本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら

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王命による結婚 7

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 ***

 ……馬車の中、不意に訪れた沈黙に包まれるミリアとアーロン。

「……あの、怒ってますか?」

 アーロンは、怒ってなどいない。
 ただ、やはりミリアにとって、アーロンは本の次なのだと思い知らされただけで。

「……世界中の本を燃やし尽くせば、俺だけを見てもらえるのだろうか」
「絶交です」
「即答か」

 そもそも、その場合、燃えてしまうのは本だけではないに違いない。
 なんとしても阻止しようと、ミリアは固く決意した。

「……それが、竜人の愛というものだ」
「まあ、番という視点ならそうなのかもしれませんが」

 竜人にとって、番は唯一にして自分の片割れだ。
 ゆえに、番が自分以外を唯一にすることを許さない。ミリアは、本の中でそのことを学んだ。

「……そうだな。お互いが、番と認識しているからこそ許される思いだ」
「……ごめんなさい。でも、目の前でアーロン様の命がかかっていたら、本を踏むことも燃やすことも、いといませんよ?」
「…………ありがとう、と言えば良いのか?」

 人の命がかかっていたら、アーロンが相手でなくても、ミリアはそう行動するに違いない。

「本当に、君は」

 けれど、ミリアが竜人についての本を、国王陛下に所望したのは、なにも本が読みたいからだけではない。
 アーロンは、気がついていないのだろうか。
 ミリアは、距離が離れていても番がお互いの回復力を分け合うための方法を探している。

 ……最後に読んだ古文書に、それらしき記述があった。
 そして、先ほど王宮で見た色鮮やかな絵画の一場面。
 戦う力を持たなかった竜人の乙女が、愛する番を救うために使った力と、二人の再会を描いた絵画。

 あるはずだ。あの絵画があんなにも色鮮やかに残っている王宮であれば、番の力の秘密に迫る本も。

「本が好きなのは、許してください」
「ああ。君が愛するものを俺も守ろう」
「燃やしません?」
「……世界中に図書館を作ろう」
「素敵ですね」

 世界中に図書館があれば、誰でも自由に本が読める。語り合うことも出来る。

「でも、本よりもアーロン様のことが好きですよ?」
「……うれしいな。……俺は」
「アーロン様?」

 アーロンは笑った。ただ、幸せそうに。

「本を読んでいるときの、真剣な表情をした君が好きなんだ。だから、世界中に図書館を作ったら、世界中を旅して、君のそんな表情が見たい」

 それは、ずいぶん壮大な夢物語。
 きっと長くて美しくて、幸せな旅路。
 実際に叶えてしまいそうな、アーロンをミリアは、頬を染めて見つめる。

「素敵ですね。穏やかで、幸せで」
「そうだな。笑顔のミリアがいる美しい世界だ」

 その場所にいるアーロンも、笑っているに違いない。揺れる馬車の中、二人はそっと寄り添ったのだった。
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