義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍

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瓦解する仮初めの日常

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「あなた………っ。」


壇上の赤いカーテンから現れた陛下は、明らかにワイナリーとロザリアを見ていた。

側にたたずむ王妃も、第二王子のケンブリッジも、笑顔の奥に冷ややかさが見える。



(まさか、まさか、まさか…。)

兄夫婦を殺害したこと。
兄夫婦の大事な息子を迫害したこと。
それらを全て、陛下はご存じだというのだろうか。


「これより、この場は裁判の場ともなるゆえ、皆心するがよい。」


「さい ばん?」

レイヤードは突然の出来事についていけず、呆けるしかない。

どういうこと、どういうことなの?とケインとローザが喚いているがよく耳に入ってこない。
彼は、父親である国王の一挙手一投足を見つめていた。


「13年前、前伯爵であるベネツィア=ヴェールとその妻、アナベル=ヴェールが馬車の事故で亡くなったが、その事故の際、ヴェール領に客人としてロイ=フォン=バティスタ殿下がいらしていた。報告を受け事故現場に駆けつけて泣きじゃくる親友を目の当たりにした殿下は、バティスタ王家の影を使い、事故現場の調査と保全を行っている。その際、ともに我が王家の影も捜査に当たったことを申し添えておこう。ロイ殿下、あの時は多大なご協力、本当に感謝している。」


「いえ、当然のことをしたまでです。シンは親友であったと同時に、生涯を共にする愛する人ですので。愛する人のためならなんだってするのが男というものですよ。まだ5歳の幼い子どもでもね。」

「ロイ…。」

ロイはシンの手を握り、見つめあってほほ笑んだ。


証拠の…保全……??

ばかな、馬車はすぐに私が……。でも、事故直後は確かに迂闊に近寄れなかった。
処分できたのはだいぶ後だ。



「夫妻の馬車の車輪は人為的に傷がつけられて外れやすくなっていた。これは誰かが故意に傷をつけたもの、つまり夫婦は事故死ではなく、他殺、少なくとも傷害致死ということになる。そして、一人残されたシン=ヴェールが当然、爵位を相続した。ところがだ、まだ彼は5歳。普通なら代行を立てるか若しくは先代が暫く再び伯爵となり、彼が大人になるまで凌ぐことになる。ヴェネツィア=ヴェールの他の兄弟は一人だけ、双子の弟であるワイナリー=ヴェールがいたが、彼はそのときただのワイナリーだった。妻のロザリアと結婚するときに自分勝手な婚約破棄をしたせいで、廃嫡されていたからだ。」

「「「なっ!!!!」」」


自分の父親が廃嫡されていたなんて知らなかったケインとローザ、それにレイヤードの顔色は悪い。

貴族が廃嫡………。それは、【平民】であることを示している。


「廃嫡されていたはずの者が、貴族籍に戻り、代行とはいえ伯爵になっている。それは、先々代に毒を盛り、書類を偽造して廃嫡を撤回する手続き書類を出した者がいるからだ。」


「そのとおり……。」


カーテンから見事な正装の威厳ある老人が現れる。


「おじい様!!!!」

シンが喜びの歓声をあげた。
幼い頃はすごくかわいがってもらったおじい様。
別宅になり、お体を悪くされ、会えなくなっていた。
転移でいこうと思った時もあるけれど、感染症が心配だから面会謝絶だとロイに言われて…。

でも、目の前のおじいさまは血色もいいし肉付きもいい。
何より姿勢も真っすぐでとっても元気そうだ。


「シン、心配かけたの。」
シンに対し優しい笑顔で手を振ると、先々代は恭しく陛下たちに礼をして、息子夫婦を睨んだ。

「私に毒を盛ったのは、あの毒婦です。ヴェネツィア夫婦が亡くなった時、葬儀にも出られないくらい衰弱していたのも、毒で弱っていたから…。あのままであれば、私は死んでいた。無事爵位を掠め取って油断したのだろう、私に関心がなくなったのを見計らって、ロイ殿下が医師とちゃんとした使用人を手配してくださった。そのおかげで、私は元気を取り戻したのだ。………シン、本当にすまなかった。本当はお前をすぐにでも迎えに行ってやりたかった。だが、この断罪の瞬間のため。すべてを知っていながら、お前に危害が及ぶことなく安全に罰するために、身を潜めていたのだ。」


ロイが、先々代に軽く相槌を打つ。



「ああ…………。」

わなわなと震える鬼のような形相のロザリアとは対照的に、項垂れ座り込むワイナリー。
なおも断罪は続く。


「本当に愚かだ、ワイナリー。お前にとって子爵家は良縁だったのに、女の色香に惑わされて、こんな悪女に唆されて。その分だと、私に毒を盛ったことは分かっていなかったようだな。いや、うすうす予感はしても腰抜けのお前のことだ、怖くて思考停止したのだろうが。」

「つまり、主犯はロザリア。そして、ワイナリー。二人は元々貴族籍ではなく、伯爵代行ですらない。伯爵代行だとしても、伯爵位はもとよりシンのものだったのだ。なので、そこのケインとローザも平民、しかも犯罪者の子ということになる。」


「………うそ…。うそだっ。」
「うそよっ!!!」



「ケイン、ローザ。私は廃嫡したものの息子一家が路頭に迷うのは忍びないと親心を出してしまった。それがいけなかったのだろうな。お前たちは私の屋敷で過ごしていた時のことを覚えているだろうか。あの頃お前の両親には侍女と執事をさせていた。食事も他の使用人と一緒にいただいていただろうに。それでも、自分たちは貴族の子女だと思っていたのかね?しかも、お前たちは親と一緒になって、【平民】が【伯爵】、他国の【公爵】でもある者を使用人のようにこき使い、苛めてきたのだ。親と子は別といえど、お前たち自身の罪も重いと心得よ。」

わあぁとローザは泣き出してしまった。



泣きだしたら大変なことになるのに…。詐欺メイクが悲惨なことになるけど…。
一番の当事者のはずが、傍観者のような気持ちで、シンはこの断罪劇を見ていた。

「これって、まだ続くのでしょうか?僕も言いたいことがあるのですが。」


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