穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

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3年2学期

104話: 不良ワーウルフとの特別トレーニング①

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 セラフィオルの他校交流から数日後の休日の今日、俺はカイの寮に来ていた。
 あんまり使ってない運動着に身を包んで待ち合わせ場所である寮内グラウンドに足を踏み入れる。

「カイ、おはよ。今日はよろしくね!」
「おう、それじゃはじめっぞ。途中で根ぇ上げんなよ」

 今日は前にカイと約束してたトレーニングの日。最近美味しいものを食べる機会が多かったからこの辺りで頑張っておかないとだよね。

「まずはストレッチからな、怪我しねぇようしっかり伸ばせよ」

 そう言ってカイは足を広げて体を倒し始めた。見よう見まねで俺もそれに続くことにする。

「見て見てー!結構曲がってない?」
「……っ!お前体柔けぇのな」

 俺の前屈を見て、カイがちょっと感心したように感想を漏らす。運動は苦手だけどこういうのは得意かも。

「チアやってたからかな?あっ、そうだ背中押すやつやって!」
「いいけど、力抜いて息吐けよ。息止めてっと意味ねぇから」
「わかった!けど優しく押してね、カイ」
「へーへー」

 カイの大きな手が背中に触れる。言葉通り軽い力で背中を押されると、さっきまで届かなかった位置に手が届いて少し気持ちがいい。

「ありがと!俺もカイの背中押したげるね」
「別に俺は……はぁ、勢いつけすぎんなよ」
「任せて!」

 俺はカイと位置を変わって背中を押し始める。

「どう?気持ちいい?」
「おー、悪くねぇ」

 しばらくこうしてストレッチをしたあと、カイがストップウォッチを首にかけてセットする。

「タイム測るの?俺本格的なのじゃなくて、軽く運動できたらでいいんだけど……」
「無理な事はしねぇよ。ただ、こういうのしといた方がモチベーションになるからな」
「へー、そういうもの?」

 まあ、高いノルマとかないならいいかな。俺はカイに言われるまま、今の全力で50メートル走のタイムを測る。

「っと、8.5……お前本当に運動苦手なんだな」
「もー!カイと比べないでよね。これでも全力なんだから」
「別に責めてねぇよ。ただ、まあ、そうだな……」

 顎に手を当ててカイが俺の方を見る。そのまま軽く俺の肩と腕に触れて引っ張られた。

「今から軽く走っけど、その時に腕の位置ここを意識してやってみろよ。足はこうな」
「?うん、いいけど……」

 カイに言われるまま俺はその場で手足を軽く動かしてみる。ちょっと慣れないけど大変じゃないしこれ位ならできるかな。

「じゃあまずは寮の外回っからついて来い。はぐれんじゃねぇぞ」
「えっ外出るの?ちょっと、置いてかないでよ!」

 俺は慌ててカイの背中を追う。せっかくここの寮にはグラウンドがあるのになんで外に出るんだろう?

 ◇

 その疑問の答えは割とすぐだった。カイが選んだコースは、今の時期ちょうど紅葉が始まる街路樹が並んでいて、走りながら眺めるのに丁度いい。

「わぁ、綺麗……こんな所あったんだ」
「お前走るだけじゃすぐ飽きんだろ。そういう時は景色が見えるコースの方がいいからな」

 それは確かにそうかも。ずっとグラウンド走ってると心が虚無になるもんね。カイって色々考えてくれてるんだなぁ。

「ただ上ばっか見て転けんじゃねぇぞ。お前足元の注意力ねぇから」
「俺そこまでうっかりしてないもん!全然平気……っわぁ!?」

 そんな事ないって思ってたのに、地面からせり出た木の根っこに足がぶつかって俺は早速よろける。転けなかったけど危ない所だった。

「お前、フラグ回収早すぎんだろ。今から折り返しだから注意して走れよ」
「う、うん。……気をつける」

 呆れ顔のカイに見つめられながら俺はさっき走った道をゆっくり走って戻った。今度は足元もよく見てるし流石にこけたりはしないはずだよね。

 ◇

 再び寮のグラウンドに戻って、俺達は一旦休憩を挟む。持ってきてたペットボトルに口をつけていたらカイから無慈悲なひと言をかけられる。

「水飲んで休憩したらもう少し走っぞ」
「えー!?まだ走るの??もう疲れたー」
「お前……まだ10分しか走ってねぇだろ……」

 カイにとっては平気かもしれないけど普段運動してない身からすると普通にきつい。グラウンドにはさっきみたいな綺麗な景色とかもないし、追加で走るやる気が出ない。

「次やるのはジグザグランニングゲームだ」
「ジグザグ?曲がるの?」
「理解が早ぇな。今から俺がこれをつけて蛇行して走っから……」

 そう言ってカイは麦畑色のタオルを取り出してボトムの腰元に挟む。ちなみにこのタオルは俺が冬月祭であげたやつだ。ちゃんと使ってくれてるの嬉しいな。

「要はお前がこれを俺から取ったら勝ちなゲームだ」
「えっ、俺がカイに追いつけるわけなくない!?」

 カイは50メートルを3秒台で走る人だから、そんなの無理すぎる。一気に俺のやる気が低下したのを見てカイが言葉を続けた。

「本気で走ったりしねーよ。お前が追いつけるギリギリにすっから安心しろ」
「本当……?」

 まだ疑いを持ってる俺にカイが大袈裟なため息をつく。

「嘘ついてどうすんだよ。うちのチビ共ともやってるから手加減は慣れてっし、お前楽しいのがいいんだろ?」
「えっリリィちゃん達とこんなことしてるの?カイお兄ちゃんしてるんだー!えらーい」
「っ、あいつら遊べってうるせーから相手してやってるだけで、別にそういうんじゃねぇし」

 確か、カイは弟君と妹ちゃんがいるんだよね。前に会ったことあるけどすごくちっちゃくて可愛かったなぁ。

「けどあの子達じゃタオルに手が届かなくない?」
「問題ねぇよ。あいつらとするときゃタオルじゃなくて尻尾で……あ、やべっ」
「えーっ!!尻尾!見てみたーい!見せて見せて!!」

 カイは慌てて口を閉じたけど、俺はその単語を聞き逃さなかった。

「お前……さっきまでへばってた癖に急に元気になってんじゃねぇよ!」
「だって見たいんだもん!ねぇ尻尾見せてー!触りたーい!!」

 たまに街でワーウルフの人が尻尾を出して歩いてるのを見かけるけど凄くもふもふなんだよね。

「ばっ、馬鹿!誰が見せるかよ……そんな目しても無駄だかんな」
「えー何で??いいじゃんちょっとくらい」

 ワーウルフは竜族と違って特に種族特性の露出に決まりがない種族だ。それにさっきも言ったように尻尾を出してる人も結構見かけるし、優しい人が尻尾で子供をあやしてくれる光景もよく見る。だからそのノリで俺はカイにお願いしたんだけど、カイは断固として尻尾を出そうとはしない。

「………っお前にだけは見せらんねぇんだよ……」
「えっ、何?聞こえな……」
「とっ、とにかくダメだ!おら、さっさと始めんぞ」

 返ってきた返事は小声すぎてよく聞こえないし、そのまま誤魔化されるようにトレーニングが始まってしまう。

「ちょ、カイ早すぎ!待ってってば!」

 仕方なく俺は本物じゃない尻尾を追いかけてジグザグと走り始める。ていうか全然手加減してくれないんだけど。早すぎてタオル取るなんて絶対無理!
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