18 / 38
18話
しおりを挟む
攻守が入れ替わる。生徒会長が伊織のいた席に腰掛け、耳かき部の道具セットを確認する。
「あれ?会長、マイ耳かき使わないの?」
友梨奈先輩がその様子に口を挟む。
「伊織がこの条件で戦ったのに経験者の私がマイセットを使ってしまったら
、アンフェアでしょ。」
「まあ、確かにそうかも。でも真剣勝負じゃないの?」
「真剣勝負だから、同じ条件に意味があるのよ。さ、伊織。来なさい。」
真剣な眼差しで伊織を見つめる会長。姉弟の絆か、あるいは因縁か。伊織は正面から挑むような目で見つめ返し、ゆっくりと膝に頭を落とす。
当然顔の向きはお腹側だ。
「あなたの顔がお腹に向いても、私は動じない。自分の恥を晒すだけになる。それでもいいの?」
「姉さんがいった。同じ条件じゃないと、アンフェアだ。僕は、フェアに倒して、耳かき部に入るんだ。」
お腹で隠れた顔から真剣なセリフが聞こえる。
「ふたりとも気合い十分のようだし、始めちゃいましょう。柿人くん
。タイマー準備!」
はなき先生がのんびりと間延びした、しかしさっさとしろと言う圧のある声で僕に、指示をくだす。
「うす。それじゃ、3カウントで。3、2、1、スタート!!」
「いくわよ!」
「負けるもんか!!」
気迫のこめられた表情の会長はしかし、手つきは丁寧で鮮やかだ。
「では、まずはお耳をマッサージしながらチェックしますね?」
「くっ!お願い、します。」
伊織の応えを聞いてから、会長は耳を引っ張り、回しながら穴の中を注意深く観察する。
「壁にたくさんついてますね。無理な自主練は自分の耳を壊しますよ?耳毛を軽く切りますね。」
「ご心配なさらず。体質ですので。」
伊織は無感動な声で会長のお腹から声を発する。その反応に会長の表情は露骨に歪む。
「では、ハサミが入りますよ。」
細いハサミの先端が耳の穴に潜りこみ、シャクシャクと、こちらまで心地良くなるような音が聞こえる。これが耳の穴の中で大音量で流れているなら、伊織の気持ちよさは相当のはずだ。だが、伊織は全く動く気配がない。まるで彫像のようだった。
「音では僕は高揚もリラックスもしません。」
「本当に強くなったね。伊織。でも、ダメだよ。」
粘着綿棒。先ほど自分が苦しんだ武器を躊躇いなく手に取る。
「粘着綿棒で切り落とした細かい毛と小さな耳垢は取っちゃいますね。」
宣言。基本に忠実に、動く会長の姿はまるで伊織の先ほどの耳かきの手法だ。
「伊織。わかっているでしょう。耳かきは怖いスポーツだよ。あなたが本気なのはわかった。けど、私もあなたを止めるダメに本気。じゃ、入れるね。」
粘着綿棒がペタペタと耳の壁に触れて、その色を変えていく。粘着綿棒はこの姉弟にとって、何か重要な意味や価値があるらしい。
何度目かの交換を経て、細かい垢や毛カスはとりのぞけたようだった。
「壁についた大きいのを耳かきで取っていきますね。」
金属製の耳かきを箱から取り出して、耳の中に差し込んでいく。
「んんっ!?」
耳かきに反応して、伊織も声を上げる。しかし、体はほとんど動かない。
「耳かきがあたっても泣いたり気持ち良くなったりしなくなったね。中学の頃は終わった後、私に散々泣きついていたのに。」
会長は穏やかに思い出を語る。大切なものを指でなぞるように、耳かきの先は壁に張り付いた大物にかかる。
「同じ手法で僕が潰れるとでも?僕だって耐えるために練習したんだ!!
「それで、自分の耳をこわすなら意味がないのよ。」」
そう言いながら耳かいをよりいっそう激しく動かす。伊織以上に素早く、基礎に忠実な耳かき。
「んぁああ!」
剥がす時に伊織が声を上げる。しかし、体が動く気配ない。会長も少し頬を赤らめるが、耳かきは止まらない。
「はぁはぁ。」
「後2か所あるから、もう少し頑張ってくださいね。」
会長の声掛けも余裕がなくなり、伊織の息遣いが荒くなっていく。
取り除かれた耳垢は潰れたフリスクのように薄く大きい。形を崩すことなく、ティッシュに落とされ、それが宣言通り2回続けて、会長は口を開く。
「これで終わりです。お疲れ様でした。伊織。」
終了の宣言だった。
「あれ?会長、マイ耳かき使わないの?」
友梨奈先輩がその様子に口を挟む。
「伊織がこの条件で戦ったのに経験者の私がマイセットを使ってしまったら
、アンフェアでしょ。」
「まあ、確かにそうかも。でも真剣勝負じゃないの?」
「真剣勝負だから、同じ条件に意味があるのよ。さ、伊織。来なさい。」
真剣な眼差しで伊織を見つめる会長。姉弟の絆か、あるいは因縁か。伊織は正面から挑むような目で見つめ返し、ゆっくりと膝に頭を落とす。
当然顔の向きはお腹側だ。
「あなたの顔がお腹に向いても、私は動じない。自分の恥を晒すだけになる。それでもいいの?」
「姉さんがいった。同じ条件じゃないと、アンフェアだ。僕は、フェアに倒して、耳かき部に入るんだ。」
お腹で隠れた顔から真剣なセリフが聞こえる。
「ふたりとも気合い十分のようだし、始めちゃいましょう。柿人くん
。タイマー準備!」
はなき先生がのんびりと間延びした、しかしさっさとしろと言う圧のある声で僕に、指示をくだす。
「うす。それじゃ、3カウントで。3、2、1、スタート!!」
「いくわよ!」
「負けるもんか!!」
気迫のこめられた表情の会長はしかし、手つきは丁寧で鮮やかだ。
「では、まずはお耳をマッサージしながらチェックしますね?」
「くっ!お願い、します。」
伊織の応えを聞いてから、会長は耳を引っ張り、回しながら穴の中を注意深く観察する。
「壁にたくさんついてますね。無理な自主練は自分の耳を壊しますよ?耳毛を軽く切りますね。」
「ご心配なさらず。体質ですので。」
伊織は無感動な声で会長のお腹から声を発する。その反応に会長の表情は露骨に歪む。
「では、ハサミが入りますよ。」
細いハサミの先端が耳の穴に潜りこみ、シャクシャクと、こちらまで心地良くなるような音が聞こえる。これが耳の穴の中で大音量で流れているなら、伊織の気持ちよさは相当のはずだ。だが、伊織は全く動く気配がない。まるで彫像のようだった。
「音では僕は高揚もリラックスもしません。」
「本当に強くなったね。伊織。でも、ダメだよ。」
粘着綿棒。先ほど自分が苦しんだ武器を躊躇いなく手に取る。
「粘着綿棒で切り落とした細かい毛と小さな耳垢は取っちゃいますね。」
宣言。基本に忠実に、動く会長の姿はまるで伊織の先ほどの耳かきの手法だ。
「伊織。わかっているでしょう。耳かきは怖いスポーツだよ。あなたが本気なのはわかった。けど、私もあなたを止めるダメに本気。じゃ、入れるね。」
粘着綿棒がペタペタと耳の壁に触れて、その色を変えていく。粘着綿棒はこの姉弟にとって、何か重要な意味や価値があるらしい。
何度目かの交換を経て、細かい垢や毛カスはとりのぞけたようだった。
「壁についた大きいのを耳かきで取っていきますね。」
金属製の耳かきを箱から取り出して、耳の中に差し込んでいく。
「んんっ!?」
耳かきに反応して、伊織も声を上げる。しかし、体はほとんど動かない。
「耳かきがあたっても泣いたり気持ち良くなったりしなくなったね。中学の頃は終わった後、私に散々泣きついていたのに。」
会長は穏やかに思い出を語る。大切なものを指でなぞるように、耳かきの先は壁に張り付いた大物にかかる。
「同じ手法で僕が潰れるとでも?僕だって耐えるために練習したんだ!!
「それで、自分の耳をこわすなら意味がないのよ。」」
そう言いながら耳かいをよりいっそう激しく動かす。伊織以上に素早く、基礎に忠実な耳かき。
「んぁああ!」
剥がす時に伊織が声を上げる。しかし、体が動く気配ない。会長も少し頬を赤らめるが、耳かきは止まらない。
「はぁはぁ。」
「後2か所あるから、もう少し頑張ってくださいね。」
会長の声掛けも余裕がなくなり、伊織の息遣いが荒くなっていく。
取り除かれた耳垢は潰れたフリスクのように薄く大きい。形を崩すことなく、ティッシュに落とされ、それが宣言通り2回続けて、会長は口を開く。
「これで終わりです。お疲れ様でした。伊織。」
終了の宣言だった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる