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番外編 夏祭り(2)
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朝は時間がなかったので、お祭りカレンダーは昼休みに披露した。今日は弁当持ちの涼夏が、卵焼きを頬張りながら「マメだねぇ」と呆れたように笑った。
「結構かぶってる日も多いから。こことか」
イベントが4つかぶっている土曜日を指差しながらそう言って、どれか行きたいと訴えると、絢音が自分のスマホで地図を開いた。
「一番下の海辺の花火は、車がないと行けそうにないね。実質3つに絞られた」
「規模的には南の町のやつより、北の市のやつの方が大きそうだけど、やっぱり陸の花火より海の花火の方が開放感がある、気がする」
「どっちも電車の駅から歩いて行けそう。花火以外はまあ、屋台がちょっと出て終わりかな。北のはステージもあるみたい」
「この花火じゃない西のお祭りは? 提灯いっぱいの舟が壮観」
「花火はぶっちゃけどれでもいい気がするから、それに行くのも手だね」
二人が規模やアクセス、内容から検討してくれる。奈都にもこういう反応を期待していたのだが、これも日頃の帰宅部の活動の成果であって、急に出来るものではないのかもしれない。
「花火は、次の祝日に港である南の祭に行こうと思うんだけど、どう思う?」
自分のプランを告げると、涼夏が「南の祭か」と唸った。
「混むぞ? 30万人という説もある」
「経験者? 混まない祭りの方が嫌じゃない?」
「未経験。そもそも花火大会に縁がない」
「去年一緒に行けなかったもんね。ちなみに、去年の東の祭は50万人」
絢音が笑いながら5を作るように片手を広げた。去年は涼夏の代わりにメテオラを連れて行ったが、今年はあらかじめ計画して3人で行こうという算段だ。
そう言うと、涼夏が小さく首を傾げた。
「ナッちゃんは? 破局した?」
「誘ったけど、来れないって。忙しい人だから」
「そっかー。帰宅部で花火大会とか、私ならバイトが入ってても行くのに」
涼夏が肩をすくめて首を振った。反応に困っていると、絢音が楽しそうに笑った。
「涼夏、去年、バイトで来なかったよ?」
「さすがに当日は無理だから! あと、去年はまだそこまで仲良しじゃなかった」
今のは冗談だろうか。私は思わず目を丸くして涼夏を見つめた。
去年の夏は泊まりで海に行っているし、すでに十分仲良しだった。しかし、確かに文化祭はまだだったし、温泉旅行にも行ってなければ、クリスマスパーティーも開いていない。
ずっと変わらず仲良くしているつもりでいたが、まだ出会って4ヶ月だったと言われればそんな気がしないでもない。
「この1年、色々あったね」
私が思い出を懐かしむモードに入ると、涼夏はそれをスルーして再びスマホに目を落とした。
「じゃあ、花火は南の祭で満喫して、この土曜日は提灯舟を見に天ノ川祭って感じにする?」
「伝統に触れるのも大事だね。信長の時代にはすでにあったみたい」
「まるで信長が実在したかのような話ぶりだ」
涼夏があははと笑う。この人が言うとどこまで冗談かわからないが、今度は絢音も突っ込まなかった。さすがに信長は実在した。
休み時間の残りが少なくなったので、一旦スマホをしまった。涼夏が食べ終わった弁当箱を片付けながら、爽やかな笑顔を浮かべた。
「土曜日の方はナッちゃんを誘っておいてくれ」
奈都がまた闇堕ちしそうなくらい、この人は自然と奈都のことを考えてくれる。そっちも来れないことを伝えるのは胸が痛むので、自分で報告させよう。もしかしたら、涼夏に誘われたら奈都の気も変わるかもしれない。
「奈都もきっと喜ぶよ」
疲れたようにそう言うと、絢音が何かを察したように苦笑した。本当にうちの奈都がごめんなさいという感じだ。
「結構かぶってる日も多いから。こことか」
イベントが4つかぶっている土曜日を指差しながらそう言って、どれか行きたいと訴えると、絢音が自分のスマホで地図を開いた。
「一番下の海辺の花火は、車がないと行けそうにないね。実質3つに絞られた」
「規模的には南の町のやつより、北の市のやつの方が大きそうだけど、やっぱり陸の花火より海の花火の方が開放感がある、気がする」
「どっちも電車の駅から歩いて行けそう。花火以外はまあ、屋台がちょっと出て終わりかな。北のはステージもあるみたい」
「この花火じゃない西のお祭りは? 提灯いっぱいの舟が壮観」
「花火はぶっちゃけどれでもいい気がするから、それに行くのも手だね」
二人が規模やアクセス、内容から検討してくれる。奈都にもこういう反応を期待していたのだが、これも日頃の帰宅部の活動の成果であって、急に出来るものではないのかもしれない。
「花火は、次の祝日に港である南の祭に行こうと思うんだけど、どう思う?」
自分のプランを告げると、涼夏が「南の祭か」と唸った。
「混むぞ? 30万人という説もある」
「経験者? 混まない祭りの方が嫌じゃない?」
「未経験。そもそも花火大会に縁がない」
「去年一緒に行けなかったもんね。ちなみに、去年の東の祭は50万人」
絢音が笑いながら5を作るように片手を広げた。去年は涼夏の代わりにメテオラを連れて行ったが、今年はあらかじめ計画して3人で行こうという算段だ。
そう言うと、涼夏が小さく首を傾げた。
「ナッちゃんは? 破局した?」
「誘ったけど、来れないって。忙しい人だから」
「そっかー。帰宅部で花火大会とか、私ならバイトが入ってても行くのに」
涼夏が肩をすくめて首を振った。反応に困っていると、絢音が楽しそうに笑った。
「涼夏、去年、バイトで来なかったよ?」
「さすがに当日は無理だから! あと、去年はまだそこまで仲良しじゃなかった」
今のは冗談だろうか。私は思わず目を丸くして涼夏を見つめた。
去年の夏は泊まりで海に行っているし、すでに十分仲良しだった。しかし、確かに文化祭はまだだったし、温泉旅行にも行ってなければ、クリスマスパーティーも開いていない。
ずっと変わらず仲良くしているつもりでいたが、まだ出会って4ヶ月だったと言われればそんな気がしないでもない。
「この1年、色々あったね」
私が思い出を懐かしむモードに入ると、涼夏はそれをスルーして再びスマホに目を落とした。
「じゃあ、花火は南の祭で満喫して、この土曜日は提灯舟を見に天ノ川祭って感じにする?」
「伝統に触れるのも大事だね。信長の時代にはすでにあったみたい」
「まるで信長が実在したかのような話ぶりだ」
涼夏があははと笑う。この人が言うとどこまで冗談かわからないが、今度は絢音も突っ込まなかった。さすがに信長は実在した。
休み時間の残りが少なくなったので、一旦スマホをしまった。涼夏が食べ終わった弁当箱を片付けながら、爽やかな笑顔を浮かべた。
「土曜日の方はナッちゃんを誘っておいてくれ」
奈都がまた闇堕ちしそうなくらい、この人は自然と奈都のことを考えてくれる。そっちも来れないことを伝えるのは胸が痛むので、自分で報告させよう。もしかしたら、涼夏に誘われたら奈都の気も変わるかもしれない。
「奈都もきっと喜ぶよ」
疲れたようにそう言うと、絢音が何かを察したように苦笑した。本当にうちの奈都がごめんなさいという感じだ。
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