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九条尚久と憑かれやすい青年
気になること
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だが九条はきょとんとする。
「謝る必要などありませんよ。あなたのせいではないですし、こういう危険性があることは分かってこの仕事をしているのですから」
「え……怒らないんですか?」
「怒ってどうにかなりますか。少々驚きましたが、仕方ない事です。あなたが気に負うことは何もありません」
きっぱり言い切ったのを聞き、伊藤は小さくお礼を言った。やはりこの人は、変に見えて中身はしっかりしているんだな、と感激しながら。
九条はメニューを取り出し、中身を眺め出す。
「伊藤さんお昼何か食べましたか」
「あ、僕は食べました。ドリンクバーだけ頼みます」
「じゃあ私頼みますね。すみません、このチキン南蛮定食とドリンクバーを」
近くにいた店員に注文したのを見て、伊藤は呆気にとられた。
(こんな状況でご飯すぐ食べられるんだ……メンタルつよ)
女の霊に取り憑かれたらしいというのに、あまり焦ってる様子はない。さっきは伊藤を気遣って色々言ってくれたのだろうと思ったが、もしかすると本人は単にあまり気にしていないのかもしれない。彼は焦ったりすることがあるのだろうか。
「九条さんって……こう、困ったーとか、パニックになるとか、ないんですか……?」
「さあ、あまり経験ありませんね。ポッキーが販売終了したらそうなるかもしれないです」
「……」
「さて。伊藤さん、私にまでマーキングが及んだことで、色々と状況が変わってきました」
九条は突然鋭い目つきになり本題に入ったので、伊藤は背筋を伸ばす。
「と、いいますと?」
「あなた、友人が多いように見えます。昨日も言ってましたよね、同期を呼んで飲み会をしただとか」
「そうですね。まあ友達は多い方かと思います」
「あそこに引っ越してから、そうやって誰かを招き入れたことは何度かありますか?」
「はい。引っ越しを手伝ってくれた友達は何人かそのまま泊っていきましたし、同期での飲みもしたし。一人暮らし初めって、人を呼びたくなるじゃないですか」
「私はなりませんけど」
「想像通り」
九条はともかく、一般的に初めて一人暮らしを始めると、誰かを招きたくなることは多くある。伊藤もそれで、何人か部屋に出入りしたことがある。まあ彼の場合、一人暮らしを始めたというと勝手に人が集まってくるのだが。
「でも、他に取りつかれていそうな人はいないんですよね?」
「は、はい。そうだ、九条さんを紹介してくれた桜井って友達もうちに来た事あるんですよ。そして、今回の僕の息苦しさについても話しています。桜井が同じような体験をしてたら、言ってくれると思うんですよ」
「……なるほど」
九条は気になるのか、首を触りながら言う。
「そうなると、なぜ今回は私も被害に遭ったのか、という疑問が残ります。私はあの部屋の住民ではないです。出入りした男性全てに起こる、なら分かりますが、話を聞く限りそうではない」
「た、確かに……なんで九条さんが?」
「霊とは相性や波長が合う・合わないなどありますが、今回の件はそんな簡単な言葉で片付けられない気がします。それに、私は朝『引っ越せば現象が収まる可能性が高い』と言いましたが、住んでもいない私にこの現象が起きているので、もしかすると引っ越しても収まらないかもしれません」
伊藤は唸って考え込んだ。自分が部屋に入ってから、何人か男は出入りしてるし、泊まらせたこともある。そんな中、どうして九条のみ憑かれてしまったというのか。伊藤と九条に、何か共通点があるのだろうか?
「それと伊藤さん、私はもう一点気になっていたことがあります」
「なんでしょうか」
「あの土地に円城寺綾子が縛り付けられてしまった、という点は理解できます。自分が死んだ場所ですし、ずっと想いを寄せていた矢部義雄もあの土地に住んでいたわけですからね。でもそうなると、『なぜあの部屋だけ円城寺綾子が現れるのか』という疑問が出てきてしまうんです」
「あ……!」
伊藤は九条の言いたいことを理解し、確かにと頷いた。
「謝る必要などありませんよ。あなたのせいではないですし、こういう危険性があることは分かってこの仕事をしているのですから」
「え……怒らないんですか?」
「怒ってどうにかなりますか。少々驚きましたが、仕方ない事です。あなたが気に負うことは何もありません」
きっぱり言い切ったのを聞き、伊藤は小さくお礼を言った。やはりこの人は、変に見えて中身はしっかりしているんだな、と感激しながら。
九条はメニューを取り出し、中身を眺め出す。
「伊藤さんお昼何か食べましたか」
「あ、僕は食べました。ドリンクバーだけ頼みます」
「じゃあ私頼みますね。すみません、このチキン南蛮定食とドリンクバーを」
近くにいた店員に注文したのを見て、伊藤は呆気にとられた。
(こんな状況でご飯すぐ食べられるんだ……メンタルつよ)
女の霊に取り憑かれたらしいというのに、あまり焦ってる様子はない。さっきは伊藤を気遣って色々言ってくれたのだろうと思ったが、もしかすると本人は単にあまり気にしていないのかもしれない。彼は焦ったりすることがあるのだろうか。
「九条さんって……こう、困ったーとか、パニックになるとか、ないんですか……?」
「さあ、あまり経験ありませんね。ポッキーが販売終了したらそうなるかもしれないです」
「……」
「さて。伊藤さん、私にまでマーキングが及んだことで、色々と状況が変わってきました」
九条は突然鋭い目つきになり本題に入ったので、伊藤は背筋を伸ばす。
「と、いいますと?」
「あなた、友人が多いように見えます。昨日も言ってましたよね、同期を呼んで飲み会をしただとか」
「そうですね。まあ友達は多い方かと思います」
「あそこに引っ越してから、そうやって誰かを招き入れたことは何度かありますか?」
「はい。引っ越しを手伝ってくれた友達は何人かそのまま泊っていきましたし、同期での飲みもしたし。一人暮らし初めって、人を呼びたくなるじゃないですか」
「私はなりませんけど」
「想像通り」
九条はともかく、一般的に初めて一人暮らしを始めると、誰かを招きたくなることは多くある。伊藤もそれで、何人か部屋に出入りしたことがある。まあ彼の場合、一人暮らしを始めたというと勝手に人が集まってくるのだが。
「でも、他に取りつかれていそうな人はいないんですよね?」
「は、はい。そうだ、九条さんを紹介してくれた桜井って友達もうちに来た事あるんですよ。そして、今回の僕の息苦しさについても話しています。桜井が同じような体験をしてたら、言ってくれると思うんですよ」
「……なるほど」
九条は気になるのか、首を触りながら言う。
「そうなると、なぜ今回は私も被害に遭ったのか、という疑問が残ります。私はあの部屋の住民ではないです。出入りした男性全てに起こる、なら分かりますが、話を聞く限りそうではない」
「た、確かに……なんで九条さんが?」
「霊とは相性や波長が合う・合わないなどありますが、今回の件はそんな簡単な言葉で片付けられない気がします。それに、私は朝『引っ越せば現象が収まる可能性が高い』と言いましたが、住んでもいない私にこの現象が起きているので、もしかすると引っ越しても収まらないかもしれません」
伊藤は唸って考え込んだ。自分が部屋に入ってから、何人か男は出入りしてるし、泊まらせたこともある。そんな中、どうして九条のみ憑かれてしまったというのか。伊藤と九条に、何か共通点があるのだろうか?
「それと伊藤さん、私はもう一点気になっていたことがあります」
「なんでしょうか」
「あの土地に円城寺綾子が縛り付けられてしまった、という点は理解できます。自分が死んだ場所ですし、ずっと想いを寄せていた矢部義雄もあの土地に住んでいたわけですからね。でもそうなると、『なぜあの部屋だけ円城寺綾子が現れるのか』という疑問が出てきてしまうんです」
「あ……!」
伊藤は九条の言いたいことを理解し、確かにと頷いた。
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