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愛しているから身を引いた方がいいのではないか
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翌朝、マナが落ち着きを取り戻した頃。
寝ずの看病をした両親と交代でアヴニールは部屋へ入った。
『マナ。おはよう。よくなってよかった。」
『おはようございます。すみません、心配かけました。』
『謝らなくていいの。僕たちは家族なんだから。そこのフルーツ、食べた?すごく心配して、一晩中別の部屋で待っていたんだよ、サザエル。マナのこと、本当に愛してるんだね。お母さまのことを見る、お父様みたいだったもの。』
『………本当に?』
『なんで俺が嘘を言うのさ。大体、なんでサザエルのことを疑ってるの?』
『窓の外で、施設に本を寄付してくださっている男爵令嬢と抱き合ってたの。愛して…って。きっと彼女に愛してるって言ってたんだよ。』
僕はこんなに病弱だもの。
サザエルだっていやになるよね。
しゅんとする弟を見て、アヴニールの目が少し据わった。
だが、一瞬で穏やかな表情にする。
『何言ってるの。窓から見たんでしょ?ここからなんてよく見えないじゃない。躓いたのを助けただけかもしれないし、愛してって、彼女じゃなくてマナのことを愛してるって言ってたのかもしれないよ。大体、そんなんだったらあんな悲壮な表情にはならないよ。本気でマナのこと、心配してるんだから。マナのために、症状が出たときの治し方を教えてほしいってお願いされたんだからね。』
マナはもっと、自分に自信をもって?
アヴニールが抱きしめると、マナは、俯いた目をあげた。
サザエルめ。
浮気してるとは思わないけど、悪女に引っかかってるんじゃん!
昨日、両親に言ったとおり、施設の周りや彼の周りを調べよう。くまなく!
近衛副隊長としては、職務をほっぽいてどうかというのはあるが、護衛対象の実兄は彼自身が強いのだから、兄だってこういうときはマナを優先しろというはずだ。
まずは、王太子とうちの旦那にちょっと報告して協力してもらおう。
状況が見えたら、うちの両親とサザエルの両親にもちょっと、相談いれときたい。
マナが昨日のように発作を起こしていないのを確認し、アヴニールは家を出た。
因みに、今朝方、サザエルは出勤でこの家を出ている。
マナに言ったことは、サザエルから聞いているわけではない。
今、サザエルに会わせて弁解させるリスクを避け、マナが落ち着いて聞きながら二人の仲を取り持てるようにアヴニールが大げさに言ったことだ。
真実から逸脱していないとは思うけど、きちんと調べて、問題を少しでも解決しておきたい。
公爵家から子爵家に嫁ぐこと。
マナの障がい。
生まれた経緯。
そういったことから、どんなにしたって、悪く言う人はいるのだから。
少しでも。
アヴニールが出て行って、マナは一人になった。
果物籠から林檎をとって、自分で剥いて、一口齧った。
サザエルが好き。
サザエルも、僕のこと、好き。
でも。
サザエルはどうか分からないけど、きっとあの男爵令嬢は、サザエルのこと、好きだと思う。
僕じゃないほうが、サザエルは幸せになれるのかな。
寝ずの看病をした両親と交代でアヴニールは部屋へ入った。
『マナ。おはよう。よくなってよかった。」
『おはようございます。すみません、心配かけました。』
『謝らなくていいの。僕たちは家族なんだから。そこのフルーツ、食べた?すごく心配して、一晩中別の部屋で待っていたんだよ、サザエル。マナのこと、本当に愛してるんだね。お母さまのことを見る、お父様みたいだったもの。』
『………本当に?』
『なんで俺が嘘を言うのさ。大体、なんでサザエルのことを疑ってるの?』
『窓の外で、施設に本を寄付してくださっている男爵令嬢と抱き合ってたの。愛して…って。きっと彼女に愛してるって言ってたんだよ。』
僕はこんなに病弱だもの。
サザエルだっていやになるよね。
しゅんとする弟を見て、アヴニールの目が少し据わった。
だが、一瞬で穏やかな表情にする。
『何言ってるの。窓から見たんでしょ?ここからなんてよく見えないじゃない。躓いたのを助けただけかもしれないし、愛してって、彼女じゃなくてマナのことを愛してるって言ってたのかもしれないよ。大体、そんなんだったらあんな悲壮な表情にはならないよ。本気でマナのこと、心配してるんだから。マナのために、症状が出たときの治し方を教えてほしいってお願いされたんだからね。』
マナはもっと、自分に自信をもって?
アヴニールが抱きしめると、マナは、俯いた目をあげた。
サザエルめ。
浮気してるとは思わないけど、悪女に引っかかってるんじゃん!
昨日、両親に言ったとおり、施設の周りや彼の周りを調べよう。くまなく!
近衛副隊長としては、職務をほっぽいてどうかというのはあるが、護衛対象の実兄は彼自身が強いのだから、兄だってこういうときはマナを優先しろというはずだ。
まずは、王太子とうちの旦那にちょっと報告して協力してもらおう。
状況が見えたら、うちの両親とサザエルの両親にもちょっと、相談いれときたい。
マナが昨日のように発作を起こしていないのを確認し、アヴニールは家を出た。
因みに、今朝方、サザエルは出勤でこの家を出ている。
マナに言ったことは、サザエルから聞いているわけではない。
今、サザエルに会わせて弁解させるリスクを避け、マナが落ち着いて聞きながら二人の仲を取り持てるようにアヴニールが大げさに言ったことだ。
真実から逸脱していないとは思うけど、きちんと調べて、問題を少しでも解決しておきたい。
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そういったことから、どんなにしたって、悪く言う人はいるのだから。
少しでも。
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サザエルが好き。
サザエルも、僕のこと、好き。
でも。
サザエルはどうか分からないけど、きっとあの男爵令嬢は、サザエルのこと、好きだと思う。
僕じゃないほうが、サザエルは幸せになれるのかな。
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