4 / 21
4 私、お父様を捨てて良いですか?
しおりを挟む
「一体何の騒ぎなの?」
メラニアが腕を組みながらラデッシュに尋ねる。ラデッシュは目に涙を浮かべながら、メラニアに駆け寄って訴えかけた。
「お姉様が……私を泥棒だと言って罵ったのよ。このネックレスは自分の物だって言いがかりをつけて、私から奪い取ろうとしたの!」
器用なものでどうやら彼女は涙を自由自在に操れるようだ。
「言いがかり? 貴方、気は確かなの? それは今日、私の着ているこのピンク色のドレスに合わせて一緒に届けられたものよ。だいたい貴方の今日着ているドレスは水色、そのピンクのネックレスとは全然色が合っていないじゃない。誰がどう見ても可笑しいでしょう?」
私がそう言って反論すると、ラデッシュは涙を流しながら今度は父に縋りつく。
「義父様、義姉様はこうやっていつも私に罪を擦りつけようとするんです」
すると、今度はメラニアが父に縋りついた。
「あなた、私の娘を泥棒扱いするだなんて幾ら何でも酷すぎますわ。この子はいつもそう。自分が高貴な生まれだからって、平民出身の私達を見下しているんです。でもね、このネックレスは確かに以前私が伯爵夫人の予算を使って、ラデッシュに買い与えたものです。ねぇ、あなた、信じて……」
嘘八百とはこのことだ。私は呆れながら、また言い返した。
「だったらそのネックレスをお祖父様達の前でもつけていられるの? それが本当にラデッシュの物だと言い張るのならずっとつけていられるはずよね?」
私のこの言葉を聞いたメラニアは、流石にこのままでは不味いと思ったのだろう。いきなりハラハラと涙を流したかと思うと、助けを乞う様に父を見つめた。本当に親子揃って女優にでもなれば良いのに……。その様子を見た私はまた、心の中で悪態をつく。
だが、このメラニアの涙を見た父は、迷わず彼女の肩を持ち私を咎めた。
「アイリス良い加減にしなさい! お前は何故いつもそうなんだ!! 自分の妹を泥棒扱いするなんてとんでもないやつだ。ラデッシュとメラニアに謝りなさい!!」
……ああ……またか……。
この状況でもやっぱり貴方はその二人を庇うのね……。
私の部屋の前……。
ドレスとは全く違う色のネックレス。
そして父だって今日私に侯爵家からプレゼントが届いた事は知っているはずだ。
それでも私の言う事は信じては貰えない。
いや、違う……。信じていないんじゃない。分かった上であえてこう言っているんだ……。
私を悪者にする。それが一番、この場を収める楽な方法だから……。
失望した私はそれでももう一度父に反論した。
「何故私が二人に謝らなければならないの? それは今日届いたばかりの私へのプレゼントよ。だいたい伯爵夫人の予算っていくらあるんですか? お父様はそのネックレスがそんなに簡単に買える値段のものだって思っているの? それに、だったら何故ラデッシュはここにいるの? この先にあるのは私の部屋だけよ! 少し考えればどちらが嘘を吐いているかなんて簡単に分かるはず。ねぇ、お父様お願い。目を覚まして下さい!!」
祈る様な気持ちだった。
でも、私のこの言葉を聞いたメラニアが、また父に涙ながらに訴えかけた。
「ねぇあなた、聞いたでしょう? この子はこうやって何時も私達を元平民だからお金がないと言って馬鹿にするんです」
どうしてそう言う解釈になるんだ。私は怒りで手のひらを握り締めた。
「私はそんな事、一言も言ってない! ただそのネックレスが私のだと言っただけだわ!!」
私は父の目を見て必死に訴えかけた。
でも父はメラニアの肩を抱きよせると、私に向かって今度は大声で怒声を浴びせた。
「アイリス、何度も言わせるな! さぁ、早くメラニアとラデッシュに謝りなさい!!」
「いやです! 私は間違えた事を言ってはいません! 誰が何と言おうとそれは私の物。それを自分の予算で買っただなんて。泥棒の母親は嘘つきなんですね。そんな二人を庇うお父様はとんだ道化だわ!!」
父に対する最後の希望さえ打ち砕れた私は、売り言葉に買い言葉。最後にそう言い放った。
『アイリス、お父様のことをお願いね……』
母は亡くなる前、私の手を握ってそう言った。
でも、あの頃の父はもういない……。
お母様、ごめんなさい。
これまで頑張って来たけれど、私にはもう耐えられません……。
私、もう……お父様を捨てて良いですか……?
メラニアが腕を組みながらラデッシュに尋ねる。ラデッシュは目に涙を浮かべながら、メラニアに駆け寄って訴えかけた。
「お姉様が……私を泥棒だと言って罵ったのよ。このネックレスは自分の物だって言いがかりをつけて、私から奪い取ろうとしたの!」
器用なものでどうやら彼女は涙を自由自在に操れるようだ。
「言いがかり? 貴方、気は確かなの? それは今日、私の着ているこのピンク色のドレスに合わせて一緒に届けられたものよ。だいたい貴方の今日着ているドレスは水色、そのピンクのネックレスとは全然色が合っていないじゃない。誰がどう見ても可笑しいでしょう?」
私がそう言って反論すると、ラデッシュは涙を流しながら今度は父に縋りつく。
「義父様、義姉様はこうやっていつも私に罪を擦りつけようとするんです」
すると、今度はメラニアが父に縋りついた。
「あなた、私の娘を泥棒扱いするだなんて幾ら何でも酷すぎますわ。この子はいつもそう。自分が高貴な生まれだからって、平民出身の私達を見下しているんです。でもね、このネックレスは確かに以前私が伯爵夫人の予算を使って、ラデッシュに買い与えたものです。ねぇ、あなた、信じて……」
嘘八百とはこのことだ。私は呆れながら、また言い返した。
「だったらそのネックレスをお祖父様達の前でもつけていられるの? それが本当にラデッシュの物だと言い張るのならずっとつけていられるはずよね?」
私のこの言葉を聞いたメラニアは、流石にこのままでは不味いと思ったのだろう。いきなりハラハラと涙を流したかと思うと、助けを乞う様に父を見つめた。本当に親子揃って女優にでもなれば良いのに……。その様子を見た私はまた、心の中で悪態をつく。
だが、このメラニアの涙を見た父は、迷わず彼女の肩を持ち私を咎めた。
「アイリス良い加減にしなさい! お前は何故いつもそうなんだ!! 自分の妹を泥棒扱いするなんてとんでもないやつだ。ラデッシュとメラニアに謝りなさい!!」
……ああ……またか……。
この状況でもやっぱり貴方はその二人を庇うのね……。
私の部屋の前……。
ドレスとは全く違う色のネックレス。
そして父だって今日私に侯爵家からプレゼントが届いた事は知っているはずだ。
それでも私の言う事は信じては貰えない。
いや、違う……。信じていないんじゃない。分かった上であえてこう言っているんだ……。
私を悪者にする。それが一番、この場を収める楽な方法だから……。
失望した私はそれでももう一度父に反論した。
「何故私が二人に謝らなければならないの? それは今日届いたばかりの私へのプレゼントよ。だいたい伯爵夫人の予算っていくらあるんですか? お父様はそのネックレスがそんなに簡単に買える値段のものだって思っているの? それに、だったら何故ラデッシュはここにいるの? この先にあるのは私の部屋だけよ! 少し考えればどちらが嘘を吐いているかなんて簡単に分かるはず。ねぇ、お父様お願い。目を覚まして下さい!!」
祈る様な気持ちだった。
でも、私のこの言葉を聞いたメラニアが、また父に涙ながらに訴えかけた。
「ねぇあなた、聞いたでしょう? この子はこうやって何時も私達を元平民だからお金がないと言って馬鹿にするんです」
どうしてそう言う解釈になるんだ。私は怒りで手のひらを握り締めた。
「私はそんな事、一言も言ってない! ただそのネックレスが私のだと言っただけだわ!!」
私は父の目を見て必死に訴えかけた。
でも父はメラニアの肩を抱きよせると、私に向かって今度は大声で怒声を浴びせた。
「アイリス、何度も言わせるな! さぁ、早くメラニアとラデッシュに謝りなさい!!」
「いやです! 私は間違えた事を言ってはいません! 誰が何と言おうとそれは私の物。それを自分の予算で買っただなんて。泥棒の母親は嘘つきなんですね。そんな二人を庇うお父様はとんだ道化だわ!!」
父に対する最後の希望さえ打ち砕れた私は、売り言葉に買い言葉。最後にそう言い放った。
『アイリス、お父様のことをお願いね……』
母は亡くなる前、私の手を握ってそう言った。
でも、あの頃の父はもういない……。
お母様、ごめんなさい。
これまで頑張って来たけれど、私にはもう耐えられません……。
私、もう……お父様を捨てて良いですか……?
1,536
あなたにおすすめの小説
こんな婚約者は貴女にあげる
如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。
初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
私が彼から離れた七つの理由・完結
まほりろ
恋愛
私とコニーの両親は仲良しで、コニーとは赤ちゃんの時から縁。
初めて読んだ絵本も、初めて乗った馬も、初めてお絵描きを習った先生も、初めてピアノを習った先生も、一緒。
コニーは一番のお友達で、大人になっても一緒だと思っていた。
だけど学園に入学してからコニーの様子がおかしくて……。
※初恋、失恋、ライバル、片思い、切ない、自分磨きの旅、地味→美少女、上位互換ゲット、ざまぁ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうで2022年11月19日昼日間ランキング総合7位まで上がった作品です!
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
貴方が私を嫌う理由
柴田はつみ
恋愛
リリー――本名リリアーヌは、夫であるカイル侯爵から公然と冷遇されていた。
その関係はすでに修復不能なほどに歪み、夫婦としての実態は完全に失われている。
カイルは、彼女の類まれな美貌と、完璧すぎる立ち居振る舞いを「傲慢さの表れ」と決めつけ、意図的に距離を取った。リリーが何を語ろうとも、その声が届くことはない。
――けれど、リリーの心が向いているのは、夫ではなかった。
幼馴染であり、次期公爵であるクリス。
二人は人目を忍び、密やかな逢瀬を重ねてきた。その愛情に、疑いの余地はなかった。少なくとも、リリーはそう信じていた。
長年にわたり、リリーはカイル侯爵家が抱える深刻な財政難を、誰にも気づかれぬよう支え続けていた。
実家の財力を水面下で用い、侯爵家の体裁と存続を守る――それはすべて、未来のクリスを守るためだった。
もし自分が、破綻した結婚を理由に離縁や醜聞を残せば。
クリスが公爵位を継ぐその時、彼の足を引く「過去」になってしまう。
だからリリーは、耐えた。
未亡人という立場に甘んじる未来すら覚悟しながら、沈黙を選んだ。
しかし、その献身は――最も愛する相手に、歪んだ形で届いてしまう。
クリスは、彼女の行動を別の意味で受け取っていた。
リリーが社交の場でカイルと並び、毅然とした態度を崩さぬ姿を見て、彼は思ってしまったのだ。
――それは、形式的な夫婦関係を「完璧に保つ」ための努力。
――愛する夫を守るための、健気な妻の姿なのだと。
真実を知らぬまま、クリスの胸に芽生えたのは、理解ではなく――諦めだった。
誰も愛してくれないと言ったのは、あなたでしょう?〜冷徹家臣と偽りの妻契約〜
山田空
恋愛
王国有数の名家に生まれたエルナは、
幼い頃から“家の役目”を果たすためだけに生きてきた。
父に褒められたことは一度もなく、
婚約者には「君に愛情などない」と言われ、
社交界では「冷たい令嬢」と噂され続けた。
——ある夜。
唯一の味方だった侍女が「あなたのせいで」と呟いて去っていく。
心が折れかけていたその時、
父の側近であり冷徹で有名な青年・レオンが
淡々と告げた。
「エルナ様、家を出ましょう。
あなたはもう、これ以上傷つく必要がない」
突然の“駆け落ち”に見える提案。
だがその実態は——
『他家からの縁談に対抗するための“偽装夫婦契約”。
期間は一年、互いに干渉しないこと』
はずだった。
しかし共に暮らし始めてすぐ、
レオンの態度は“契約の冷たさ”とは程遠くなる。
「……触れていいですか」
「無理をしないで。泣きたいなら泣きなさい」
「あなたを愛さないなど、できるはずがない」
彼の優しさは偽りか、それとも——。
一年後、契約の終わりが迫る頃、
エルナの前に姿を見せたのは
かつて彼女を切り捨てた婚約者だった。
「戻ってきてくれ。
本当に愛していたのは……君だ」
愛を知らずに生きてきた令嬢が人生で初めて“選ぶ”物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる