冷徹茨の騎士団長は心に乙女を飼っているが僕たちだけの秘密である

サザンクロス帝国陛下

サザンクロス帝国は、工業の進んだ国。

深刻な公害、農作物の不足、原材料となる鉱石の枯渇。

公害は技術でどうにか改善できた。

原材料もリサイクルできるものはしている。


だが、どうにも資源が足りない。




スワン＝スタア＝サザンクロス帝国陛下。

黄金の髪に深い海のような青の瞳の、中年と呼ばれる年齢にしては若々しく見える獅子のような美丈夫は、妹の子の良い知らせを耳にしてほくそ笑んだ。



「………王太子はジニアルがなるべきだ。ノースキャロットのいいように等させてなるものか。」



グレイシャス王国は温暖で、食料倉庫としても好ましいうえ、資源が豊富だ。

最近ではあのノースキャロットの婿王子がその資源を活用して、何やら開発を進めている。

技術提携という意味でも、ぜひサザンクロスが押さえておきたい。


全く対等の力を持ち、均衡を保っているライバル国同士。


グレイシャス王国がどちらに傾くかで、世界の勢力図が変わる契機ともなりかねない。




グレイシャス王国に間者は派遣している。

ただ、肝心のジニアルが引きこもりになってしまったこと。
ハニュが他の妃殿下と仲良くなってしまい、とりつく島もなく、スワンは様子をみていた。




だが、事態は好転した。





「ポート辺境伯らは取るに足らぬ。オーレムを追い落とし、責任は向こうに押し付けようか。」



楽しくなってきた。


妹が毛嫌いしている、帝国の君主らしい兄は、ほくそ笑んだ。