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真夜中に来る女
昼間の来客
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私がリビングへ行くと、麗香さんは水を片手にソファに座ってぼんやりとテレビを眺めていた。八重さんとまさこさんは相変わらずダイニングの椅子に腰掛けて暗い顔をしている。
私の姿をみてまさこさんが立ち上がる。テーブルの上にはおにぎりが多く並べられていた。
「簡単なもので申し訳ないですがどうぞ」
「すみません、ありがとうございます」
私は八重さんの正面に腰掛けて大皿に乗ったおにぎりを一つ手に取る。あまり食欲はないのだが、食べねば力も出ない。無理矢理口に放り込んだ。
「八重さんは、食べましたか?」
「あ、ええ、一つ……」
「美味しいです、あ、梅。結局食事もまさこさんにお世話になってしまってすみません」
もぐもぐと食べていると、八重さんが私に話しかけてきた。
「黒島さんもお料理上手なんですよね? 九条さんが美味しいって言ってらしたから」
「え!? あ、あああれは……簡単に作ったお弁当なんですけどね……。八重さんは料理されます?」
「それが簡単なものくらいしか出来なくて。母に教えてもらわなきゃいけないんですけど」
苦笑しながら彼女は言った。私はすかさず会話を結婚の話へ持ち込む。
「京也さんは料理されるんですかね? 結婚したら……あ、八重さんはお仕事続けられるんです?」
「ええ、そのつもりですが」
「そうなんですか。今時共働きなら旦那さんにも料理してもらわなきゃですよ」
八重さんは小さく笑った。意外とスムーズに結婚話を進めていることに心の中でガッツポーズを取る。もう少し聞いてみなければ。
「式は挙げないっておっしゃってましたけど……こう、結婚するにあたって京也さんと意見が割れることとかなかったんですか? それこそ仕事を辞めるだとか、家族についてとか、よくあるって聞くから……」
言い終えてから、急に長々と質問をぶつけた自分の会話の運び方の下手さに呆れた。これじゃあ不自然だ、伊藤さんのコミュ力欲しい。
それでも八重さんは表情を変えずに答えてくれた。多分、私が探っていることに気づいているだろうと思う。
「ええっと、そういう喧嘩とかはまるでないです。全て私の意見を尊重してくれました。彼のご両親にも結婚前からお会いして仲良くしてますし、今のところはまるでもめていません」
キッパリ言う八重さんに、私はそれ以上何も聞けなかった。
現に京也さんは少なくとも一つは問題があると思っている。でも八重さんはそれを知らないということだ。ただこれは誰が悪いという問題ではない、男女間ではよくあることだと思う。
京也さんが言っていたことは、呪詛には関係ないんだろうか……。
伊藤さんが色々調べてくれてはいるが、彼一人だけに頼るのもどうなのだ。麗香さんは八重さんから離れられないのだし、私も何か出来ることがあればいいのに。
ふうと息を吐いてぼんやり考える。ここにいても何か出来るわけでもないし、伊藤さんのヘルプに回るとか……でも私のコミュ力で力になれるのか。余計に足を引っ張りそうな気もする。
頭の中でぐるぐると考えている時だった。ふと明るかった部屋に影が落ちた気がした。
ダイニングテーブルすぐ近くにある庭へ出るガラス戸が気になった。私はそちらに目を向ける。白いレースのカーテンが掛けられており、昼の日差しが差し込んでいた。
その明るい日差しを遮るものが、ある。
こちらの様子をただ観察するように女が右半身だけ出していた。レースと逆光で顔はよく見えない。でも赤いワンピースとまんまるの顔だけは認識できた。その姿を見つけた途端、あの異臭が突如部屋に充満する。
私と麗香さんが立ち上がったのは同時だった。そして一足遅れてリビングの扉が開き、九条さんが飛び込んできた。
動きもせずただじっとこちらの様子を見つめているシルエットはあまりに不気味だった。その顔が見えないことが幸いだと思う。
素早く麗香さんがこちらに移動する。
「八重さん、麗香の後ろに」
九条さんの言葉を聞いて八重さんが慌ててそこから離れる。まさこさんは麗香さんを庇うように立ち、手を合わせてひたすら拝んでいる。
私の姿をみてまさこさんが立ち上がる。テーブルの上にはおにぎりが多く並べられていた。
「簡単なもので申し訳ないですがどうぞ」
「すみません、ありがとうございます」
私は八重さんの正面に腰掛けて大皿に乗ったおにぎりを一つ手に取る。あまり食欲はないのだが、食べねば力も出ない。無理矢理口に放り込んだ。
「八重さんは、食べましたか?」
「あ、ええ、一つ……」
「美味しいです、あ、梅。結局食事もまさこさんにお世話になってしまってすみません」
もぐもぐと食べていると、八重さんが私に話しかけてきた。
「黒島さんもお料理上手なんですよね? 九条さんが美味しいって言ってらしたから」
「え!? あ、あああれは……簡単に作ったお弁当なんですけどね……。八重さんは料理されます?」
「それが簡単なものくらいしか出来なくて。母に教えてもらわなきゃいけないんですけど」
苦笑しながら彼女は言った。私はすかさず会話を結婚の話へ持ち込む。
「京也さんは料理されるんですかね? 結婚したら……あ、八重さんはお仕事続けられるんです?」
「ええ、そのつもりですが」
「そうなんですか。今時共働きなら旦那さんにも料理してもらわなきゃですよ」
八重さんは小さく笑った。意外とスムーズに結婚話を進めていることに心の中でガッツポーズを取る。もう少し聞いてみなければ。
「式は挙げないっておっしゃってましたけど……こう、結婚するにあたって京也さんと意見が割れることとかなかったんですか? それこそ仕事を辞めるだとか、家族についてとか、よくあるって聞くから……」
言い終えてから、急に長々と質問をぶつけた自分の会話の運び方の下手さに呆れた。これじゃあ不自然だ、伊藤さんのコミュ力欲しい。
それでも八重さんは表情を変えずに答えてくれた。多分、私が探っていることに気づいているだろうと思う。
「ええっと、そういう喧嘩とかはまるでないです。全て私の意見を尊重してくれました。彼のご両親にも結婚前からお会いして仲良くしてますし、今のところはまるでもめていません」
キッパリ言う八重さんに、私はそれ以上何も聞けなかった。
現に京也さんは少なくとも一つは問題があると思っている。でも八重さんはそれを知らないということだ。ただこれは誰が悪いという問題ではない、男女間ではよくあることだと思う。
京也さんが言っていたことは、呪詛には関係ないんだろうか……。
伊藤さんが色々調べてくれてはいるが、彼一人だけに頼るのもどうなのだ。麗香さんは八重さんから離れられないのだし、私も何か出来ることがあればいいのに。
ふうと息を吐いてぼんやり考える。ここにいても何か出来るわけでもないし、伊藤さんのヘルプに回るとか……でも私のコミュ力で力になれるのか。余計に足を引っ張りそうな気もする。
頭の中でぐるぐると考えている時だった。ふと明るかった部屋に影が落ちた気がした。
ダイニングテーブルすぐ近くにある庭へ出るガラス戸が気になった。私はそちらに目を向ける。白いレースのカーテンが掛けられており、昼の日差しが差し込んでいた。
その明るい日差しを遮るものが、ある。
こちらの様子をただ観察するように女が右半身だけ出していた。レースと逆光で顔はよく見えない。でも赤いワンピースとまんまるの顔だけは認識できた。その姿を見つけた途端、あの異臭が突如部屋に充満する。
私と麗香さんが立ち上がったのは同時だった。そして一足遅れてリビングの扉が開き、九条さんが飛び込んできた。
動きもせずただじっとこちらの様子を見つめているシルエットはあまりに不気味だった。その顔が見えないことが幸いだと思う。
素早く麗香さんがこちらに移動する。
「八重さん、麗香の後ろに」
九条さんの言葉を聞いて八重さんが慌ててそこから離れる。まさこさんは麗香さんを庇うように立ち、手を合わせてひたすら拝んでいる。
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