彼女は戦いに赴き、僕はひとりゴーレムを造る

白河マナ

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伝説の魔王の剣

第25話 メキア村の村長

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 サンブルク王国、ニルハーゼン領、メキア村。
 僕が住んでるロドスタニアの町の遥か西、馬車で9日かかる場所にその小さな村はある。
 村民は100名ほど。村人の肌は浅黒く、瞳の色は赤い。とても陽気な人たちで、主に狩猟をして生活しているらしい。
 そして村人たちは、かつて命を懸けて村を守ってくれた伝説の魔王メルギトスを崇拝し、その魔王が残した宝剣を守り続けている。

 僕が魔法士ギルドのギルドマスターのセラ様から受けたクエストは『メキア村に行き、伝説の魔王の剣を抜くか、破壊する』こと。
 旅の途中で一緒になったメルギトスの妹ルルメは、現魔王の指示で魔剣を持ち帰るためにメキア村を目指している。
 僕たちとルルメの目的は一致しているので、剣を抜くことができたら夜の世界に持ち帰ってもらう予定だ。

 ルルメは魔剣を回収した後、どうやって帰るのだろうか。
 出会った場所までは一緒にいられるのかな……目的を果たした後、ロドスタニアに帰れば、僕たちパーティーも解散することになる。

 僕は目的を達成してもいないのに、旅の終わりについて考えていた。
 村が見えたぞとリュースが叫び、キセラとルルメが体を起こす。僕はリュースの隣に座り、だんだん近づいてくる村を一緒に眺める。

「……長旅でしたね」

「長い? そういうことは1年くらい旅してから言えよなー」

 リュースは笑みを覗かせ、馬の手綱を緩めて馬車の速度を上げる。

「まずは村長に会って魔王の剣を見せて頂きましょう。ちなみに交渉はシュルト様にお願いします。セラ様から手助けをし過ぎないように言われていますので」

「わかりました」

 セラ様のクエストを引き受けたのは僕だ。ルルメもいるし、なんとか魔王の剣を抜かせて貰えるように頑張ろう。

「この距離からでも結界らしきものが見えますね。さすがお姉様です」

 ルルメも目を覚まし、会話に加わってくる。
 その傍らで、ルルとメメが仲良くじゃれあっている。メメの見た目は大きく変わってしまったけれど、僕の中では2匹は双子のゴーレム猫のままだ。


◇ ◆ ◇


 村に入ると、槍を持った筋肉質の村男が僕たちの元にやってきた。
 男はヘムと名乗り、僕が一歩前に出てパーティーの代表だと伝えると、すぐに警戒心を解いてくれた。
 子どもが一人、若い女性が二人、中年剣士が一人……僕たちは非常に弱そうに見えるのかもしれない。

 僕が村長と話がしたい旨を伝えると、ヘムが村長の家に案内してくれた。
 その間、家々から村人たちがどんどん出てきて、物珍しそうに僕たちの後についてくる。警戒心を好奇心が上回っているようだ。
 事前に聞いていた通り、村人の肌は浅黒くて瞳の色は赤かった。肌の色はルルメと似ている。

「歓迎されているのかな、これ」

「そうだな。普通の旅人が立ち寄る場所じゃないからな、ここは」

「じゃあ、以前リュースは何をしに来たの?」

「……魔剣を盗みに来た。だが剣は抜けなくて村人に見つかった。袋叩きにされると思ったら大歓迎されて……何日か世話になった。この村では魔剣を抜こうとするヤツは勇気のある者で、その気概を称賛する文化があるんだってよ。俺はスゲーやつとして村人たちに尊敬された。それ以来、盗みはやめて真っ当に生きることにしたよ」

「いつ聞いても恥ずかし過ぎて泣ける話ですね。ちなみにリュースは娘さんの病気の治療のためにお金が欲しかったみたいですよ」

「……こちらの世界は生きづらいですね。夜の世界ではヤミビトの病気の治療にお金なんてかかりません」

「娘さんはその後、どうなったんですか?」

「魔法士ギルドが治療をして元気にしていますよ。ちなみに代金は既にリュースが真面目に働いて完済しています」

「そうですか。よかった」

 他の家よりもひと回り大きい家の前でヘムが立ち止まり、

「着いたぞ。入るのは代表だけにしてくれ。村長に失礼のないようにな」

「シュルト、」

 ルルメがフードの中に隠れていたゴーレム猫を僕に渡してくる。念のための護身用かな……僕はルルを肩に乗せて家の中に入った。
 家の中は僕の工房と同じくらいの広さで、家具のほとんどは木製。部屋の隅には地下への階段があって、テーブルには花瓶が置かれていて色とりどりの花が生けられていた。

「何じゃ、子どもではないか」

 リュースの話によると村長は高齢のお爺さんだ。部屋に村長らしい人はいない。お爺さん口調の女の子だけだ。
 女の子の年齢は僕と同じくらいに見える。他の村人と同じ浅黒い肌に赤い瞳、夜のような黒い髪の少女。
 村長の子ども……にしては幼過ぎるし、お孫さんかな。それならしっくりくる。

「あの、村長に会いたいのですが」

「お主、肩に乗っているその猛烈にカワイイ物体はなんじゃ」

「僕が造った猫です」

「動いてるのだが」

「魔法で造った猫ですから」

「猛烈にカワイイのだが」

「ありがとうございます」

「触ってもいいかの」

「この子は、人の頭に乗るのが好きなんですよ。乗せます?」

「ぜひ乗せてくれ!」

 ルルを少女の頭に乗せる。

「おお~ いいのう~ 可愛すぎじゃの~」

 手鏡を取り出して頭上のルルを眺めている。ルルは女の子の頭が気に入ったのか、丸くなって肉球を舐めて顔を洗っている。

「こんなヤバいものを造れるとは、お主は神か~」

「キミの名前を聞いてもいいかな? 僕はシュルト。シュルト=ローレンツ」

「おお、それは奇遇だのう。ワシの名はファティマじゃ」

 何が奇遇なのかは分からないけれど、女の子の名前はファティマということがわかった。

「お爺さんはどこにいますか?」

「何じゃ、お爺に用か。死んだぞ。今はワシが村長じゃ。威厳ある口調を完全再現してるじゃろ」

「……ファティマが村長?」

「そうじゃ」

「こんなに小さいのに?」

「失礼なやつじゃの。お主もワシと変わらんくらい小さいぞ。こう見えてもワシがこのメキア村で最年長じゃ。お主たちは何の用でお爺に会いにきたのじゃ?」

「さ、最年長?」

「ワシは魔族との混血じゃからな。ワシの母の名は、魔王メルギトス。かつて村を守った英雄じゃ」


【彼女の魔法完成まであと319日】
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