穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

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3年1学期

87話: 夏の海での大騒動 ②

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「お久しぶりですクリスフィアさん。今日は招待ありがとうございます!」
「来てくれて嬉しいわ。今日は楽しんでいってね。フレンさん」

 夏らしい純白のワンピースを身につけたクリスフィアさんは彼女のトレードマークである真っ白な髪をポニーテールにした涼しげな出立ちだった。


「髪型お揃いですね!夏らしくて素敵です!」
「ありがとう。フレンさんもよく似合ってるわ」

 お互いの髪を指差して笑いかけると、俺の目線より少し下の位置にある顔が微笑みを返してくれる。彼女とは前に少し話しただけだけど、上品で優美なのは変わらない。早速俺は彼女に連れてきた2人を紹介する事にした。

「俺の後輩のルカとエリオ君です。2人は兄弟で、ルカがお兄さんなんですよ」
「あら、そうなの?よろしくね。私はクリスフィア。ここはうちの所有だからゆっくりしてらしてね」
「はじめまして。エリオと申します。本日はご招待いただきありがとうございます」
「……」

 今度はルカも無言ながら自分からお辞儀をしているのを見て俺は密かに胸を撫で下ろした。

「海なのだけど、少し水温が低いみたいなの。入る時は気をつけてね」
「あ、テレビで言ってました!今年はどこの海も何故かいつもより冷たいって」

 クリスフィアさんの言葉に俺は昨日見たニュースの内容を思い出す。気温は変わらないのに海の温度だけが例年よりかなり低いんだって。俺は海には入らないけど、入る人にとっては大事な話だろう。

「……フレン、温める?」
「え?」

 クリスフィアさんとそんな話をしていたら、ルカが突然話に入ってきた。

「温めるって、海を?」
「……うん」

 冗談の様な発言だけどこれは本気の顔だ。この子はこういう事を難なくやれるのを俺はよく知っている。
 このままではルカが海を沸騰させる可能性がある事に気がついた俺は、他にも何かとんでもない提案をされる前に釘を刺す事にした。

「そんな事しなくていいってば!もー!今日はルカ魔法使うの禁止ね?」
「……わかった」

 ちょっと無茶な禁止令だと思ったけど、ルカは素直に頷いて、俺の後ろにくっつくだけで、嫌な顔ひとつしない。 
 そのまま挨拶が一通り終わった後、俺たちは荷物を置くために一度解散した。

 ◇

「俺泳いでくるわ、お前は?」

 荷物を置いて海を眺めてたら水着に着替えたカイが声をかけてきた。それに答えようと振り返ったらカイのよく鍛えられた身体がしっかり目に入る。普段から男らしい体格なのはわかってたけど、服を脱ぐとより際立つよね。自分との違いに俺は思わず息を呑んで見入ってしまう。

「……なんだよ」

そのまま俺が黙っていたら、カイから怪訝な顔で見られたから素直に白状することにした。

「あっ、ごめん。筋肉すごいなーって、前見た時も思ったけどこんなについてるのいいなぁ……かっこいい」

 俺も腹筋欲しくてクロードに何回か教えてもらったけど全然できなくて諦めたんだよね。
 そのまま俺がまじまじと見ていたら暑さからか耳がほんのり赤いカイがプイッと横を向いたので流石に見すぎたのかもしれない。

「そ……そうかよ。で、結局海どうすんだ?」
「俺は泳げないからこのあたり散策する!楽しんできて!」

 海には入れないので、俺はそう言って手を振りカイを見送った。このままぼんやりしてても仕方ないので海辺を歩くにする。

「……フレン、どこいくの?」
「ちょっと散策!ルカも一緒に来る?」
「……うん」

 少し進んだところで、ぼんやりと海を見ていたルカに遭遇したので、そのまま2人で散策する事になった。

「そういえばエリオ君は?一緒じゃなかった?」
「……大きい人と話してた」

 この場でルカより大きいのはレイラさんだけだ。確かレイラさんは可愛い子が好きだから、エリオ君に興味を持ったのかもしれない。エリオ君、俺と背丈そんなに変わらないし、ルカとは似てないけど綺麗な顔立ちしてるからレイラさん好みかも。

「ルカ!見て!海キラキラしてて綺麗だね」
「……そう、かも?」

 初めて間近で見た海は、透き通った青さがどこまでも広がっていて美しかった。
 ルカは首を傾げながらも、しっかり海の方を見つめている。そのまっすぐな視線に、おそらくルカにとっての初めての海も悪い物ではないんじゃないかなって俺は思う。

「ほら、青くて空まで繋がってて、すごく綺麗じゃない?」
「……綺麗」

 俺はそう言って海を背にルカを振り返り、笑いかけた。今度はルカも同意してくれて、ルカの中にも思い出ができたみたいで嬉しい。

「…………写真」
「え?」

 続いてルカから出た言葉は、隣にいて、直に聞いていても思わず聞き返してしまう様な物だった。

「ルカ、写真撮りたいの?」
「……うん」

 相変わらず表情が変わらなくて何を考えているかはよくわからないけれど、ルカは俺の問いかけに素直に頷く。

「オッケー!じゃあこっち寄って!」

 俺はポケットから携帯を取り出し海を背景にルカとツーショットを撮る。手のひらサイズに切り取られた海は本物と変わらずキラキラしていて、いい思い出になりそうだ。

「ルカがこういうのしたいって言うの珍しいね!写真好きになったの?」
「……フレンの、誕生日」
「俺の?先月だけど……」

 話していたらルカからまた意外な単語が飛び出した。それに俺、ルカに自分の誕生日の話したっけ?

「……誕生日、写真、貰ったから」

 ルカの発する数少ない言葉を頼りに、俺は一つの仮説を立てた。

「……!もしかして、お返ししたかったの?」

 俺はルカの誕生日にフォトフレームと中に入れる思い出の写真を入れて渡した。そしてルカはこれまで誕生日にお祝いをする事すら知らなかった。もしかしたらだけど、この経験からルカは誕生日は写真を送り合う物だと思ったのかもしれない。冬月祭の時もルカは俺の話を元に知識をつけていたし、あり得ない話じゃない。
 となるとこれはルカからの誕生日のお祝いの気持ちという事になる。ミチル先生ばりの推測だけど、それ割といい線いってるんじゃないかな。

「あはは、ルカ、誕生日は写真以外をあげてもいいんだよ?でも考えてくれてありがとう!今度プリントしてルカにもあげるね」
「………うん」

 形式としては不思議な感じになっちゃったけど、ルカが誕生日はお祝いをするものだって覚えててくれて嬉しい。俺は携帯をしまいつつ、上がった気分のまま散策を続けた。
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