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憧れの人
最後
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「いえ。…………あの」
私が言いかけた時、先に九条さんが口を開いた。私の方は見ることなく、置かれた弁当を眺めながらいう。
「いつもありがとうございます。
ですが、そろそろ私も光さんに頼ってばかりはいられないと思うので。これからは自分で昼食を用意します。ありがとうございました」
淡々と告げられたそれを聞いて、ホッとすると同時にひどく落ち込む自分がいた。
実のところ、私もそれを提案しようと思っていたのだ。私も振られた相手にお弁当を作るのは気まずいし、九条さんだってそうだろう。だから、明日からは外で食べようと思いますって言おうとしていたのだ。
いくら九条さんが気遣いできないとはいえ、流石にこの状況は良くないと思ったのだろう。
九条さんから言ってもらってよかった、言う手間が省けた。ただ……悲しいのも、事実。
褒めてもらえるのが嬉しくて薩摩芋ばっかり買ってきていたあの頃は楽しかったなと思った。もう私が作ることはないだろう。
にっこり笑って言った。
「同じことを言おうと思ってました! ちゃんとポッキー以外で昼食とってくださいよ」
「……善処します」
「私はちょっとデザートが欲しいので、コンビニに行ってきます。九条さん何かいりますか?」
「特には」
「じゃあ行ってきます」
私はそれだけ明るい声で言うと、カバンを手に持ってゆっくりと事務所を出た。本当は駆け出したかったのを懸命に堪えて余裕を作ってみせた。
扉を閉めてエレベーターに向かい出した時、一気に悲しみの波が押し寄せてきて泣きそうになる。ああ、泣くな泣くな。泣いたってしょうがない、こうなることはわかって告白したんだろ自分。
口を強く閉じて涙を抑えた。やっぱり告白なんかするんじゃなかった、という自分と、言わなきゃいつまでも片想いで時間を無駄にしてたんだぞ、という自分が無駄な葛藤を始める。終わったことだというのに。
エレベーターに乗り込みビルから出る。外は空が真っ白で雪でも降り出しそうな雰囲気だった。天気予報を見るのを忘れてしまった、今日は崩れるのかな。
ぼんやりそんなことを思いながら、本当はデザートなんて食べるつもりはないけどコンビニへ向かった。変な意地で、嘘じゃなくて本当にコンビニに行ったんですという事実が欲しかったのだ。
歩いてすぐにあるコンビニへ辿り着く。温かな暖房がぶわっと自分を包んだ。レジ横にある肉まんを見て、甘味よりあっちにしようかなどと悩みながら、とりあえずデザート売り場へ移動する。
昼時だからか種類は少なかった。スカスカの棚を見て、欲しいものがないなあ、なんてがっくりする。そんな些細なことですら泣きそうになっていた時、背後から明るい声がした。
「あれ、光ちゃん? 買いにきてたの?」
ぱっと振り返る。伊藤さんが笑って私を見ていた。手にはお弁当やお菓子を持っている。それを見ただけで、自分の心がふわりと浮くのを自覚した。
「伊藤さん」
「あ、デザート?」
「はい。でもいっぱい売り切れてて……」
「ほんとだねー。あ、これ結構美味しかったよ、最近発売されたやつ」
伊藤さんはチーズタルトを指差した。私は食べたことのないやつで、さっき見た時は特に魅力を感じなかった。でも伊藤さんが勧めてくれた、というだけで買ってみようと思うから不思議だ。多分、この人変な壺とかもめちゃくちゃ売っちゃえる人だと思う。
「へえ! じゃあ買ってみます」
「うんうん。光ちゃん、かばん持ってるってことはお弁当も持ってる?」
「え? はい、持ってますが」
「寒いけどちょっと近くの公園で食べない?」
予想外の提案に伊藤さんを見る。彼は小さく微笑んで、言った。
「何かあったでしょう?」
優しい声に息をするのすら忘れた。彼は私を探るように、でも包むようにみている。
……なんでバレたんだろう。
別に普段通り過ごしているつもりだったのに、きっとうまくやれてると思ってたのに。ううん、きっと、伊藤さんのセンサーが凄すぎるだけ。
私は小さく頷くと、温かい飲み物も手にしてレジに向かった。
歩いてすぐ近くの公園につき、二人でベンチに腰掛けた。この寒空の下、外で座っているのなんて私たちぐらいだった。人気のない公園で、とりあえず温かいお茶を飲む。
伊藤さんも買ったお弁当を取り出して食べ出した。なんとなく切り出しにくい自分も、お弁当を取り出す。
「なんかさーなんとなく、なんとなーくだけど、元気ないなあって思ってて」
私が言いかけた時、先に九条さんが口を開いた。私の方は見ることなく、置かれた弁当を眺めながらいう。
「いつもありがとうございます。
ですが、そろそろ私も光さんに頼ってばかりはいられないと思うので。これからは自分で昼食を用意します。ありがとうございました」
淡々と告げられたそれを聞いて、ホッとすると同時にひどく落ち込む自分がいた。
実のところ、私もそれを提案しようと思っていたのだ。私も振られた相手にお弁当を作るのは気まずいし、九条さんだってそうだろう。だから、明日からは外で食べようと思いますって言おうとしていたのだ。
いくら九条さんが気遣いできないとはいえ、流石にこの状況は良くないと思ったのだろう。
九条さんから言ってもらってよかった、言う手間が省けた。ただ……悲しいのも、事実。
褒めてもらえるのが嬉しくて薩摩芋ばっかり買ってきていたあの頃は楽しかったなと思った。もう私が作ることはないだろう。
にっこり笑って言った。
「同じことを言おうと思ってました! ちゃんとポッキー以外で昼食とってくださいよ」
「……善処します」
「私はちょっとデザートが欲しいので、コンビニに行ってきます。九条さん何かいりますか?」
「特には」
「じゃあ行ってきます」
私はそれだけ明るい声で言うと、カバンを手に持ってゆっくりと事務所を出た。本当は駆け出したかったのを懸命に堪えて余裕を作ってみせた。
扉を閉めてエレベーターに向かい出した時、一気に悲しみの波が押し寄せてきて泣きそうになる。ああ、泣くな泣くな。泣いたってしょうがない、こうなることはわかって告白したんだろ自分。
口を強く閉じて涙を抑えた。やっぱり告白なんかするんじゃなかった、という自分と、言わなきゃいつまでも片想いで時間を無駄にしてたんだぞ、という自分が無駄な葛藤を始める。終わったことだというのに。
エレベーターに乗り込みビルから出る。外は空が真っ白で雪でも降り出しそうな雰囲気だった。天気予報を見るのを忘れてしまった、今日は崩れるのかな。
ぼんやりそんなことを思いながら、本当はデザートなんて食べるつもりはないけどコンビニへ向かった。変な意地で、嘘じゃなくて本当にコンビニに行ったんですという事実が欲しかったのだ。
歩いてすぐにあるコンビニへ辿り着く。温かな暖房がぶわっと自分を包んだ。レジ横にある肉まんを見て、甘味よりあっちにしようかなどと悩みながら、とりあえずデザート売り場へ移動する。
昼時だからか種類は少なかった。スカスカの棚を見て、欲しいものがないなあ、なんてがっくりする。そんな些細なことですら泣きそうになっていた時、背後から明るい声がした。
「あれ、光ちゃん? 買いにきてたの?」
ぱっと振り返る。伊藤さんが笑って私を見ていた。手にはお弁当やお菓子を持っている。それを見ただけで、自分の心がふわりと浮くのを自覚した。
「伊藤さん」
「あ、デザート?」
「はい。でもいっぱい売り切れてて……」
「ほんとだねー。あ、これ結構美味しかったよ、最近発売されたやつ」
伊藤さんはチーズタルトを指差した。私は食べたことのないやつで、さっき見た時は特に魅力を感じなかった。でも伊藤さんが勧めてくれた、というだけで買ってみようと思うから不思議だ。多分、この人変な壺とかもめちゃくちゃ売っちゃえる人だと思う。
「へえ! じゃあ買ってみます」
「うんうん。光ちゃん、かばん持ってるってことはお弁当も持ってる?」
「え? はい、持ってますが」
「寒いけどちょっと近くの公園で食べない?」
予想外の提案に伊藤さんを見る。彼は小さく微笑んで、言った。
「何かあったでしょう?」
優しい声に息をするのすら忘れた。彼は私を探るように、でも包むようにみている。
……なんでバレたんだろう。
別に普段通り過ごしているつもりだったのに、きっとうまくやれてると思ってたのに。ううん、きっと、伊藤さんのセンサーが凄すぎるだけ。
私は小さく頷くと、温かい飲み物も手にしてレジに向かった。
歩いてすぐ近くの公園につき、二人でベンチに腰掛けた。この寒空の下、外で座っているのなんて私たちぐらいだった。人気のない公園で、とりあえず温かいお茶を飲む。
伊藤さんも買ったお弁当を取り出して食べ出した。なんとなく切り出しにくい自分も、お弁当を取り出す。
「なんかさーなんとなく、なんとなーくだけど、元気ないなあって思ってて」
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