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聞こえない声
どうもすみません、じゃない。
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考えるように腕を組んだ九条さんは、少し沈黙を流した後一つだけ頷いて菊池さんに言った。
「わかりました、とりあえず見に行ってみなくては何もわかりませんから、菊池さんのご自宅に行ってもよいですか」
「あ、はい。それは大丈夫です」
「先ほども言いましたが、うちは基本的に浄霊です。浄霊が不可能と思えば他に除霊を頼むこともあります」
「あ、そうなんですか……」
「可能ならば泊まり込みで、夜の様子なども見させていただけたら。一室お借りできれば嬉しいのですが」
「す、すみません。一人暮らしのワンルームでして。夜は全然いてもらっても構いませんが、僕も仕事があるので平日の昼間はちょっと……」
「ああ、それは仕方ないですね。家主がいないのに家に滞在するのも申し訳ないので、基本夜からの観察にするとしましょう。住所だけ控えさせて頂きます、少し準びをしてから今日早速伺っても?」
「よろしくお願いします」
菊池さんは立ち上がって深々と頭を下げた。私たちも同じようにお辞儀をする。
それから菊池さんは伊藤さんに住所を告げいくつか言葉を交わすと、そのまま事務所を後にした。伊藤さんは早速パソコンに向かって座り何かを調べている。
九条さんはソファの上にだらりと座り、ぼんやり天井を見上げていた。
「今回は泊まり込みなしですか?」
「そうなりますね。まあこういうパターンもあります。調査が長引く可能性があるのであまり好ましくないんですがね」
「おお……荷物あんまり必要ないのかも……」
「光さん菊池さんを見てどうでしたか」
そう尋ねられて思い出す。彼からなんだか嫌な感じが伝わってきたこと。
「あ! そうでした、何か連れてるってわけじゃないけど、どこか不穏な感じがしました。思い込みとかじゃないと思います」
「同感ですね。つけられるストーカーは別として、家の中にも何かいるのは間違いないと思っています。伊藤さんどうですか」
九条さんの問いかけに、伊藤さんが答えた。
「とりあえず菊池さんの住むアパートですけど、こっから車で二十分くらいのとこですかね。比較的よくあるアパートです。事故物件とかじゃあなさそうです、土地についてはこれから調べますけど」
「よろしくお願いします。
さて……流れで聞いたものの、後をつけてくるストーカーはさすがに分野外なんですが」
少しだけ眉を下げて九条さんが困ったように言った。確かに、生きてる人間相手だもんなあ。
「それも時々後をつけてくる、ぐらいじゃ実害ほぼないですからね……」
「我々は霊障の方に力を入れましょう。申し訳ないですがストーカーは私たちの出番ではありません」
「まあそうですね」
「まあ、もし万が一見かけるようなことがあれば接触しても面白いかもしれませんね」
「ちょ、ちょっと怖いと思いますが……
あ! 泊まり込みじゃないならもう少し荷物減らしてきます! 着替えとかそんないらないだろうし」
普段何泊になるかわからない調査のため、下着などの着替えやメイク用品などもしっかり入っている仕事用キャリーバッグ。今回はだいぶ重さが楽になりそうだ。
私は慌てて裏へ入って行った。仮眠用の簡単なベッドや小さなキッチンがある場所だ。
すみの方におかれたキャリーケースを取り出す。それを開き、パンパンになっている荷物をいくつか出してベッドの上に置いた。
「着替えもこんなにいらないし。紙袋に入れて置いておこう……洗面用具、はいるなあ。メイク用品、は念のため」
ぶつぶつ言いながらぽいぽいと荷物を出している時だ。簡易的な白いカーテンが突然開かれた。同時に九条さんの声が響く。
「光さん。ポッキーは今日光さんたちが買ってきてくれた期間限定のものを多めに……」
声に反射して顔を上げる。未だ少しだけ前髪が跳ねている九条さんがこちらを見下ろしていた。そして言い終えるより前に、私の姿を見てああ、と一人声を出す。
「どうもすみません」
全く申し訳なさそうな謝罪の言葉が聞こえる。はっとして隣をみた。適当にベッドに投げ出した荷物の中に、下着が一部溢れ出していたのだ。
「あ、ああっ!!」
「というわけでポッキーお願いします」
全然「というわけ」じゃない!! 慌てて隠す私をよそに、九条さんは何も表情を変えることなくまた事務所の方に戻って行ってしまった。
離れたところで、伊藤さんが「入りますぐらい言ったほうがいいですよ……」と呆れて注意しているのが聞こえる。何があったのか感づいたのだろう。
私ははあーと大きなため息をついて、見えてしまっている下着を静かにしまった。
前もこういうことあったなあ。半年前か。あの時も九条さんは全然気にしてなさそうだった。そして今もおんなじ。私の下着<<<<ポッキーだもんなあ……。
しょんぼりと落ち込む。もし、この半年の間に私を異性として少しでも意識してくれていたら。こんな飄々としてないはずだよね。やっぱり半年前と変わらず、全然女として見られてないんだ。もっとセクシーなパンツだったら九条さんも意識してくれただろうか。いやそんなことで意識されてもな。
「はあ……」
とりあえず彼のご希望通りのポッキーをたくさん詰めておいた。そんなの、言われなくても分かってたのに。
「わかりました、とりあえず見に行ってみなくては何もわかりませんから、菊池さんのご自宅に行ってもよいですか」
「あ、はい。それは大丈夫です」
「先ほども言いましたが、うちは基本的に浄霊です。浄霊が不可能と思えば他に除霊を頼むこともあります」
「あ、そうなんですか……」
「可能ならば泊まり込みで、夜の様子なども見させていただけたら。一室お借りできれば嬉しいのですが」
「す、すみません。一人暮らしのワンルームでして。夜は全然いてもらっても構いませんが、僕も仕事があるので平日の昼間はちょっと……」
「ああ、それは仕方ないですね。家主がいないのに家に滞在するのも申し訳ないので、基本夜からの観察にするとしましょう。住所だけ控えさせて頂きます、少し準びをしてから今日早速伺っても?」
「よろしくお願いします」
菊池さんは立ち上がって深々と頭を下げた。私たちも同じようにお辞儀をする。
それから菊池さんは伊藤さんに住所を告げいくつか言葉を交わすと、そのまま事務所を後にした。伊藤さんは早速パソコンに向かって座り何かを調べている。
九条さんはソファの上にだらりと座り、ぼんやり天井を見上げていた。
「今回は泊まり込みなしですか?」
「そうなりますね。まあこういうパターンもあります。調査が長引く可能性があるのであまり好ましくないんですがね」
「おお……荷物あんまり必要ないのかも……」
「光さん菊池さんを見てどうでしたか」
そう尋ねられて思い出す。彼からなんだか嫌な感じが伝わってきたこと。
「あ! そうでした、何か連れてるってわけじゃないけど、どこか不穏な感じがしました。思い込みとかじゃないと思います」
「同感ですね。つけられるストーカーは別として、家の中にも何かいるのは間違いないと思っています。伊藤さんどうですか」
九条さんの問いかけに、伊藤さんが答えた。
「とりあえず菊池さんの住むアパートですけど、こっから車で二十分くらいのとこですかね。比較的よくあるアパートです。事故物件とかじゃあなさそうです、土地についてはこれから調べますけど」
「よろしくお願いします。
さて……流れで聞いたものの、後をつけてくるストーカーはさすがに分野外なんですが」
少しだけ眉を下げて九条さんが困ったように言った。確かに、生きてる人間相手だもんなあ。
「それも時々後をつけてくる、ぐらいじゃ実害ほぼないですからね……」
「我々は霊障の方に力を入れましょう。申し訳ないですがストーカーは私たちの出番ではありません」
「まあそうですね」
「まあ、もし万が一見かけるようなことがあれば接触しても面白いかもしれませんね」
「ちょ、ちょっと怖いと思いますが……
あ! 泊まり込みじゃないならもう少し荷物減らしてきます! 着替えとかそんないらないだろうし」
普段何泊になるかわからない調査のため、下着などの着替えやメイク用品などもしっかり入っている仕事用キャリーバッグ。今回はだいぶ重さが楽になりそうだ。
私は慌てて裏へ入って行った。仮眠用の簡単なベッドや小さなキッチンがある場所だ。
すみの方におかれたキャリーケースを取り出す。それを開き、パンパンになっている荷物をいくつか出してベッドの上に置いた。
「着替えもこんなにいらないし。紙袋に入れて置いておこう……洗面用具、はいるなあ。メイク用品、は念のため」
ぶつぶつ言いながらぽいぽいと荷物を出している時だ。簡易的な白いカーテンが突然開かれた。同時に九条さんの声が響く。
「光さん。ポッキーは今日光さんたちが買ってきてくれた期間限定のものを多めに……」
声に反射して顔を上げる。未だ少しだけ前髪が跳ねている九条さんがこちらを見下ろしていた。そして言い終えるより前に、私の姿を見てああ、と一人声を出す。
「どうもすみません」
全く申し訳なさそうな謝罪の言葉が聞こえる。はっとして隣をみた。適当にベッドに投げ出した荷物の中に、下着が一部溢れ出していたのだ。
「あ、ああっ!!」
「というわけでポッキーお願いします」
全然「というわけ」じゃない!! 慌てて隠す私をよそに、九条さんは何も表情を変えることなくまた事務所の方に戻って行ってしまった。
離れたところで、伊藤さんが「入りますぐらい言ったほうがいいですよ……」と呆れて注意しているのが聞こえる。何があったのか感づいたのだろう。
私ははあーと大きなため息をついて、見えてしまっている下着を静かにしまった。
前もこういうことあったなあ。半年前か。あの時も九条さんは全然気にしてなさそうだった。そして今もおんなじ。私の下着<<<<ポッキーだもんなあ……。
しょんぼりと落ち込む。もし、この半年の間に私を異性として少しでも意識してくれていたら。こんな飄々としてないはずだよね。やっぱり半年前と変わらず、全然女として見られてないんだ。もっとセクシーなパンツだったら九条さんも意識してくれただろうか。いやそんなことで意識されてもな。
「はあ……」
とりあえず彼のご希望通りのポッキーをたくさん詰めておいた。そんなの、言われなくても分かってたのに。
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