21 / 23
王命による結婚 7
しおりを挟む***
……馬車の中、不意に訪れた沈黙に包まれるミリアとアーロン。
「……あの、怒ってますか?」
アーロンは、怒ってなどいない。
ただ、やはりミリアにとって、アーロンは本の次なのだと思い知らされただけで。
「……世界中の本を燃やし尽くせば、俺だけを見てもらえるのだろうか」
「絶交です」
「即答か」
そもそも、その場合、燃えてしまうのは本だけではないに違いない。
なんとしても阻止しようと、ミリアは固く決意した。
「……それが、竜人の愛というものだ」
「まあ、番という視点ならそうなのかもしれませんが」
竜人にとって、番は唯一にして自分の片割れだ。
ゆえに、番が自分以外を唯一にすることを許さない。ミリアは、本の中でそのことを学んだ。
「……そうだな。お互いが、番と認識しているからこそ許される思いだ」
「……ごめんなさい。でも、目の前でアーロン様の命がかかっていたら、本を踏むことも燃やすことも、いといませんよ?」
「…………ありがとう、と言えば良いのか?」
人の命がかかっていたら、アーロンが相手でなくても、ミリアはそう行動するに違いない。
「本当に、君は」
けれど、ミリアが竜人についての本を、国王陛下に所望したのは、なにも本が読みたいからだけではない。
アーロンは、気がついていないのだろうか。
ミリアは、距離が離れていても番がお互いの回復力を分け合うための方法を探している。
……最後に読んだ古文書に、それらしき記述があった。
そして、先ほど王宮で見た色鮮やかな絵画の一場面。
戦う力を持たなかった竜人の乙女が、愛する番を救うために使った力と、二人の再会を描いた絵画。
あるはずだ。あの絵画があんなにも色鮮やかに残っている王宮であれば、番の力の秘密に迫る本も。
「本が好きなのは、許してください」
「ああ。君が愛するものを俺も守ろう」
「燃やしません?」
「……世界中に図書館を作ろう」
「素敵ですね」
世界中に図書館があれば、誰でも自由に本が読める。語り合うことも出来る。
「でも、本よりもアーロン様のことが好きですよ?」
「……うれしいな。……俺は」
「アーロン様?」
アーロンは笑った。ただ、幸せそうに。
「本を読んでいるときの、真剣な表情をした君が好きなんだ。だから、世界中に図書館を作ったら、世界中を旅して、君のそんな表情が見たい」
それは、ずいぶん壮大な夢物語。
きっと長くて美しくて、幸せな旅路。
実際に叶えてしまいそうな、アーロンをミリアは、頬を染めて見つめる。
「素敵ですね。穏やかで、幸せで」
「そうだな。笑顔のミリアがいる美しい世界だ」
その場所にいるアーロンも、笑っているに違いない。揺れる馬車の中、二人はそっと寄り添ったのだった。
91
あなたにおすすめの小説
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる