実話怪談 死相他

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ノックする者

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 インターネット上の掲示板で知り合ったサラリーマンさんの体験談。

 仕事で名古屋に行きホテルに泊まった時の話である。そのホテルは大きなホテルでビジネスホテルというわけではないがリーズナブルな値段で宿泊できるので重宝したという。

 部屋のキーを受け取った時「何かありましたら室内電話でご連絡差し上げますので、防犯の観点から部屋をノックされても、身に覚えが無かったらドアを開けないでください」と言われたが、特に重要なことだとも思わず聞き流していた。

 繁華街に近いこともあって、夜はラーメンを食べて、串カツをテイクアウトして持ち帰り、部屋でビールを楽しんでいた。いい身分だなと自分でも思ったが、一生懸命働いているんだしこのくらいの役得はあっても良いかと思ったそうだ。

 なんとなく映画を見たり風呂に入っていたりしているうちに、夜も更けてきた。夜中の零時くらいだろうか、コンコンッコンコンッとドアをノックされた。

 何だろうと思い覗き穴から外を見てみる……。誰もいない。

 ドアを開けてみるとふっと中に風が吹き込んだような気がする。外に出てみて辺りを伺ってみるもやはり誰もいない。

 まあいいや、と思って眠ることにした。ベッドに入りウトウトとし始めたときである。

 ボソボソッ……ボソボソッと何かをつぶやいている様な音がする。ふっと目が覚めるが身体が動かない。金縛りだった。

 またボソボソッ……ボソボソッと音がする。今度は近い。眼球だけが動くことに気が付き、音のする方を見る。女が立っているではないか。

 長い髪に青白い肌、肌の色と同じように青白いワンピースの様なものを着ている。表情は俯いていて伺えない。

 それが何かをつぶやきながら近づいてくる。手がベッドの淵へかかり、女が前かがみになってジリジリとこちらに迫ってくる。

 女が顔を覗き込んできて……濁った痰の様な白目に正気を失った様な真っ黒い瞳孔、目が合った瞬間に全身が総毛だった。

「一緒に……死んでくれる?」と女がつぶやいた瞬間意識を失った。

 気が付くと朝になっていた。フロントの人にそれとなく昨晩の事を聞くと、「あ……ドア開けちゃいましたか?」と言われた。

 何ともないと言う人が大半だが、たまにそういった体験をなさる人もいるようです。原因が不明なので何ともできないんですよ。とフロントの係員は朝食のサービスチケットを渡してにっこりと笑ったそうだ。
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