ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉

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番外編 TRPG 3(2)

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 さらに詳細を聞き、簡単な契約を交わすと、レストランを出てトリノアに手を振った。
 初めての依頼だが、一連の流れはギルドで説明を受けている。まずは報告だ。どんな形の依頼であれ、報告するのが望ましい。
 義務ではない。冒険者ギルドがない町や村もたくさんあるし、街道で護衛を頼まれるような依頼もある。
 ただ、報告しておけば実績として残るし、助けになる情報がもらえることもある。次の依頼を融通してもらえることもあるかもしれない。
 もっとも、ここのギルドはどうだろう。また冷たくあしらわれるのではないかと怯えつつ、淡々と事実だけ報告すると、先程と同じギルドの職員は「トリノアさんか……」と唸るように呟いてから、思案げに顎に手を当てた。
「何事? まずい依頼だった?」
 スズカが首を傾げると、職員は軽く手を振ってから口を開いた。
「まあ、依頼を受けたなら知っておいた方がいいだろう。実はルベルーデ家からは魔宝石を取り戻す依頼が来ていて、すでに別のパーティーに頼んである」
「一組?」
 スズカが聞くと、職員はそれはそうだろうと頷いた。
 そうなのだろうか。お金がたくさんあるなら、着手金を支払ったとしても、たくさんの冒険者に依頼した方が成功率も上がる。私がそう聞くと、「冒険者同士のトラブルの元だ」と、簡単に教えられた。
 確かに、もし同時に解決した場合、どちらの実績か揉める可能性が高い。最悪、冒険者同士で殺し合いになるかもしれない。
「今回は、私たちが受けたのは猫探しだから」
「その過程で盗まれた魔宝石を手に入れたら? お前らはそれを返す義理はないし、ギルドとしてもそこには関与しない。だが、依頼を受けた冒険者は、はいそうですかと諦めるわけにはいかない」
 実際にそういうトラブルもあるという。盗賊からは奪ってもいいというのも微妙な不文律だし、冒険者が一般人からならず者扱いされる理由もわからないでもない。なんとなく仲間意識を持っていたが、やはり他の冒険者はライバルであり、時には戦いになることもあるかもしれない。
「まあ、交渉するよ。知っちゃったし」
 場合によっては、実はそれは単なる嘘や言いがかりで、戦利品の魔宝石を奪おうとしているだけかもしれない。私たちには、どれが盗まれたものかなどわからないし、そもそも盗まれた事実を知らないことだってある。
 なるほど。これまで遺跡探検しかしてこなかったが、依頼というのは難しいものだ。それこそ、ともに正義を主張する両者の対立に巻き込まれることだってあるだろうし、善も悪も敵も味方も紙一重だ。信じられるのは仲間だけと言ったところか。
 一旦宿に戻って、食べながら作戦会議をする。明日からしばらくまた森に潜るし、宿はどうするか話していたら、入口から見慣れた若者二人が入ってきた。何やら荷物を抱えている。
 彼らも私たちに気が付いて近寄ってきた。
「今朝はうちのリーダーが悪かったね。悪気はないんだ」
「いや、悪気しかないでしょ。慰謝料ください」
 スズカが素っ気なく返してから、「それは?」と荷物を指差して聞いた。
「ただの物資だよ。明日からしばらく森に行くから」
「へー。奇遇だね」
 ナツが余計なことを言う。情報は隠しておくという概念はないのだろうか。若者たちが「キミたちも?」と話を聞きたそうにしたので、私はナツを制して頷いた。
「遺跡探検くらいしかやることないし。そっちは依頼? 盗賊を一掃してくれると嬉しい」
「そんな大それた依頼じゃない」
「じゃあ、盗まれたお金持ちの魔宝石探しとか?」
 とぼけた様子で聞くと、嘘が下手なのか彼らは一瞬言葉に詰まってから、諦めたように声を潜めた。
「どこでそれを? ギルド?」
「テキトーに言っただけ。盗賊がいるならありがちな依頼でしょ?」
 私がそう言うと、スズカがにこにこしながらそれに乗っかった。
「誰が盗まれたの? 私たちの仲でしょ? バイラス君、リツィオ君。どっちがどっちか知らないけど」
 よく名前を覚えていたものだ。二人はしてやられたと笑ってから、「それは内緒」と指を立てて、階段の方へ行ってしまった。
 答えは聞くまでもない。
「楽しくなってきたね」
 ナツが声を弾ませる。私には面倒くさくなったようにしか思えないが、こういう能天気さも大事なのかもしれない。
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