我が家と異世界がつながり、獣耳幼女たちのお世話をすることになった件【書籍化決定!】

木ノ花

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第二章

第57話 会談の準備

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 我が家の居間へ戻ったら、サリアさんに色々と質問しつつ普段通りのペースで朝ごはんの続きを平らげる。
 フィーナさんを待たせてはいるが、向こうはアポ無しの来訪だからわりとゆっくりだ。

 それに食事は、うちの獣耳幼女たちが一番楽しみにしている時間と言っても大げさではない。急かすなんてとてもとても……というか、俺がしたくない。ニッコニコで、なんでも美味しそうに頬張ってくれるんだもの。

 食後は、お皿を下げて身支度を整える。
 最近、ルルが歯磨きを二秒で終わらせて洗面所を脱走しようとするから困る。捕まえてブラッシングしてあげると、なぜか楽しげなのが可愛くて仕方ないけど。

 もちろん、エマとリリの歯も磨く流れになる。なんならサリアさんも磨かれ待ちしているが、そこは安定のスルーだ。

 さて、今日のお洋服はどれにしようか……季節は、もう冬の隣。
 みんな一緒に廃聖堂の方でお話をうかがう予定だから、風邪を引かないようできるだけ温かい格好をしていかないと。

 少し迷いつつも、姪の夏実ちゃんのお下がりからいくつかピックアップした。獣耳幼女たちは新しい服に大興奮で、プチファッションショーを始めるほど喜んでくれた。他にも、防寒具としてブランケットを持っていく。

 サリアさんは、いつものグレーのスウェット……かと思いきや、先日スーパーに着ていったおしゃれスウェットをチョイス。

 似たりよったりといえばそうだが、フィーナさんに見せびらかすと鼻息荒くグレーアッシュの尻尾を揺らしているから、わざわざ野暮は言うまい。

「では、サクタロー殿。向こうの状況を確認してくるぞ」

「はーい。お願いね、サリアさん。問題ありそうだったらすぐ戻ってきてね」

 当然ながら、『いきなり廃聖堂へ足を運ぶ』なんて迂闊なマネはしない。相手を信用していないわけじゃないが、念のためだ。

 もっとも、獣人とエルフは共に女神ミレイシュの子で同胞意識が強いため、あまり心配いらないらしいが。

 それでも、まずは不審な点がないかよくチェックしてもらう。最悪は全員殴り倒す、とサリアさんも進んで請け負ってくれた。

 ついでに、木製のガーデンチェアやテーブルの設置もお任せする。以前、ゴルドさんたちとの商談でも使用した応接セットだ。なにせ相手は王女様らしいから、立ち話というわけにもいかない。

 荷物ごとサリアさんを虹色ゲートの向こうへ送り出したら、俺は差し入れなどの準備に取り掛かる。

 飲み物はホットの紅茶をお出しする。あちらにカセットコンロを持ち込み、その場で淹れるつもりだ。ティーバッグもたくさん用意してある。

 フィーナさんには白磁のお高いカップ、お連れの方々には紙コップでお渡しする。
 お茶請けは、葉巻型のロールクッキー。バター風味とチョコでコーティングしたタイプの二種類。

 みんな大好きなお菓子なので(偏見)、きっとエルフにも気に入ってもらえるはず。ちゃんとパッケージから出して、お皿に盛っていくのを忘れない。

 本当は我が家のおやつ用のお菓子だったけど、差し入れとしてちょうどよかったな。何かと便利そうなので、また買っておかねば。

「サクタロー殿、椅子などの配置が終わったぞ。だが、フィーナたちの人数が少し多いな。護衛だなんだと引き連れてきているようだ」

「そうなの? あんまりたくさん人がいるのは困るなあ」

 少し時間を置いて地下通路へ様子を見に行くと、ちょうど戻ってきたサリアさんが虹色ゲート越しに報告してくれた。

 どうやら、廃聖堂のフロアには二十人ほどいるみたい。今回は獣耳幼女たちも同行を希望したのだが、きっと人が多いと怯えてしまう。

「うーん……フィーナさんに、四人くらいに絞るよう伝えてくれる?」

 少し考えて、相手に『会談へ臨むのは主要メンバーのみ』と条件を出す。
 申し訳ないが、他の方々は外で待機をお願いする。紅茶はおかわり自由にするから許してくださいね。

 サリアさんには再び廃聖堂へ戻ってもらい、引き続き場の調整を行ってもらう。同時に、今度はカセットコンロなどを運んでもらった。

 仕上げとして、必要そうな荷物をトートバッグに詰め込めば準備完了。
 俺と獣耳幼女たちは、我が家の納戸の前で最終確認を行う。

「じゃあ三人とも、おりこうさんにできるかな?」

「はいっ!」

「いつもおりこうさんでしょ!」

「ん! おしっこ!」

 エマとリリが、片手を挙げて元気いっぱいにお返事してくれる。
 そしてルルは……さっき俺がトイレ行くか聞いたら、大丈夫って言ったでしょうに。とりあえずささっと済ませ、気を取り直して異世界へ出発する。

「お待ちしていましたよ、サクタローさん。お嬢様方も、ごきげんよう」

「……何をしているんですか?」

 地下通路へ足を踏み入れて早々、虹色ゲートにへばりつくフィーナさんの姿が目に入る。その背後に立つサリアさんも流石に呆れた様子。
 このお姫様、やっぱり変人なのでは?

「失礼、この神の抜け道を調べていました。非常に貴重な事例ですからね」

 フィーナさんが言うには、神の奇跡が新たに顕現したのは相当久しぶりなのでは、とのこと。人間の時代へと移り変わりが著しいこのご時世、そうそうお目にかかれるものじゃないらしい。

 なるほど。女神ミレイシュの巫女は伊達じゃないってわけか……でもなあ、その妙な体勢はどうかと思いますよ。

「フィーナさん。ひとまず、聖堂の方へ移動しましょうか。よければ、お茶を淹れさせてください」

「まあ、それは楽しみですね。喜んで頂戴いたします」

 このまま虹色ゲートについて話を聞きたいところではあるが、お連れの方々をお待たせするのも忍びない。それに色々とセッティングがある。

 フィーナさんの興味深げな視線を浴びながら虹色ゲートを潜って合流し、揃って廃聖堂へと足を進めた。
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