得したように奈都が頷く。腑に落ちたのなら良かったが、もう少し詳しく説明していただきたい。眼差しでそう訴えると、奈都は昨日テレビの特集で見たと言った。
「可哀想かなって思ったけど、それは盲導犬を可哀想って思う気持ちと同じかもしれない。猫カフェの猫に失礼な感想かもしれない」
「奈都って真面目だよね」
「今、そういう話はしてないから」
奈都が目を丸くして大袈裟に手を広げた。仕草が可愛いが、笑うと怒りそうなので猫の話に付き合うことにした。
猫が可哀想ではないなら猫カフェに行きたいのかというとそういうわけでもなく、単に感想を述べただけらしい。猫は好きなようだが、遠くから眺めているくらいが丁度いいようだ。
「生き物って怖いもんね。人間とか」
私も同じだと共感を示すと、奈都はブンブンと首を横に振った。
「同じじゃないし!」
「奈都とすらわかり合えない」
「わかりまくってるから!」
奈都が自分は理解者だと胸を張るので、千紗都クイズをしていたら駅に着いた。5問中4問正解したので、なるほど私の良き理解者と言ってよさそうだ。
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
さくらと遥香
youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。
さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。
◆あらすじ
さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。
さくらは"さくちゃん"、
遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。
同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。
ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。
同期、仲間、戦友、コンビ。
2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。
そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。
イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。
配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。
さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。
2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。
遥香の力になりたいさくらは、
「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」
と申し出る。
そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて…
◆章構成と主な展開
・46時間TV編[完結]
(初キス、告白、両想い)
・付き合い始めた2人編[完結]
(交際スタート、グループ内での距離感の変化)
・かっきー1st写真集編[完結]
(少し大人なキス、肌と肌の触れ合い)
・お泊まり温泉旅行編[完結]
(お風呂、もう少し大人な関係へ)
・かっきー2回目のセンター編[完結]
(かっきーの誕生日お祝い)
・飛鳥さん卒コン編[完結]
(大好きな先輩に2人の関係を伝える)
・さくら1st写真集編[完結]
(お風呂で♡♡)
・Wセンター編[完結]
(支え合う2人)
※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる