穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

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3年1学期

80話:お礼は感謝を込めて①

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 体育祭が終わった翌々日の休日(俺の誕生日の翌日)、俺はある目的を果たすためカイを自分の寮に呼び出していた。

「それで、話ってなんだよ?」

 寮の玄関で訪問客用の記録表に名前を書いていたカイが俺に向かって問いかける。

「カイ、俺がペア授業監督してる間色々フォローしてくれたでしょ?ちょっと間が空いちゃったけどお礼まだだったから」

 ルカとエリオ君のペア授業監督は2ヶ月弱やってたから、その間俺はずっとカイに授業内容を教えてもらっていた。そのおかげで特に遅れもなく授業についていけている。前からお礼はすると約束してたし、体育祭が終わった今が絶好のタイミングなので俺はカイに声をかけたというわけだ。

「あー、なるほどな。けどなんで寮なんだよ。休み明けの学校でもよくねぇか?」

 カイの疑問はもっともだ。だけどちゃんと俺には考えがあった。

「今じゃなきゃダメだからさ、じゃ着いてきて!」

 俺はそう言ってカイの腕を引っ張って廊下を歩き、自分の部屋まで案内する。

「な、ななな、なんで部屋入っ!!お、お前何するつもり……」

 なんだけど、なんでかカイが慌てだしてなかなか部屋に入ろうとしない。

「別に変なことなんてしないって!ほら早く入る!」

 ここでこうしてても埒が開かないので俺はカイの背中を勢いよく押して部屋に押し込んだ。

 ◇

「準備するからここ座ってて。部屋から出るのは無しだからね!」

 カイを部屋に連れ込んだ後、俺はそう言って準備を始める。カイはというと、なんだか借りてきた猫みたいにおとなしくなって所在なさげにしてる。友達の部屋に入るって割と普通の事だと思うあんまり経験ないのかな?

「よし、準備できた!こっち来て!」
「こっち……?ってお前ここ……っ」

 俺がカイを案内したのは部屋の中央にあるベッド。毛布と枕はどけて、シーツを整え直したそこを指差して俺は言葉を続ける。

「ここで横になって!今からお礼するから」
「はぁ!?!?!?おお、お礼ってまさかお前っ!!??」

 何故か真っ赤になっているカイに首を傾げながら俺は先を促した。

「もー!さっきから本当何??いいから早くして!」
「待っ、おま……俺にも心の準備ってやつが……」
「そんなに構えなくても痛くしないって!」 
「………は?痛いってどういう……?」

 カイが俺の言うことがよくわからないという顔をしてるので、俺は今日の趣旨を説明する。

「体育祭の疲れを癒すマッサージ!カイ頑張ってたから特別バージョンしてあげようと思って」
「はぁ!?マッサージ???……いや、紛らわしすぎんだろ」

 カイの返答は相変わらず後半部分の声が小さくて全部は聞こえなかった。だけどとりあえず今日の目的は理解はしてもらえたっぽいのでよしとする。

 そう、俺は前からお礼として今日マッサージをする事を決めていた。というのも、お礼の内容をカイにリクエストすると本当にお礼になってる?って事を頼まれたりするから。それよりは確実に体育祭で酷使してる体をほぐしてあげた方がQOLが上がるかなって思ってさ。

「前は外だったから、脚しかできなかったけど今日は腰や背中もやってあげるね」

 カイの出た1キロリレーは過酷な競技だから、脚以外の全身ももれなく疲労してるはず。だから今日はベッドを使ってやろうと思ってカイを部屋に呼んだんだよね。

 ◇

「よいしょっ……どう?気持ちいい?」

 俺はうつ伏せになったカイの背中を揉み込んで反応を確かめる。

「………お、おう」

 返ってきたのはこんなよくわからない反応。もっと、効いてるとかいい感じとかちゃんと返事して欲しいんだけど、カイはガチガチに固まって大人しくなってる。俺、痛くしないって言ったけどまだ緊張してるのかなぁ?

「ちょっと強く押すから痛かったら言ってね。えい!」

 あまりにも反応がないので、ちゃんと効果が出てるか不安になった俺はよく効くツボを少し強めに押すことにした。そこまで痛くはないはずだけど、それなりに押された感覚はあるはずの場所。俺はそこを押すため、ベッドに乗り上げてカイの背中に跨って覆い被さる。

「……っ!!!」

 声は出さなかったけど、カイが息を呑むのが聞こえた。やっぱり効いてはいるみたいでホッとする。

 (ていうかやっぱり凄……)

 俺はこの近距離で見てカイの背中の筋肉の逞しさを実感する。身体的に優れているワーウルフだからというだけでなく、カイの体は大人のワイルド系のモデルの人みたいな、バランスが取れた筋肉に覆われている。クロードも筋肉すごいけど、カイのはより男って感じが強くて特にかっこいいと思う。

「ねー、どうやったらこんなに背筋つくの??俺にも分けてー」

 俺はそう冗談を言いながら、カイの広い背中を指でなぞる。俺は、カイとは前か横に並んで話す事が多いから背中を見る機会はあまりなかったりする。そして背中を見る時は大抵いつも――

 (俺の事庇ってくれる時、だよね)

 ナンパされて困ってる時にこの背中が目の前に広がると、口には出さないけど結構安心する。
 それ以外にもカイは文化祭で俺が怪我して困ってる時に助けてくれたりと、不器用だけど結構優しい。あとは体が大きいから風除けにもなってくれたっけ。

 (まあ、あれは文句言われたけどね)

 普段は口が悪くて、態度も雑だし、俺の言うことに文句つけてきたりもするけど、それも含めて俺はカイと友達になれてよかったと思う。

 そんな気持ちを込めて、俺は丁寧にマッサージを続ける。俺の得意なこれでちょっとでも感謝の気持ちが伝わるといいな。直接お礼を口にするのは照れくさいから、俺は精一杯の気持ちを手に込めてカイの背中を揉み込んだ。
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