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苦くも楽しい思い出
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「しかし旦那様、今のところ予想の範疇を越えないと言いますか」
「……そうだな。今深く考えても仕方ないことだろう。頭の片隅に置いておく……時期になれば、当主はカロウスに代わってるだろうから、カロウスに投げるのもありだな」
「…………」
なんて事を息子にするのだ、とはツッコまない老執事。
彼はリットが元々平民出身のハンターであることを忘れていない。
元ハンターであることを考えれば、慣れないであろう領地経営や他家との付き合いも頑張っている。
それらの仕事内容を考えれば、少しぐらい問題を後に当主となる息子に投げても問題はないかもしれない。
問題の大きさは尋常じゃないほど大きいかもしれないが、そこに関しては目をつぶる二人だった。
「さて……最後の問題に関しては、最終的にカロウスに投げるというのはなしだな」
「? まだ、問題と呼べることが書かれていたのですか?」
「問題と言えば問題だが、そう悪い話ではない」
リットは老執事にラガスが受付嬢を狙ったストーカーを仕留めてからの話をザっと伝えた。
「そのような事が……旦那様、ハンターの間では、こういった事件は珍しくないのですか?」
老執事は一応貴族出身の執事ということもあり、ハンターの強さなどに関してはまだしも、そういったプライベートに関わるような内容には詳しくなかった。
「そうだな…………ハンターはな、なるべく割の良い依頼を受けたいものだ。あまり労力を掛けず、それでいて報酬額が良い依頼を受けたい」
男爵家の当主として二十年以上活動してきたリットだが、当時の感覚は忘れていなかった。
朝早くクエストボードの前へ向かい、同業者たちとの奪い合いを制し、割の良い依頼を手に入れられた時の記憶は今でも鮮明に思い出せる……逆に、割の良い依頼を同業者に取られてしまった記憶も、鮮明に思い出せる。
リットにとって、どれも青春と呼べる苦くも楽しかった思い出である。
「そうなると、必然的に割の良くない依頼があまるようになる」
「致し方ないことではありますね」
「そうだな。致し方ないことだ。そういった依頼を受けて達成すればギルドからの評価も大なり小なり上がるが、その為に命を落とせば洒落にならない」
ハンターという職業上、死とは常に隣り合わせではあるが、それでもなるべく死ぬ確率は下げたいと思うのが当然。
だが、ハンターギルドとしては、そうもいかない事情がある。
「だが、ギルドも依頼としてクエストにしたからには、ハンターたちに達成してもらわなければ信用に関わる」
割の悪い依頼とは言うが、それでもギルドはしっかりとハンターたちに利益が残るか否かを計算している。
残らなければ、ギルドとしても依頼人からの頼みを依頼という形に変換することは出来ない。
「そういった塩漬けと呼ばれる依頼を、受付嬢たちはハンターたちに受けてもらおうと動くんだ」
「その方の魅力を使って……品のない言い方をすれば、色香を使って誘導すると」
「ふっふっふ、そういう形になってしまうな」
まだ元パーティーメンバーのリアラと恋人関係になる前、受付嬢の魅力に釣られた経験があるリットは思わず二唐井を零す。
「とはいえ、受付嬢たちも基本的には言葉として残らないように、ハンターたちに餌を巻き、上手く釣り上げる」
「……ある種、匠の技ということになりますか」
「…………そうだな。あながち間違ってはいない」
頭の良い受付嬢は、働き始めてすぐ、ストーカー被害に合う可能性が思い浮かぶ。
そこで、男女の関係なしに仲の良い……信頼のおけるハンターと交友を結び、いざという時に助けてもらえるように動く。
これは先輩から教わったとしても、そう簡単に真似られることではなく、下手すればそこで新たなストーカーを生む可能性もある。
「だが、ハンターがそういった受付嬢たちの態度、対応をどう受け取るかはまた別問題だ」
「……なる、ほど」
老執事としてはストーカー行為を行うハンターたちに対して忌避感、もしくは情けないという感情が浮かんでいたが、そこに至る理由を聞くと……同じ男として、少しだけ同情するところがあった。
「……そうだな。今深く考えても仕方ないことだろう。頭の片隅に置いておく……時期になれば、当主はカロウスに代わってるだろうから、カロウスに投げるのもありだな」
「…………」
なんて事を息子にするのだ、とはツッコまない老執事。
彼はリットが元々平民出身のハンターであることを忘れていない。
元ハンターであることを考えれば、慣れないであろう領地経営や他家との付き合いも頑張っている。
それらの仕事内容を考えれば、少しぐらい問題を後に当主となる息子に投げても問題はないかもしれない。
問題の大きさは尋常じゃないほど大きいかもしれないが、そこに関しては目をつぶる二人だった。
「さて……最後の問題に関しては、最終的にカロウスに投げるというのはなしだな」
「? まだ、問題と呼べることが書かれていたのですか?」
「問題と言えば問題だが、そう悪い話ではない」
リットは老執事にラガスが受付嬢を狙ったストーカーを仕留めてからの話をザっと伝えた。
「そのような事が……旦那様、ハンターの間では、こういった事件は珍しくないのですか?」
老執事は一応貴族出身の執事ということもあり、ハンターの強さなどに関してはまだしも、そういったプライベートに関わるような内容には詳しくなかった。
「そうだな…………ハンターはな、なるべく割の良い依頼を受けたいものだ。あまり労力を掛けず、それでいて報酬額が良い依頼を受けたい」
男爵家の当主として二十年以上活動してきたリットだが、当時の感覚は忘れていなかった。
朝早くクエストボードの前へ向かい、同業者たちとの奪い合いを制し、割の良い依頼を手に入れられた時の記憶は今でも鮮明に思い出せる……逆に、割の良い依頼を同業者に取られてしまった記憶も、鮮明に思い出せる。
リットにとって、どれも青春と呼べる苦くも楽しかった思い出である。
「そうなると、必然的に割の良くない依頼があまるようになる」
「致し方ないことではありますね」
「そうだな。致し方ないことだ。そういった依頼を受けて達成すればギルドからの評価も大なり小なり上がるが、その為に命を落とせば洒落にならない」
ハンターという職業上、死とは常に隣り合わせではあるが、それでもなるべく死ぬ確率は下げたいと思うのが当然。
だが、ハンターギルドとしては、そうもいかない事情がある。
「だが、ギルドも依頼としてクエストにしたからには、ハンターたちに達成してもらわなければ信用に関わる」
割の悪い依頼とは言うが、それでもギルドはしっかりとハンターたちに利益が残るか否かを計算している。
残らなければ、ギルドとしても依頼人からの頼みを依頼という形に変換することは出来ない。
「そういった塩漬けと呼ばれる依頼を、受付嬢たちはハンターたちに受けてもらおうと動くんだ」
「その方の魅力を使って……品のない言い方をすれば、色香を使って誘導すると」
「ふっふっふ、そういう形になってしまうな」
まだ元パーティーメンバーのリアラと恋人関係になる前、受付嬢の魅力に釣られた経験があるリットは思わず二唐井を零す。
「とはいえ、受付嬢たちも基本的には言葉として残らないように、ハンターたちに餌を巻き、上手く釣り上げる」
「……ある種、匠の技ということになりますか」
「…………そうだな。あながち間違ってはいない」
頭の良い受付嬢は、働き始めてすぐ、ストーカー被害に合う可能性が思い浮かぶ。
そこで、男女の関係なしに仲の良い……信頼のおけるハンターと交友を結び、いざという時に助けてもらえるように動く。
これは先輩から教わったとしても、そう簡単に真似られることではなく、下手すればそこで新たなストーカーを生む可能性もある。
「だが、ハンターがそういった受付嬢たちの態度、対応をどう受け取るかはまた別問題だ」
「……なる、ほど」
老執事としてはストーカー行為を行うハンターたちに対して忌避感、もしくは情けないという感情が浮かんでいたが、そこに至る理由を聞くと……同じ男として、少しだけ同情するところがあった。
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