穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

文字の大きさ
79 / 131
3年1学期

79話:大切な幼馴染と誕生日の約束を②

しおりを挟む
 買ったばかりの繊細なタルトを崩さない様にそっと持ちながら駅に向かって歩く。駅までは結構距離があるので俺はずっと気になっていたことをクロードに聞いてみた。

「そういえば、昨日の犯人ってどんな人だったんだろうね?クロード何か聞いてる?」
「……変質者の集団だったらしい。今は全員が捕まってるからもう心配しなくていい」

 それを聞いて少し安心する。事件に巻き込まれたのは最悪だけど、同じ被害に遭う子がこれ以上出ないのは嬉しい。

「あのさ、ジンと協力したって、何があったの?」
「……あいつが犯人の居場所を突き止めて、そこで薬を確保したんだ」
「えっ、クロード犯人見たの?大丈夫だった?」

 てっきり俺は、クロードが保健室から薬を持ってきてくれたのかと思ってたから意外な展開に驚く。というか、ジン割と凄いことしてたんだ。俺が応援合戦に出れたのは解除薬が届いたおかげだし、癪だけど今度会ったら話くらいは付き合ってあげるべきかもしれない。

「特に何も。保健室で足りない分の薬まで回収できたから他の被害者にも渡せて良かった」
「そっか、なら良かった」
「それより……」

 クロードが何かいいかけた時、ちょうど大きな停車音を立てて電車が来る。その音で聞こえなかった言葉を俺は振り返って聞き返そうとしたんだけど、なんでもないって言われてしまう。蒸し返すのもどうかと思って、結局俺は寮までの帰り道を他愛のない話をして帰った。

 ◇

「蝋燭つけるよ!電気消そ!」

 寮に戻ったその足で俺達はクロードの部屋でケーキを広げた。俺の部屋でも良かったんだけど、チア練習が忙しくてあんまり片付けられなかったからクロードにお願いしたんだよね。
 蝋燭の光だけが照らす室内で、俺とクロードはフルーツタルトを挟んで座る。クロードが俺に吹いていいよって言ってくれたから遠慮せず蝋燭を吹き消した。

 炎が消えて一瞬真っ暗になるこの瞬間って、何が起こるわけでもないのに毎回ドキドキする。
 電気をつけて、ケーキを切り分けて並べたらあとはゆっくり話しながら食べるだけだ。普段と殆ど変わらないのに、蝋燭の香りがするだけで少し特別な感じがするのはやっぱり誕生日だからかな。

「……昨日の」

 ホールが半分消えた頃、クロードがこちらの様子を伺いながら言葉を続ける。

「ルカに、力を使ったのか?」
「えっと……」

 クロードが聞きたいのは力を使ったことそのものじゃなくて、使うに至った経緯だという事なのは目を見ればわかる。

「ルカの様子が変で、あのままだと暴走しそうだったから……あの時は羽が出てたのもあって、特性覚醒を使ってちょっと眠ってもらった感じ」
「あいつに何かされたのか?それに特性覚醒って……」

 クロードに心配をかけたくないけど、変に隠して後から衝突するのも避けたい。だけど、ルカのことも悪く思ってほしくはないから俺は言葉を選んで説明をした。だけど俺の思惑に反してクロードの表情は険しかった。多分ルカの行動もだけど俺が特性覚醒まで使ったからだろう。

 特性覚醒は人間以外の種族が、羽とかの種族特性を出してる時にだけ使える強化状態で、固有能力の出力が上がる代わりに慣れてないと魔力暴走の危険があるものだ。覚醒すると魂に負担がかかるし、種族によっては成人まで使っちゃダメってルールもある。俺は夢魔の力のコントロールのために少しだけお父さんに教えてもらっていたから使い方は知っていた。

(まあ、無闇に使っちゃダメとは言われてたんだけどね)

 そして昨日、幸か不幸か事件のせいで羽が出ていた俺は条件を満たしていたから、あの状態のルカに効く強力な精神魔法を使う為に一か八かで特性覚醒を使った。結果としてルカの暴走は止められたし俺の方にも特に異常は起きなかったから、俺は悪い行動だったとは思わない。だけど過去に俺の魔力暴走を見たことのあるクロードがこれを危険視するのも当然ではある。

「俺は大した事されてないよ。ただ、話がうまく通じなかったのと押し倒されただけ」
「な……」
「それよりルカがエリオ君に攻撃したり、明らかに様子がおかしかったから止めなきゃって思って使っちゃった。心配かけてごめん」

 俺の説明に、クロードが何か言いたげに口を開いて目を伏せる。それを見てクロードがどれだけ俺の事を心配してくれるかがわかってちょっと罪悪感が湧く。
 それでも、あのままルカが魔力暴走したりしたらもっと大変なことになってたとは思うから、クロードには悪いけど、俺はもしあの時に戻れたとしても同じ事をしたと思う。

「多分だけど、ルカも混乱して変な事しちゃったんじゃないかなって俺は思ってる」
「だが……」
「心配しないで!俺ルカにちゃんと話聞いてみるから大丈夫!」
「………それが、1番心配なんだ」

 特性覚醒でかけた魔法の副作用も気になるし、俺は休み明けにルカに会いに行くつもりだった。だけど、クロードはそれをよく思っていないみたいで言いにくそうに言葉を重ねる。

「フレンが、あいつを気にかけている気持ちはわかる。俺はそれを尊重したい……だけど、フレンが今回みたいな目に遭うならやめてほしい」

 クロードは、俺がやる事を基本的に応援してくれる。困っていたら助けてくれるし、何かあれば一緒にやってくれる人だ。こんな風に止められたのは初めてだった。俺もクロードが意地悪で言ってるわけじゃないのはわかる。だけど俺にも譲れないものがあった。

「心配してくれてありがとう。でもね俺、ルカは俺みたいに何かで暴走しちゃっただけかもって思うんだ。だから、一回は話を聞きたい。俺が昔クロードに助けてもらったみたいに」
「そ……れは」

 邪竜として、疎まれて傷ついて生きてきたルカは、夢魔として傷ついて隠れてきた俺自身と重なる。もしルカも何かで暴走してしまったのなら、俺は手を差し伸べて引っ張ってあげたい。でも、クロードの心配もわかるから一回だけ。無茶はしない。それによくない考えかもしれないけど、前回で奥の手である特性覚醒が通じる事がわかったから完全に無策ってわけでもない。

「一回だけ俺を信じて?クロード」


 まだ完全には納得してもらえないかもしれないけど、俺はクロードに嘘はつきたくないから話せるところは全て話したつもりだ。

「…………わかった。だが、絶対に危ない事はしないでくれ」
「うん、それは約束する」

 そう言って俺はクロードに小指を差し出す。クロードがそれにゆっくりと小指を絡めたのを見て俺は約束の言葉を告げた。

 ◇

「遅くなったけど誕生日プレゼント。これ、使ってくれると嬉しい」

 絡んだ小指を離した後、そう言って俺は鞄からプレゼントを取り出す。冬月祭で渡したグローブの手入れに使うクリームだ。

「……ありがとう、早速使わせてもらうな。俺からもこれ、受け取ってくれ」

 クロードがくれたのはヘアブラシだった。髪が纏まりやすくなると有名なやつ。

「これ!なかなか手に入らないやつ!探しても見つからなかったのに凄い!」
「しばらく俺が整えてやれないからな」

 体育祭も終わり、四年生は校外実習が本格化する。同じ学校に所属はしているけど、これからは寮で顔を合わせる機会も激減するという事だ。
 毎朝、髪が跳ねてたら丁寧に梳かしてくれていたクロードがこれを選んだ時の気持ちを考えるとその事実がより一層現実味を帯びてくる。

「ありがとう、毎日使うね」
「後ろの方跳ねやすいから気をつけろよ」

 学校にいるとつい、明日も変わらない毎日だって気がしてしまうけど、一日だって同じ日はなくて何かが変わり続けていく。その中で、変わらずに大切にしたいものを大事にしていけたらいいなと強く思う誕生日。
 残り少なくなったタルトをゆっくりと2人で食べて6月の初めの休日は幕を閉じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。 背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。 魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。 魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。 少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。 異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。 今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。 激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ

最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??

雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。 いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!? 可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

処理中です...