穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

文字の大きさ
114 / 131
3年2学期

114話: 文化祭、波乱の学園演劇とライブ③

しおりを挟む
 迫り来る竜の鉤爪が俺に届く寸前、激しい閃光が目に入って俺は思わず目を瞑った。

 それから数秒経っても痛みがやって来なかったから、俺が恐る恐る目を開けると目の前に剣を構えたクロードの背中が見えた。

「あ……クロード……」

 俺の声に一瞬振り返ったクロードが何かを確認してすぐに竜に向き直る。

「あれ……、これシールド?」

 よく見ると俺とミカエラさんの周りにとても頑丈なシールドが貼られているのに気がつく。周囲を見渡すと、必死な表情でこちらに手を伸ばしているエリオ君の顔が見えた。

 (エリオ君が貼ってくれたんだ……)

 とりあえず、最悪の状態は免れたことに俺が胸を撫で下ろしていると、後ろからミカエラさんの声が聞こえる。

「なんで……っ、なんで、こんな事したんですか?」

 睨むように俺を見つめて、そう言われた言葉に俺は目を伏せる。

「ごめんね……自分でも何でかわからないんだけど、気づいたら飛び出しててさ」

 結果として乱入者が入ってしまったから劇の邪魔をしてしまったかもしれない。それに彼女の覚悟にも水を刺したと思われたかも。
 ミカエラさんが再び口を開こうとした瞬間、身の毛のよ立つような恐ろしい鳴き声が響いて俺は再び後ろを振り返った。

「……何、あれ……?あんな魔力見た事ない……」

 ルカの生み出した竜から発される魔力はもはや魔法というより台風のようなエネルギーを秘めて暴れ回っていた。あんなの、クロードでもどうにかできるわけない。

 (なんとかルカの暴走を止めて、魔法を解除してもらうしかない)

 だけど、エリオ君の貼ったシールドは頑丈で、俺はここから出てルカの元に行くことができない。このままじゃ、今度はクロードが危ないのに俺は何もできずに見守ることしかできなかった。

「……っクロード!!」

 竜の魔力が極限まで高まり、全てを破壊し尽くすような攻撃がクロードに直撃する寸前――

 (……え?クロードの魔力が膨れ上がった……?)

 一瞬の事で、俺は何が起きたかよくわからなかった。だけど、気がついたら幻影の竜は切り裂かれ、魔法でできた夜空が晴れて空には本物の青空が広がっていた。

 ◇

 クロードが幻影の竜を倒した瞬間、大歓声が会場を包み込んだ。会場が揺れてると錯覚するような称賛の声の中、一番最初に動いたのはミカエラさんだった。彼女はまるでこれが劇の演出の一部であるかのように振る舞い、クロードと俺の飛び入りを去年のキャストのゲスト出演だと観客に信じ込ませるという荒唐無稽な事をやってのける。
 そして、竜退治のメインで活躍したクロードが注目を浴びている中、俺はこっそりと舞台袖へと抜け出し、呆然とした様子のルカの腕を引いて楽屋に連れて行った。

 ◇

「ルカ、大丈夫?」

 俺は楽屋でルカに抱きついて鎮静魔法をかける。幸いまだ軽い魔力暴走だったようで、出会った頃の暴走よりもずっと早く治まった。

「……ふ、フレン……お、俺……」
「ん?どうしたの?」

 普段よりもより一層辿々しくルカが言葉を発する。見ると顔は真っ青で瞳孔も開いている。俺が努めて穏やかな声で返事をするとルカは泣きそうな顔でこう言った。

「……お、俺、フレンを、攻撃、するつもり、な、無く……て……」

 明らかな動揺が見えるその言葉に俺は察する。どうやら、暴走の一端は、魔法が暴れ回って俺を攻撃しかけたことによるショックもあるらしい。

「うん、わかってるよ。暴走して上手くコントロールできなかったんだよね」

 落ち着かせるように優しく頭を撫でながら俺はルカと目を合わせようとしたけど、ルカは苦しそうに目を伏せてしまう。

「……ふ、フレン……ごめ……なさい……」

 ルカが謝るのなんて初めて見た。多分それほどショックが大きいんだろう。何がきっかけで暴走してしまったのかはわからないけど、暴走した本人が一番苦しくて怖いのはわかるので俺はルカに安心して欲しくて口を開いた。

「大丈夫。それに俺に魔法当たってないでしょ?」
「……で、でも……」

 暴走魔法はクロードが対応してくれたし、劇もミカエラさんが繋いでくれたから、結果として大変なことは起きてない。

「心配しなくても、こんな事で離れたりしないよ。俺はちゃんとルカの側にいるから安心して」

 昔俺が魔力暴走した時、一番怖かったのは周りの人が怖がっていなくなっちゃうかもってことだった。今だって夢魔ってことがバレて人から拒絶されることが一番怖い。きっと邪竜で人から拒絶され続けてきたルカにとっても一番怖いのはこれなんじゃないかなって思う。だから俺は俯いたルカの顔覗き込んで目を合わせて声をかけた。

「……!ほ、本当……?フレン……?」
「うん、本当だよ。約束する」

 そう言って俺はルカの手を取って、小指同士を絡める。そのままルカの手を両手で包み込んで握っていたら、ルカが甘えるように頭を擦り付けてくる。

「……うれ、しい……フレン……」
「………ん?うん」

 今の言葉に嬉しいって、おかしくはないけどちょっとだけ違うような気もして俺はルカの顔を見る。色が深まった深緑の瞳が、甘えるように細くなり、俺はそこに映った自分の顔がどんな表情を浮かべてるのかよく見えなかった。

 ◇

 しばらくこうしてルカと2人で楽屋で話していたら、不意に携帯のアラームが鳴る。時計を見るとチアライブの練習時間の少し前だった。そういえば集合に遅れないように先にアラームをセットしておいたんだよね。

「あっ、もうこんな時間……ルカごめん、そろそろライブだから俺行くね」
「……え……フレン……」

 その言葉にルカは一瞬奇妙な間を置いて俺の顔を見つめる。もしかしたら、1人楽屋に残るのが不安なのかもしれない。確かに暴走の直後だし、周りから何か言われるかもって思うよね。

「今日のこと、俺も一緒に皆に謝るから、心配しなくても大丈夫!」
「……」
「ライブチケット、エリオ君に2枚渡してるから一緒に見にきてね!約束だよ?」
「………わかった」

 もう一度ルカと軽く小指を絡めた後、俺はライブ準備に向かうため楽屋を後にする。
 思わぬトラブルで思ったより時間の余裕がないから急がないと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。 背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。 魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。 魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。 少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。 異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。 今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。 激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??

雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。 いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!? 可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

処理中です...