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真夜中に来る女
自分にできることをやるしかない
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布団のひんやりした感覚に包まれる。仮眠とは言っても、事務所でも寝る事はできたのであまり眠気はないのだが……。
「黒島さん入ってどれくらい?」
「え! えっと、一ヶ月ちょっと……ですかね」
「そうなの、そりゃまだ慣れないわね」
「麗香さんはその、いつから祓えるように?」
「んー高校生の頃から商売にしだしたかしら。それまではみるばかりだったけど、やってみたら祓えちゃったから」
考えるようにして答える彼女の横顔を驚いて見る。
「え、やってみたら出来ちゃったって。こう、修行とかしてないんですか?」
「完全に自己流よ。あ、でも途中少し他の先輩について現場はみたけど。祓うって人それぞれやり方あって面白いのよね」
ほうっとため息を漏らした。才能、というやつか。そういえばいつだったか九条さんも、祓うのはまた違った才能だって言ってたっけ。
視るだけじゃなくて祓えたらなあ。私の人生ももう少し違っただろうか。
「成人する頃にはもうそこそこ依頼をもらうようになってたわね。しばらくしたらあの事務所立ち上げてすぐの頃のナオと出会って」
突然出てきた名前にぐっと息をのんだ。隣の麗香さんはうつ伏せになって何やら携帯電話を見ている。私のこのコミュニケーション能力で、世間話として続けていけるだろうか。
「あ、古くからのお知り合い……なんですね」
「あいつは昔から何も変わらないけどね! いい意味でも悪い意味でも。ポッキー何年かじってんのよ、ポッキーの売り上げ貢献しすぎ」
「はは、ちょっと変わった人、ですよねえ。えっと、付き合ってたんでした、っけ」
やっぱり自分はあまり世間話とかが得意ではないことを今更痛感した。言い終えてから後悔する。もう少し自然とスムーズに聞けないものか。
それでも麗香さんは特に気にしてなさそうに答えた。
「そうねー。そんな時期もあったねー」
「……あ、どうして別れちゃったんですか……」
「んーナオっていい人だけどやっぱり変わってるから。恋人には向かないのよね。別れる時散々嫌だって言われたんだけど」
これが臥床した状態でなければ私は倒れ込んでいたかもしれない。それくらいの衝撃で、目の前が真っ白になった。
つまりは麗香さんが振ったんだ。それで、九条さんが別れたくないって言ったんだ。あの九条さんがそんなことを言っている姿なんて想像つかない。
ああでも、そんなに好きだったんだ、麗香さんのこと……。
急に泣き出しそうになってしまったのを隠すように枕に顔を埋めた。
ダメだ、マイナスな思考ばかりになっている。
もういい大人の九条さんに色んな過去があるのは当然のことで、外見は文句の付けようがない彼が美人と付き合っていたのはむしろ納得の出来事じゃないか。誰がどう見ても二人はお似合いだ。
だからってここで拗ねてどうする。今も信頼関係は厚いようだけど、それでも復縁とかしそうではない。悩んでいてもしょうがない。今私に出来ることは、早く一人前になって九条さんの役に立てるようになることだ。
そう、まずはそこから。九条さんに信頼してもらえるようになって、初めてスタートラインに立てるんだから。
溢れそうになった涙をぐっと堪えて顔を上げた。よしっと気合いを入れる。
未だ携帯で遊んでいる麗香さんに尋ねた。
「あの、最初にあったあの匂いって?」
「ああ、あれ? んーうまく言えないけど、その女の残り香みたいな感じ? 私はこう言う場面、鼻で感じ取ることが多いの。ほら、ナオはシルエットで見えたりするし、その人それぞれだから。黒島さんも分かったのは私とちょっと似てる部分があるのかも」
「除霊ってどうやるんですか?」
「状況によるわ。雑魚ならさっきの塩水かけておしまいのことだってあるし。叩いたり自分の中に入れてみたりよ」
「じゃあ……」
「急に質問攻めね?」
麗香さんが携帯から目線を上げて笑う。綺麗な笑顔に見惚れてしまいそうになった。
「勉強させて頂きたくて。早く一人前になりたいんです!」
鼻息荒くしてそういうと、彼女は大きな声で笑った。再び持っている携帯をいじり出しながら言う。
「素直ね。いい心がけだわ。でも無理は禁物よ。現場は数をこなすのが一番。ナオが私に持ってきた案件なんだから相当やばいやつだろうし、とにかく心を落ち着けて行動することよ。焦りは相手にも伝わる」
「は、はい」
返事をした私を再び小さく笑うと、麗香さんはそれ以上何も言わずに布団を肩までかけて反対側を向いてしまった。栗毛色の髪をじっと見つめながら、私も掛け布団を深くかぶる。
焦りは禁物、か。留守番するはずだったのにここまで連れてきたもらったんだし、足手まといにだけはならないようにしないと。
心に強く誓い、私は天井を見つめた。
「黒島さん入ってどれくらい?」
「え! えっと、一ヶ月ちょっと……ですかね」
「そうなの、そりゃまだ慣れないわね」
「麗香さんはその、いつから祓えるように?」
「んー高校生の頃から商売にしだしたかしら。それまではみるばかりだったけど、やってみたら祓えちゃったから」
考えるようにして答える彼女の横顔を驚いて見る。
「え、やってみたら出来ちゃったって。こう、修行とかしてないんですか?」
「完全に自己流よ。あ、でも途中少し他の先輩について現場はみたけど。祓うって人それぞれやり方あって面白いのよね」
ほうっとため息を漏らした。才能、というやつか。そういえばいつだったか九条さんも、祓うのはまた違った才能だって言ってたっけ。
視るだけじゃなくて祓えたらなあ。私の人生ももう少し違っただろうか。
「成人する頃にはもうそこそこ依頼をもらうようになってたわね。しばらくしたらあの事務所立ち上げてすぐの頃のナオと出会って」
突然出てきた名前にぐっと息をのんだ。隣の麗香さんはうつ伏せになって何やら携帯電話を見ている。私のこのコミュニケーション能力で、世間話として続けていけるだろうか。
「あ、古くからのお知り合い……なんですね」
「あいつは昔から何も変わらないけどね! いい意味でも悪い意味でも。ポッキー何年かじってんのよ、ポッキーの売り上げ貢献しすぎ」
「はは、ちょっと変わった人、ですよねえ。えっと、付き合ってたんでした、っけ」
やっぱり自分はあまり世間話とかが得意ではないことを今更痛感した。言い終えてから後悔する。もう少し自然とスムーズに聞けないものか。
それでも麗香さんは特に気にしてなさそうに答えた。
「そうねー。そんな時期もあったねー」
「……あ、どうして別れちゃったんですか……」
「んーナオっていい人だけどやっぱり変わってるから。恋人には向かないのよね。別れる時散々嫌だって言われたんだけど」
これが臥床した状態でなければ私は倒れ込んでいたかもしれない。それくらいの衝撃で、目の前が真っ白になった。
つまりは麗香さんが振ったんだ。それで、九条さんが別れたくないって言ったんだ。あの九条さんがそんなことを言っている姿なんて想像つかない。
ああでも、そんなに好きだったんだ、麗香さんのこと……。
急に泣き出しそうになってしまったのを隠すように枕に顔を埋めた。
ダメだ、マイナスな思考ばかりになっている。
もういい大人の九条さんに色んな過去があるのは当然のことで、外見は文句の付けようがない彼が美人と付き合っていたのはむしろ納得の出来事じゃないか。誰がどう見ても二人はお似合いだ。
だからってここで拗ねてどうする。今も信頼関係は厚いようだけど、それでも復縁とかしそうではない。悩んでいてもしょうがない。今私に出来ることは、早く一人前になって九条さんの役に立てるようになることだ。
そう、まずはそこから。九条さんに信頼してもらえるようになって、初めてスタートラインに立てるんだから。
溢れそうになった涙をぐっと堪えて顔を上げた。よしっと気合いを入れる。
未だ携帯で遊んでいる麗香さんに尋ねた。
「あの、最初にあったあの匂いって?」
「ああ、あれ? んーうまく言えないけど、その女の残り香みたいな感じ? 私はこう言う場面、鼻で感じ取ることが多いの。ほら、ナオはシルエットで見えたりするし、その人それぞれだから。黒島さんも分かったのは私とちょっと似てる部分があるのかも」
「除霊ってどうやるんですか?」
「状況によるわ。雑魚ならさっきの塩水かけておしまいのことだってあるし。叩いたり自分の中に入れてみたりよ」
「じゃあ……」
「急に質問攻めね?」
麗香さんが携帯から目線を上げて笑う。綺麗な笑顔に見惚れてしまいそうになった。
「勉強させて頂きたくて。早く一人前になりたいんです!」
鼻息荒くしてそういうと、彼女は大きな声で笑った。再び持っている携帯をいじり出しながら言う。
「素直ね。いい心がけだわ。でも無理は禁物よ。現場は数をこなすのが一番。ナオが私に持ってきた案件なんだから相当やばいやつだろうし、とにかく心を落ち着けて行動することよ。焦りは相手にも伝わる」
「は、はい」
返事をした私を再び小さく笑うと、麗香さんはそれ以上何も言わずに布団を肩までかけて反対側を向いてしまった。栗毛色の髪をじっと見つめながら、私も掛け布団を深くかぶる。
焦りは禁物、か。留守番するはずだったのにここまで連れてきたもらったんだし、足手まといにだけはならないようにしないと。
心に強く誓い、私は天井を見つめた。
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