328 / 450
憧れの人
お守り
しおりを挟む
呼びかけに、彼は苦しそうにその手を話した。影山さんの着ているシャツが大きく乱れている。九条さんはドスンとソファに腰掛け、顔を大きく俯かせた。
影山さんは私をみて、深々と頭を下げた。
「黒島さん、申し訳ない。さっきも言ったように、この業界で若い女性はあまりいない。それも、麗香の知り合いの中では、あなたしか思い当たらず、ここに呼び寄せました。
私が命を懸けて必ず祓います。殴ってもらっても構いません、本当に申し訳なかった」
垂れる頭をぼうっと眺めながら、私は怒ることができずにいた。
きっと影山さんも考え抜いて、これしか麗香さんを守れる方法がなかったんだ。私は健康だし、移動だって出来るから、除霊もやりやすい。彼がこの方法を選んだのは、仕方がないと思えた。
私は無理矢理微笑んでみせる。
「麗香さんを助けられたならよかったです。
影山さん、どうかよろしくお願いします」
私の言葉を聞いて、影山さんは苦しそうに顔を歪めて手で覆った。多分、自分でも葛藤があったのだなと想像がつく。
そして私は、いまだに項垂れている隣の九条さんにも声をかけた。
「九条さん。影山さんがいてくれるなら大丈夫です」
「……軽率でした……あなたを、ここに連れてきてしまった」
九条さんのそんなか細い声を聞いたのは初めてだった。驚きの方が大きい。私は首を振って否定した。
「きっと私は、無理矢理ついてきてたと思いますよ。麗香さんは大事な友達なんです、力になりたいですから。それに、影山さんがいてくれるなら大丈夫ですよ」
私の言葉に、九条さんがようやく顔を上げる。叱られた子供のような、弱々しい顔だった。見たことがない表情に、つい苦しくなった。
九条さんは一度大きく息を吐くと、目の前の影山さんに厳しい声を掛けた。
「私もできることはお手伝いします。必ず光さんを守ってください。必ず。
彼女に何かあれば、私は決してあなたを許さない」
その言葉に、影山さんが大きく頷いてこちらを見た。決意したような、力強い視線だった。
病院に長居するのもよくないと話は切り上げられ、私は一度事務所に帰ることになった。影山さんも、除霊するのに色々準備がいるらしい。
麗香さんに挨拶をすることもなく病室を出た。憑いている者が遠ざかれば、きっと彼女も回復して意識を取り戻すはず。そう願うしかない。
そそくさと病院から出た私たちは無言で歩く。駐車場に行く前に、立ち止まって影山さんが私に何かを差し出した。
「黒島さん。これを必ず肌身離さず持っていてください」
真剣な表情で私に差し出したのは、手のひらに収まるほどのお守りだった。赤い布で作られたそれはよくある形の物だ。が、普通なら表に文字が書かれていることがほとんどだが、それは無地だった。
私の両手に握らせると、影山さんが言った。
「必ずですよ。私が作った物です、こちらの力をたっぷりそこに注ぎました。これがあれば、どれだけ強い相手でも数日は大丈夫でしょう」
「数日……」
「今まで被害にあった方を見るに、怪奇な現象が起き始めて数日は命が無事だそう。このお守りもあれば、黒島さんもすぐに狙われると言うわけではないでしょう」
私は強くお守りを握りしめた。影山さんは隣にいる九条さんにももう一つ渡した。
「九条さんにもお渡ししておきます。あなたはなるべく黒島さんから離れないでください。除霊の準備ができましたらすぐに連絡をいたします」
「分かりました。
私は除霊などは一切出来ませんが、出来ることはやりたいと思っています。今回の案件の詳細を伊藤に送って頂けますか。相手を知ることは無駄にはならないと思うので」
「もちろんです。少しだけお時間をください」
影山さんは私をみて、深々と頭を下げた。
「黒島さん、申し訳ない。さっきも言ったように、この業界で若い女性はあまりいない。それも、麗香の知り合いの中では、あなたしか思い当たらず、ここに呼び寄せました。
私が命を懸けて必ず祓います。殴ってもらっても構いません、本当に申し訳なかった」
垂れる頭をぼうっと眺めながら、私は怒ることができずにいた。
きっと影山さんも考え抜いて、これしか麗香さんを守れる方法がなかったんだ。私は健康だし、移動だって出来るから、除霊もやりやすい。彼がこの方法を選んだのは、仕方がないと思えた。
私は無理矢理微笑んでみせる。
「麗香さんを助けられたならよかったです。
影山さん、どうかよろしくお願いします」
私の言葉を聞いて、影山さんは苦しそうに顔を歪めて手で覆った。多分、自分でも葛藤があったのだなと想像がつく。
そして私は、いまだに項垂れている隣の九条さんにも声をかけた。
「九条さん。影山さんがいてくれるなら大丈夫です」
「……軽率でした……あなたを、ここに連れてきてしまった」
九条さんのそんなか細い声を聞いたのは初めてだった。驚きの方が大きい。私は首を振って否定した。
「きっと私は、無理矢理ついてきてたと思いますよ。麗香さんは大事な友達なんです、力になりたいですから。それに、影山さんがいてくれるなら大丈夫ですよ」
私の言葉に、九条さんがようやく顔を上げる。叱られた子供のような、弱々しい顔だった。見たことがない表情に、つい苦しくなった。
九条さんは一度大きく息を吐くと、目の前の影山さんに厳しい声を掛けた。
「私もできることはお手伝いします。必ず光さんを守ってください。必ず。
彼女に何かあれば、私は決してあなたを許さない」
その言葉に、影山さんが大きく頷いてこちらを見た。決意したような、力強い視線だった。
病院に長居するのもよくないと話は切り上げられ、私は一度事務所に帰ることになった。影山さんも、除霊するのに色々準備がいるらしい。
麗香さんに挨拶をすることもなく病室を出た。憑いている者が遠ざかれば、きっと彼女も回復して意識を取り戻すはず。そう願うしかない。
そそくさと病院から出た私たちは無言で歩く。駐車場に行く前に、立ち止まって影山さんが私に何かを差し出した。
「黒島さん。これを必ず肌身離さず持っていてください」
真剣な表情で私に差し出したのは、手のひらに収まるほどのお守りだった。赤い布で作られたそれはよくある形の物だ。が、普通なら表に文字が書かれていることがほとんどだが、それは無地だった。
私の両手に握らせると、影山さんが言った。
「必ずですよ。私が作った物です、こちらの力をたっぷりそこに注ぎました。これがあれば、どれだけ強い相手でも数日は大丈夫でしょう」
「数日……」
「今まで被害にあった方を見るに、怪奇な現象が起き始めて数日は命が無事だそう。このお守りもあれば、黒島さんもすぐに狙われると言うわけではないでしょう」
私は強くお守りを握りしめた。影山さんは隣にいる九条さんにももう一つ渡した。
「九条さんにもお渡ししておきます。あなたはなるべく黒島さんから離れないでください。除霊の準備ができましたらすぐに連絡をいたします」
「分かりました。
私は除霊などは一切出来ませんが、出来ることはやりたいと思っています。今回の案件の詳細を伊藤に送って頂けますか。相手を知ることは無駄にはならないと思うので」
「もちろんです。少しだけお時間をください」
38
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。