44 / 96
考えていることがある(陛下)
しおりを挟む
「宰相。」
その日、グレイシャス陛下は第一側妃の父親である宰相に呟いた。
「色々と整理できたら……私は退位しようかと、思う。」
鉱山の山脈が見つかり、海底には油田も見つかった。
世界の穀倉である農業国は同時に有数の資源国となり、静かで穏やかで……平和な島国は急速に諸国に狙われる格好の獲物になった。
王の子は自分だけ。
この国を守ろうと奔走した両親は暗殺され、誰が犯人なのか。どこの国の手の者なのか調べることができなかった。
「宰相がいてくださったから…。優秀な息子たちと妃たちのお陰で私はやれたようなもので。そもそも私のせいで息子たちは今危険に苛まれている。私は子どもで、愚かだった。愛しいマドンナを手放したくない一心で…。早くに崩御され代替わりをした帝国の、新しい陛下は私とさほど変わらないが立派な方だった。妹姫を私に嫁がせたのも、あの方のやさしさだったのに…。」
帝国がバックについてくれたお陰で、この国は安定した。
「過ぎたことを言っても始まりません。今からを考えなくては。」
特に辺境伯の娘を第二側妃に迎え、男子を産ませたこと。
オーレム殿下の妃に帝国の敵対国の姫を迎えたこと。
それらは悪手だったかもしれない。
「退位されてどうされます。新しい王は。」
「………………。」
「オーレム殿下は、ジニアル殿下を守りたくて王太子になったそうです。フローラ妃も、彼女自身は夫が王太子でなくても文句は言わないでしょう。彼女は優しい女性です。我らは構いませんよ。」
対ノースキャロット皇国は必要でしょうが。
「能無しだ。私は。」
「そうかもしれませんね。」
「もう少し考える。責任を取りたい。前陛下妃殿下を暗殺したのは辺境伯だ。長年、探ってきてようやくわかった。オーレムとジニアルの命も狙っている。ハロルドとサリーが証拠を集めた。辺境伯の目を盗んで纏めるのは、骨を折っただろう。二人は廃嫡と追放を望んでいる。」
ジニアルが戻り、彼の計画が実行されたら。
辺境伯とその派閥を断罪する。
三男と第二側妃の覚悟に応え、そうして私も………
その日、グレイシャス陛下は第一側妃の父親である宰相に呟いた。
「色々と整理できたら……私は退位しようかと、思う。」
鉱山の山脈が見つかり、海底には油田も見つかった。
世界の穀倉である農業国は同時に有数の資源国となり、静かで穏やかで……平和な島国は急速に諸国に狙われる格好の獲物になった。
王の子は自分だけ。
この国を守ろうと奔走した両親は暗殺され、誰が犯人なのか。どこの国の手の者なのか調べることができなかった。
「宰相がいてくださったから…。優秀な息子たちと妃たちのお陰で私はやれたようなもので。そもそも私のせいで息子たちは今危険に苛まれている。私は子どもで、愚かだった。愛しいマドンナを手放したくない一心で…。早くに崩御され代替わりをした帝国の、新しい陛下は私とさほど変わらないが立派な方だった。妹姫を私に嫁がせたのも、あの方のやさしさだったのに…。」
帝国がバックについてくれたお陰で、この国は安定した。
「過ぎたことを言っても始まりません。今からを考えなくては。」
特に辺境伯の娘を第二側妃に迎え、男子を産ませたこと。
オーレム殿下の妃に帝国の敵対国の姫を迎えたこと。
それらは悪手だったかもしれない。
「退位されてどうされます。新しい王は。」
「………………。」
「オーレム殿下は、ジニアル殿下を守りたくて王太子になったそうです。フローラ妃も、彼女自身は夫が王太子でなくても文句は言わないでしょう。彼女は優しい女性です。我らは構いませんよ。」
対ノースキャロット皇国は必要でしょうが。
「能無しだ。私は。」
「そうかもしれませんね。」
「もう少し考える。責任を取りたい。前陛下妃殿下を暗殺したのは辺境伯だ。長年、探ってきてようやくわかった。オーレムとジニアルの命も狙っている。ハロルドとサリーが証拠を集めた。辺境伯の目を盗んで纏めるのは、骨を折っただろう。二人は廃嫡と追放を望んでいる。」
ジニアルが戻り、彼の計画が実行されたら。
辺境伯とその派閥を断罪する。
三男と第二側妃の覚悟に応え、そうして私も………
22
あなたにおすすめの小説
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
藤吉めぐみ
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる