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あれから数カ月が経ち、私はもうすっかりゼフィリア王国の王太子妃としての日々に慣れていた。ノア様の隣で、私は以前とは比べ物にならないくらい自信に満ちていた。そして、とうとうその日がやってきた。
ノア様の王国と、私の故郷であるクロード王国――カイル様とルチアがいる王国との間で、重要な王国間会議が開かれることになったのだ。ノア様は、私にも会議に同席してほしいと言った。
「ミアさん、無理しなくていいんだよ。もし、辛いなら……」
ノア様は、私のことを気遣ってくれた。彼が優しいから、一瞬心が揺らいだけど、私は首を横に振った。
「いいえ、ノア様。大丈夫です。私、行きます」
もう、私はあの頃の地味な私じゃない。カイル様やルチアに何を言われようと、もう傷つかない。そう、自分に言い聞かせた。
会議の前日、私は王宮の仕立て屋さんが作ってくれた、お気に入りのドレスを眺めていた。ゼフィリア王国の象徴である深い青色の生地に、銀色の刺繍が施された、本当に美しいドレスだ。侯爵家にいた頃の私なら、きっと身につけることさえ考えなかっただろう。
「ミア様、とてもお似合いでございますよ」
侍女のリーザが、にこやかに微笑んでくれた。リーザは、私が王宮に来てからずっと、私の身の回りのお世話をしてくれている優しい子だ。
「ありがとう、リーザ。明日、私、頑張るね」
リーザは、私の手をぎゅっと握ってくれた。
「もちろんでございます。ミア様は、この王宮で一番お美しく、聡明な王太子妃様でございますから」
リーザの言葉に、胸が熱くなった。本当に、この王国に来てよかった。ノア様と出会えて、私はこんなにも変わることができた。
そして、ついに会議当日。私はノア様と共に、クロード王国の王宮へと向かう馬車の中にいた。窓の外を流れる景色は、見慣れた故郷の風景だ。でも、以前とは違って、私の心は落ち着いていた。
王宮の門をくぐり、豪華な大広間へと案内された。そこには、すでにクロード王国の国王陛下と、大臣たちが座っていた。そして、その中に、見慣れた顔があった。
カイル様。そして、ルチア。
カイル様は、騎士団の制服に身を包み、以前よりも少しだけ精悍な顔つきになっていた。ルチアは、きらびやかなピンク色のドレスをまとい、私の隣に座っていた時よりも、ずっと自信に満ちた表情をしていた。
私は、ノア様の隣に立ち、ゆっくりと深呼吸をした。そして、堂々と顔を上げた。
カイル様の視線が、私に向けられているのがわかった。彼の瞳は、驚きに見開かれていた。まるで、目の前の私が、信じられないとでも言うように。ルチアも、私の姿を目にした瞬間、ハッとしたように目を見開いた。
「ノア王太子殿下、ようこそお越しくださいました」
クロード王国の国王陛下が、ノア様と私に挨拶をしてくれた。ノア様は、優雅に一礼し、私の手をそっと握った。
「国王陛下、お招きいただき、光栄に存じます。こちらは、私の婚約者、ミア・ゼフィリア王太子妃でございます」
ノア様の言葉に、カイル様とルチアの顔から、一気に血の気が引いたのがわかった。特にカイル様は、信じられないというように、何度も瞬きをしていた。
「み、ミア……?」
カイル様が、か細い声でつぶやいた。
彼の声には、かつてのあの傲慢な響きは一切感じられなかった。代わりに、その声は驚きと困惑にあふれて、揺れていた。彼の口から漏れる言葉が、その内面の動揺を如実に物語っていた。以前の自信満々な姿とはまるで別人のようだった。その心の中に渦巻く戸惑いと混乱が、声の震えや途切れからひしひしと伝わってきた。
私は、彼の視線から逃げることなく、まっすぐに見つめ返した。そして、微笑んだ。あの頃の、弱々しい笑顔じゃない。心からの、自信に満ちた笑顔だ。
ルチアも、私に向かって、青ざめた顔で何かを言いたげに口を開いたけど、言葉が出てこないようだった。
会議は、和やかに進んでいった。私はノア様の隣で、彼の言葉に耳を傾け、時折、質問に答えた。私の発言一つ一つに、クロード王国の大臣たちが驚いた顔をしているのがわかった。
休憩時間になった。カイル様が、ゆっくりと私の方に歩み寄ってきた。彼の足取りは、まるで鉛のように重そうだった。
「ミア……本当に、君なのか……?」
彼の声は、震えていた。私に近づいてきたカイル様の表情は、後悔と困惑でいっぱいのようだった。
「ええ、カイル様。お久しぶりです」
私は、微笑んだまま答えた。もう、彼に傷つけられることはない。そう、確信していた。
「まさか、君が……ゼフィリア王国の王太子妃に……」
カイル様は、呆然とした様子で私を見つめた。その視線には、かつての私を蔑んでいたような冷たさはもうなかった。
そこに、ルチアもやってきた。彼女は、少し顔を強張らせながら、私に話しかけてきた。
「ミアお姉様……お、おめでとうございます……」
その声は、震えていて、無理に作った笑顔の裏に、嫉妬と焦りが隠されているのがわかった。
「ありがとう、ルチア」
私は、ただ穏やかに答えた。もう、ルチアの言葉に心を乱されることはない。
カイル様は、何か言いたげに口を開いたり閉じたりしていた。そして、最終的に絞り出すように言った。
「あの時は……本当に、すまなかった……」
彼の謝罪の言葉は、私の心を揺さぶらなかった。もう、遅いんだ。あの頃の私は、どんなに謝られても、許すことはできなかっただろう。でも、今の私には、彼の謝罪は、ただの過去の出来事でしかなかった。
「もう、気にしておりませんわ」
私は、静かに答えた。彼の顔は、さらに青ざめた。
その時、ノア様が私の隣にやってきて、私の肩に優しく手を置いた。
「ミアさん、少し疲れてしまったようだね。休憩をしようか」
ノア様は、カイル様とルチアを一瞥し、そして私に優しい微笑みを向けた。その眼差しは、私を深く愛し、大切に思ってくれていることが、誰の目にも明らかだった。
カイル様とルチアは、ノア様と私の間に流れる、深い愛情を目の当たりにして、打ちひしがれたような表情をしていた。
「申し訳ありません、王太子殿下」
カイル様は、震える声でノア様に頭を下げた。
その後、会議は無事に終了した。私たちは、クロード王国を後にし、ゼフィリア王国へと戻った。馬車の中で、私はノア様の肩にもたれかかった。
「少し、疲れたかな?」
ノア様が、私の髪を優しく撫でてくれた。
「ううん、大丈夫。でも、やっぱり少しだけ、胸がキュッとなったかな」
私は正直に答えた。
「それでも、君は最後まで、堂々と振る舞っていたね。誇りに思うよ」
ノア様の言葉に、私は嬉しくなって、彼の腕にぎゅっと抱きついた。
侯爵家の地味な長女だった私。婚約者に捨てられ、すべてを諦めていた私。
でも、ノア様と出会ったことで、私はまるで生まれ変わったかのように新しい自分を見つけることができた。
以前の私は、迷いや不安に押しつぶされそうな日々を過ごしていたけれど、ノア様の存在が私の心に光を灯し、閉ざされていた扉を静かに開いてくれたのだ。ノア様の温かな言葉や行動は、私の心の奥底に届き、少しずつ自信と希望を育んでくれた。
そのおかげで、私は過去の自分を受け入れ、新たな未来へと踏み出す勇気を持てるようになった。
ノア様との出会いが、私の人生にとってかけがえのない転機となったのだ。
もう、誰かの影に隠れて生きることはない。
私は、ノア様の隣で、この先もずっと、輝き続けるだろう。ノア様の隣で、この先の人生を歩んでいくのだと、確信している。
どんな暗闇に包まれようとも、ノア様がそばにいる限り、私は決して迷わない。あの優しい眼差し、あたたかい声、すべてが私にとって光そのものであり、私の心を照らし続けてくれる。
私はノア様の存在によって強くなれた。だからこそ、これからも私は、ノア様の隣で自分らしく輝き続ける。揺るぎない想いと共に、永遠にその光の中で。
そして、あの時のカイル様やルチアの顔は、きっと一生忘れない。
でも、それはもう、私を苦しめるものではなかった。ただ、遠い日の思い出として、私の心の中にしまっておこう。
私は、今、言葉にできないほどの幸福に包まれている。まるで長い冬を越えて、ようやく春の陽射しを浴びたかのように、心があたたかく満たされている。
これまでの苦しみや涙が、すべてこの瞬間のためにあったのだと思えるほどだ。何もかもが美しく見えて、世界がやさしく微笑んでくれているように感じる。
私は、今ここに生きていること、そしてこの感情を抱けていることに、心から感謝している。
今、私は間違いなく、人生でいちばん幸せだ。
ノア様の王国と、私の故郷であるクロード王国――カイル様とルチアがいる王国との間で、重要な王国間会議が開かれることになったのだ。ノア様は、私にも会議に同席してほしいと言った。
「ミアさん、無理しなくていいんだよ。もし、辛いなら……」
ノア様は、私のことを気遣ってくれた。彼が優しいから、一瞬心が揺らいだけど、私は首を横に振った。
「いいえ、ノア様。大丈夫です。私、行きます」
もう、私はあの頃の地味な私じゃない。カイル様やルチアに何を言われようと、もう傷つかない。そう、自分に言い聞かせた。
会議の前日、私は王宮の仕立て屋さんが作ってくれた、お気に入りのドレスを眺めていた。ゼフィリア王国の象徴である深い青色の生地に、銀色の刺繍が施された、本当に美しいドレスだ。侯爵家にいた頃の私なら、きっと身につけることさえ考えなかっただろう。
「ミア様、とてもお似合いでございますよ」
侍女のリーザが、にこやかに微笑んでくれた。リーザは、私が王宮に来てからずっと、私の身の回りのお世話をしてくれている優しい子だ。
「ありがとう、リーザ。明日、私、頑張るね」
リーザは、私の手をぎゅっと握ってくれた。
「もちろんでございます。ミア様は、この王宮で一番お美しく、聡明な王太子妃様でございますから」
リーザの言葉に、胸が熱くなった。本当に、この王国に来てよかった。ノア様と出会えて、私はこんなにも変わることができた。
そして、ついに会議当日。私はノア様と共に、クロード王国の王宮へと向かう馬車の中にいた。窓の外を流れる景色は、見慣れた故郷の風景だ。でも、以前とは違って、私の心は落ち着いていた。
王宮の門をくぐり、豪華な大広間へと案内された。そこには、すでにクロード王国の国王陛下と、大臣たちが座っていた。そして、その中に、見慣れた顔があった。
カイル様。そして、ルチア。
カイル様は、騎士団の制服に身を包み、以前よりも少しだけ精悍な顔つきになっていた。ルチアは、きらびやかなピンク色のドレスをまとい、私の隣に座っていた時よりも、ずっと自信に満ちた表情をしていた。
私は、ノア様の隣に立ち、ゆっくりと深呼吸をした。そして、堂々と顔を上げた。
カイル様の視線が、私に向けられているのがわかった。彼の瞳は、驚きに見開かれていた。まるで、目の前の私が、信じられないとでも言うように。ルチアも、私の姿を目にした瞬間、ハッとしたように目を見開いた。
「ノア王太子殿下、ようこそお越しくださいました」
クロード王国の国王陛下が、ノア様と私に挨拶をしてくれた。ノア様は、優雅に一礼し、私の手をそっと握った。
「国王陛下、お招きいただき、光栄に存じます。こちらは、私の婚約者、ミア・ゼフィリア王太子妃でございます」
ノア様の言葉に、カイル様とルチアの顔から、一気に血の気が引いたのがわかった。特にカイル様は、信じられないというように、何度も瞬きをしていた。
「み、ミア……?」
カイル様が、か細い声でつぶやいた。
彼の声には、かつてのあの傲慢な響きは一切感じられなかった。代わりに、その声は驚きと困惑にあふれて、揺れていた。彼の口から漏れる言葉が、その内面の動揺を如実に物語っていた。以前の自信満々な姿とはまるで別人のようだった。その心の中に渦巻く戸惑いと混乱が、声の震えや途切れからひしひしと伝わってきた。
私は、彼の視線から逃げることなく、まっすぐに見つめ返した。そして、微笑んだ。あの頃の、弱々しい笑顔じゃない。心からの、自信に満ちた笑顔だ。
ルチアも、私に向かって、青ざめた顔で何かを言いたげに口を開いたけど、言葉が出てこないようだった。
会議は、和やかに進んでいった。私はノア様の隣で、彼の言葉に耳を傾け、時折、質問に答えた。私の発言一つ一つに、クロード王国の大臣たちが驚いた顔をしているのがわかった。
休憩時間になった。カイル様が、ゆっくりと私の方に歩み寄ってきた。彼の足取りは、まるで鉛のように重そうだった。
「ミア……本当に、君なのか……?」
彼の声は、震えていた。私に近づいてきたカイル様の表情は、後悔と困惑でいっぱいのようだった。
「ええ、カイル様。お久しぶりです」
私は、微笑んだまま答えた。もう、彼に傷つけられることはない。そう、確信していた。
「まさか、君が……ゼフィリア王国の王太子妃に……」
カイル様は、呆然とした様子で私を見つめた。その視線には、かつての私を蔑んでいたような冷たさはもうなかった。
そこに、ルチアもやってきた。彼女は、少し顔を強張らせながら、私に話しかけてきた。
「ミアお姉様……お、おめでとうございます……」
その声は、震えていて、無理に作った笑顔の裏に、嫉妬と焦りが隠されているのがわかった。
「ありがとう、ルチア」
私は、ただ穏やかに答えた。もう、ルチアの言葉に心を乱されることはない。
カイル様は、何か言いたげに口を開いたり閉じたりしていた。そして、最終的に絞り出すように言った。
「あの時は……本当に、すまなかった……」
彼の謝罪の言葉は、私の心を揺さぶらなかった。もう、遅いんだ。あの頃の私は、どんなに謝られても、許すことはできなかっただろう。でも、今の私には、彼の謝罪は、ただの過去の出来事でしかなかった。
「もう、気にしておりませんわ」
私は、静かに答えた。彼の顔は、さらに青ざめた。
その時、ノア様が私の隣にやってきて、私の肩に優しく手を置いた。
「ミアさん、少し疲れてしまったようだね。休憩をしようか」
ノア様は、カイル様とルチアを一瞥し、そして私に優しい微笑みを向けた。その眼差しは、私を深く愛し、大切に思ってくれていることが、誰の目にも明らかだった。
カイル様とルチアは、ノア様と私の間に流れる、深い愛情を目の当たりにして、打ちひしがれたような表情をしていた。
「申し訳ありません、王太子殿下」
カイル様は、震える声でノア様に頭を下げた。
その後、会議は無事に終了した。私たちは、クロード王国を後にし、ゼフィリア王国へと戻った。馬車の中で、私はノア様の肩にもたれかかった。
「少し、疲れたかな?」
ノア様が、私の髪を優しく撫でてくれた。
「ううん、大丈夫。でも、やっぱり少しだけ、胸がキュッとなったかな」
私は正直に答えた。
「それでも、君は最後まで、堂々と振る舞っていたね。誇りに思うよ」
ノア様の言葉に、私は嬉しくなって、彼の腕にぎゅっと抱きついた。
侯爵家の地味な長女だった私。婚約者に捨てられ、すべてを諦めていた私。
でも、ノア様と出会ったことで、私はまるで生まれ変わったかのように新しい自分を見つけることができた。
以前の私は、迷いや不安に押しつぶされそうな日々を過ごしていたけれど、ノア様の存在が私の心に光を灯し、閉ざされていた扉を静かに開いてくれたのだ。ノア様の温かな言葉や行動は、私の心の奥底に届き、少しずつ自信と希望を育んでくれた。
そのおかげで、私は過去の自分を受け入れ、新たな未来へと踏み出す勇気を持てるようになった。
ノア様との出会いが、私の人生にとってかけがえのない転機となったのだ。
もう、誰かの影に隠れて生きることはない。
私は、ノア様の隣で、この先もずっと、輝き続けるだろう。ノア様の隣で、この先の人生を歩んでいくのだと、確信している。
どんな暗闇に包まれようとも、ノア様がそばにいる限り、私は決して迷わない。あの優しい眼差し、あたたかい声、すべてが私にとって光そのものであり、私の心を照らし続けてくれる。
私はノア様の存在によって強くなれた。だからこそ、これからも私は、ノア様の隣で自分らしく輝き続ける。揺るぎない想いと共に、永遠にその光の中で。
そして、あの時のカイル様やルチアの顔は、きっと一生忘れない。
でも、それはもう、私を苦しめるものではなかった。ただ、遠い日の思い出として、私の心の中にしまっておこう。
私は、今、言葉にできないほどの幸福に包まれている。まるで長い冬を越えて、ようやく春の陽射しを浴びたかのように、心があたたかく満たされている。
これまでの苦しみや涙が、すべてこの瞬間のためにあったのだと思えるほどだ。何もかもが美しく見えて、世界がやさしく微笑んでくれているように感じる。
私は、今ここに生きていること、そしてこの感情を抱けていることに、心から感謝している。
今、私は間違いなく、人生でいちばん幸せだ。
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