虐げられても最強な僕。白い結婚ですが、将軍閣下に溺愛されているようです。

竜鳴躍

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たんけんたんけん

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「それでは奥様、屋敷を案内しながら、家の者を紹介しますね。」

「よろしく。」



さすが前の国王陛下の別荘を買い取っただけのことはあって、屋敷はとても立派で、重厚かつ上品な趣がある。
つやつやの柱や扉、窓枠などの木材が表面に出ている場所は、モノがいいだけあって古い屋敷なのにちっとも痛んでいない。
それどころか、アンティークの良い風合いが出ている。

ふかふかの真っ赤な絨毯を進むと、本がいっぱいの執務室にスティーブさんがいた。


「奥様、おはようございます。お散歩ですか?」

「屋敷のことをよく知らないので、スージーに案内してもらいながら、家の人を紹介してもらおうと思いまして。」


▷家令:スティーブが現れた!(スージーさんのお父さん!渋い!知的!ロマンスグレー!お腹出てない!イケオジ!)

「なるほど、感心なことです。それでは奥様、ひと段落しましたら、午後からは私と帳簿の整理や手紙の整理についてお勉強をしましょう。お待ちしておりますね。」

「貴族の歴史とかは学ばなくてもいいのですか?」

「まずは実務にすぐに取り掛かるための知識から始めましょう。我が家は王家から招かれない限り社交はしません。親戚筋もおりませんので、急がなくてもいいでしょう。」

「分かりました。」

「一般教養が不安なのですか?」

「母が生きていた頃に習った知識しかありませんから。」


ごめんなさい、泣かないで、スティーブさん…。
そんなつもりじゃなかったんです。



「一般教養でしたら、私も指導ができると思います。お手伝いさせてください。こう見えても勉強はできたんですよ!」

▷執事:ジョージが現れた!(スージーの弟さん。旦那様よりすこし年上?)

「ジョージ。お勉強なら私やお父様が教えられるから大丈夫です。あなたは自分のお仕事に集中して?」

「………は…い。」



屋敷は広くて、本格的なパーティーができそうなホールにはピアノやステージもある。
屋敷の入口には騎士のジョンとイースター。

「いつもお疲れ様。ありがとう。一日中、たいへんでしょう?」

2人とも30代半ばくらいで逞しいけど、ジョンさんの方がちょっぴり中性的な甘い顔立ちで、イースターさんは男らしい感じ。

「いえいえ、仕事ですから。とはいえ、ずっとも疲れるので、他の騎士と交替制です。」

騎士は全部で6人。
それぞれが休んだり、持ち場を巡回したりしてるんだって。
他には、15歳のロイにカーゴ、20代のマックスとレイがいる。
マックスはイースターの弟で、レイはジョンの弟。

ロイはジョンと侍女のマリアの子で、カーゴはイースターと料理人のユリイカの子だ。
ちなみにマリアはイースターの妹でユリイカはジョンの姉らしい。


「僕、こう見えても結構強いんですよ?今度訓練に参加してもいいですか?」

「ははは。旦那様の許可が必要ですね。」


むぅ。信じてない。


「俺の両親が庭師をやってるんで、次は庭を見てやってください。」
イースターのおすすめで、次は庭へ。


「あらまぁ、奥様。」

「丁度薔薇が良い感じに咲いておりますよ。欲しい花があれば仰ってください。部屋に飾らせましょう。」


庭師のカブスとレインは、感じの良い夫婦でとても品がある。
カブスのいかつい顔と筋肉は、イースターとマックスに受け継がれているようだ。

「素敵です。まるで御伽噺に出てくる花園みたい。」

「うふふ。この人ったらこう見えてロマンチストなのよ~。天気が良い時はお庭やガセボでティータイムを楽しんでもいいのよ?おすすめ。そうそう、キッチンはいったかしら?ジョンのご両親は料理人をしているの。ジョセフの料理はね~~~美味しいのだけど、やっぱりスイーツはマチルダが上手よ~。ユリイカちゃんもとっても上手だけど、やっぱり一番はマチルダだわ。」




うぅ、元々が家族経営?みたいな冒険者チームだったからか、身内同士の結婚が多くて相関図がこんがらがっちゃうぞ。
それに意外と人が多い……でも、屋敷の広さを考えると少ない…?
お世話になるんだから、しっかり覚えなくちゃ。


旦那様の大事な人たちだもん。

でも、揃って茶色の髪だからなかなか覚えにくそう。
いくら平民にありがちな茶色だからって、茶色にも色々あるのに、これだけの人たちが全く同じ茶色だなんて珍しい。

…………頑張ろう。僕の脳細胞。
勉強を覚えるのは得意だけど、人の顔と名前を覚えるのはちょっと勝手が違うんだよね。





「ふう、意外と疲れちゃった。」

よっこらしょ、と応接間に腰掛ける。


応接間には、肖像画が飾られていた。


金髪碧眼の、威厳ある成人男性と高貴な女性。
そして、青年と少年。


「もしかして、この肖像画って、亡くなられた前の陛下御家族の?」

飾ってたらまずくないのだろうか。



「ええ、そうですよ。この屋敷には誰も呼びませんし、来ませんし。敬愛しているのです。立派な方々でした。飾るのはよくない、と思われますか?」

スージーの視線が鋭いように感じる。

「別にいいと思う。だってこの人たちは何も悪くないもの。」


「そうですね。」


もしかしたら、僕はこの家の闇に触れてしまっただろうか。
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