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オフィスに潜む狂気
探索
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そして花田さんの申し訳なさそうな小声がした。
「すみません……あの、あんな感じで……みなさまにも失礼を」
項垂れている彼を不憫に思った。花田さんを責める気なんてまるでない、やはりこの社会上司に中々逆らえない力関係は存在する。その上あのキャラはこちらの戦意を喪失させるだけのレベルだ。
伊藤さんが微笑んだ。
「大丈夫ですよ花田さん」
「本当に……申し訳ない……情けない……」
最初に事務所に来た時の様子が蘇る。あれは納得だ、むしろあんな上司がいながらそれでも相談に来た花田さんはすごいと思う。
九条さんも言った。
「言いましたが我々のクライアントは花田さんや被害に遭っている社員の方々なので。あのようなただ暴言を吐き散らすだけの存在は別に気にしてませんから」
花田さんはようやく顔を上げて微笑んだ。だがその時、遠くから怒号が飛んできた。
「花田! 仕事しないなら帰りなさい給料泥棒!」
再び彼の表情は暗くなってしまった。伊藤さんがすかさず話しかける。
「僕たちのことはいいですから。とりあえず花田さんのお仕事を進めてください、何かあれば声かけますから」
「……はい、すみません」
花田さんは立ち上がってそろそろと自席に戻っていった。それを三人で見送った後、九条さんがアイコンタクをしてくる。答えるように私たちは静かに殺伐とした営業部から一旦出て行った。
「はーーっ。想像以上にやばいキャラでしたね……」
伊藤さんが自販機に小銭を入れながらため息をつく。すぐ後ろにある椅子に腰掛けた私と九条さんは頷いた。
あんな人のそばで毎日働くだなんて、気が滅入りそう。私はさっきの場面だけで十分萎縮しちゃったし。
購入した飲み物を私たちに渡した伊藤さんも腰掛ける。頂いたお茶を手に持ち、私は頭を下げた。
「あの、さっきは止めてくれてありがとうございました……私その、長谷川さんの思惑に気づかずまんまと乗るところでした……」
もっと冷静にならなければ、と反省する。九条さんも伊藤さんも気づいていたのに。
伊藤さんが目を細めて笑った。
「ううん、全然。むしろ、僕のために怒ってくれたんでしょ、ありがとう」
「そ、そう言うと響きはいいですが……カッとなっただけで」
「光さんはこう見えて意外と気が強いですからね」
水を飲みながら九条さんが言う。さらに、「男性相手にビンタをかますこともありますし」と付け加えられて顔を手で覆った。それは別の依頼の話。ちょっと最低な男性と調査中会うことがあり、つい殴ってしまった経験がある。伊藤さんは大きな声で笑った。
九条さんはペットボトルとテーブルに置くと、表情を引き締めて言った。
「さて、今回は撮影機材の使用は難しそうです、私と光さんが直接探し出すことになりそうです。先ほど聞いた話ですが、共通して中年男性ときている。間違いなくいるのは中年男性でしょう」
伊藤さんがココアを飲みながら言った。どうでもいいけど伊藤さんにココアが似合いすぎてる。
「霊になりそうな中年男性について聞き込みしたいけど長谷川さんがいる手前就業中は無理ですねえ。帰り際狙ってみんなを捕まえて話を聞くしかないですね、ちょっと時間かかりそうだなあ」
「あとは一応他部署にもこういった事例がないか聞いてみてください」
「はいはーいっと」
「同時に伊藤さん、この会社で最近亡くなった男性を一応調べて頂きます。営業部に限らず。斉木さんたちは面識のない人物と言っていましたが、他の部署の人かもしれない」
私はお茶を飲みながら考える。他の部署の人物、か。これだけ大きな会社なら知らない人の方が多いだろうし、ありえる。ただそうなるとなぜ営業部で出没するのかという疑問はあるが、それは置いておこう。
九条さんはどこか一点を見つめながら言う。
「最近亡くなった中年男性をリストアップしたら、楠瀬さんは一瞬とはいえ男性の顔を見てますから写真を見せて確認しましょう。霊の正体が分かればぐっと浄霊に近づけますからね。それでいきましょう。そして光さん」
「は、はい!」
突然呼ばれて声が少し裏返った。九条さんはいつもの真顔で私に言った。
「我々はひたすら探索です。どこかで霊に会えるように」
「……出た、探索タイプですか……」
がくりと項垂れた。こういうパターン、体力使うんだよな。いつだったか夜の学校を歩き回って疲れ果てた事案を思い出す。
「まあ会社全体ではなく、とりあえず営業部近くだけ見てまわりましょうか。資料室など」
「分かりました」
九条さんが立ち上がったのを見て私も続く。伊藤さんはいつのまにか取り出したパソコンを開いて私たちに手を振った。
「僕は情報見てますから~。いってらっしゃーい」
その笑顔に手をふり返すと、私たちは廊下を歩き出した。
「すみません……あの、あんな感じで……みなさまにも失礼を」
項垂れている彼を不憫に思った。花田さんを責める気なんてまるでない、やはりこの社会上司に中々逆らえない力関係は存在する。その上あのキャラはこちらの戦意を喪失させるだけのレベルだ。
伊藤さんが微笑んだ。
「大丈夫ですよ花田さん」
「本当に……申し訳ない……情けない……」
最初に事務所に来た時の様子が蘇る。あれは納得だ、むしろあんな上司がいながらそれでも相談に来た花田さんはすごいと思う。
九条さんも言った。
「言いましたが我々のクライアントは花田さんや被害に遭っている社員の方々なので。あのようなただ暴言を吐き散らすだけの存在は別に気にしてませんから」
花田さんはようやく顔を上げて微笑んだ。だがその時、遠くから怒号が飛んできた。
「花田! 仕事しないなら帰りなさい給料泥棒!」
再び彼の表情は暗くなってしまった。伊藤さんがすかさず話しかける。
「僕たちのことはいいですから。とりあえず花田さんのお仕事を進めてください、何かあれば声かけますから」
「……はい、すみません」
花田さんは立ち上がってそろそろと自席に戻っていった。それを三人で見送った後、九条さんがアイコンタクをしてくる。答えるように私たちは静かに殺伐とした営業部から一旦出て行った。
「はーーっ。想像以上にやばいキャラでしたね……」
伊藤さんが自販機に小銭を入れながらため息をつく。すぐ後ろにある椅子に腰掛けた私と九条さんは頷いた。
あんな人のそばで毎日働くだなんて、気が滅入りそう。私はさっきの場面だけで十分萎縮しちゃったし。
購入した飲み物を私たちに渡した伊藤さんも腰掛ける。頂いたお茶を手に持ち、私は頭を下げた。
「あの、さっきは止めてくれてありがとうございました……私その、長谷川さんの思惑に気づかずまんまと乗るところでした……」
もっと冷静にならなければ、と反省する。九条さんも伊藤さんも気づいていたのに。
伊藤さんが目を細めて笑った。
「ううん、全然。むしろ、僕のために怒ってくれたんでしょ、ありがとう」
「そ、そう言うと響きはいいですが……カッとなっただけで」
「光さんはこう見えて意外と気が強いですからね」
水を飲みながら九条さんが言う。さらに、「男性相手にビンタをかますこともありますし」と付け加えられて顔を手で覆った。それは別の依頼の話。ちょっと最低な男性と調査中会うことがあり、つい殴ってしまった経験がある。伊藤さんは大きな声で笑った。
九条さんはペットボトルとテーブルに置くと、表情を引き締めて言った。
「さて、今回は撮影機材の使用は難しそうです、私と光さんが直接探し出すことになりそうです。先ほど聞いた話ですが、共通して中年男性ときている。間違いなくいるのは中年男性でしょう」
伊藤さんがココアを飲みながら言った。どうでもいいけど伊藤さんにココアが似合いすぎてる。
「霊になりそうな中年男性について聞き込みしたいけど長谷川さんがいる手前就業中は無理ですねえ。帰り際狙ってみんなを捕まえて話を聞くしかないですね、ちょっと時間かかりそうだなあ」
「あとは一応他部署にもこういった事例がないか聞いてみてください」
「はいはーいっと」
「同時に伊藤さん、この会社で最近亡くなった男性を一応調べて頂きます。営業部に限らず。斉木さんたちは面識のない人物と言っていましたが、他の部署の人かもしれない」
私はお茶を飲みながら考える。他の部署の人物、か。これだけ大きな会社なら知らない人の方が多いだろうし、ありえる。ただそうなるとなぜ営業部で出没するのかという疑問はあるが、それは置いておこう。
九条さんはどこか一点を見つめながら言う。
「最近亡くなった中年男性をリストアップしたら、楠瀬さんは一瞬とはいえ男性の顔を見てますから写真を見せて確認しましょう。霊の正体が分かればぐっと浄霊に近づけますからね。それでいきましょう。そして光さん」
「は、はい!」
突然呼ばれて声が少し裏返った。九条さんはいつもの真顔で私に言った。
「我々はひたすら探索です。どこかで霊に会えるように」
「……出た、探索タイプですか……」
がくりと項垂れた。こういうパターン、体力使うんだよな。いつだったか夜の学校を歩き回って疲れ果てた事案を思い出す。
「まあ会社全体ではなく、とりあえず営業部近くだけ見てまわりましょうか。資料室など」
「分かりました」
九条さんが立ち上がったのを見て私も続く。伊藤さんはいつのまにか取り出したパソコンを開いて私たちに手を振った。
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その笑顔に手をふり返すと、私たちは廊下を歩き出した。
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