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第九章 復讐の舞台から
第二百一話 復讐の舞台から(15)
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ジルの正式な初舞台は国立劇場のような立派な場所ではなく、皮肉にもサティエルに買われたときに雑用をしていた小さな劇場だった。だが驚くことにいきなりの主役である。
これは別に何らかの汚い手を使ったわけではない。むしろそんな力はジルにもサティエルにもなかった。そう、国立劇場で演じていたサティエルにすらそんな力はなかったのだ。当人に聞けば、国立劇場に出入りしていたのは役者としてではなく別の仕事で必要だったからであり、役者としては小さな劇場でやるのが精いっぱいらしい。ゲラルドに「偽物」呼ばわりされる所以である。ジルが見る限り、サティエルは国立劇場で演じていた役者たちにまったく引けを取らないと思っていたが、それはわざわざ言わなかった。
とにかくジルが初舞台で主役の座を獲得したのには、様々な奇跡が重なったからである。
「たまにあるんだ。演劇に愛されている人間にはね。バドゥルさんのところのレジーラもそうだった」
計画通りジルをつかって稼げるようになりそうだとサティエルは上機嫌だ。
あの日、六十点だったジルの演技はとある裕福な演劇マニアの目にとまったらしい。というのも、その演劇マニア、リグロフィス候の論によれば「本物の物乞いにしか見えない迫真の演技だった」とのことだ。あの時はほぼ物乞いのようなものだったので当たり前の話である。衣装も化粧もしていない素のままのリアルな物乞いが舞台にあがり、「本物っぽい」と評されても心境は複雑である。ゲラルドなどはその顛末を聞いて大笑いしすぎ、顎を悪くしていた。
とにかくリグロフィス候はよほど本物の物乞いに感動したのか、金に飽かせてジルを探し回ったそうだ。しかし国立劇場に出入りしている役者たちは口をそろえて「知らない」という。知っていた人間もいたようだが、サティエルの仕事内容にもかかわってくるので、一様に口をつぐんでいたと聞く。
そうなるとマニア気質の人間はますます躍起になるのが常である。「謎の子役探し」は熱を帯びてきて、リグロフィス候はお忍びで下々の者たちが出入りするような劇場にまで足を運ぶようになった。またそういったリグロフィス候の奇行も身分の貴賤を問わず演劇界隈で話題になり、演劇マニアたちの間ではひそかに誰がその子役なのかと予想する賭けまではじまった。また、自分がこれだと思った子役をリグロフィス候に進言したり、これをチャンスとみた全然関係ない子役たちが「自分のことだ」と名乗り出るなど、騒ぎはどんどん大きくなる。
そんなこととはつゆ知らず、ジルは逃げ出す以前と同じく針先のように細かい指摘を受けながらサティエルのもとで地獄の稽古を受けていた。相変わらず劇場では雑用ばかりだったので、見つからなかったのも道理である。もちろんジルだって上流階級の演劇マニアがとある子役を探しまわっているという噂くらいは耳にしたが、自分とはまったく縁のない話だと聞き流していた。
そして季節が変わるころ、満を持してジルはリグロフィス候に「見つかって」しまったのだ。単純に舞台道具などを運んでいるときに鉢合わせしたのだが、驚いたことにリグロフィス候はなんの特徴もないジルの地味な顔を覚えていたのだ。
そういった一連の騒動がよほど話題になったのか、演劇マニアたちの会報や娯楽性の高い新聞などにおもしろおかしく書立てられ、ジルは一躍有名人になってしまった。そうなると自然「あの子役に何かやらせてみろ」という話になってくる。
「是非うちで!」と殺到する劇場の関係者たちに野心家のサティエルは「主役でなければやらせない」と狂ったことを言い出した。ここでもゲラルドは大笑いして顎を悪化させている。しかしジルはまったく笑えない。世間の期待がこんなに膨れ上がっている中で粗末な演技を見せたらどれほど恥をかくだろうか。
サティエルの方は無駄に自信満々で「今は大きな流れにのっている気がするよ。それにジルには何かがある。逆境でこそ力を発揮するタイプだし、絶対にいける」と、撤回する気配がない。
そんなこんなでジルの初舞台は世間の大注目を集める中、決定したのである。
初舞台の件は困惑やプレッシャーもあったが、ジルにとって、おおむね喜ばしい事件ととらえることができた。しかしこの頃、それとは別に単純に喜ばしいとはいえないことも抱えこんでいた。
まずはサティエルの仕事の件だ。結論からいうとなんの説明もなかった。どうやら察しろということらしい。ヒントはジルの父の仕事と関係しているということだという。そこまで聞いてしまえば、ジルには思い当たることしかない。
父は危険な仕事をしていた。ディガレイという国に関わることである。ディガレイはレジス南東に位置する小国であるが、外海への湾と巨大な運河を擁しているため、非常に戦争に巻きこまれやすい地域でもある。物流の要であるため、物も金も集まる。レジスも、そして他国も、ディガレイが欲しい。ディガレイもそれを知っていて、どこの国にも与せず、常に中立という立場を保ち続けると各国へ誓いを立てた。そうでないと、ディガレイがどこかの国を優遇して自国が不利益を被るのではないかと、各国が疑心暗鬼になり、それが戦火の火種となるからだ。とりあえずはそれで何事もなくすんでいた。しかし正直なところ誰が中立の誓いなどを信じることができるだろうか。各国はこぞって学術研究だとか、親交を深めるためだとか、様々な口実のもと人を送りこみ監視しあった。その一人がちょうどレジス南東の植物を研究をしていたジルの父である。
いったい何があったのか、ジルは正確にわからない。父と連絡が取れなくなって、母がディガレイまで赴いた。だが母も帰っては来なかった。
原因は父の研究成果だ。ディガレイが知ったら欲しくてたまらなくなるような植物についての研究結果がある。ディガレイは海風が吹きすさぶ長い海岸線と険しい山岳地帯で成り立つ国だ。平野がほとんどない。そのため食糧は他国に大きく依存している。そのような地形でも育つ農作物について父は研究していた。純粋に飢える人々が一人でも減ればよいという志からだった。父の思惑とは裏腹に、レジスはディガレイと親密な関係を築くための布石を手に入れたとわき立ち、他国はなんとかして邪魔してやろうという空気になる。そんな中での事件であった。
だからこそジルは完全に信頼できるかどうかもわからない遠縁を頼ることはせず身を隠したのだ。父の研究成果の一部が隠されている場所を知っている。父の無念をジルが晴らさなくてはならない。さらに父の死の真相を突きとめて復讐を遂げたい。とにかくそのために何があっても生き延びなくてはならなかった。
要するに、ジルが導き出した答えはサティエルたちはレジスの間諜組織で、ジルの持っているかもしれない父の研究成果を狙っている。「こちら側に巻きこみたかった」というのは、おそらく子供なのだから手懐けて情報を吐き出させようという魂胆だろう。だが父の研究成果はそんな国の道具に使わせるつもりはない。ジルは父の共同研究者たちの中に信頼できる人を見つけて父の研究を託したかった。残念ながらジルには父の研究に関する知識が薄い。生活の基盤を固めながら、少しずつ慎重にやっていこう。困っている人々に確実に父の研究成果が届くように。
これがようやく生きていける目処が立ったジルの結論である。
だがそのためにはサティエルたちを利用することになる。情報を出すつもりがないくせに、保護だけはしてもらう。野良猫のようにふてぶてしく。ジルはこの頃になるとサティエルたちのことを家族のように感じはじめていたので、これは少しばかり気が重いことであった。
もうひとつ、気が重いことがあった。
例のミリルディア家の飾りボタンの件である。これは騒動からだいぶ経ったのちのことなのだが、ミリルディア家の再建に奮闘しているであろうルーサスがそろそろ落ち着いたのではないかと思われる頃を過ぎてもなお「ボタンを返せ」とはいってこない。風の噂によるとミリルディア家は新しく若い当主を迎え、またルーサスの両親をよく知る人々の協力も得ることができて、まさに順風満帆なのだという。しびれを切らしたジルはルーサスに手紙を書いたのだった。返せとはいわれていないのに「私のいうことを聞くなら返してあげなくもない」という内容であるから、ジル自身もかなりおかしな具合だと思ったものの、気にせずそのまま出した。返事はかなり遅かった。ジルも忙しかったが、おそらくルーサスも忙しかったのだろう。返事は一言だった。やたらと上等な紙を使い「それだけ返されても困る」と書かれている。挨拶も何もない。文字が書かれていない白い部分がもったいないので、別のことに使おうと丁寧に紙を切った。
そこまでやってしまってから、はてと首を傾げる。いったいどういう意味だろう。ジルはさっそく細長くなった紙をサティエルに見せた。
サティエルは何度か首を振ると、久しぶりにお父さんの口調で「無視しなさい」と言った。ジルはもう子供ではないが。それから少し首を傾けて「細長いな」とつぶやいた。
結局よくわからないのでゲラルドに見せると「そういや、それを忘れていた」と、細長い紙に目を落とし「細長いな」と眉根を寄せた。クトも手持ち無沙汰とでもいうように、一緒にのぞきこむが、すぐに興味を失ったようで、庭の草を抜いたりして遊びはじめる。相変わらず行動が猫みたいだ。
「ガキが適当なことしてたわけじゃなかったわけか」
ゲラルドは意味ありげにつぶやいてから、やはり「無視しろ」と言った。
仕方なくジルは草を抜いているクトに聞いてみる。
「ボタンだけ返されても困るということでしょう。それを返してもらう際にもうひとつ必要なものがある」
そこでもったいぶったように言葉をとめると、抜いた草を地面にぱらぱらと撒く。それを教えてくれないのかと、ジルが口を開こうとしたところで、ようやくクトはジルを指差す。
「そのボタンの意味するところを考えるに『それを持って嫁に来い』といっていると思われるね」
なんでもないことのようにクトはいう。
なるほど、そういうことか。
では、――無視しよう。
ジルは細長い紙を折りたたんで、ジルの稼ぎで少しばかり大きくなったサティエルの家の自室の引き出しに押しこんだ。とはいえ、大切なボタンを預かっている状態は気が重い。なんとかして返却してやろう。
ジルにはやらなくてはならないことがまだまだたくさんあった。
これは別に何らかの汚い手を使ったわけではない。むしろそんな力はジルにもサティエルにもなかった。そう、国立劇場で演じていたサティエルにすらそんな力はなかったのだ。当人に聞けば、国立劇場に出入りしていたのは役者としてではなく別の仕事で必要だったからであり、役者としては小さな劇場でやるのが精いっぱいらしい。ゲラルドに「偽物」呼ばわりされる所以である。ジルが見る限り、サティエルは国立劇場で演じていた役者たちにまったく引けを取らないと思っていたが、それはわざわざ言わなかった。
とにかくジルが初舞台で主役の座を獲得したのには、様々な奇跡が重なったからである。
「たまにあるんだ。演劇に愛されている人間にはね。バドゥルさんのところのレジーラもそうだった」
計画通りジルをつかって稼げるようになりそうだとサティエルは上機嫌だ。
あの日、六十点だったジルの演技はとある裕福な演劇マニアの目にとまったらしい。というのも、その演劇マニア、リグロフィス候の論によれば「本物の物乞いにしか見えない迫真の演技だった」とのことだ。あの時はほぼ物乞いのようなものだったので当たり前の話である。衣装も化粧もしていない素のままのリアルな物乞いが舞台にあがり、「本物っぽい」と評されても心境は複雑である。ゲラルドなどはその顛末を聞いて大笑いしすぎ、顎を悪くしていた。
とにかくリグロフィス候はよほど本物の物乞いに感動したのか、金に飽かせてジルを探し回ったそうだ。しかし国立劇場に出入りしている役者たちは口をそろえて「知らない」という。知っていた人間もいたようだが、サティエルの仕事内容にもかかわってくるので、一様に口をつぐんでいたと聞く。
そうなるとマニア気質の人間はますます躍起になるのが常である。「謎の子役探し」は熱を帯びてきて、リグロフィス候はお忍びで下々の者たちが出入りするような劇場にまで足を運ぶようになった。またそういったリグロフィス候の奇行も身分の貴賤を問わず演劇界隈で話題になり、演劇マニアたちの間ではひそかに誰がその子役なのかと予想する賭けまではじまった。また、自分がこれだと思った子役をリグロフィス候に進言したり、これをチャンスとみた全然関係ない子役たちが「自分のことだ」と名乗り出るなど、騒ぎはどんどん大きくなる。
そんなこととはつゆ知らず、ジルは逃げ出す以前と同じく針先のように細かい指摘を受けながらサティエルのもとで地獄の稽古を受けていた。相変わらず劇場では雑用ばかりだったので、見つからなかったのも道理である。もちろんジルだって上流階級の演劇マニアがとある子役を探しまわっているという噂くらいは耳にしたが、自分とはまったく縁のない話だと聞き流していた。
そして季節が変わるころ、満を持してジルはリグロフィス候に「見つかって」しまったのだ。単純に舞台道具などを運んでいるときに鉢合わせしたのだが、驚いたことにリグロフィス候はなんの特徴もないジルの地味な顔を覚えていたのだ。
そういった一連の騒動がよほど話題になったのか、演劇マニアたちの会報や娯楽性の高い新聞などにおもしろおかしく書立てられ、ジルは一躍有名人になってしまった。そうなると自然「あの子役に何かやらせてみろ」という話になってくる。
「是非うちで!」と殺到する劇場の関係者たちに野心家のサティエルは「主役でなければやらせない」と狂ったことを言い出した。ここでもゲラルドは大笑いして顎を悪化させている。しかしジルはまったく笑えない。世間の期待がこんなに膨れ上がっている中で粗末な演技を見せたらどれほど恥をかくだろうか。
サティエルの方は無駄に自信満々で「今は大きな流れにのっている気がするよ。それにジルには何かがある。逆境でこそ力を発揮するタイプだし、絶対にいける」と、撤回する気配がない。
そんなこんなでジルの初舞台は世間の大注目を集める中、決定したのである。
初舞台の件は困惑やプレッシャーもあったが、ジルにとって、おおむね喜ばしい事件ととらえることができた。しかしこの頃、それとは別に単純に喜ばしいとはいえないことも抱えこんでいた。
まずはサティエルの仕事の件だ。結論からいうとなんの説明もなかった。どうやら察しろということらしい。ヒントはジルの父の仕事と関係しているということだという。そこまで聞いてしまえば、ジルには思い当たることしかない。
父は危険な仕事をしていた。ディガレイという国に関わることである。ディガレイはレジス南東に位置する小国であるが、外海への湾と巨大な運河を擁しているため、非常に戦争に巻きこまれやすい地域でもある。物流の要であるため、物も金も集まる。レジスも、そして他国も、ディガレイが欲しい。ディガレイもそれを知っていて、どこの国にも与せず、常に中立という立場を保ち続けると各国へ誓いを立てた。そうでないと、ディガレイがどこかの国を優遇して自国が不利益を被るのではないかと、各国が疑心暗鬼になり、それが戦火の火種となるからだ。とりあえずはそれで何事もなくすんでいた。しかし正直なところ誰が中立の誓いなどを信じることができるだろうか。各国はこぞって学術研究だとか、親交を深めるためだとか、様々な口実のもと人を送りこみ監視しあった。その一人がちょうどレジス南東の植物を研究をしていたジルの父である。
いったい何があったのか、ジルは正確にわからない。父と連絡が取れなくなって、母がディガレイまで赴いた。だが母も帰っては来なかった。
原因は父の研究成果だ。ディガレイが知ったら欲しくてたまらなくなるような植物についての研究結果がある。ディガレイは海風が吹きすさぶ長い海岸線と険しい山岳地帯で成り立つ国だ。平野がほとんどない。そのため食糧は他国に大きく依存している。そのような地形でも育つ農作物について父は研究していた。純粋に飢える人々が一人でも減ればよいという志からだった。父の思惑とは裏腹に、レジスはディガレイと親密な関係を築くための布石を手に入れたとわき立ち、他国はなんとかして邪魔してやろうという空気になる。そんな中での事件であった。
だからこそジルは完全に信頼できるかどうかもわからない遠縁を頼ることはせず身を隠したのだ。父の研究成果の一部が隠されている場所を知っている。父の無念をジルが晴らさなくてはならない。さらに父の死の真相を突きとめて復讐を遂げたい。とにかくそのために何があっても生き延びなくてはならなかった。
要するに、ジルが導き出した答えはサティエルたちはレジスの間諜組織で、ジルの持っているかもしれない父の研究成果を狙っている。「こちら側に巻きこみたかった」というのは、おそらく子供なのだから手懐けて情報を吐き出させようという魂胆だろう。だが父の研究成果はそんな国の道具に使わせるつもりはない。ジルは父の共同研究者たちの中に信頼できる人を見つけて父の研究を託したかった。残念ながらジルには父の研究に関する知識が薄い。生活の基盤を固めながら、少しずつ慎重にやっていこう。困っている人々に確実に父の研究成果が届くように。
これがようやく生きていける目処が立ったジルの結論である。
だがそのためにはサティエルたちを利用することになる。情報を出すつもりがないくせに、保護だけはしてもらう。野良猫のようにふてぶてしく。ジルはこの頃になるとサティエルたちのことを家族のように感じはじめていたので、これは少しばかり気が重いことであった。
もうひとつ、気が重いことがあった。
例のミリルディア家の飾りボタンの件である。これは騒動からだいぶ経ったのちのことなのだが、ミリルディア家の再建に奮闘しているであろうルーサスがそろそろ落ち着いたのではないかと思われる頃を過ぎてもなお「ボタンを返せ」とはいってこない。風の噂によるとミリルディア家は新しく若い当主を迎え、またルーサスの両親をよく知る人々の協力も得ることができて、まさに順風満帆なのだという。しびれを切らしたジルはルーサスに手紙を書いたのだった。返せとはいわれていないのに「私のいうことを聞くなら返してあげなくもない」という内容であるから、ジル自身もかなりおかしな具合だと思ったものの、気にせずそのまま出した。返事はかなり遅かった。ジルも忙しかったが、おそらくルーサスも忙しかったのだろう。返事は一言だった。やたらと上等な紙を使い「それだけ返されても困る」と書かれている。挨拶も何もない。文字が書かれていない白い部分がもったいないので、別のことに使おうと丁寧に紙を切った。
そこまでやってしまってから、はてと首を傾げる。いったいどういう意味だろう。ジルはさっそく細長くなった紙をサティエルに見せた。
サティエルは何度か首を振ると、久しぶりにお父さんの口調で「無視しなさい」と言った。ジルはもう子供ではないが。それから少し首を傾けて「細長いな」とつぶやいた。
結局よくわからないのでゲラルドに見せると「そういや、それを忘れていた」と、細長い紙に目を落とし「細長いな」と眉根を寄せた。クトも手持ち無沙汰とでもいうように、一緒にのぞきこむが、すぐに興味を失ったようで、庭の草を抜いたりして遊びはじめる。相変わらず行動が猫みたいだ。
「ガキが適当なことしてたわけじゃなかったわけか」
ゲラルドは意味ありげにつぶやいてから、やはり「無視しろ」と言った。
仕方なくジルは草を抜いているクトに聞いてみる。
「ボタンだけ返されても困るということでしょう。それを返してもらう際にもうひとつ必要なものがある」
そこでもったいぶったように言葉をとめると、抜いた草を地面にぱらぱらと撒く。それを教えてくれないのかと、ジルが口を開こうとしたところで、ようやくクトはジルを指差す。
「そのボタンの意味するところを考えるに『それを持って嫁に来い』といっていると思われるね」
なんでもないことのようにクトはいう。
なるほど、そういうことか。
では、――無視しよう。
ジルは細長い紙を折りたたんで、ジルの稼ぎで少しばかり大きくなったサティエルの家の自室の引き出しに押しこんだ。とはいえ、大切なボタンを預かっている状態は気が重い。なんとかして返却してやろう。
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