483 / 1,103
それ以外にも、方法はある
しおりを挟む
SIDE 神の視点
夕食の時間になるまで延々と模擬戦を繰り返し、夕食を食べ終えた後……セルシアはラガスの母であるリアラの部屋にいた。
傍にはキリアやラガスはいない。
「……美味しいです」
「ふふ、ありがとう」
リアラが自ら淹れた紅茶を飲み、純粋にそう思った。
元々紅茶の味にうるさい方ではないが、舌は肥えている。
だが、それでも自然とリアラが淹れた紅茶を美味しいと感じた。
「今日はとても楽しかったわ」
「私も、楽しかった、です」
目の前に座っている女性はパートナーであるラガスの母親。
パッと見では表情の変化を読み取れないが、セルシアは緊張していた。
「あの人から聞いたわ、ラガスと決勝戦で良い戦いをして……ダブルスでは対戦相手を完封したと」
「……二つ目は、その通りだと、思います」
自惚れではなく、事実だった。
ラガスと自信が組めば、最上級生の三年生であろうと負ける気はしない。
だが、ラガスとぶつかった決勝戦で良い勝負ができたか。
それに関しては、その通りだと即答は出来ない。
確かに良い勝負だったかもしれない。
あの戦いを観ていた観客、貴族たちも良き戦いだっと口にするだろう。
しかし……実際に戦った本人はあまりそうは思っていなかった。
「ですが、ラガスとの決勝戦……あれば良い戦いだったか、それは……分かりません」
セルシアはあの試合、本気でラガスに勝つつもりで挑んだ。
結果はラガスの勝ちであり、自分は負けてしまった。
だが、その結果自体に不屈なのではない。
ラガスが……あの戦いに満足していたのか。
パートナーであるセルシアにとってそこが重要だった。
自分は本気を出し、ラガスはそれを受け止めてくれた。
それに対して自分はラガスの本気を受け止めることが出来るのか?
(多分、出来ない)
例え命を懸けたとしても、満足させられない。
そんな考えが頭をよぎった。
「……セルシアさん。あまりそれについては深く考える必要はないわ。ラガスは……あなたと一緒にいる生活に、非常に満足してる筈よ」
「それは……そうだと、良いんです、けど」
確かに一緒に居る時、笑ってる時は多い。
自分と一緒にいる時間を楽しんでくれていると思う。
ただ……自分は戦うという行為で、ラガスを満足させられるのか。
現状、おそらくシュラと本気で戦っても勝てないと考えている。
(種族や、年齢の差はあるけど、それでも……強い)
セルシアは……ラガスとはお互いに高め合えるパートナーでありたいと思っている。
しかし今のところ、身近でそれが出来るのは自分ではなくシュラやルーフェイスだった。
「セルシアさん、あなたがラガスのそういった面を満足させようと努力するのは、悪いことだとは思わない。でも、パートナーという関係性は、それだけかしら」
「それだけ、というと?」
「知ってると思うけど、歴代のパートナーと出会えた人たちは皆結婚して、夫婦になったの」
それは勿論知っていた。
だが、今まで完全に忘れていた。
「私は、是非あなたがラガスの傍にいてほしいと思ってる。まぁ……個人的にはもう一人、傍に置いておいてほしいと思ってるけどね」
「……勿論大丈夫、です」
リアラが口にしたもう一人が誰なのか、セルシアは直ぐに察した。
現状では自分よりもラガスの傍にいるのに相応しい人物だと思っている。
「ありがとう。えっとね、さっき言った通り戦いという面でラガスを満足させたいという気持ちは間違ってないと思うし、捨てる必要なんてないと思ってるわ」
セルシアの思いは否定しない。
捨てる必要はないと真剣な眼で断言した。
「でもね、それ以外にもあなたがラガスを満足させてあげる方法はある。それこそ、シュラやルーフェイスたちには無理なことね」
リアラが決して卑猥な意味で言っているのではないと、セルシアも解っている。
「アドバイス、ありがとう、ございます」
「こちらこそ、びっくり箱みたいな息子の隣にいてくれて感謝してるわ」
ここで二人のお茶会は解散……にはならず、二人ともラガスの話に花を咲かせた。
夕食の時間になるまで延々と模擬戦を繰り返し、夕食を食べ終えた後……セルシアはラガスの母であるリアラの部屋にいた。
傍にはキリアやラガスはいない。
「……美味しいです」
「ふふ、ありがとう」
リアラが自ら淹れた紅茶を飲み、純粋にそう思った。
元々紅茶の味にうるさい方ではないが、舌は肥えている。
だが、それでも自然とリアラが淹れた紅茶を美味しいと感じた。
「今日はとても楽しかったわ」
「私も、楽しかった、です」
目の前に座っている女性はパートナーであるラガスの母親。
パッと見では表情の変化を読み取れないが、セルシアは緊張していた。
「あの人から聞いたわ、ラガスと決勝戦で良い戦いをして……ダブルスでは対戦相手を完封したと」
「……二つ目は、その通りだと、思います」
自惚れではなく、事実だった。
ラガスと自信が組めば、最上級生の三年生であろうと負ける気はしない。
だが、ラガスとぶつかった決勝戦で良い勝負ができたか。
それに関しては、その通りだと即答は出来ない。
確かに良い勝負だったかもしれない。
あの戦いを観ていた観客、貴族たちも良き戦いだっと口にするだろう。
しかし……実際に戦った本人はあまりそうは思っていなかった。
「ですが、ラガスとの決勝戦……あれば良い戦いだったか、それは……分かりません」
セルシアはあの試合、本気でラガスに勝つつもりで挑んだ。
結果はラガスの勝ちであり、自分は負けてしまった。
だが、その結果自体に不屈なのではない。
ラガスが……あの戦いに満足していたのか。
パートナーであるセルシアにとってそこが重要だった。
自分は本気を出し、ラガスはそれを受け止めてくれた。
それに対して自分はラガスの本気を受け止めることが出来るのか?
(多分、出来ない)
例え命を懸けたとしても、満足させられない。
そんな考えが頭をよぎった。
「……セルシアさん。あまりそれについては深く考える必要はないわ。ラガスは……あなたと一緒にいる生活に、非常に満足してる筈よ」
「それは……そうだと、良いんです、けど」
確かに一緒に居る時、笑ってる時は多い。
自分と一緒にいる時間を楽しんでくれていると思う。
ただ……自分は戦うという行為で、ラガスを満足させられるのか。
現状、おそらくシュラと本気で戦っても勝てないと考えている。
(種族や、年齢の差はあるけど、それでも……強い)
セルシアは……ラガスとはお互いに高め合えるパートナーでありたいと思っている。
しかし今のところ、身近でそれが出来るのは自分ではなくシュラやルーフェイスだった。
「セルシアさん、あなたがラガスのそういった面を満足させようと努力するのは、悪いことだとは思わない。でも、パートナーという関係性は、それだけかしら」
「それだけ、というと?」
「知ってると思うけど、歴代のパートナーと出会えた人たちは皆結婚して、夫婦になったの」
それは勿論知っていた。
だが、今まで完全に忘れていた。
「私は、是非あなたがラガスの傍にいてほしいと思ってる。まぁ……個人的にはもう一人、傍に置いておいてほしいと思ってるけどね」
「……勿論大丈夫、です」
リアラが口にしたもう一人が誰なのか、セルシアは直ぐに察した。
現状では自分よりもラガスの傍にいるのに相応しい人物だと思っている。
「ありがとう。えっとね、さっき言った通り戦いという面でラガスを満足させたいという気持ちは間違ってないと思うし、捨てる必要なんてないと思ってるわ」
セルシアの思いは否定しない。
捨てる必要はないと真剣な眼で断言した。
「でもね、それ以外にもあなたがラガスを満足させてあげる方法はある。それこそ、シュラやルーフェイスたちには無理なことね」
リアラが決して卑猥な意味で言っているのではないと、セルシアも解っている。
「アドバイス、ありがとう、ございます」
「こちらこそ、びっくり箱みたいな息子の隣にいてくれて感謝してるわ」
ここで二人のお茶会は解散……にはならず、二人ともラガスの話に花を咲かせた。
85
あなたにおすすめの小説
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
【連載】リサイクルは異世界で?転生したら捨てられた悪役令嬢でしたが、そもそも価値が分からない男は不要です
Nekoyama
ファンタジー
どこにでも居そうな陰キャ系OL。それが私、間根 綺羅(まね きらら)の表の顔。でもその実は株式取引で総資産10億円突破している隠れ富豪。これを元手に、社畜は卒業して、ゆるーく楽しく暮らしていこうと思ったその矢先に、真っ白な世界に!!
あなたにはスキル「リサイクル」を授けましょう。世界をキレイにするために異世界で頑張ってくださいね。
そんな声が聞こえた気がする。え、私のお金は?鬼か!?
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
血染めの世界に花は咲くか
巳水
ファンタジー
かつて英雄に憧れ、裏切られ、奪われ、復讐にとりつかれた果てに、ひとつの国を血に沈めた。そして「血塗れ夜王」は、敬愛する師匠によってその生を終えた。
しかし、滅びたはずの魂は再び生れ落ちる――すべての記憶を抱えたままに。
新たな名と姿でこの世界に生を受けた彼は、前世の記憶と力、罪業を背負い、少年として新たな人生を歩み始める。
その先あるのは贖いか、それともさらなる血の罪か。二度目の命に意味はあるのか――。
本作品は「小説家になろう」にも投稿しております。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる