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兄の好感度
しおりを挟む実家に帰るとちゃんと私の部屋は整えられていつでも住めるようになっていた。白を基調に、暖色系の小花柄があしらわれ、天蓋のついたベッドはいつまででも寝られそうだ。
(こういうのって嬉しいよね。王太子殿下の婚約の打診がなくなったことだし、引きこもる場所はここでもいいのかもしれない)
「なあ、学園に通うなら我が家からでもいいんじゃないのか」
兄!心読むのやめてください。なぜか兄は、私の部屋の中にまで入り込んで、ソファーにドカッと座っている。一応、淑女のお部屋ですよ?
「まあ、聖女の役割もありますからね」
そう自分に納得させる。ディオ様の天使のような笑顔が脳裏に浮かんだ。ディオ様が訓練する様子が、塔の最上階からはよく見える。
いや、そんな邪な理由ではない。ないはずなのだ。誰がなんと言っても、聖女として平和を祈らなくてはいけないからなのだ。
――――ズクリ
ミルフェルト様にお会いしてから、何故か治っていた胸の痛み。それなのにディオ様のことを考えると疼き出す。
「大丈夫か」
顔には出さないようにしたはずなのに、兄が心配そうに声をかけてくる。
「なあ、お前やっぱり最近変わっただろ。塔の外に出てきてくれたのはうれしいけど、なんだか思い詰めてないか?」
兄には敵いませんね。なんでそんなに私のこと観察しているんです?でも、さすがにどんなに避けようとしても18歳で破滅するなんて……兄には言えないです。
「え……っ?」
兄が近づいてきて、ベッドに座っていた私の隣に腰掛けた。私の手を握りしめた兄の手は、温かくて大きかった。私の手は、すっぽりと兄の手に包まれてしまう。
「力になるって、言っただろ?」
ポロポロポロッ
涙がこぼれ落ちてしまう。7歳のあの日から泣かないって決めてたのに。最後までやれるだけのことをやろうって。
「私、どうしても18歳で破滅してしまう運命なんです」
「そうか」
兄は短く相槌を打つと、次から次へと流れ落ちる涙を指でそっと拭ってくれる。
「なんとか逃げようと思って、塔に引きこもってみたけど、今度は18歳までしか生きられない呪いにかかってしまって」
「……呪い、18歳。まさか、王家の……」
18歳の破滅フラグ。不安はいつも感じていた。それでも、誰とも関わらなければ逃れられると自分に言い聞かせていたのに。
「お兄様、私はどうしたらいいのか分からなくなってしまいました」
乙女ゲームのことは伏せたけど、私が話すとりとめのない話を、兄は時々相槌を打ちながら静かに聞いてくれた。
死にたく……ないです。断罪も嫌です。もっと生きてお嫁さんとかだってなりたいです。
「……大丈夫だリアナ。俺の人生全てをかけてお前を守ってやるから。俺より先に死なせたりしない」
兄の額と私の額がコツンと合わせられる。
涙が溢れてしまっているせいで、兄の表情は見えなかった。でも、私にはそれよりも気になることが一つ。
ドキドキ、ドキドキ
これは兄と密着して額を合わせているための胸の高鳴りではない。
(――――それ、兄が好感度マックスの状態になると主人公に言う台詞!!)
兄を攻略してどうするんだ。私はやっぱり、引きこもっている方がいいのだろうか。
涙はいつの間にか止まっていた。私は自分の境遇も忘れ、兄の行く末が心配になってしまった。
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