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暫く休職
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「えぇっ!???」
婚礼の準備のため、最近は城内の王家プライベートゾーンまで出入りするようになったカイザーは、素っ頓狂な声をあげた。
因みに今の時間、ハロルドはブライダルエステの真っ最中。
「声が大きいぞ、カイザー。」
見下ろすような(実際は身長差はないが)視線のアイスブルー。
「……俺、が騎士団長代理ですか。」
「副団長でもいいぞ。丁度空席だったし。」
すぅっとジニアル殿下が近寄ってきて、ぱっと騎士団長の腰を抱いた。
「もうっ、ジニアルは!仕方ないな!」
「分かっててされるがままなんでしょう?」
ああ、またイチャイチャが始まった~。
俺もハロルド殿下と結婚したら、イチャイチャするんだ。
もう、羨ましくないぞ!
「二人でうんと相談したんだよ。そろそろ、赤ちゃんが欲しいなって。お医者様も、そろそろ大丈夫だろうって太鼓判をもらったんだ。フォートは赤ちゃんを産むには鍛えすぎていたからね。」
それだけじゃない。
男の性に寄せるために薬を長い間飲んでいて、初潮がだいぶ遅かったから。
結婚してもなかなか恵まれなくて。
それは、両性という特殊な体のせいもあるとはフォートの両親も言っていたけれど、彼の場合はそれだけじゃなかった。
だから、早い時期に信頼できる医者にかかって、ずっと、妊娠できる体になるために、フォートは頑張ってくれていた。
もちろん、騎士として最低限の訓練は続けつつではあったが。
「それで、子づくりをするとなると…。騎士の仕事をしながらは無理だと判断した。せっかく胎の中に芽生えても、流れてしまう危険があるからな。以前の私は、責任感から、自分がなんとしてもやらねばならない、自分の代わりは誰にもできないと、傲慢にも思い込むところがあった。でも、今はそうじゃない。自分の代わりはいる。だが、その中でも、私が安心して任せられるお前に、騎士団を預けたいんだ。」
子作りの話が入るから、ハロルドがいない今言い出したのか、とカイザーは理解した。
「頼む。僕も、カイザーなら安心だ。可愛い弟の頼りになる旦那様だしね。」
「しょうがないっすね。」
「ありがとう。陛下に言って、すぐに手続きに入るよ。」
ジニアルとカイザーが握手を交わす。
「少なくとも1年は騎士団のトップを務めてもらうから、式もそれにふさわしく華々しいものにしてやろう。」
「それはちょっと……。」
カイザーと笑いあいながら、ジニアルはフォートと手を繋いだ。
視線を送ると、ほほ笑むその笑顔は柔らかい。
騎士としての仕事を取り上げたいわけじゃない。
だけど、君にばかり我慢させて申し訳ないと思った。
せめて、できることだけでも、僕が君のために何かしてやれたらいい。
婚礼の準備のため、最近は城内の王家プライベートゾーンまで出入りするようになったカイザーは、素っ頓狂な声をあげた。
因みに今の時間、ハロルドはブライダルエステの真っ最中。
「声が大きいぞ、カイザー。」
見下ろすような(実際は身長差はないが)視線のアイスブルー。
「……俺、が騎士団長代理ですか。」
「副団長でもいいぞ。丁度空席だったし。」
すぅっとジニアル殿下が近寄ってきて、ぱっと騎士団長の腰を抱いた。
「もうっ、ジニアルは!仕方ないな!」
「分かっててされるがままなんでしょう?」
ああ、またイチャイチャが始まった~。
俺もハロルド殿下と結婚したら、イチャイチャするんだ。
もう、羨ましくないぞ!
「二人でうんと相談したんだよ。そろそろ、赤ちゃんが欲しいなって。お医者様も、そろそろ大丈夫だろうって太鼓判をもらったんだ。フォートは赤ちゃんを産むには鍛えすぎていたからね。」
それだけじゃない。
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それは、両性という特殊な体のせいもあるとはフォートの両親も言っていたけれど、彼の場合はそれだけじゃなかった。
だから、早い時期に信頼できる医者にかかって、ずっと、妊娠できる体になるために、フォートは頑張ってくれていた。
もちろん、騎士として最低限の訓練は続けつつではあったが。
「それで、子づくりをするとなると…。騎士の仕事をしながらは無理だと判断した。せっかく胎の中に芽生えても、流れてしまう危険があるからな。以前の私は、責任感から、自分がなんとしてもやらねばならない、自分の代わりは誰にもできないと、傲慢にも思い込むところがあった。でも、今はそうじゃない。自分の代わりはいる。だが、その中でも、私が安心して任せられるお前に、騎士団を預けたいんだ。」
子作りの話が入るから、ハロルドがいない今言い出したのか、とカイザーは理解した。
「頼む。僕も、カイザーなら安心だ。可愛い弟の頼りになる旦那様だしね。」
「しょうがないっすね。」
「ありがとう。陛下に言って、すぐに手続きに入るよ。」
ジニアルとカイザーが握手を交わす。
「少なくとも1年は騎士団のトップを務めてもらうから、式もそれにふさわしく華々しいものにしてやろう。」
「それはちょっと……。」
カイザーと笑いあいながら、ジニアルはフォートと手を繋いだ。
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せめて、できることだけでも、僕が君のために何かしてやれたらいい。
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