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第61話 俳句(1)
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どうやら俳句が人気らしい。テレビはそれなりに見る方なので、プロの俳人が芸能人の俳句を添削する番組があって、その影響で俳句をする人が増えているのは知っていたが、ブームになっているとは思わなかった。
その番組の中で、地域のPRポスターに俳句を入れる企画があるのだが、それをユナ高でもやろうと生徒会が言い出して、募集要項とともにポスターになる兼題写真が廊下の掲示板に貼り出された。
最初にそれを見たのは通学時だったので、一緒にいた奈都が「俳句かー」と平坦な声で呟いた。
「つまり、『来れ若者』とか『羽ばたきの先に』みたいなキャッチフレーズのところに、俳句が入るってことだよね」
「そういうことだね」
事実を確認しただけで、奈都はそれっきり何も言わなかった。ただ、言葉の響きから、その後に「それってどうなんだろう」と続くのが聞こえた。
私も若干の寒さを感じなくはないが、流行りに乗ったりバカをやったりする人生の方が楽しいと思うので、奈都にも羽ばたきの先に来て欲しい。
俳句の話は早速帰宅部で共有して、一時間目の放課にみんなで掲示板を見に行くと、涼夏がノーシンキングで言った。
「よし。みんなで応募してポスターになろう!」
実に前向きで好ましい単純さだ。
「涼夏は羽ばたきの先にいる」
私が力強くそう言うと、涼夏が何だそれと首を傾げた。今朝の話を簡単に伝えると、涼夏はわかったと頷いた。
「じゃあ、ナッちゃんは不参加だな。ポスターになった私たちを見て悔しがるがよい」
「ノリの悪い友達でごめんなさい」
「許さない。破門だ」
涼夏が残念そうに首を振る。その隣で、絢音がくすっと笑った。
「羽ばたきの先には何があるの?」
「今の自分を超えることで、想像も出来なかった世界と出会えるの。俳句に応募するとか」
これが一例だと掲示板を指差すと、涼夏が小さく肩をすくめた。
「私は元々こういう人間だから、何も超えてないな。ノーマル涼夏だ」
「SSRホロ涼夏欲しい」
「500円で買えるぞ?」
「高い。大人になってから検討する」
「そこから検討を始めるのかー」
二人のよくわからないやり取りを聞きながら、改めて兼題写真に目を向ける。朝の登校風景を望遠レンズで撮ったものだが、実際の登校シーンを撮影して、後から写った生徒に許可を取ったとは考えにくいので、登校風の写真だろう。
涼夏がどうせならモデルの方になりたかったとぼやいたが、私はホームページに使われただけで十分だ。目立つ人生は送りたくないが、涼夏と一緒にいると否応なしに目立ってしまう。
「じゃあ、とりあえずみんな一句作って持ち寄ろう。各自で応募してもいいけど、3人の叡智を集結させた方がよかろう?」
涼夏の言葉に、絢音と二人で異存はないと頷いた。これも帰宅部の活動の一環であって、応募することが一番の目的ではない。みんなでワイワイ楽しめたらそれでいいのだ。
その番組の中で、地域のPRポスターに俳句を入れる企画があるのだが、それをユナ高でもやろうと生徒会が言い出して、募集要項とともにポスターになる兼題写真が廊下の掲示板に貼り出された。
最初にそれを見たのは通学時だったので、一緒にいた奈都が「俳句かー」と平坦な声で呟いた。
「つまり、『来れ若者』とか『羽ばたきの先に』みたいなキャッチフレーズのところに、俳句が入るってことだよね」
「そういうことだね」
事実を確認しただけで、奈都はそれっきり何も言わなかった。ただ、言葉の響きから、その後に「それってどうなんだろう」と続くのが聞こえた。
私も若干の寒さを感じなくはないが、流行りに乗ったりバカをやったりする人生の方が楽しいと思うので、奈都にも羽ばたきの先に来て欲しい。
俳句の話は早速帰宅部で共有して、一時間目の放課にみんなで掲示板を見に行くと、涼夏がノーシンキングで言った。
「よし。みんなで応募してポスターになろう!」
実に前向きで好ましい単純さだ。
「涼夏は羽ばたきの先にいる」
私が力強くそう言うと、涼夏が何だそれと首を傾げた。今朝の話を簡単に伝えると、涼夏はわかったと頷いた。
「じゃあ、ナッちゃんは不参加だな。ポスターになった私たちを見て悔しがるがよい」
「ノリの悪い友達でごめんなさい」
「許さない。破門だ」
涼夏が残念そうに首を振る。その隣で、絢音がくすっと笑った。
「羽ばたきの先には何があるの?」
「今の自分を超えることで、想像も出来なかった世界と出会えるの。俳句に応募するとか」
これが一例だと掲示板を指差すと、涼夏が小さく肩をすくめた。
「私は元々こういう人間だから、何も超えてないな。ノーマル涼夏だ」
「SSRホロ涼夏欲しい」
「500円で買えるぞ?」
「高い。大人になってから検討する」
「そこから検討を始めるのかー」
二人のよくわからないやり取りを聞きながら、改めて兼題写真に目を向ける。朝の登校風景を望遠レンズで撮ったものだが、実際の登校シーンを撮影して、後から写った生徒に許可を取ったとは考えにくいので、登校風の写真だろう。
涼夏がどうせならモデルの方になりたかったとぼやいたが、私はホームページに使われただけで十分だ。目立つ人生は送りたくないが、涼夏と一緒にいると否応なしに目立ってしまう。
「じゃあ、とりあえずみんな一句作って持ち寄ろう。各自で応募してもいいけど、3人の叡智を集結させた方がよかろう?」
涼夏の言葉に、絢音と二人で異存はないと頷いた。これも帰宅部の活動の一環であって、応募することが一番の目的ではない。みんなでワイワイ楽しめたらそれでいいのだ。
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