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文化祭
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文化祭当日は、いい天気でどこまでも高くて青い秋の空だった。
生徒会に所属しているから、前日まで調整に走り回っていたけれど、クラスの出し物にはあまり参加できていなかった。
そしてすれ違う人が、私たちをチラチラ見てくる。その理由、たぶん兄が手を離してくれないからです。
「お兄様、さすがに恥ずかしいですよ」
「知らない人間が多い。リアナは少し自覚を持て、何かあったらどうする」
今日も兄は過保護すぎる。でも、それを聞いた私は、少しだけ背筋を伸ばした。
「あ!リアナ様……と、フリード様」
Sクラスの出し物は喫茶店だ。見た目は完全にヒロインなフローラの猫耳メイド服姿に人集りが出来ている。
それ以上に、メガネと瞳を隠す前髪をやめたマルクくんの猫耳執事姿に恐ろしいほどの人集りが出来ているのが気になる。いや、ヒロインよりも可愛いのダメだろ?でも、絶対あとで注文取って貰いたい。
「なあ、俺なにかフローラの気に障ることしたか?急に距離感がすごい遠くなったんだが」
「たぶん、今のお兄様は何もしてないです」
「今のってなんだよ」
「……気に障ったわけではないと思います」
たぶん、夢の中でどのルートでも不憫すぎる兄を見てしまい、フローラとしてはどう関わればいいかわからなくなったのだろう。
フローラの様子から、甘い甘ーいフローラと兄とのハッピーエンドは見てなさそうだが。見てしまったらどうなってしまうのか。
最近ヒロインぽい言動が散見しているフローラ。いよいよ脳筋ヒロイン返上かと大変興味ある。
『あなたのそばで、あなたの力になりたいから全力を尽くすんだ』
また思い出してしまった。妹としては居た堪れない兄の甘い台詞!
「リアナ様と……フリード様はこちらに」
「毎回、名前呼ぶ前のその沈黙なんなんだ?」
「――フリード様は、とにかく夜道に気をつけて下さい」
「えっ、そこまで嫌われることしたか俺?!」
たぶん、フローラは純粋に夜道に気をつけて欲しいだけなのだと思うが、おもしろいので放っておく。
奥の方に案内されると別にスペースがあって、生徒会のメンバーが集まっていた。
「ディオ様!ランドルフ先輩。ライアス様とレイド先生までなんでお揃いなんですか?」
「俺はここのクラスだろう?」
そういうライアス様も執事姿だ。何着ても似合いますね?猫耳じゃないのか残念。
「俺はここのクラスの担任だ」
まあ、それもそうだわ。じゃあ、あとのお二人は?
「リアナに会いたくて」
ディオ様のそういうの最近だんだんと慣れてきたんですから。……顔赤くなってないよね?
「ディルフィールに会いたくて」
「お兄様に……ですか?」
「いや、普通にリアナ嬢の方にだけど?!」
そうか、残念。ため息をついていると、兄にも少し睨まれてしまった。
そのあとは、私も猫耳メイド服で参加した。なぜか遠巻きにすごい人集りが出来ていた。まあ、たしかに王太子の執事服はかっこいいけど遠くから鑑賞。その気持ちは良くわかります。
楽しい一日は過ぎていった。あれ?そういえば文化祭って何か重要なイベントなかったっけ?
あれ?兄とフローラが消えた。どこに行ったんだろうか?そっと廊下に出ると、二人は空き教室にいた。
あっ。文化祭あとの告白イベント!?まさか、兄とフローラが?
「なんで最近避けるんだ?フローラ」
「……避けて、ないです」
「いや、ここ最近の距離感おかしいだろ。何かしたなら謝りたい」
「……じゃ、死なないでください」
フローラはそれだけ言うと、ポロッと涙をこぼして走り去ってしまった。とても追いつけないスピードで。
「そこにいるのわかってる、リアナ。一体なぜフローラが泣いてたかと、なんで俺が死ぬ前提なのかがわからないんだが」
「お兄様は、もう少し自分の事を大事にすべきだと思います」
「……ますます意味がわからない」
あとでフローラと、兄を守るための作戦会議でもしようそうしよう。たぶんあの様子だとフローラは世界樹の塔のトレーニングルームにいるはず。
「私、もう少し片付けがあるのと、今日は世界樹の塔に泊まるので先帰って下さい?」
「俺も調べ物があるからちょっと王宮へ行ってくる。また、明日だな?」
「また明日、お兄様」
片付けが終わり教室から出ると、美しい夕日だった。階段を降りてしまう前に、思わず空き教室に入り窓から夕日を眺める。あれ?誰か来た?
「リアナ、ここにいたんだ。探したよ」
「ディオ様?」
「今日は楽しかった?」
「すごく楽しかったです!」
ディオ様の影が教室の床に長く伸びている。オレンジ色の光の中、ディオ様が微笑んだ。え?なにこれ。尊すぎて息が止まりそうに苦しい。
「リアナが楽しいと俺も嬉しいな」
「……ディオ様も楽しかったですか?」
「ふふ、可愛かったな。リアナの格好。……楽しかったよ、とても」
今だけは普通の学生のように。一年目の文化祭は、ディオ様のスチルレベルの光景を目に焼き付けて終わりを迎えた。
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