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「おはようございます。アースレッド様。」
平民が暮らすような、貴族の家にしては粗末な小さなお家。
僕はアースレッド=シルフィー。
宗教国であるホーリー王国にあって、綺麗な湖を湛える豊かな田園地帯を領地に持つシルフィー伯爵家の長男だけど、僕は本邸ではなく、離れに住んでいる。
日当たりが悪くジメジメしたそこは、僕の大事なたった一人の従者の手によって、清潔に保たれ、過ごしやすい空間になった。
僕はマークを信頼しているし、とてもありがたいと思っている。
「おはよう、マーク。」
さらさらな黒髪に黒い目。
本当はとても素敵なお顔をしてると思う。
綺麗な形のスッと通った鼻に、切れ長の瞳。
だけれど、彼は頑なに前髪を伸ばして顔の上半分が見えないんだ。
どうしてかしら。
「今日の朝ごはんは目玉焼きとかりかりベーコンにレタスのサラダにしますね。でもその前にお着換えしましょうね。」
「わあぃ。ボク、マークのごはんだいすき。」
「本当なら、もっと手の込んだご飯をつくってあげたいのですが…。私の作った質素なものでも、喜んで召し上がってくださって…。ありがとうございます。」
「ううん、ぼくね、屋敷にいたときのごはんよりもマークのご飯がすきだよ。」
優しく僕の髪を梳いてくれる、その仕草も好き。
「もうすぐ18歳ですね。」
「うん。10歳で僕が『加護ナシ』だって分かってから…8年か。」
10歳の誕生日に教会の洗礼で「神の加護がない」ことが分かった僕は、父親から酷く落胆された。
母は心労で亡くなり、父は愛妾を後妻として招き入れた。
父は、ずいぶん前から愛妾を抱えていたらしい。
半分血のつながった弟は、僕と数か月しか変わらなかった。
しかも、驚いたことに後妻になった愛妾は、僕のお母様の実の妹だった。
綺麗で何でもできる優秀なお母さまのことを、父は『可愛くない』と思っていたらしい。
そしてそれは、母の実家の両親もそうだった…。
幼い僕はよくわからなかったけど、お母様は虐げられてきた人だったのだ。
本当は裏で、お父様はお母様の妹と愛し合っていたんだ…。
――――――――――弟は僕と違って風の魔法の加護がある。
それは、シルフィー家が代々受け継ぐ魔法系統。
父は弟を後継にすると決め、僕は『容姿だけは』よかったから、金持ちに売り飛ばそうとして…。
でも、マークが機転を利かせてくれて。
『未成年の性搾取は大問題になります。成人まで待った方が家名に傷もつかないのではないでしょうか。』
それで、本邸は追い出されたけれど、変な人に売られなくて済んだ。
マークは元々浮浪児だったんだけど、まだ僕が息子として可愛がられた時に拾ってきたんだ。
今でも僕の忠実な侍従として付き従ってくれる。
僕には彼だけだ。
本当にマークがいてくれてよかった。
善いことはするものである。
「変な人のもとへ出される前に、逃げましょうか。」
「そうだね。準備してくれる?」
「私もお供します。」
「貧乏させちゃうかもよ?苦労するかも。」
「あなたに拾ってもらって、読み書きも計算も覚えました。なんとかなりますよ。」
そう言ってほほ笑むマークは、本当にかっこいいのである。
僕の胸がどきどきうるさい。
僕の18歳の誕生日まで、あと1週間を切ったその夜。
僕は不思議な夢を見た。
<……ス。アース。早く目を覚ますんだ、アース。>
……誰?
心地よい声が聞こえる。
この声、どこがで聞いたような。
懐かしい…。
男の人の綺麗な声。
すごく必死に、僕を心配してくれているみたいな。
(ふふ…。なんだかマーク……みたい。)
貴方はだあれ?
<よかった!やっと繋がった!ああ、アース。私のアース。どうか思い出しておくれ。アースは本当は………>
アース?
僕の名前は…。
いや、本当にそうだった??
僕は。
僕は。
本当は…!
平民が暮らすような、貴族の家にしては粗末な小さなお家。
僕はアースレッド=シルフィー。
宗教国であるホーリー王国にあって、綺麗な湖を湛える豊かな田園地帯を領地に持つシルフィー伯爵家の長男だけど、僕は本邸ではなく、離れに住んでいる。
日当たりが悪くジメジメしたそこは、僕の大事なたった一人の従者の手によって、清潔に保たれ、過ごしやすい空間になった。
僕はマークを信頼しているし、とてもありがたいと思っている。
「おはよう、マーク。」
さらさらな黒髪に黒い目。
本当はとても素敵なお顔をしてると思う。
綺麗な形のスッと通った鼻に、切れ長の瞳。
だけれど、彼は頑なに前髪を伸ばして顔の上半分が見えないんだ。
どうしてかしら。
「今日の朝ごはんは目玉焼きとかりかりベーコンにレタスのサラダにしますね。でもその前にお着換えしましょうね。」
「わあぃ。ボク、マークのごはんだいすき。」
「本当なら、もっと手の込んだご飯をつくってあげたいのですが…。私の作った質素なものでも、喜んで召し上がってくださって…。ありがとうございます。」
「ううん、ぼくね、屋敷にいたときのごはんよりもマークのご飯がすきだよ。」
優しく僕の髪を梳いてくれる、その仕草も好き。
「もうすぐ18歳ですね。」
「うん。10歳で僕が『加護ナシ』だって分かってから…8年か。」
10歳の誕生日に教会の洗礼で「神の加護がない」ことが分かった僕は、父親から酷く落胆された。
母は心労で亡くなり、父は愛妾を後妻として招き入れた。
父は、ずいぶん前から愛妾を抱えていたらしい。
半分血のつながった弟は、僕と数か月しか変わらなかった。
しかも、驚いたことに後妻になった愛妾は、僕のお母様の実の妹だった。
綺麗で何でもできる優秀なお母さまのことを、父は『可愛くない』と思っていたらしい。
そしてそれは、母の実家の両親もそうだった…。
幼い僕はよくわからなかったけど、お母様は虐げられてきた人だったのだ。
本当は裏で、お父様はお母様の妹と愛し合っていたんだ…。
――――――――――弟は僕と違って風の魔法の加護がある。
それは、シルフィー家が代々受け継ぐ魔法系統。
父は弟を後継にすると決め、僕は『容姿だけは』よかったから、金持ちに売り飛ばそうとして…。
でも、マークが機転を利かせてくれて。
『未成年の性搾取は大問題になります。成人まで待った方が家名に傷もつかないのではないでしょうか。』
それで、本邸は追い出されたけれど、変な人に売られなくて済んだ。
マークは元々浮浪児だったんだけど、まだ僕が息子として可愛がられた時に拾ってきたんだ。
今でも僕の忠実な侍従として付き従ってくれる。
僕には彼だけだ。
本当にマークがいてくれてよかった。
善いことはするものである。
「変な人のもとへ出される前に、逃げましょうか。」
「そうだね。準備してくれる?」
「私もお供します。」
「貧乏させちゃうかもよ?苦労するかも。」
「あなたに拾ってもらって、読み書きも計算も覚えました。なんとかなりますよ。」
そう言ってほほ笑むマークは、本当にかっこいいのである。
僕の胸がどきどきうるさい。
僕の18歳の誕生日まで、あと1週間を切ったその夜。
僕は不思議な夢を見た。
<……ス。アース。早く目を覚ますんだ、アース。>
……誰?
心地よい声が聞こえる。
この声、どこがで聞いたような。
懐かしい…。
男の人の綺麗な声。
すごく必死に、僕を心配してくれているみたいな。
(ふふ…。なんだかマーク……みたい。)
貴方はだあれ?
<よかった!やっと繋がった!ああ、アース。私のアース。どうか思い出しておくれ。アースは本当は………>
アース?
僕の名前は…。
いや、本当にそうだった??
僕は。
僕は。
本当は…!
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