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15 羨ましいよ
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今わかっている事。
猫が襲われているのは満月の夜。
襲っているのは、耳と尻尾が生えた女の化け物。
それはあの山に住んでいる可能性が高い。
リモは、あの化け物が怖い、と言っている。
山にある社がもしかしたら関係があるかも?
朝食の後、僕は今わかっていることをルーズリーフに書きだしてまとめた。
……あんまりなんにもわかってねぇ……
化け物の正体がまず分かってない。
山に住む化け物。
なら他にも目撃情報があってもおかしくなさそうだけど、SNSを調べても特に情報が出てこない。てことは、化け物が現れるようになったのはここ二ヶ月少々の話なのか?
なんで急に現れるようになったんだ?
わっかんねーな。
何で猫喰うんだよ……今は猫だけどそのうち人襲ったりしねえだろうな……
そう考えて、僕の背筋に冷たいものが走る。
「こうしてみると、わかっていることが少ないね」
片づけを終えた臨が、僕の隣に座り、ルーズリーフを覗き込む。
「あぁ。化け物が何者なのかなーんもわかってない」
「山や狐と深い関わりがあるみたいだから、この化け物も狐なんじゃないのかなあ」
そして臨は、僕が描いたけっしてうまくはないイラストが描かれたルーズリーフを手に取る。
「その絵、おふたりが捜している化け物なんですか?」
ソファーによじ登りながら、リモは言った。
「うん、そうだよ」
そう答え、臨はリモにイラストを見せた。
イラストを見たリモは、腕を組み大きく首を傾げながら言った。
「おや? どこかで見たことあるような」
見たこと、ある?
僕と臨は、同時にリモを見る。
いや、でも、リモは猫が襲われた時、化け物の姿を見ていないと言っていたよな?
「リモ、猫が襲われた時見てないって言っていたよな?」
「えぇ。見てないですよ? で、この人、誰かに似てる気がして」
「知り合いか?」
「はい。でも、絵だけじゃわかりませんねえ……人の形になって長時間保てるなんて、けっこう強い妖力の持ち主かも?」
「お前はこれ、妖怪だと思うの?」
僕が言うと、リモはこちらを見上げ、首を傾げて言った。
「違うんですか? 人は、猫を食べませんよね?」
「昔話なんかだと、人が妖怪に憑りつかれて猫とか喰う話、あるよな?」
僕の言葉を聞き、リモは何度も目を瞬かせた後、
「おお!」
と、感心した様な声を出す。
「言われてみればそうですね! いやあ、山にすむ者ならてっきり妖怪かと思ったのですが。人が憑りつかれている可能性もあり得なくもないですね! でも、この化け物、探し出してどうするんですか?」
「倒す」
被せ気味に僕が言うと、リモは視線を臨の方に向け、
「戦うの、お兄さんの方ですよね?」
「うん、そうだよ」
臨は足を組み、にこっと笑って答える。
「お兄さんも何かに憑りつかれているんですか?」
リモの問いに、臨は首を傾げる。
「そうかもしれないねえ」
「おお! そんな気配は全くないですが、臨さんお強いですもんね!」
尻尾をパタパタと振りリモが言う。
確かに臨は強い。雷を操る力も、その精神力も。この化け物探しはそもそも臨の存在ありきだ。
臨が視線の高さまで手を上げると、その手のひらにバチバチと小さな雷が走る。
髪の毛が静電気で浮かび上がり、そばにいるリモが思わず背を反らした。
「こんなの、普段の生活じゃあ役に立たないけれど化け物退治になら使えるって昨日わかったしね」
「え?」
臨の言葉に、僕は思わず驚きの声を上げる。
「え? って、紫音、だってそうじゃない。こんなのあったところで日常では役に立ったことないよ。すぐ電化製品壊しちゃうし。おかげであの人にはずいぶんと疎まれたんだから」
あの人、と言うのは臨の母親の事だ。
「紫音は病院でトラウマを抱えた人たちの記憶を吸い上げて消して、生きる助けをしているじゃない? 俺は紫音がうらやましいな、って思っていたけど」
そんなこと始めて言われたぞ、おい。
俺は臨の力が羨ましいけどなあ……
「僕は戦える臨がすごいと思うし、ていうかこの化け物探し事態、臨がいなくちゃ成立しねぇし……」
「紫音の力がなくちゃ、化け物の姿かたちもわからなかったよ」
そう正面から笑顔で言われると恥ずかしく、僕はテーブルに置かれたカップに手を伸ばした。
僕や臨がもつ不思議な力。
誰もがもつわけではないため、力を持つ僕らのような存在は疎まれることが暫しある。
そんな力をもつ子供を集める研究所が市内にあり、僕らはそこで知り合った。
臨は雷をひっこめるが、髪は浮いたままだった。
今こいつに触ったら静電気でやられる。
それを知らないリモは、安心した様子で臨の膝に触れた。
「いやあ、すご……いっ!」
バチッ! という音が響き、リモは出した手をすぐに引っ込めた。
「リモ、今臨に触ると静電気でやられるぞ」
「静電気……」
涙目で呟き、リモは僕の膝の上に逃げてきた。
「力使うと帯電しちゃうのが欠点なんだよねー」
臨は言い、立ち上がってキッチンへと向かった。
「化け物退治なんてわくわくするじゃない? 俺は楽しいよ。まあ、仕事との調整がきついところはあるけどねー」
キッチンで手を洗いながら、臨が言う。
「満月の夜にしか現れないなら、次の満月を待つしかないよね。それまでに何かわかればいいけれど難しいかな」
「そうだな……」
たぶん、何もわからないだろう。
手がかりが無さすぎる。
「やっぱ、社行くか……?」
「行ってみる? 今日これから」
その意見に、反対する理由はなかった。
猫が襲われているのは満月の夜。
襲っているのは、耳と尻尾が生えた女の化け物。
それはあの山に住んでいる可能性が高い。
リモは、あの化け物が怖い、と言っている。
山にある社がもしかしたら関係があるかも?
朝食の後、僕は今わかっていることをルーズリーフに書きだしてまとめた。
……あんまりなんにもわかってねぇ……
化け物の正体がまず分かってない。
山に住む化け物。
なら他にも目撃情報があってもおかしくなさそうだけど、SNSを調べても特に情報が出てこない。てことは、化け物が現れるようになったのはここ二ヶ月少々の話なのか?
なんで急に現れるようになったんだ?
わっかんねーな。
何で猫喰うんだよ……今は猫だけどそのうち人襲ったりしねえだろうな……
そう考えて、僕の背筋に冷たいものが走る。
「こうしてみると、わかっていることが少ないね」
片づけを終えた臨が、僕の隣に座り、ルーズリーフを覗き込む。
「あぁ。化け物が何者なのかなーんもわかってない」
「山や狐と深い関わりがあるみたいだから、この化け物も狐なんじゃないのかなあ」
そして臨は、僕が描いたけっしてうまくはないイラストが描かれたルーズリーフを手に取る。
「その絵、おふたりが捜している化け物なんですか?」
ソファーによじ登りながら、リモは言った。
「うん、そうだよ」
そう答え、臨はリモにイラストを見せた。
イラストを見たリモは、腕を組み大きく首を傾げながら言った。
「おや? どこかで見たことあるような」
見たこと、ある?
僕と臨は、同時にリモを見る。
いや、でも、リモは猫が襲われた時、化け物の姿を見ていないと言っていたよな?
「リモ、猫が襲われた時見てないって言っていたよな?」
「えぇ。見てないですよ? で、この人、誰かに似てる気がして」
「知り合いか?」
「はい。でも、絵だけじゃわかりませんねえ……人の形になって長時間保てるなんて、けっこう強い妖力の持ち主かも?」
「お前はこれ、妖怪だと思うの?」
僕が言うと、リモはこちらを見上げ、首を傾げて言った。
「違うんですか? 人は、猫を食べませんよね?」
「昔話なんかだと、人が妖怪に憑りつかれて猫とか喰う話、あるよな?」
僕の言葉を聞き、リモは何度も目を瞬かせた後、
「おお!」
と、感心した様な声を出す。
「言われてみればそうですね! いやあ、山にすむ者ならてっきり妖怪かと思ったのですが。人が憑りつかれている可能性もあり得なくもないですね! でも、この化け物、探し出してどうするんですか?」
「倒す」
被せ気味に僕が言うと、リモは視線を臨の方に向け、
「戦うの、お兄さんの方ですよね?」
「うん、そうだよ」
臨は足を組み、にこっと笑って答える。
「お兄さんも何かに憑りつかれているんですか?」
リモの問いに、臨は首を傾げる。
「そうかもしれないねえ」
「おお! そんな気配は全くないですが、臨さんお強いですもんね!」
尻尾をパタパタと振りリモが言う。
確かに臨は強い。雷を操る力も、その精神力も。この化け物探しはそもそも臨の存在ありきだ。
臨が視線の高さまで手を上げると、その手のひらにバチバチと小さな雷が走る。
髪の毛が静電気で浮かび上がり、そばにいるリモが思わず背を反らした。
「こんなの、普段の生活じゃあ役に立たないけれど化け物退治になら使えるって昨日わかったしね」
「え?」
臨の言葉に、僕は思わず驚きの声を上げる。
「え? って、紫音、だってそうじゃない。こんなのあったところで日常では役に立ったことないよ。すぐ電化製品壊しちゃうし。おかげであの人にはずいぶんと疎まれたんだから」
あの人、と言うのは臨の母親の事だ。
「紫音は病院でトラウマを抱えた人たちの記憶を吸い上げて消して、生きる助けをしているじゃない? 俺は紫音がうらやましいな、って思っていたけど」
そんなこと始めて言われたぞ、おい。
俺は臨の力が羨ましいけどなあ……
「僕は戦える臨がすごいと思うし、ていうかこの化け物探し事態、臨がいなくちゃ成立しねぇし……」
「紫音の力がなくちゃ、化け物の姿かたちもわからなかったよ」
そう正面から笑顔で言われると恥ずかしく、僕はテーブルに置かれたカップに手を伸ばした。
僕や臨がもつ不思議な力。
誰もがもつわけではないため、力を持つ僕らのような存在は疎まれることが暫しある。
そんな力をもつ子供を集める研究所が市内にあり、僕らはそこで知り合った。
臨は雷をひっこめるが、髪は浮いたままだった。
今こいつに触ったら静電気でやられる。
それを知らないリモは、安心した様子で臨の膝に触れた。
「いやあ、すご……いっ!」
バチッ! という音が響き、リモは出した手をすぐに引っ込めた。
「リモ、今臨に触ると静電気でやられるぞ」
「静電気……」
涙目で呟き、リモは僕の膝の上に逃げてきた。
「力使うと帯電しちゃうのが欠点なんだよねー」
臨は言い、立ち上がってキッチンへと向かった。
「化け物退治なんてわくわくするじゃない? 俺は楽しいよ。まあ、仕事との調整がきついところはあるけどねー」
キッチンで手を洗いながら、臨が言う。
「満月の夜にしか現れないなら、次の満月を待つしかないよね。それまでに何かわかればいいけれど難しいかな」
「そうだな……」
たぶん、何もわからないだろう。
手がかりが無さすぎる。
「やっぱ、社行くか……?」
「行ってみる? 今日これから」
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