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3年2学期
110話: 文化祭準備、大型新人襲来!?⑤
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文化祭数日前の学園演劇練習、今日は校庭でのリハーサルを兼ねた練習だ。
俺は裏方として舞台芸術を作る手伝いとかをしてたけど、練習自体は見てないから劇を見るのは今日が初めてだ。
「寒……」
ガネマルの開始の合図とともに、校庭を小規模の吹雪が覆う。第一の厄災の魔物、冬の厄災の再現だ。
見るとエリオ君が絶妙なコントロールで演者が見える程度に威力を下げて維持してるのがわかる。エリオ君はこの後キャストとしても登場する筈だけど、こんな離れ業をしながら演技もするなんて相変わらず凄く優秀だ。
◇
「えっ、あれもしかしてルカがやってるの……??」
物語が進み、建国の王が最後の厄災である夜の厄災を倒す場面。まだ昼間なのに校庭は完全な夜空に包まれていて、そこから無数の魔物の幻影が生まれてくる演出に俺は息を呑む。今回ルカはキャストじゃなくて演出専門らしいけど、確かにこれはそれに相応しい出来だ。
(多分結界の中に擬似的に夜空と魔物を作り出してるんだろうけど、あんなのどうやったらできるの?)
こんな演出考えたなんてガネマル凄いなぁ。なんて俺が思って舞台袖を見ると、ガネマルを含めたキャストたち全員がぽかんとした顔で空を見上げているのに気がつく。というか舞台上の建国の偉人役の子達も皆リハーサル中なのに棒立ちで驚いた顔をしている。
「んん?もしかして……」
その中でただ1人、ミカエラさんだけが役になりきったまま主役である建国の王役の子に近づき、その手に剣を握らせる。そのやりとりで我に返った王役の子が演武を舞い、その動きに合わせて夜空が晴れてリハーサルは終了した。
「リハーサルの反省会を始めるぞ!みんな集まってくれ!!」
ガネマルの集合の声に合わせて観客役の裏方が校庭に出る。そのタイミングで俺は舞台袖に立っているルカに駆け寄った。
「ルカ、さっきのって……」
「……今日は、フレンが見てたから俺、頑張った」
やっぱりそうだ。さっきの夜の厄災の演出は脚本じゃなくてルカのアドリブだったらしい。俺は嫌な予感が的中してたことに気がついて頭を押さえる。
ルカは前から、俺の前では褒めてもらうために凄い魔法を使う事がよくあった。ペア授業の時とかはそれが顕著だったけど、その癖が今回のリハーサルでも出てしまったらしい。舞台演劇練習中俺は裏方仕事があったから、合間にルカに抱きつかれたりはしてたけど、演出を見るのは今日が初めてだった。だから今日までこの難点に気が付かなかったというわけだ。
「……フレン、どうだった?」
ルカが純粋に褒めて欲しそうな目で俺を見つめてくる。確かに凄い魔法だったとは思う。だけどこのアドリブのせいでリハーサルの意味は半減してしまったし、手放しに褒める事はできないよね。俺がどうしようか悩んでいると、ガネマルが近づいてくる。
「ガネマル……ごめん、俺がいたから……」
「ルカ君!!さっきの演出は素晴らしかった!!あちらの演出で本番も行こう!!」
「え?」
俺がその提案に驚いていると、ガネマルの後ろにいたキャストたちも口々にそれに賛同し始める。
「この演出でもう一度リハーサルをしよう!!皆準備をしてくれ!!」
さっきより活気付いた様子でキャスト達が準備を始める中、俺にのしかかっているルカが甘えるように頭を擦り付けてくる。
「うーん、まあ、皆がいいならいいのかな?ルカすごいね」
「……ん」
悩むのも疲れてきたので俺は何も考えずにルカの事を思いっきり撫で回すことにした。まあ、やる気があるのは良いことだよね?
◇
「エリオ君もお疲れ様。冬の厄災凄かったよ!」
「せっ、先輩!……あ、ありがとうございます」
2回目のリハーサルが終わった後俺は舞台袖で台本に書き込みをしてるエリオ君に声をかけた。
さっきはルカのアドリブに気を取られてしまったけど、舞台全体の細かい調整が必要な魔法はほとんど全てエリオ君が担当している。ルカは細かいコントロールが苦手だからこれは去年じゃできなかった演出だ。
「……というかそれ、なんですか?」
「あー、これね。ちょっと捨ててきてって頼まれちゃって」
エリオ君が俺の持ってるゴミ袋を見て首を傾げる。中には飲み終わったペットボトルとかが入ってて軽いけど結構嵩張る。
「またあの人ですか?相手が女性だからってなんでも言うこと聞く必要はないですよ」
「まあ俺裏方だし、今暇だしね」
エリオ君は弱い人へのあたりは強いけど、割と女の人への態度は丁寧な方だ。多分育ちがいいから、自然と女性へのマナーが身についてるんだろう。レイラさんやクリスフィアさんにも礼儀正しく接してたし、彼より弱いであろうミチル先生とかにも横柄な態度を取ったりはしていなかった。だからミカエラさんに対しても強く否定はしてこないんだけど、それでもちょっと心配そうに俺の顔を見ている。
「それにさ、ミカエラさん今本当に忙しいんだと思うよ。さっきだってリハーサルの流れを1人で戻してたし、今も修正点をまとめてるんじゃないかな?」
「……まあ、先輩がそう言うならいいですけど。何かあったら言ってくださいね。その、ぼ、僕は先輩の味方なので」
エリオ君にもライブメンバー達みたいなこと言われちゃった。少し照れくさそうに伝えてくれるその優しさに、俺の中の後輩を可愛がりたい気持ちが大きくなる。
「ありがとうエリオ君!頼りにしてるね?練習も頑張って!」
「は、はいっ!!」
そう言ってエリオ君の背中を軽く押して、俺はそのままゴミ捨て場に向かった。舞台演劇のリハーサル見学が終わったし、明日はチアライブのリハーサルだ。俺も皆みたいに頑張らなくちゃね。
俺は裏方として舞台芸術を作る手伝いとかをしてたけど、練習自体は見てないから劇を見るのは今日が初めてだ。
「寒……」
ガネマルの開始の合図とともに、校庭を小規模の吹雪が覆う。第一の厄災の魔物、冬の厄災の再現だ。
見るとエリオ君が絶妙なコントロールで演者が見える程度に威力を下げて維持してるのがわかる。エリオ君はこの後キャストとしても登場する筈だけど、こんな離れ業をしながら演技もするなんて相変わらず凄く優秀だ。
◇
「えっ、あれもしかしてルカがやってるの……??」
物語が進み、建国の王が最後の厄災である夜の厄災を倒す場面。まだ昼間なのに校庭は完全な夜空に包まれていて、そこから無数の魔物の幻影が生まれてくる演出に俺は息を呑む。今回ルカはキャストじゃなくて演出専門らしいけど、確かにこれはそれに相応しい出来だ。
(多分結界の中に擬似的に夜空と魔物を作り出してるんだろうけど、あんなのどうやったらできるの?)
こんな演出考えたなんてガネマル凄いなぁ。なんて俺が思って舞台袖を見ると、ガネマルを含めたキャストたち全員がぽかんとした顔で空を見上げているのに気がつく。というか舞台上の建国の偉人役の子達も皆リハーサル中なのに棒立ちで驚いた顔をしている。
「んん?もしかして……」
その中でただ1人、ミカエラさんだけが役になりきったまま主役である建国の王役の子に近づき、その手に剣を握らせる。そのやりとりで我に返った王役の子が演武を舞い、その動きに合わせて夜空が晴れてリハーサルは終了した。
「リハーサルの反省会を始めるぞ!みんな集まってくれ!!」
ガネマルの集合の声に合わせて観客役の裏方が校庭に出る。そのタイミングで俺は舞台袖に立っているルカに駆け寄った。
「ルカ、さっきのって……」
「……今日は、フレンが見てたから俺、頑張った」
やっぱりそうだ。さっきの夜の厄災の演出は脚本じゃなくてルカのアドリブだったらしい。俺は嫌な予感が的中してたことに気がついて頭を押さえる。
ルカは前から、俺の前では褒めてもらうために凄い魔法を使う事がよくあった。ペア授業の時とかはそれが顕著だったけど、その癖が今回のリハーサルでも出てしまったらしい。舞台演劇練習中俺は裏方仕事があったから、合間にルカに抱きつかれたりはしてたけど、演出を見るのは今日が初めてだった。だから今日までこの難点に気が付かなかったというわけだ。
「……フレン、どうだった?」
ルカが純粋に褒めて欲しそうな目で俺を見つめてくる。確かに凄い魔法だったとは思う。だけどこのアドリブのせいでリハーサルの意味は半減してしまったし、手放しに褒める事はできないよね。俺がどうしようか悩んでいると、ガネマルが近づいてくる。
「ガネマル……ごめん、俺がいたから……」
「ルカ君!!さっきの演出は素晴らしかった!!あちらの演出で本番も行こう!!」
「え?」
俺がその提案に驚いていると、ガネマルの後ろにいたキャストたちも口々にそれに賛同し始める。
「この演出でもう一度リハーサルをしよう!!皆準備をしてくれ!!」
さっきより活気付いた様子でキャスト達が準備を始める中、俺にのしかかっているルカが甘えるように頭を擦り付けてくる。
「うーん、まあ、皆がいいならいいのかな?ルカすごいね」
「……ん」
悩むのも疲れてきたので俺は何も考えずにルカの事を思いっきり撫で回すことにした。まあ、やる気があるのは良いことだよね?
◇
「エリオ君もお疲れ様。冬の厄災凄かったよ!」
「せっ、先輩!……あ、ありがとうございます」
2回目のリハーサルが終わった後俺は舞台袖で台本に書き込みをしてるエリオ君に声をかけた。
さっきはルカのアドリブに気を取られてしまったけど、舞台全体の細かい調整が必要な魔法はほとんど全てエリオ君が担当している。ルカは細かいコントロールが苦手だからこれは去年じゃできなかった演出だ。
「……というかそれ、なんですか?」
「あー、これね。ちょっと捨ててきてって頼まれちゃって」
エリオ君が俺の持ってるゴミ袋を見て首を傾げる。中には飲み終わったペットボトルとかが入ってて軽いけど結構嵩張る。
「またあの人ですか?相手が女性だからってなんでも言うこと聞く必要はないですよ」
「まあ俺裏方だし、今暇だしね」
エリオ君は弱い人へのあたりは強いけど、割と女の人への態度は丁寧な方だ。多分育ちがいいから、自然と女性へのマナーが身についてるんだろう。レイラさんやクリスフィアさんにも礼儀正しく接してたし、彼より弱いであろうミチル先生とかにも横柄な態度を取ったりはしていなかった。だからミカエラさんに対しても強く否定はしてこないんだけど、それでもちょっと心配そうに俺の顔を見ている。
「それにさ、ミカエラさん今本当に忙しいんだと思うよ。さっきだってリハーサルの流れを1人で戻してたし、今も修正点をまとめてるんじゃないかな?」
「……まあ、先輩がそう言うならいいですけど。何かあったら言ってくださいね。その、ぼ、僕は先輩の味方なので」
エリオ君にもライブメンバー達みたいなこと言われちゃった。少し照れくさそうに伝えてくれるその優しさに、俺の中の後輩を可愛がりたい気持ちが大きくなる。
「ありがとうエリオ君!頼りにしてるね?練習も頑張って!」
「は、はいっ!!」
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