31 / 72
閑話 ケインとローザとワイナリー、そして領民たち
しおりを挟む
自分は仕事ができる男だと思っていた。
それなのに、実はただの『はんこ押し機』だった…。
影ではみんなお荷物だと思いながら、一応伯爵だし、兄のヴェネツィアには恩義があるから、何かしらの役職を与えないわけにはいかず、そこに置いてもらってただけだった。
領地経営もシンがやっていた。
卒業パーティの後、息子のケインと2人、執務室へ足を踏み入れて帳簿やノート類等を見てみたが、何が問題があるのか、この家に今どれだけお金があるのかチンプンカンプンだった…。
私だってケインだって、ローザも、学園の成績はよかったはずなのに。
テストでいい点を取る、その場限りのテスト対策が上手だっただけで、何も身についていなかったのだ。
私たちは自分が優秀だと思い込んでいる愚か者だった。
それが自覚できた時、情けなくて、その場にへたり込んで絶望してしまった。
シンが家のことを整えてくれていた。
使用人がいないから、今や、料理を作ってくれる者も、身支度を手伝ってくれる者も、掃除をしてくれる者も誰もいない。
ローザにやるように言ったが、癇癪を起された。
逆にドレスを脱がせろ、風呂に入りたいと言われたが、私たちにできるものか。
なんとかドレスを脱がせたが、少し破いてしまった。
ケインもローザもお嬢様おぼっちゃま育ちで、家の中のことは何一つできない。
仕方がないから、父の屋敷で少しは執事経験のある私が慣れない家事をがんばった。
ロザリアがいたなら、あれは侍女をさせられていたから、少しはできただろうに。
家の中のことをするのが精いっぱいで、でも、うまくやれず、息子と娘が騒ぎ立てる。
そんな時に、レイヤード殿下が我が家にやってきた。
廃太子になったレイヤードはローザと結婚することになっている。
まだ王子の身分だが、新しいヴェール伯爵になるらしい。
レイヤード殿下はシンの残した書類を見て、仕事をてきぱきとやりだした。
この領は、領民が愚かなせいで危機的状況にあるが、領民をある意味突き放して、強制的にことを進めることで、まだなんとかなるかもしれないと仰った。
レイヤード殿下は、必要最小限の使用人を雇い、草むしりや庭の手入れは私の仕事になった。
領民は、強硬な殿下に反感を抱き、デモまで行ったが、殿下が一喝し、今では大人しくなっている。
『なんてこった……。ヴェネツィア様がおっしゃってたことが、全て正しかったのか。』
『シン様の勧めた通りやっていたら…。私たちは幸せだったのに…。』
『着いて行く人を間違えた。』
自分たちのことは棚に上げて、酷い奴らだと思う。
レイヤード殿下は、外部から業者や技術者を招き入れ、シンの残した教育機関やリサイクル工場を機能させ、領地を盛り上げ始めた。
ついていけない元々の領民は、今は、昔の行いを後悔しながら、貧しい生活を送っている。
殿下の護衛とは名ばかりで、ただ後ろに突っ立っているばかりのケインには、就職先がない。
それならば、きちんとした護衛になって欲しいし、背後霊のように常に殿下のお尻を守っているよりは、町の入口にでも突っ立っていてほしいと思う。
そう注意したら、殿下が狙われるかもしれないから!とかいう阿保なことを言い出した。
殿下はもはや、私たちに何も期待していない目をしている。
ローザはローザで、殿下が構ってくれなくなった、冷たい!ドレスも買ってくれない!と文句ばかり言っている。
バカじゃないだろうか。
殿下は、すっかり傲慢さがなくなり、領地経営を上向きにする手腕が評価されつつある。
性格に難があり、ローザに騙されただけで、私とは違って彼は優秀なのだ。
廃太子にはなったが、まだ王族籍からは抜かれていない殿下。
きっと、そのうち殿下は行いを許され、こちらとは婚約を解消し、まともな家に臣籍降下するのではないか。
殿下は気づいていないが、たまに様子を見に来る使いの方々の表情や、陛下たちから殿下への手紙を見るに、そう思う。
殿下に捨てられた時、私たちはどうなるのだろう。
殿下の背後にいるのなら、ただボケーっとしていないで、殿下の仕事ぶりを学んでほしいものである。
それなのに、実はただの『はんこ押し機』だった…。
影ではみんなお荷物だと思いながら、一応伯爵だし、兄のヴェネツィアには恩義があるから、何かしらの役職を与えないわけにはいかず、そこに置いてもらってただけだった。
領地経営もシンがやっていた。
卒業パーティの後、息子のケインと2人、執務室へ足を踏み入れて帳簿やノート類等を見てみたが、何が問題があるのか、この家に今どれだけお金があるのかチンプンカンプンだった…。
私だってケインだって、ローザも、学園の成績はよかったはずなのに。
テストでいい点を取る、その場限りのテスト対策が上手だっただけで、何も身についていなかったのだ。
私たちは自分が優秀だと思い込んでいる愚か者だった。
それが自覚できた時、情けなくて、その場にへたり込んで絶望してしまった。
シンが家のことを整えてくれていた。
使用人がいないから、今や、料理を作ってくれる者も、身支度を手伝ってくれる者も、掃除をしてくれる者も誰もいない。
ローザにやるように言ったが、癇癪を起された。
逆にドレスを脱がせろ、風呂に入りたいと言われたが、私たちにできるものか。
なんとかドレスを脱がせたが、少し破いてしまった。
ケインもローザもお嬢様おぼっちゃま育ちで、家の中のことは何一つできない。
仕方がないから、父の屋敷で少しは執事経験のある私が慣れない家事をがんばった。
ロザリアがいたなら、あれは侍女をさせられていたから、少しはできただろうに。
家の中のことをするのが精いっぱいで、でも、うまくやれず、息子と娘が騒ぎ立てる。
そんな時に、レイヤード殿下が我が家にやってきた。
廃太子になったレイヤードはローザと結婚することになっている。
まだ王子の身分だが、新しいヴェール伯爵になるらしい。
レイヤード殿下はシンの残した書類を見て、仕事をてきぱきとやりだした。
この領は、領民が愚かなせいで危機的状況にあるが、領民をある意味突き放して、強制的にことを進めることで、まだなんとかなるかもしれないと仰った。
レイヤード殿下は、必要最小限の使用人を雇い、草むしりや庭の手入れは私の仕事になった。
領民は、強硬な殿下に反感を抱き、デモまで行ったが、殿下が一喝し、今では大人しくなっている。
『なんてこった……。ヴェネツィア様がおっしゃってたことが、全て正しかったのか。』
『シン様の勧めた通りやっていたら…。私たちは幸せだったのに…。』
『着いて行く人を間違えた。』
自分たちのことは棚に上げて、酷い奴らだと思う。
レイヤード殿下は、外部から業者や技術者を招き入れ、シンの残した教育機関やリサイクル工場を機能させ、領地を盛り上げ始めた。
ついていけない元々の領民は、今は、昔の行いを後悔しながら、貧しい生活を送っている。
殿下の護衛とは名ばかりで、ただ後ろに突っ立っているばかりのケインには、就職先がない。
それならば、きちんとした護衛になって欲しいし、背後霊のように常に殿下のお尻を守っているよりは、町の入口にでも突っ立っていてほしいと思う。
そう注意したら、殿下が狙われるかもしれないから!とかいう阿保なことを言い出した。
殿下はもはや、私たちに何も期待していない目をしている。
ローザはローザで、殿下が構ってくれなくなった、冷たい!ドレスも買ってくれない!と文句ばかり言っている。
バカじゃないだろうか。
殿下は、すっかり傲慢さがなくなり、領地経営を上向きにする手腕が評価されつつある。
性格に難があり、ローザに騙されただけで、私とは違って彼は優秀なのだ。
廃太子にはなったが、まだ王族籍からは抜かれていない殿下。
きっと、そのうち殿下は行いを許され、こちらとは婚約を解消し、まともな家に臣籍降下するのではないか。
殿下は気づいていないが、たまに様子を見に来る使いの方々の表情や、陛下たちから殿下への手紙を見るに、そう思う。
殿下に捨てられた時、私たちはどうなるのだろう。
殿下の背後にいるのなら、ただボケーっとしていないで、殿下の仕事ぶりを学んでほしいものである。
101
あなたにおすすめの小説
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない
くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・
捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵
最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。
地雷の方はお気をつけください。
ムーンライトさんで、先行投稿しています。
感想いただけたら嬉しいです。
【完結】可愛い女の子との甘い結婚生活を夢見ていたのに嫁に来たのはクールな男だった
cyan
BL
戦争から帰って華々しく凱旋を果たしたアルマ。これからは妻を迎え穏やかに過ごしたいと思っていたが、外見が厳ついアルマの嫁に来てくれる女性はなかなか現れない。
一生独身かと絶望しているところに、隣国から嫁になりたいと手紙が届き、即決で嫁に迎えることを決意したが、嫁いできたのは綺麗といえば綺麗だが男だった。
戸惑いながら嫁(男)との生活が始まる。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる